New Japan Fleet   作:YUKANE

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Episode.19 DDG-203 たかちほ

3/25日 0:40 朱雀列島南西海域

 

ただ月の光が跳ね返る黒い海を1隻の巨大艦が切り裂きながら航行していた。

 

巨大な船体に六角形の形をしたレーダーを船体と同じく巨大な艦橋の周りにつけ,前甲板には今では珍しく主砲を2つ搭載していた。

 

「DDG-203 たかちほ」艦長 鏡石博也一佐は艦長ながら艦橋(ブリッジ)に現在はいた。

肩にかけた双眼鏡を構えて漆黒の世界(暗闇)を見つめていた。

 

「今夜は月があるとしてもやはり夜の海は何にも見えないな。」

「これでも明るいですよ。新月の時なんてもっと見えませんよ。」

 

鏡石の独り言に隣にいた見張り員が返した。鏡石は砲雷科であるためにこういう見張りは体験したことがなかったのだ。

 

「作戦の為に外を確認しに来たが,まさかここまでとはな。

本艦が同名の装甲巡洋艦()じゃなくて良かったよ。」

「同名というと·······新戦艦の方ですか?」

「何故そっちが先に思い浮かんだんだ?」

 

新戦艦について知りたい人はGO〇GLE先生に行きなさい。

 

鏡石は双眼鏡を肩から外すと,艦橋を去って戦闘指揮所(CIC)へと向かった。

CICの隊員達は皆顔がひきつっていた。

 

“多千穂島へ接近し,対艦ミサイルを引き付け,航空隊を支援せよ”

 

敵地に接近して対艦ミサイルを引き付けろ。自殺命令にも聞こえるこの通達に皆が複雑な心境をしていた。

 

勿論鏡石も分かっていた。この状況で戦場に突入すればミスが起きるのは素人でも分かる。

 

となれば戦闘前にこの状況を何とかしなければいけないかったが,鏡石にはそのシナリオは出来上がっていた。

 

鏡石は通信機を取って艦内全体に聞こえるようにした。

 

「あ~ 艦内に聞こえているかな? 艦長の鏡石だ。

恐らくだが乗組員の皆は先程通達された命令に戸惑っているだろう。当たり前だ。敵地に単艦で突入なんてまるで生身でライオンの檻に特攻してこいと言ってるみたいだなw」

 

CIC内に笑いが広がる。

 

「皆ここからは真剣に聞いて欲しい。何故我々がその様な危険な任務に選ばれたのか?

我々がただの駒だからか? いや違う我々こそがこの任務をこなせるからだ!! 我々でなければこの任務は達成出来ない!!

我々の任務は非常に重大だ。この結果次第で全てが変わると言っても過言ではない!!

乗組員総員意を決して当たって欲しい!!」

 

鏡石のその熱意の籠った言葉に艦内の隊員達は決意を決めた。

中でも機器越しではなく直接その声を聞いたCICの隊員達は

 

「艦長!! この船に乗り込んでいる乗組員にその言葉を必要とする奴はいませんよ!」

「そうですよ艦長! ここには選ばれた人しかいないんですよ!!」

「そうだったな········でもお前達だって顔が強ばってたぞ」

「それは言わないでください!!」

 

再びCICに笑いが飛ぶ。そんな様子に鏡石は心が少し和んだようだった。

そして先程桐島から言われた言葉を思い出した。

 

(この任務はいぶき型でしか出来ない桐島はそう言ってた·········「あそ」もいるなかで本艦が選ばれたという事は本艦の方が優れているという事なのか?

それだけ責任は重大だな。)

 

ここで唐突だがいぶき型について説明する。

 

いぶき型イージス巡洋艦は,自衛隊初の巡洋艦で,スペックは以下の通り。

 

排水量 10030t

全長 190.6m

全幅 24.8m

機関 ゼネラル・エレクトリック LM2500×4/2軸 120000馬力

速力 32ノット

兵装

Mk.45 5inch単装砲×2

高性能20mm機関砲(CIWS)×2

Mk.41 VLS 56セル×2

17式艦対艦誘導弾(SSM) 4連装発射筒×2

Mk.32 短魚雷発射管×2

搭載機

SH-60K(シーホーク) 哨戒ヘリコプター×2

 

全長等はまや型と20mしか変わらないが,兵装等は桁違いだ。

 

New Freet計画によって計画され,DDG-201 いぶきからDDG-208 ばんだいまでの計8隻が建造され,それぞれ第1・第2・第3機動部隊と第5護衛艦隊に配備されているが,この艦の建造によって防衛費が吹っ飛んだ為に一部国民からは「金食い虫」「お飾り」,野党からは「攻撃型イージス艦」と呼ばれている不運な艦でもあるのだ。

 

だがその実力は本物で,米海軍を持ってしても“タイコンデロガ級(うちの)を持ってしても勝てない”と言われる程だ。

 

SPY-1D(V)(レーダー)に反応あり! 本艦より10時方法に艦影 1!」

 

レーダーを写したディスプレイには左斜め上に光点が1つ写っていた。

光点は左斜めから中央に向かっており,明らかに「たかちほ」に対応する動きだった。

 

「艦種識別!! ステレグシュチイ級です!!」

「フリゲートか!」

 

ステレグシュチイ級はシ連のフリゲートで,1番艦は2007年就役の2024年現在だと10年程前の船で時期的に言うとあたご型と同じ位の時期だ。

 

「恐らく哨戒中だと思われますが,艦長どうしますか? この距離ですと17式(SSM)でアウトレンジに撃沈する事が出来ますが。」

「いやそうなったら多数の死傷者が出る。それは自衛隊の望むことではない。」

「ではどうしますか?」

 

鏡石はCICの全員に聞こえるように言った。

 

「精密射撃で兵装を破壊する。それならば最低限の被害で済ませる事が出来る。」

「というとまさか······Mk.45 5inch砲(艦砲)を使うんですか?」

「その通りだ。」

「正気ですか!?」

 

砲雷長が驚愕の声をあげた。艦対艦ミサイル(SSM)ではなく,艦砲による攻撃を選らんだ鏡石に対する声だ。

艦砲による攻撃という事は相手の攻撃圏に入ることでもありため,こちらが被弾する可能性も高まる。

 

しかもその船が現代の軍艦なら尚更だ。現代の軍艦は砲撃戦を想定していないどころか想定されていない。

 

つまり言ってしまえば1発被弾したら終わり(・・・・・・・・・・)だ。

 

「SSMでの撃沈も可能だが,その場合確実に死者が出る。ならば砲撃によって確実に無力化した方が自衛隊に泥を塗らないだろう。」

「そういうことですか······でしたらブルカノ弾を使ったら如何でしょうか? ブルカノの射程は約100km。アウトレンジに攻撃出来ますが?」

「確かにその方が本艦に取っては有利だな。だがそれでは精密性が失われる。

奴の兵装を破壊するのには通常弾を持ってして行うのが最もだ。それに·········」

「それに?」

「アウトレンジはフェアじゃないからな。」

「········戦いにフェアなんて存在しませんが。」

 

砲雷長の反論も出来ない正論に鏡石は微笑むと,通信機を取って艦全体に伝えた。

 

「総員戦闘用意!!」




今回あり得ん程に短けぇ··········

でも更新ペースは早かった········

長文で早い更新ペースの人って化け物だな········と身を持って知りました。
読者的にはどっちが良いんですかね?
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