彼方の時へ   作:くらうす

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連休最後の投稿

エバンスまで書ききれなかった

独自の解釈、捏造、オリジナル展開盛りだくさんでお送りします


揺れる世界

 

 

此処はグランベルの北西に位置するフリージ領

 

シグルド公子以下の手勢がユングウィを攻略した事は演習中のレプトール達に即座に報告された

 

「ふむ、やりおるな」

レプトールは素直に感心した

 

シアルフィにはバイロンと主力騎士団『グリューンリッター』が不在なのは間違いなく、ウェルダンの軍勢と戦うには戦力的に不足していたのは間違いない

 

にも関わらず不利を覆したのならば、警戒するに値する

 

 

元々、ウェルダンが同盟国のグランベルに攻め入った。との話だが、ウェルダンが侵攻してくる少し前に、同盟関係は破棄していた。その為、一方的に同盟関係を解消されたウェルダンがグランベルを攻めるのはある意味では当然と言えた

 

ただ、不思議な事にその話が表に上がる前にウェルダンが攻め寄せただけだ

 

 

「レプトール卿。ユングウィがバイロンの小倅に奪い返されたのは本当か?」

演習中の陣から出てきたランゴバルドが驚きを隠すことなく聞いてきた

 

言葉だけを受け取るならば、シグルドの戦果に驚いている様にも聞こえる

伊達に海千山千の貴族達の跋扈する処で公爵をしていない

 

「そうだ。加えるならば、卿の子息のレックス殿も参陣しているらしいが?」

 

「何?ふん、戯けが」

ランゴバルドは吐き捨てた

 

もとより期待外れと思っていた

長男のダナンは聖痕も出て、自分と同じように『スワンチカ』が使える。及第点はやってよかろう

次男坊のレックスも騎士としてはまあまあだと、親の贔屓目無しに思う。これから成長すればドズルの斧騎士としての目は充分ある

 

だが、その能力を相殺する以上に情勢を観る能力に欠けている

ランゴバルド自身、別に『善い親』等と寝言をいうつもりはない。寧ろダナンの様に半端に見習う方が問題だろう。だが、ランゴバルドと対立しているシアルフィに味方する人間を見て、ドズル公爵に仕える者達がどう思うのか、そこの部分が足りない

結局はドズル公爵家の人間、しかも一門なのだ。レックス自身がどう思うかでは無い。仮に、シグルド公子の部下になりたいとしてもシグルド公子の立場上、認められない

 

 

確かにランゴバルドはシアルフィ、ユングウィ両家とは対立関係にある

無論、考え方の違いもあろう。だが、権力を持つものに追従するものだけでは駄目なのだ。バイロンもリングもクルト王子の傍で進言しようが、クルト王子が受け入れなければ意味がない

 

危機感を持たせる意味でも、レプトールと自分は反クルト王子であるべきなのだ

 

とはいえど、レプトールが反クルト王子の立場を取るまではランゴバルド一人の立場だった

 

そういえば、元ヴェルトマー公爵のヴィクトルが自殺した頃にレプトールが同調してきたのだったか

 

 

その辺が分からず自分に反発して、ヴェルトマーのアゼル公子とシグルド公子の元に行ったのだ

 

幼少の頃は色々教えたが、騎士になってまで教える事はないのだ。レプトール卿も子供の教育には手を焼いておるらしいが、自分もだ

グランベルの重鎮等と言われようと子供の教育には苦労するのだから、笑えない。ランゴバルドは一人、苦笑した

 

 

 

 

「どうなされた、ランゴバルド卿?」

不思議そうにレプトール卿が尋ねてきた

どうやら思考に入り込んでいたようだ

 

「いや、失礼した。お互い子供には手を焼いていると思うと、どうも、な」

 

「確かに、私も息子のブルーム、娘のティルテュには困らせられてばかりよ」

レプトールも苦笑せざるをえなかった

 

 

 

 

レプトールは早くに妻を亡くし、側室を迎えることなく子供達を育ててきた

グランベルという大国の宰相のみならず、フリージ公爵の職務もこなしながらの子育てである。並みの苦労ではなかった。だが、下手に後妻を迎えることで子供達に余計なものを見せたく無かった

 

苦労の甲斐もあったのか、ブルームはヒルダという妻を迎える事が出来た

 

まぁ、レプトールから言わせれば未来の公爵夫人としてはいささか以上問題があると見るが

ヒルダ自身は隠しているつもりだが、レプトールも魑魅魍魎の跋扈する貴族社会を生き抜いてきた身だ。小娘の本性くらい見抜くのは容易い

 

夫であるブルームと仲の良いティルテュに隔意がある様に思える

 

妻が亡くなってからはティルテュがブルームの世話をみていたのだから当たり前である

 

願わくはヒルダ自身が上手く振る舞えるようになるか、ブルームが上手くするか願うばかりだ

 

 

「しかしレプトール卿は羨ましい。ブルーム殿には伴侶がおられるのだから」

ランゴバルド自身も息子のダナンの嫁探しをしていることはあまり知られてはいない

どうも世話焼きなランゴバルドだが、それを身内に知られたくないようだった

 

「ランゴバルド卿の手前ですが、ティルテュにはシグルド公子の軍には行ってもらいたくないものです」

 

「全くよ

ところで、あの小僧、信用出来るか?正直なところ、自らの親を殺そう等と思うものとは結びたくはないが」

ランゴバルドは声を潜めて言った

 

 

 

 

ランゴバルドの言う小僧とはユングウィのアンドレイ公子である

アンドレイはリングと不仲である

 

 

これはリングは行方不明になった長女の捜索を十年以上経った今でも止めていないことにアンドレイが反発しているからだ。しかしリングは後継者についても言及していない

 

 

 

他の公爵家は当主の若いヴェルトマー、エッダ以外後継者の指名はしており、万が一の事態に備えている

 

リングも高齢である以上は後継者の指名をすべきなのにも関わらず、頑なにしない

アンドレイにはそれが不満なのだ

 

確かに聖痕の出ない自分と弓を扱えない姉上では、ウルの直系として不安だろう。まして当の父も『イチイバル』が使えないなら尚更だ

しかしアンドレイもエーディン姉上もウルの直系だ。自分の代では無理だとしても自分達の子供は分からないはず。それで一先ずは良いはずだ。その程度分からない程耄碌している訳でも無いし、思いたくもない

 

故にアンドレイは父から離れ、父の政敵であるランゴバルド、レプトールに近付いた

 

そしてあわよくば、父を亡き者にしようとしていた

 

 

 

 

こんな本心を演習でランゴバルド、レプトールと集まる時には隠す事もしなくなっていた

 

ランゴバルドならずとも、不快になるだろう

 

「確かに卿の言う通り、面倒だ

使い道がある内は生かそう」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、演習場の端にある小屋にユングウィのアンドレイ公子の姿はあった

 

 

「して、クベリウスとやら、面白い話とはなんだ」

アンドレイは不機嫌を隠そうともしない。目の前の男が役立たずならば、即刻撃ち殺すところだ

だが、忌々しい事にクベリウスと名乗る男の話は今まで役に立っていた

 

「アンドレイ様のお捜しものについては、目下捜索中にございますれば、今少しの猶予をいただけたらと」

クベリウスは頭を下げた

 

「まだか!いつまでも待たせる気だ!見つけるつもりがないのか!」

アンドレイは思わず怒鳴る。既に一月は経つのだ何かの手掛かりくらいは見つかるだろうに。そう考えたからこそだった

 

「お言葉を返すようですが、ならばリング卿が十年以上捜し続けていながら見つからぬ事実を如何にお考えですかな?」

クベリウスは反論した

 

「う、ぬ」

アンドレイも言葉に詰まる

当たり前の話だ。十年以上かけて見つからないものを僅か一月でどうしようと言うのだ

 

「引き続き捜索させますので御容赦を

それと面白いことですが、シレジアのダッカー公が王位継承を認めるならば、シレジアでのユングウィ軍の展開を認める。とのことです」

クベリウスは何でもないかのように口にした

 

「ダッカー?何者だ」

 

「シレジアの現在の女王ラーナの弟でザクソン城主にございます」

 

「ザクソン?ああ、たしかリューベックの西にある、シレジアの領地か

しかしラーナ女王は後継者を指名していなかったか」

アンドレイは後継者については国を問わず調べていた。父、リングの説得の為だったが

 

「シレジアの現状を申し上げますと、現女王ラーナは健康面に不安はありません

しかし国内の安定の為に後継者を息子のレヴィンに指名しました

これにトーヴェの王弟マイオスと、先に申し上げたザクソンのダッカーが反発しております

マイオス、ダッカー共に軍を増強しており、シレジアの『四天馬騎士』と呼ばれる者達も分裂しています」

 

「何だそれは」

アンドレイも幾らかは他国の情勢を知っている

だが、所領に近いウェルダン、アグストリアの事ばかりでシレジアの情勢などまるで知らない

 

「『四天馬騎士』とはシレジア独自の兵力、天馬騎士の中でも優秀な四人の事です

筆頭でラーナ女王の近衛を務めるマーニャ

マーニャと並ぶ実力を持つダッカーの側近パメラ

マイオスの側近のディートバ

マーニャの妹で、レヴィン王子の幼なじみのフュリーになります」

クベリウスは流れる様に伝える

 

「ふむ、即答は出来ぬが大丈夫か?」

流石に事が大きすぎる。ランゴバルドとレプトールの意見も聞かなければならない。アンドレイはそう判断した

 

「此方で上手くやりましょう」

クベリウスは応えた

 

こういう所がこのクベリウスの好ましい部分だとアンドレイは思っている

こちらの思惑をある程度推測して情報を集める

「任せるぞ」

 

 

 

 

 

アンドレイが去った後はクベリウスだけが残った

大方、こちらを上手く使おうとしているだろう。が、此方も同じこと

 

クベリウスはアンドレイやアルヴィスには接触した。だが、ランゴバルド、レプトールには接触する気はない

 

彼等は老獪という言葉が相応しく、隙が見えにくい

加えて、魔法に対する抵抗力も並みではない

此方も彼方も蛇なのだ。ウロボロスの様に互いを喰い合うなど何の益もない

 

あの手の人間は断片的な情報と、ある程度の状況を用意すれば操りは出来ないが行動を予測しやすくなる

それで充分だ

 

クベリウスが今後の事を考えていると

 

「クベリウス様」

 

背後より声がした

 

「全く、たまには視界に入らぬか

間違えば殺してしまうところだぞ」

クベリウスは冗談半分で言った

 

「今後は気を付けます

それでサンディマが死にました」

 

「ジュダめ。飼い犬と猟犬の区別もつかんか

奴も用済みだ」

 

「消しますか?」

 

「不要だ

おそらくは始末してくれよう」

クベリウスは嗤った

 

「はっ」

 

「暫くはイードに居れ

些か騒がしい奴等がおるでな

では、ゆけ」

 

 

 

 

 

イードにいるロプト教徒の中で無視できない流れが出来つつある。との話をクベリウスは掴んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家族同士で争う時代

光は何処に




聖戦の系譜のテーマは家族だと思っているくらうすです

特に書きたいキャラクターの内の二人、ランゴバルド、レプトールが本格的に絡み始めました

この親父たちは大好きです

多少優遇します

では、今回もご一読頂きましてありがとうございます


更にお気に入りが増えて発狂しそう

文才の無さが恨めしい

子供世代のオリキャラは?

  • あり
  • なし
  • どちらでも
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