一部捏造、独自解釈があります御注意下さい
ヴェルダン軍が同盟関係にあったグランベルに侵攻した事実は当事者であるウェルダン、グランベル双方のみならず、すぐ傍にあるアグストリアにも少なくない影響を及ぼした
アグストリア諸侯連合首都アグスティでは、現王イムカの融和政策に息子シャガールが不満をあらわしていた
「全く、父上も愚かな事を
今、ウェルダンとの戦闘になっているなら上手く立ち回れば我が国の利益になろうというに」
アグストリア諸侯連合王子シャガールは自室にて呟いた
「何が悲しくてグランベルとウェルダンの間を今の時点で取り纏めようとする
今回の件は明らかにウェルダンに非があり、グランベルは被害者であろうに」
現王イムカはグランベルとウェルダンの間に立ち、双方を仲介して速やかに停戦に向けて準備。即ち交渉すべき。と息子のシャガールにのみ打ち明けていた
「現状を維持しようとする、父上の考えも理解出来なくはない
だが、グランベルをウェルダンが圧倒したとして、一時的なもの。広大なグランベルそのものを制圧出来ようもあるまい
寧ろ、侵攻したウェルダン軍が殲滅されるのは確定している
その後にイザークの遠征等が万が一にも、もたつくならば、その時こそ我がアグストリアが間に立ち、双方に恩を売れば良かろうに」
シャガールとて王族。世間で言われる様な暗愚等ではない
次代のアグストリアを担うべく教育を受けているのは当たり前であるし、周りを見て判断する事には長けていた。平時や常識的な判断は誤ることはまず、なかった
が、残念ながら次代という意味での同世代には『獅子王』と名高きノディオンのエルトシャンがおり、シャガールよりも知名度や支持は圧倒的に高い
そもそも、賊等を華々しく蹴散らし、精鋭であるクロスナイツの指揮官であり、なおかつ『黒騎士ヘズル』の直系で『魔剣ミストルティン』を持つエルトシャンだ。『武功』という目に見えやすい物を持つ以上仕方ない部分ではある
対してシャガール自身は後継者であり、賊徒の制圧等に出る事は普通にあり得ない。それは近衛のザイン将軍の管轄であり、部下の活躍の場を用意するの次期後継者の務めであると思っている
事実、マッキリーのクレメンスやハイラインのボルドーはシャガールの在り方を支持している
故にシャガールの活躍の場は軍事面ではなく、政治、外交になるのは必然である
が、現王イムカはその辺りを手抜き無くしている。無論、シャガールも王族として、出来うる限り手を出している。しかし成果を出しても『賢王』である父の功績と外からは見える為にシャガールの聡明さは民衆には見えない
古来から連綿と続いている『武官』と『文官』の立場の差による温度差とも言えるかもしれない
エルトシャンが優秀なのはシャガールとて理解しているし、必要な人材とも思ってはいる。が、やはり嫉妬してしまうのは『ヒト』だから仕方ないだろう
だからこそ、
「確かに殿下の仰る通りですな
イムカ様の考えでは下手をすればまずい事になりましょう」
黒衣を纏った男が誰も居なかった筈の部屋にいた
「む、マンフロイか。どういう事か?」
シャガールはマンフロイと言う黒衣の男に訊ねた
「現在、私の得た情報ではシアルフィのシグルド公子がウェルダンに攻撃されているユングウィの援軍に動くそうです」
「む、ユングウィにまで攻め入ったのか。私や父上にもその様な話は報告されていないが?」
「私は魔道士にございます。リワープ等は使いこなせます故。殿下の情報より早くなりましょう」
マンフロイはそう言うが、真実は全く異なる
ウェルダンがグランベルに侵攻した時、国境のエバンスに最も近いノディオンのエルトシャンは、グランベルに対して人を入れた。そして、ユングウィに関する情報もエルトシャンは知った。直ちに本城アグスティに報せを出していた
が、その報せを持った使者は不幸にも、この世にはいない
ノディオンからアグスティ迄には距離があり、間にはマッキリーが存在する
ノディオンの使者はマッキリーの領内で始末されたのである
当然、報せ等届く筈もない
そんな事など知る由もないシャガールは
「そうか。それもそうか」
とマンフロイの言を受け入れる一方(エルトシャンならばその程度の情報を仕入れないはずもないはずだが?)と内心疑問に思っていた
現在ウェルダンとグランベルの騒ぎの最中、実はアグストリアにも騒ぎがあった。騒ぎというのも語弊があるが、元々体調を崩しがちだったイムカ王がいよいよ危なくなっていた。幸いと言うべきか、まだ意識もあり会話も途切れ途切れながらも出来ていた
が、そう遠くない内にシャガールがアグストリアの国王にならざるをえないのは間違いなかった
シャガールは国王危篤の報を各領主に送る一方、アグスティには登城不要とした。この様な状況を聞いて領主がアグスティに集まれば、アグストリアの山賊が動きかねない。確かに経験は余りないが、それでもアグストリアを護らねばならない。自身の不安と領民の安全。どちらを優先すべきか等、比べる必要もなかった
目の前にいるマンフロイは風体こそ怪しいが、今までアグストリアの為に動いて来たのは、傍に置いているシャガール自身が良く知っている
黒衣を纏っていた為にロプト教徒かと思っていたが、家族が亡くなってから、弔いの為の黒衣だと聞いている。正直、ロプト教徒に間違われるから危険とも思うが、亡き家族を偲んでいる人間に言うべき事でもないだろう。事実、様々な情報を持って来るのだ。有能である事は疑いもない
ならば先ずはエルトシャンに情報を求めるよりも、マンフロイの情報を元に対策を考えよう
全てはアグストリアの為に
シャガールが考えを纏めているのを見て、マンフロイは
「では殿下。色々調べて来るので失礼致します」
と言いリワープで転移する際
(精々、足掻いて欲しいものよ。シャガールにも、エルトシャンにもバルドの小僧にも)と思っていた
場所は移り、イード神殿
黒衣を来た男は一人で何かを待っていた
其処へ
「お待たせしましたか、クベリウス殿」
とマンフロイが声を掛ける
「待った。と言うほどに待ってはおらんよ
しかし、中々手強い様だな
アグストリアのシャガール。小者と思っておったが見事よな」
言葉だけを聞けば賞賛している様にも聞こえるが、クベリウスはその実、嘲笑しているのだ
「エルトシャンに対する嫉妬があるのが問題でしたな。それが無ければ精神を歪めよう等無かったですから」
そう。高位のロプト司教が扱える魔法には外法といわれるものが秘伝として伝わっている
今となっては失伝したものだったが、クベリウスが魔道書を見つけ、マンフロイと二人で研究し、見事に復活させたものだ
二人のみが扱えるという欠点はある。だが最高クラスの魔法ならば、記憶を消去したり、記憶を覗き見る事も出来る
が、記憶を消去するのは使い方が難しく、記憶を覗き見るのも、手間がかかる為に余り使えないものである
今回、マンフロイがシャガールに使用したのは、外法の中ではかなり優しい方である精神操作と思考誘導である
勿論、同情でも手抜きでもなく、仮にも一国の王子が記憶喪失等になれば最悪、廃嫡もあり得た故だが
「して、クベリウス殿は如何でしたかな?
現ヴェルトマー公爵は切れ者との事でしたか?」
ヴェルトマー公爵アルヴィス。先代ヴィクトルの自殺により、幼少の身でありながらも見事に職務をこなし、その功績より、グランベルの近衛を兼任するようになった俊英である
「確かに優秀だろう
だが、幼い頃に母親は失踪。父親も程なく自殺したのだ
覚えておくとよい。幼い頃の傷ほど深いモノはそうないのだ
だから、異母兄弟のアゼルに必要以上執着する。二度と家族を喪わぬ為に
ならば、崩すのは容易い。父親の自殺の原因も、母親の失踪の理由も不明。聡明なアルヴィスが其処に因果関係を見出だすのは、自明
しかし、アルヴィスに父親ヴィクトルの事は調べれても、母親のシギュンの事は分からない」
クベリウスは謳うように話続ける
「母親の事を知っている筈の侍女はヴェルトマーより去った。当然よな。クルトとシギュンの事を知っているかも知れない者がアルヴィスの傍に居れる筈がない
ヴェルトマーより離れざるをえなかった侍女のその後の生活を支援していた。ああ、見事。見事だよクルト王子。お陰で手間が省けた」
つまりはそういう事であった。
当時、ヴェルトマー公爵ヴィクトルは地形的要因もあり、王都バーハラによく出向いていた。アズムール王や宰相等と話し合いをするためだ
ヴィクトルは妻のシギュンにヴェルトマー以外も見せてやりたいと思い、バーハラにたまに連れて行っていた
無論、国秘にあたる事も話し合う事もある為にシギュンはバーハラ城内で夫を待つことになる
如何なる運命の悪戯か、その時のシギュンにヴェルトマー夫人と知ってか、知らずか、若きクルト王子は一目ぼれしたのだ
勿論、シギュンも断っただろう。だが、如何に妻に愛を注ぎ、気をつかっても公爵という職務は激務であり、シギュンに使える時間にも限りはあった
クルト王子は父のアズムールやシギュンの夫、ヴィクトルの目につかないように行動し、結果として過ちを起こしてしまった
シギュンの変調に気付いたのは、当人よりも身の周りを世話していた侍女であった
既にヴィクトルとの間にアルヴィスを授かった後であった。侍女はにはアルヴィスを生んだ後に後継者問題にならぬよう、側室との間での子を為しただけ。そのヴィクトルがその様な事をするとは思えなかった
為に侍女は問い質してしまった
シギュンもクルト王子も理解したつもりだった。だが、全く理解出来ていなかった。自分たちのしている事がどれだけ恐ろしい事か。どれだけの人間を不幸にするのかを
シギュンは思った
夫は傷つくだろう。あれだけシギュンを愛し、アルヴィスが産まれたときにはロートリッターを動員して空に炎の華を咲かせる事までしてくれたあの人だ。後でアズムール王等に叱責されようとも後悔してない。とまで断言した。アルヴィスが産まれた後は後継者の事があるが、愛している。とまでいってくれたのだ
なのに、寂しいからと一時の感情によって裏切ってしまったのだ
クルト王子にも迷惑がかかる
自分はもう『ココ』には居られない。居る資格を自分から棄てたのだ
出ていこう。そして、嘗て出ていった故郷へ帰ろう。私は一度故郷をすてた。でも、この子だけは
そして、シギュンはヴィクトルの元を離れた
ヴィクトルはシギュンがヴェルトマーより去った事を知り、グランベルの諸侯に頭を下げて捜索を願った
ヴィクトル自身も整理仕切れない感情を持ちながらも職務を終わらせ、シギュンの侍女に聞いた
そう、聞いて、しまったのだ
ヴィクトルは絶望した。あれだけ愛していながら、シギュンの事を思いやれなかった事を
そして、シギュンの心を弄んだクルトを呪った
おそらく、いや間違いなくヴィクトルがヴェルトマー公爵でなければ今すぐにでも『ファラフレイム』で焼き尽くしてやりたかった
足りない。シギュンの受けた痛みには到底及ばない。八つ裂きにしようが、グランベル中を引き摺り回そうが、
喩え何千回クルトを殺そうが。ありとあらゆる不名誉を被せようが
しかし、ヴィクトルはヴェルトマー公爵。自分が軽挙を犯せば罪は愛すべき家族、護るべき家臣や領民に降りかかる
だから、『この方法』しかなかった
幼いアルヴィスには苦労を掛ける。もう一人の息子の顔を見ること無く逝くのは気が咎める
だが、あんな者達に従うことは出来ない
ヴィクトルは最期に思った事。それは
シギュン、すまない
グランベルよ滅びてしまえ
だった
「成る程、その様な事が」
マンフロイも流石に言葉もなかった
元々マンフロイ自身も家族を亡くしており、復讐の一念で動いている
ヴィクトルの境遇に思うこともあるだろう
「その後、ヴィクトルに全てを打ち明けた侍女は自らの不始末を理由にヴェルトマーを去った
が、失踪した公爵夫人付きの侍女なぞヴェルトマーでは生活出来なかったそうでな
それに罪悪感を覚えたクルトが生活の支援をしていたそうだ」
クベリウスは苦虫を噛み潰した様な顔をしていた
「・・・・:死にましたか」
「ああ、重荷を下ろしたかの様な顔だった
余程、辛かったのであろうよ」
「我等が未来の為と言えど救われませんな」
「最期にこう言っていた「シギュン様、ヴィクトル様、申し訳ございません」とな。クルトには報いを与えて欲しい。アルヴィス様は殺さないで欲しい。ともな」
「言葉もありませんな」
マンフロイはため息をついた
「全くよ。マンフロイ、我等は腐っても司教。死者の思いにも多少は配慮すべきだな。少なくともあの女にはそれだけのものがあった」
「ですな。しかし、アルヴィスは殺しはしませんが、死んだほうがマシでしょう」
「それもジュダが目的のモノを見つけた時の話よ
さて、お互いの確認は終わった。お互い、なすべき事を成そうぞ」
歯車は廻る
悲劇も人の想いも巻き込みながら
と言うわけで今回はアルヴィスの生い立ち等に触れました
これがないと前半の話が意味不明になりますので御容赦下さい
初めて感想を頂きました。
原作との矛盾の御指摘を頂きましたが、嬉しく思います
疑問点等ありましたら、可能な限り答えていきますのでよろしくお願いいたします
最後となりましたが、ご一読ありがとうございます
子供世代のオリキャラは?
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