New Japan Fleet   作:YUKANE

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※ 祝UA1000!※


Episode.12 2つの空

「あまぎ」を飛び立ったクロウ隊のF-35JC 4機はAWACSがいると思われるポイントへと向かっていた。

 

空は何事もなかったかのような静かさをしており,パイロットが不気味だと感じる位だった。

 

『ここって本当に戦場なんですよね? 全くそんな気がしないな~。』

『だよな。訓練中の様に感じるよ。』

『これが訓練だったらいいんだけどなぁ~。』

「お前達。今は任務中だ。私語は控えろ。」

 

クロウ隊隊長 赤羽政敏がパイロット達を注意する。

 

(やっぱり団司令(かしら)の言ってた通り,我々はこういう事態に慣れていないんだ。

もしかしたら夢物語や絵空事だったらと思っているのかもしれないな。)

 

今まで日本が遭遇した外国との危機は1999年の“能登半島沖不審船事件“や2004年の“漢級原子力潜水艦領海侵犯事件“等しかなく,言ってしまえばこういう事態にあまり慣れていないのである。

 

近くに脅威が存在しているにも関わらずここまで危機感を抱いて無いという矛盾した状態になっているのだ。

 

(自衛隊の弱点は戦いを知らないという事だ。戦いを知らないのは良いことなんだが,それがこういう場面で障害を起こす。

戦いを知らなければいざというときに対応出来ず隊員(仲間)を失う,戦いを知ってても隊員(仲間)は失われる。

自衛隊(我々)はどっちがいいのだろうか・・・・)

 

赤羽の考えは隊員の通信で途切れる事になる。

 

『隊長! レーダーに反応あり!!』

(いた!!)

 

赤羽のヘルメットマウントディスプレイ(HMD)のPPIスコープに1個の光点が写りだす。

 

赤羽はこの機体こそAWACS(我々の標的)だと確信した。

 

「標的は目の前だ! 全機兵装使用自由(Weapons free)!! もし奴らがやって来たら全力で墜とせ!! 以上(オーバー)!!」

『隊長! 目の前の機体は哨戒機とかではなくて,AWACS何ですよね?』

「恐らくA-50(メインスティ)だ! 護衛機はいないようだが何が起きるか分からない。

用心してかかれ!!」

 

4機のうち2機が周辺警戒に向かい,残された2機が光点へと向かう。

 

3分も経たぬ内に04式の射程 35kmの圏内に入る。

 

「FOX2!!」

 

その合図と共に2発の04式空対空誘導弾がウェポンベイから切り離れて,目の前の機へと向かっていった。

 

約30kmもの近距離で撃たれてしまったのならもうかわす手だてはない。もしこれが戦闘機なら旋回し,チャフ・フレアを巻けるがこれの機は早期警戒機。レーダー等の精密機器を山程積んでいる。

こんな機体がかわせる訳がなかった。

 

2発の04式は寸分の狂いなく,命中した。

 

(・・・・・・すまないな。もし怨むのならそれはシ連(祖国)を怨んでくれ。)

 

彼は黒煙を立てながら墜ちていくA-100の上空を通過し,旋回して「あまぎ」へと機首を向けた。

その時艦隊からの通信が入った。

 

『クロウ隊聞こえるか? こちら第2機動部隊。現在我が艦隊に敵編隊が向かっている!

クレイン隊が迎撃するがもしもの時はそっちに頼むかもしれない!!』

「艦隊が!? お前達聞いたか? 今すぐ艦隊に帰るぞ!!」

『Crow2 了解!』

『Crow3 Copy(コピー)!』

『Crow4 Copy(コピー)!』

 

4機のF-35JC()第2機動部隊()へと全速力で向かって行った。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「状況はどうなっている!?」

「艦長。E-2(ホークアイ)より本艦隊に接近する敵編隊を補足したとの連絡です。」

 

現在CICの中は蜂の巣をつついたかのように混乱していた。

桐島は水上の元へと向かう。

 

「遂に来ました! いつか来るとは分かってましたがこのタイミングとは。」

「船務長。そんなことをぼやいても何も変わらない! 何かを変えるには行動しかない!」

 

そう言って桐島は艦隊全体が写っているディスプレイの元へ向かう。

 

「敵機は7()機?・・・・・・・・確か6機と言っていなかったか?」

「それなんですけど,どうやらその機体は飛鷹島から離陸して合流した(・・・・・・・・・・・・・)らしく・・・こちらも詳しくは・・・・」

「取り敢えず敵ということは確定だな。艦隊上空に機体はいるか?」

「クレイン隊の機体が3機哨戒についています!」

「・・・・・・クレイン隊って「かつらぎ」のか?」

 

桐島は隊員を“あり得ない“と言うような顔で見つめた。

 

(あの葛城が警戒機を出した!? あの保守的堅物の葛城が!?)

 

桐島の脳内は困惑していた。今まで言うことを聞かなかった子供がいきなり言うことを聞いた様な感じだ。

彼が(えが)いている“葛城“は一匹狼なのかもしれない。

しかしその結果彼は一時的ながら周りの声が聞こえなくなっていた。

 

「・・・・・・長。桐島艦長!!」

「す,すまん!!」

「艦長! 早く判断を!」

「そうだったな。「あまぎ」より全艦に達する! 対空戦闘用意!! 艦隊輪形陣に移行!!」

 

輪形陣

 

その名の通り円の形の陣形で。中央に戦艦・空母等の主力艦を置き,周りを巡洋艦や駆逐艦等の護衛艦を配置した防御を重視した陣形である。

主に対潜水艦・航空機に対して強力な防御力を誇っているが,対艦戦闘には不利な防御一択の陣形だ。

 

桐島の指示のもと艦隊は動きだし,「あまぎ」と「かつらぎ」を中心にし,「しもつき」を先頭に,「ひゅうが」を最後尾に,「あそ」と「たかちほ」を両脇に配置した輪形陣が完成する。

 

「しかしあの葛城が航空隊を出すとは・・・・」

「先程葛城と通信しましたが,「敵を攻撃するのは納得出来ませんが,艦隊を守らなければ全てが始まりませんから」と言って承認したようです。」

「成る程なぁ~。だが上げてくれたのが幸いだったな。」

 

桐島はディスプレイを見つめながら呟いた。

 

「クレイン隊頼むぞ。」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

第2機動部隊より40kmの空域。この紺碧の空を3機のF-35JCが飛んでいた。

 

「艦隊防空警戒の筈がまさかマジで艦隊防空をやるはめになるとはねぇ~。」

 

彼の名は黒川秋葉。名だけ聞くと女の子に聞こえるがちゃんとした男子だ。

彼は若くしてクレイン隊の隊長を任されており,これからの躍進も期待されている有望な人物だ。

 

現在,彼は敵機との交戦を楽しみにしていた。今までの実戦訓練では味わうことが出来なかった撃墜を出来るからだ。戦闘機乗りのやることはたった1つ 敵機を撃墜する事(・・・・・・・・)だ。それ以外にやることはない。

 

艦隊・作戦の障害となる敵機を墜とす。それこそが戦闘機乗りの使命だと彼は思っているのだ。

 

「来た!!」

 

Crane1のHMDには6()個の光点が写っていた。

 

その内の2機が我々の元へと向かってくる。

 

(俺達を墜とそうとしているのかもしれないが,逆に墜としてやる!!

中立国だからと言って舐めるなよ!!)

 

Crane1の操縦桿を左に傾け,それと共に機体も傾く。2機の内の1機がこっちへと向かってくる。

 

両機の距離は20km足らずになった。

 

コックピットにブザー音が鳴り響く。前も書いたかもしれないがこのブザー音はレダーに捉えられたという事だ。

ブザー音が鳴り響いてから20秒程経って,後ろを取っていたSu-33の翼から2発のミサイルが発射される。

 

(撃ったか!!)

 

2基のR-73(アーチャー)がCrane1に向かってくる。R-73は赤外線ホーミングの為,F-35JCのプラット・アンド・ホイットニー F135-PW-100の発する熱源へと向かっていく。

 

黒川は直ぐさまスイッチを操作してAN/ALE-45J(チャフ・フレアディスペンサー)からフレアを巻き,高度を上げる。巻かれたフレアにR-73は吸い寄せられて爆発する。

 

「やってくれたな! 今度はこっちの番だ!!」

 

Crane1はそのまま機体を宙返り状態に持ち込む。出来る限り旋回半径を最小にとり,ターンするであろうSu-33の背後につく作戦だ。

 

この時彼の体には相当な加速度(G)がかかっている。もしこの状態が長く続けば,脳に酸素が供給出来ずに視野を失う“ブラックアウト“や脳に血流が充分行き渡らなくなり,色調を失う“グレイアウト“,血液が眼球の血管に集中し視野が赤くなる“レッドアウト“等を引き起こす可能性があり,非常に危険な状態である。

 

それに加えて先程Su-33はターンすると言ったがあれは単なる推測(・・)で,実際にそうなるかは分からない(・・・・・)のである。

 

つまりこれは一か八かの大きな賭けであった。

 

そしてその賭けは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒川の勝利だった。

 

(見えた!)

 

旋回した黒川の目線の先にはSu-33の姿がしっかりと見えていた。

そして直ぐに操縦桿のボタンを押した。

 

「FOX2!!」

 

04式が切り離れ,ロケットに点火し,Su-33へと向かっていく。

 

1基の04式はSu-33に吸い込まれるように近づき,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Su-33の翼の付け根に命中した。

 

命中した部分から翼は折れ,燃料に引火し黒煙を吐き出している。機体はバランスを失い,回転しながら高度を落としていく。

 

降下していく最中,キャノピーの硝子が割れ,中からパイロットが空に放出される。

どうやら敵機のパイロットは脱出(ベイルアウト)した様だった。

 

(あのパイロットは賢明だ。艦隊に戻ったら直ぐに助けてやるよう言っておくぞ。)

 

そんな事を思っているとCrane2から通信が入る。

 

『Crane2よりCrane1へ。こちら敵機を撃墜しました! 以上(オーバー)!』

「了解した! パイロットはどうだ?」

脱出(ベイルアウト)した模様です!!』

「そうか! なら良かった! 残りの4機はどうした!?」

『現在Crane3が迎撃しているみたいだが・・・』

 

その時Crane3から救援要請ともとれる通信が入った。

 

『Crane3より全機へ! こちらは敵機4機を迎撃するも抜けられた!!』

『抜かれた!? ミサイルは撃たなかったのか!?』

『ミサイルは全発撃った!! だが全部チャフとフレアでやられた。』

「なんてこったこりゃあ失態だ・・・・・・兎も角艦隊に連絡を。」

 

Crane1は艦隊へと連絡を入れる。

 

「Crane1より艦隊へ! 2機を撃墜するも4()機に抜けられました!! 以上(オーバー)!」

『「あまぎ」よりCrane1へ。良くやった救助ヘリ(HH-60)の発艦を準備しておく,クレイン隊は増援に警戒してくれ! 以上(オーバー)!』

 

クレイン隊3機は機首を朱雀列島に向け,飛び去っていく。

 

そして日本初となる艦隊vs戦闘機の戦いが始まるのだった。




今回から後書きに何か書こうと思います。

10話で読者のコメントを募集?しましたが,一切来なかったのでメンタル凹みましたw

世間はコロナですが作者の住んでいる県はまだ感染者が出てないので慢心してます。

最後に読んで下さってありがとうございました。
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