朱雀列島の北東の海上。紺碧の海と瑠璃色の空が漆黒の闇に包まれている中,銀色の1匹の鳥が飛んでいた。
この鳥は鴎や鶴等の生きている鳥とは違って,桁違いに大きくその外皮も羽毛ではなく,鉄で覆われていた。
この鳥はRQ-4 グローバルホーク。この機体はライアン・エアロノーティカルもとい,ノースロップ・グラマン社製の無人偵察機だ。
この機体は老朽化していたRF-4E/EJを置き換える為に航空自衛隊に導入され,偵察航空隊こと無人機航空隊所属として三沢基地に配備されている。
現在この機体は朱雀列島へ向け,飛んでいた。飛んでいる理由は単純明快に偵察だ。
朱雀列島に駐留しているシ連軍の正確な情報を入手するために飛んでいた。シ連機に撃墜される可能性も非常に高いが
·········戦後の代機に関しては気にしないとしようね。
話を戻して約20分程で朱雀列島上空に達する。蘭島,飛鷹島,多千穂島の順で偵察を行うが,いつ落とされるかは分からない。
だから3島全てを偵察出来る,若しくは1島も出来ずに落とされるかもしれない。
三沢基地の操縦役は無事偵察出来る事を祈るのみだった。
現在の時刻は20:00を回っていた。カメラに写っているのは何も見えない暗闇で,写っている画面には操縦役の顔が鏡の様に跳ね返っていた。
その漆黒の闇に1つの光が写る。蘭島の光だ。
果たして蘭島のシ連軍施設かは定かではないが,兎も角蘭島上空に到達したのだ。現時点では地上の防空部隊は何の動きも見られないが,いつ動くかは分からない為にモタモタしてられないが,その為に急いで離脱して締まったら偵察が出来ないという複雑な矛盾が起きていた。
だがこの場合は偵察を優先しなければならない為に速度を落として蘭島の上空を飛んだ。
画面にはグローバルホークの
そして街並みと共に各所に配備されているシ連軍の装備も写っていた。T-80と思われる戦車。トラックに搭載された対空ミサイル。駐車場にラインを無視して置かれているトラック。
他にも様々なシ連軍の装備がこの画面には写っていた。正確と捉えれた装備を操縦役の後ろの隊員が一個一個タブレットに打ち込んでいった。
結局蘭島の防空部隊は一切反応しなかった。本当に動いているのか心配になるくらいだ。
そして飛鷹島へと向かおうとした刹那,画面にノイズが発生したと思うと,漆黒に染まりそのまま永遠に途切れてしまったのだった。
「くそ!! 落とされた!!」
操縦役は机を叩きつけた。これから肝心の飛鷹島を偵察しようとした矢先に落とされたのだ。
不満が爆発するのも当たり前だ。
「落とされたか。何で落ちたんだ? 地対空ミサイルか?」
「恐らく航空機だ。島からは発射炎が見えなかったからな。」
グローバルホークのカメラにはミサイルが放たれた時に見える闇夜を照らす紅い鮮やかな炎が一切見られなかった。
これはつまり地上部隊からの攻撃ではなく,航空機による攻撃だと考えられた。
「これからという時になんで落とすのかな·····」
「そう落ち込むなって。確かに落とされたのは悔しいが蘭島の司令部らしき物は確認出来たな。これで
あとは白鳥が
「白鳥か·······」
そんな話をしているとふと気づいたのか,操縦役は窓を見た。
「
「一応ここの飛行隊全機出撃準備は整っているらしいがな。」
窓の外にはエプロンに三沢基地所属の第302飛行隊のF-35Aと第4飛行隊所属のF-2Aがそれぞれ
三沢基地はシ連への前線基地の1つであるため,いつでもスクランブル出来る様に準備されていた。
とそこへ1人の隊員が扉を開けて入ってくる。隊員の手には1枚の紙が握られており,元々室内にいた隊員の1人が受け取った。
受け取った紙を見た隊員は目を見開いて唖然とした。別の隊員がその紙を奪うとこっちも目の眼孔を見開いた。
「なんだと·········俺達の行き先は違かったな。」
「えっ? どういう事ですか?」
受け取った隊員は操縦役にその紙を渡した。渡された操縦役も目を見開いて驚愕した。
「マジですか········」
「マジのようだな···」
外で牽引車のエンジン音が響きだすと,一気に騒がしくなりだした。
牽引車によってF-2Aがエプロンからハンガーへと入っていった。
「装備変更か? F-2の装備を22式から何に変更するんだ?」
「もしこれが本当なら
F-2Aの22式空対艦誘導弾がハードポイントから取り外された。そして代わりに搭載された装備はこの後の戦いを示すものだった。
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代わって偵察を受けた朱雀列島の蘭島。蘭島の朱雀警備隊の司令部であった建物は今は朱雀列島占領軍の司令部へと変わっていた。
その司令部に占領軍参謀のレアルがやってきた。中にいる占領軍司令のユラージに報告する為だ。
日本語で「警備隊長室」と書かれた部屋にユラージはソファーに座っていた。
「艦隊より報告です。敵偵察機を撃墜したとの事です。」
「偵察機か。こんな夜中でも
ユラージの手前に置かれているテーブルには糧食の空きパックが無造作に置かれていた。だがそれを包んでいた袋らしきものにはロシア語ではなく日本語で「戦闘糧食Ⅱ型」とかかれていた。
「それは······自衛隊の糧食ですか? 我々の糧食は底をついていませんが。」
「私が頼んだのさ。軍人なら他の軍の糧食位食ってみたいだろ。」
ユラージは敢えて自衛隊の糧食を食べたようだ。戦闘糧食と同じく日本語で「天然水」と書かれたペットボトルの水を飲み干すとそのままテーブルに放り投げた。
「自衛隊の糧食は旨いな。もしかしたら
自軍の糧食に対する愚痴とも言える言葉を言うと,偵察機について思い出したのかレアルに質問した。
「偵察機がやって来たという事は自衛隊の反撃が始まる可能性が高いな。
それについては何か入っているか?」
「それに関してCopeからの報告が入っています。
“日本は第二機動部隊から攻撃隊を出して多千穂・築館の両島を攻撃して我々を引き付けている隙に飛鷹島に特殊部隊を空挺降下させる”との事です。」
「攻撃隊を囮にして特殊部隊を送り込むのか。上手い作戦だな。」
ユラージは自衛隊のたてた作戦を褒め称えたが,それと共に複雑な表情に変わった。
「しかし不味いな。今航空隊はほとんどボリショイ基地に帰してしまったな。
飛鷹島には配備されている機体は無いのだろ?」
「飛鷹島飛行場には戦闘機はいません。飛鷹島の滑走路は朝までには完全復旧しますがそれまで敵は待ってくれないでしょう。
そうするよりもボリショイ基地か艦隊より増援を送って貰う方が無難でしょう。」
「そうだな········航空隊は今何機上がっているんだ?」
「Su-35 4機のみです。」
レアルの報告にユラージは溜め息をつくと,諦めた様に呟いた。
「·······艦隊に増援を頼むしかないか。」
「それが1番です。」
2人は溜め息をつき,何も喋らなくなった。室内は外の軍用車の動く音と,何も知らない鳥の鳴き声以外聞こえなくなっていた。その静寂を破ったのはレアルだった。
「ユラージ司令。当初の計画では,敵が攻撃してきた際は攻撃を行う前に迎撃する事になってますが当初の通りに致しますか?」
「いや。自衛隊機にはしっかりと役割を果たして貰おう。」
「と言うと?」
「攻撃隊を最大限まで引き付けたあと,撃墜する。そうすればその特殊部隊だって降下する前に落とすことも出来る。」
ユラージの考えにレアルは納得した様に頷いた。ユラージは続け様に命令を出した。
「多千穂と築館の防空部隊には迎撃体制を整える様に言ってくれ。それと築館のヘリは全て飛鷹島に避難させてくれ。流石にヘリを置く場所はあるだろ?」
「えぇ,あると思います。直ぐに連絡致しますね。飛鷹島の防空部隊にも迎撃体制を取らせますか?」
「··········いや。特殊部隊には飛鷹島に降下して貰おう。」
「···何故ですか?」
唐突とも言える作戦変更にレアルは内心では驚きながらも,それを顔に出さなかった。
それに気づいたがどうかは定かでは無いが,ユラージは自身の考えを言い出した。
「島に落ちて貰っても結構だ。その場合は島内に残っている残兵と合流して一気に叩くことも出来るからな。
もし事態があっちに傾いてもこっちには
特殊部隊と残兵を一緒に叩くという大きな賭けに出たユラージだったがその顔は勝利を確信しているように見えた。
レアルもそれを認めたが,ユラージとは違ってその顔は複雑だった。
「切り札の使う場所を間違えないようの祈っておきますよ。」
そう言い残すと部屋を去っていった。1人だけになったユラージは胸ポケットから
煙草によって上機嫌になったかは分からないが,その顔は再び勝利を確信していた。
「お前達が正面から来るなら,此方は全力でそれを潰させて貰おうか。」
前話から一週間たっているのに今話の文字量·······
僕って本当に遅筆なんですね。内容もあれなのに更新ペースもあれって·······
余談ですがRQ-4 1機の値段ってwiki曰く25億だそうです。
空自「·········」