彼方の時へ   作:くらうす

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いよいよ、原作との明らかな齟齬が出ます
今更ですが

今回も独自解釈、捏造山盛りでお送りします


遺すもの進むもの

 

ウェルダンにより、ユングウィが落城。また、ウェルダン王子ガンドルフにより、ユングウィ公女エーディンがウェルダンに連れて行かれた

 

その事は隣接するシアルフィにて留守を守っていた、シアルフィ公子シグルドの耳にも届いた

 

シグルド公子とエーディン公女は面識があり、グランベルにウェルダンが侵攻してきた事もあり、シグルドは直ちにユングウィ奪還を指示した

 

当時シアルフィには予備部隊もいたが、シグルドと配下の騎士の方が実力的に優っていた

 

それ故にシグルドは少数精鋭による電撃的攻略を柱とした作戦を立案した

 

 

この作戦はあくまでも『ユングウィ奪還』のみを意図するものであり、補給等は意識しないモノであった

 

というのも、ウェルダン軍はエバンス、ユングウィ占領後は全く侵攻していない事実があるため、敵は少数だからである

 

 

 

実際、ユングウィを任されたデマジオは一部の部隊をエバンス方面にまで後退されており、ユングウィの護りはシグルド達の想定よりも少数であるのだが。

 

 

 

 

 

「まずはユングウィを取り戻す」

それがシグルドの発言だった

 

「それはいいのですがシグルド様。幾らなんでも、四人は無謀。それに補給なしは無謀ではないですか?」

軽薄そうに発言する騎士。しかし要点は抑えている事から優秀であることはわかる

 

「アレク!シグルド様の仰ることに不満でもあるのか!」

発言した騎士アレクに噛みつく金髪の騎士

 

「違うだろ。確かにウェルダンは蛮族なんて呼ばれている

だが、正規軍である以上、俺達よりも強い可能性だってある

それを俺達四人で倒すのは、無理がある

更に食糧も携帯出来る範囲。ちと厳しくないか?ってことだよ

 

俺のいうこと間違ってるか、ノイッシュ?」

発言を咎め立てる言い方をされても、冷静に反論するアレク

 

「そ、それは」

アレクに指摘されて、言葉に詰まるノイッシュ

 

「まぁ、二人とも落ち着けよ。シグルド様のお考えをまだ聞き終えてないんだ」

アレクとノイッシュを諌める大柄の男

 

「すまない、アーダン

私としても、正規軍を相手にする以上、かなりの博打になるのは承知している

だが、エーディンが拐われたとなれば、ユングウィを取り戻し、エーディンを助けねばならない

 

おそらくはバーハラの正規軍も時間が経てば動くだろう

から、それまでに出来る範囲のことはしておきたいと思う」

シグルド個人としては、直ぐにでもユングウィを取り戻し、エーディンを助け出したい

だが、自分たちではそこまでたどり着くのは不可能。そう、シグルドの冷静な部分は判断していた

 

補給などの事は士官学校にて学んではきた。しかし、シアルフィ領内ならいざ知らず、ユングウィ、エバンスで上手く補給する様な交渉が自分に出来るとはシグルドも思えなかった

 

 

 

援軍等を頼めば、ウェルダンをグランベルから叩き出すまでは出来るかもしれない。だが、ウェルダンに攻め入るならば、それは戦争だ

シグルドの様な一公子が出来ることではない

 

 

「シグルド様。オイフェ殿が面会も求めておりますが」

 

部屋の外で待機している者より声が掛かった

 

「オイフェ殿が!?わかった。呼んでくれ」

 

 

オイフェは現在遠征中のシアルフィ当主バイロンの軍師である、スサール卿の息子である

まだ、騎士になるには若すぎるが、スサール卿譲りの頭脳を持ち、シグルド自身も演習等では助けられてきた

人柄も能力も信用出来る

 

「失礼します

お久し振りです。シグルド様」

白と銀色の中間位の髪の色をした小柄な少年がはいってきた

 

「ああ、久し振りだね、オイフェ

話は聞いているか?」

 

本来、父の重鎮であり、今回の遠征にも父の要請に応えて出兵しているスサール卿の子息に対して、この様な口のききかたは風聞によろしくない

が、オイフェの意思とスサール卿からの要望で、オイフェはシグルドの部下の従騎士となっていた

 

「はい、聞いております

出撃されるならば、速い方がよいでしょう。食糧は携帯出来る範囲で宜しいかと」

オイフェは言いきった

 

「食糧には宛があるのですな、オイフェ殿?」

確認をとったのはアーダンである

 

 

シグルド配下の人間の話し合いでは、おおよその役割が出来ていた

シグルドの方針を聞き、アレクが口火を切り、ノイッシュが反論等をして議論を深める。アーダンは一歩退いて総合的に物事を観る

 

オイフェが居れば、オイフェの意見を参考にし、結論が出たら、アーダンが確認をとる

 

身内のみ。との狭い範囲であるが、手早く終わる為にシグルド達の話し合いでは、このような事になっていた

 

 

つまり、アーダンの発言で『速やかに出撃する』のは総意となった

 

「食糧については現地調達で賄えるかと」

オイフェも手早く答えた

 

「よし、出撃するぞ!」

シグルドが声をかけ、皆が出撃の準備に入った

 

 

 

 

 

 

 

シアルフィ城門前にシグルド以下、五人と五頭の馬が揃った

 

「ウェルダン軍はユングウィ城付近に戦力を集めている様です」

 

偵察に出していた部下よりの報告である

 

 

「これより、ユングウィ城へ向かう。皆、遅れるな!」

 

 

シグルド達はユングウィに向けて駆け出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ユングウィ城に来客があった。デマジオとしては、『望まない』者であったが

 

「これは珍しい。ウェルダン本城から動かない筈のサンディマ殿が何の御用で?」

デマジオにしては珍しいことだが、皮肉を織り混ぜて言い放った

 

デマジオはこのサンディマと、その上司ジュダが嫌いだった

何が、とはハッキリとしない。だが、好きになれない手合いであった

そもそもこいつらは、ウェルダンでバトゥ王の力を借りて好き勝手にやっているとの噂がある

 

真偽の程は定かではないが、ウェルダン本城辺りの子供が行方不明になっている。との噂すらある

 

ジュダや、サンディマが犯人を探しているらしいが、探しているかどうかすら疑わしい。聞いた話では、ガンドルフ王子の弟、ジャムカ王子も魔道士である、こいつらを信用出来ないらしい

 

「バトゥ王よりの命令です

ユングウィは死守せよ。と」

サンディマは用件のみを伝えた

 

「おかしな話ですな。ユングウィに拘る必要なんてないでしょうに

この作戦は、ユングウィの姫を捕らえる。それだけのはずだったと思いましたが、俺の記憶違いですか?」

デマジオは後ろ手に隠した斧を握りしめた

 

「後退しても、構いません。が、ガンドルフ王子がどうなっても良いのですか?」

サンディマとしては、目の前の男を動かす為に言ったに過ぎなかった

 

しかしそれは、結果的にサンディマの最期となった

 

 

 

「死ね!」

デマジオは隠していた斧を振り上げて、サンディマを、いや目の前の敵を殺しにかかった

 

「馬鹿め!死ぬのは貴様だ」

一瞬動揺していたが、サンディマとデマジオの距離はデマジオの心証故に多少離れていた

 

「がっ!」

デマジオは炎の魔法を受けてしまった

 

「流石に体力だけはあるようだが」

既に目の前の男に勝ち目は無い。斧を手放した時点であるはずもない

そう思ったが、止めは刺すべきと二発目を撃とうとしたとき

 

「何っ!」

目の前の男に飛び掛かられた

 

 

 

 

 

デマジオは途切れそうな意識を辛うじて繋ぎ止めていた

 

それは、尊敬するガンドルフ王子の為である。この男はガンドルフ王子に害意がある。おそらくは上司のジュダもだろう

間違いなくデマジオは死ぬ事を悟っていた

ならばせめて目の前の敵を殺す事が、ガンドルフ王子への最後の恩返しになる筈だ

 

 

 

「デマジオの兄貴!」

部屋の外から一人の男が入って来た。斧を持っている

デマジオが山賊だった頃からの部下の一人であり、今回唯一手元に残していた男だ

昔からの付き合いでデマジオの意思を汲める気のいい奴だった

 

だから、

「殺れ!」

デマジオは叫ぶのである。俺ごと敵を殺せ!と

 

 

 

 

男はデマジオがローブの男に組み付いているのを見て、ローブの男が敵であると、即座に判断し、駆け出した

「殺れ!」

デマジオの声が響いた

デマジオの目を見て、覚悟し

(すんません、兄貴)斧を振り下ろした

 

 

 

 

サンディマは男に組み付かれ、詠唱が出来なかった

威力のある闇魔法ならば、即死に出来た。しかし、魔道士のふりをしていたために、闇魔法の書は置いて来ている

 

サンディマが高位の闇魔道士ならば魔道書を体内に取り込み事も出来た。だが、サンディマは其処までの技量を持っていなかったことがサンディマの不幸といえた

「殺れ!」

耳元で男が叫ぶ

たがサンディマを殺すとなれば男も死ぬ。そんなこと出来るはずもない。そう思っていたが

即座に激痛がはしり、サンディマの意識は永遠に途絶えた

 

 

 

 

 

 

 

「デマジオの兄貴!」

山賊時代から常にデマジオに着いてきた男はデマジオに声をかけた

 

「よく、やった」

デマジオは小さな声を絞り出した

サンディマは首をはねられ即死だった

デマジオ自身も死ぬ

 

「いいか、ゲラルドとウェルダンに帰れ

王子を護、ってくれ」

 

「・・・・・・分かりやした。必ず!」

 

 

男はデマジオを助けたかった。しかしそれは、デマジオの望みではない。ガンドルフ王子を護る。それが自分に託された願い

 

 

 

 

 

 

男が出ていった

 

デマジオは不思議と満足していた

 

 

親など知らずに育ち、何時の間にか山賊の頭をしていた

 

ウェルダン軍とも何度も戦い、そして負けた

死を覚悟したのに

「やるじゃねぇか、勿体ねぇな。俺と来い!」

なんて言われて、慣れない言葉遣いも憶えたのに

「デマジオ。お前は、お前。無理やり変えなくてもいいぜ

俺なんか、変えるのが面倒だからこのままだ

親父からはよく言われるが、変える気もねぇ

そういうのは、ジャムカに任せるさ」

 

楽しかった。馬鹿な俺なんかがこんなに楽しい暮らしが出来るなんて思いもしなかった

だから

「楽しかった、ですよ、王、子」

笑って逝けるのだ

 

 

 

 

 

 

 

ユングウィ城から出た男は城の周囲にいた仲間達が東の方で戦っているのを見たが、デマジオの遺言を優先し、西へ向かった

 

 

だが、神とやらは悲劇がお望みらしい

 

男の目の前には、青い髪の騎士の男と赤い髪の男か女かわからない奴がいる

 

青い髪の男が斧を持って突っ込んでくる

かと思ったら炎の魔法で体が燃えていた

目の前に男がいた

「畜生。デマジオの兄貴、すんません」

男の意識は途切れた

 

 

青い髪の騎士レックスは違和感を覚えた

今倒した男。抵抗もなかった。ウェルダンの兵なのは間違いない。何故、抵抗しなかったのか

 

「レックス、早くユングウィへ行こう。エーディンが心配だ」

赤い髪の男アゼルがレックスを急かす

 

「分かったから、先に行くな。お前だけならヤバイだろうが」

レックスは違和感を気のせいと割り切り、先へ向かった

 

後にはウェルダン兵の死体だけが残された

 

 

 

 

 

 

シグルド達はユングウィ城の付近にいた六人程を倒すとユングウィ城に向かった

 

 

 

 

 

ユングウィ城に着いてもウェルダン軍が出てくる様子もなかった

「オイフェ、どうする?」

流石に異常事態であり、オイフェに聞いてみた

 

「敵が城内に居るかもしれません。慎重に進むべきでしょう」

オイフェとしても、想定外の、為か自信なさげに言った

 

「やはり、不自然ですな。籠城するならば、城の周囲に兵を置くのが基本。門すら閉めていないとは」

アーダンも気になっている様だ

 

「ここに居ても仕方ない。行くぞ」

シグルドの命令と共にユングウィ城へ入って行った

 

 

 

 

結論から言えば、ユングウィ城にはウェルダン軍の人間は一人いた。

城主の間で魔道士と組み合ったまま、死んでいた

シグルドはこの魔道士がウェルダン軍に挑み、返り討ちになったと思い、魔道士は丁寧に弔った

 

 

その後、レンスターのキュアン王子、従騎士のフィン、キュアンの妻でシグルドの妹のエスリンが合流

 

更に、ヴェルトマーのアゼル公子、ドズルのレックス公子が合流した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、エバンスよりウェルダンに入ったガンドルフ王子とエーディン公女は小休止をしていた

「悪い。そんなに歩き慣れないあんたを此処まで放っておいて」

 

エーディンは隠していたが、かなり疲れており、気付いたガンドルフ王子が休憩としたのである

「いえ、お気遣いありがとうございます

皆さんに慕われておりますのね」

 

「ん、ああ。どうだかな」

 

 

 

 

エバンスを通過する前にエバンスを守るゲラルドにもガンドルフは話をしており有事の際にはガンドルフの城のマーファか弟のジェノアに逃げる。ように指示を出していた

 

エバンスを出る際、ゲラルドは部下を何人か護衛につける。そう言った為に暫くガンドルフと、押し問答していた事を見ての話だろう

 

 

 

 

 

エーディンも領内では慕われているが、どうしてもユングウィ公女に対する配慮が多く、エーディン個人に対するものでは無いと思っていた

 

ガンドルフは王子としてはわからないが、ガンドルフ個人として部下から慕われているのが傍目にもわかった

 

 

エーディンは羨ましいと思った

だから、言った訳だが

 

「寧ろ、民からは悪い様に思われているだろうよ。まぁ、金や酒、仲間との馬鹿騒ぎが好きだからな」

別に領地で無体を働く訳でも、重い税金を課す訳でもない。が、普段の素行は決して良いものでは無い事はガンドルフ自身が最も理解していた

 

 

 

実のところ、ガンドルフはウェルダンの時期国王になるつもりは無かった

ガンドルフも、弟のキンボイスも政治にはからきしで、正室の子供の二人より、側室の子ジャムカの方が優秀だった

別にそれでいい。そう思う。ガンドルフはキンボイスと二人でジャムカを支える

 

父、バトゥもそう考えたから、ジャムカを手元に置き、ジェノアとマーファをキンボイスと己に任せているはずである

 

 

ウェルダンとの国境線はエバンスに近く、グランベルとアグストリアに接する

 

当然、今回の様に戦争ならばジェノア、マーファが主兵力になるのだ

 

 

 

「さて、ゆっくり出来たか?」

ガンドルフとしては早めにマーファに戻ってエーディンを休ませてやりたい

少し酷だが、今は無理をしてもらうとしよう

 

「はい、大丈夫です」

エーディンも大丈夫そうだ

 

ガンドルフが一歩踏み出そうとしたとき

「ガンドルフ王子。ご無事で」

声が聞こえた気がした

 

明らかに男の声だったが、余りに小さい割には耳に残った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時代は動き出した

想い、願いを巻き込みながら

 




序章の半分が終わりました

今回もご一読頂きありがとうございます


我ながらかかり過ぎなきも致しますが、今更ですか

感想、お気に入り、評価を頂きありがとうございます(白目)

また、読んでやっていただけるとありがたく思います

なお、休みが終わりますので更新速度が低下すると思いますが、お待ちいただけると幸いです

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