New Japan Fleet   作:YUKANE

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空母いぶき 13巻買いました。

※2024/2/6 後書き削除


Episode.22 撃墜

02:00頃朱雀列島 築館島南西15kmの海域を「DDG-203 たかちほ」は航行していた。

 

現在「たかちほ」は単艦で敵地へと向かっていた。しかも装甲は無いに等しい······いや無いと言った方がいい。

 

こんな危険な行動に出ているのには理由がある。寧ろ理由が無いわけない。

 

「早く撃ってもらった方が我々も楽なんですがね~」

「敵が予想通りに動くなんてあり得ないんだよ。常に戦場というのは動く物なんだから。」

 

「たかちほ」の現在の任務は囮。対艦ミサイルを引き付ける標的()なのだ。

 

分かりやすくするとストーク隊が対艦ミサイルへの攻撃を行うためのお膳立てであった。

 

対艦ミサイルの位置は衛星写真でおおよそ判明しているが,攻撃におおよその情報なんて通用しない。必要なのは正確な情報だ。

 

その為に「たかちほ」に放たれた対艦ミサイルを辿って,正確な発射地点を発見するという策に出たのだ。

 

だがこの計画には失敗要素も多かった。そもそも敵の興味が「たかちほ」に向いていない限りこの作戦は成功しない。

 

だからそこ今乗組員達はへんな話だが,敵“に撃ってくれ”と祈っていた。

 

そしてその祈りは届くことになった。

 

「敵ミサイル発射!! 数2! 対艦です!!」

「かかった!」

 

港から白い()を吐き出しながら放たれた2基のHY-1(シルクワーム)が高く空へと舞い上がった。

 

電子戦(ECM)用意! 万が一に備えて主砲も撃てるようにしろ!」

「艦長。この距離では127mm砲(主砲)より20mm機関砲(CIWS)の方が宜しいかと。」

「ではそのようにしてくれ。」

 

砲雷長の指摘を受けていると,妨害電波(ジャミング)が照射された。

 

1基が振動を起こしたかと思うとそのまま進路を見失って虚空へと向かっていくが,残る1基は何事もなくそのまま「たかちほ」へと向かっていった。

 

「敵ミサイル1基向かってきます!!」

20mm機関砲(CIWS)迎撃開始(コントロールオープン)!!」

 

CIWSの6連装ガトリング砲が火を吹き,排出された空薬莢が甲板に新しい傷を作り出す。

 

弾幕が形成され,その中に突入したミサイルは複数の弾丸が命中し,爆発した。

爆発の光が艦橋を直撃し,艦橋乗組員は無意識に目を瞑っていた。

 

「敵ミサイル全発撃墜確認。」

 

全ミサイルが撃墜されると,築館島でも動きがあった。

ミサイルが発射されたポイントにミサイル発射とは別の煙が巻き上がると,紅い炎を上げて大爆発を起こした。

 

濃い灰色の煙が上がり,その上を切り裂くようにF-35JB(ストーク6)が通り抜けていった。

 

「ミサイル発射ポイント爆発確認。第1目標破壊成功(コンプリート)

この様子ですと空港もやったようですね。」

 

映像には手前から上がる黒煙と共に,奥からも黒煙が上がるのを確認出来た。

 

「そのようだな。我々も次へ移ろう。航海長面舵一杯だ!」

 

「たかちほ」の艦首が波を切り裂きながら進路を変える。「たかちほ」は進路を多千穂島へと変えた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

多千穂島西方5km。ストーク隊は海面スレスレの低空で接近していた。

 

北西からは「たかちほ」が向かっており,作戦開始が近づいていた。

 

先手を撃ったのはシ連側だった。多千穂港に停泊している大型艦の奥から2本のミサイルの煙が発生する。

 

「見つけた!! ミサイルは港駐車場だ! 港には一切当てないように行かなきゃな。 当たったら後が相当面倒くさいからなw」

 

ストーク隊 隊長の黄山が機体を左に旋回させながら上昇する。

 

多千穂島の南側には列島内で一番の規模の港があり,その規模は楽にフェリーが泊まれる程である。その為現在はシ連の揚陸艦 「BDK-101 オスリャービャ」が停泊していた。

 

だが今回の目標は揚陸艦ではない。確かに揚陸艦も重要な目標だが,それよりも大事な物がある。

 

ヘッドマウントディスプレイ(HUDS)にはミサイルが発射されて空になった2基の発射台とコンテナに入った予備弾倉が写っていた。

 

「FOX2!!」

 

機内に内蔵されているウェポンベイの扉が開き,中からAGM-65(マーベリック)が放たれる。

 

海上自衛隊はAGM-65を対地ではなく,対艦(・・)用に導入した。しかも搭載機はP-3C(オライオン)やP-1等の哨戒機だった。

 

だが実際には対艦ではなく空対地ミサイル(ASM)の代名詞に恥じることなく目標に命中し,爆煙を上げた。

 

爆煙と共に機材の破片やコンテナや駐車場を舗装するアスファルト・止まっていた車の残骸,操作や警備をしていた隊員達の肉片が巻き上がる。

 

駐車場は予備のミサイルと車のガソリンも合わさって,激しく爆発して燃え出した。

 

「やりすぎたかな·······だがこれは仕方ないんだ。」

 

黄山は自分に言い聞かせる用に言った。

 

『Stork5よりStork1へ。築館島の空港及びミサイル群は破壊しました。

ですが,阿月空港にはヘリが1基もいませんでした。以上(オーバー)。』

「Stork1よりStork5へ。了解した。対空火器に気を付けろ! 以上(オーバー)!」

 

(ヘリが1機もいなかったのか········避難させたのか? それは後で考えよう。今は残る1基を潰すだけだ。)

 

築館島の対艦ミサイル4基と多千穂島の2基は破壊され,残すは後2基だけだった。

従って自動的に次の目標になる。だが,未だにその場所が不明だ。

 

現在ストーク隊は多千穂島の南を超低空で飛行して,対空火器から逃れていた。

 

(「たかちほ」につられて撃ってくれ! でないと作戦が!)

 

黄山は右手で十字架をなぞって祈った。その祈りは伝わった。

 

多千穂島の東の高台から白い()が上がる。再びシルクワームが放たれたのだ。

 

「次のポイントはあの駐車場か! Stork2は一緒に来い!!」

『Stork2 了解(ラジャー)!』

 

2機のF-35JB(鉄の鳥)が翼を翻して目標地点に向かう。既にウェポンベイは開いていつでも放てるようになっていた。

 

ヘッドマウントディスプレイ(HUDS)が発射位置を捉えたが,黄山は異変に気がついた。

 

「あれは········!?」

 

目標の高台駐車場にはSY-1(シルクワーム)の発射機が2機あったが,彼はそれよりも手前に止めてある2台のKAMAZ-6500(トラック)の荷台の上に何かが乗っていることに気がついた。

 

明らかに建設用の工場車両ではない。じゃあ87式自走高射機関砲(AW)みたいなのかというとそれでも生ぬるかった。

 

荷台に乗っていたのは,対空ミサイル12基と連装対空機関砲2基を積んでいた。

その姿通りの航空機キラー(ハリネズミ)だった。

 

SA-22(グレイハウンド)!? なんで彼奴が!? Stork2! 攻撃は中止だ! あの丘から離れろ!!」

 

刹那2台のパーンツィリ-S1が火を吹いた。計12発の57E6(SAM)と2基の2A38M(30mm連装機関砲)が雨の様に放たれる。

 

それと共に周りにいた兵士も時間差で9K38(イグラ)を何本も撃ち出した。

 

30本以上のミサイルが2機へと襲いかかった。

 

「かわせぇぇ!!」

 

黄山は自棄糞気味に操縦桿を右に大きく動かし,機体を横に向けた。

そしてそのまま回転しながら低空飛行に移った。

 

キャノピーの1枚先には多千穂島の家屋が手を伸ばせば届くんじゃないだろうかという所まで接近していて非常に危険だったが,黄山の操縦テクニックで飛行した。

 

彼の機を追尾していたミサイル群も目標を見失い,道路や家屋に激突して追いかけているのは1発もなかった。

 

キャノピー越しの地上にはシ連兵の姿がうっすらと見えた。大半の者が何かに捕まるなどして身を守っていたが,中には持っている小銃で撃とうとする者もいた。

 

ストーク1は操縦桿を戻して機を水平にし,上昇し出した。

 

黄山は安心したが,それも束の間だった。

 

視界の隅が一瞬紅く光る。この瞬間黄山は全身を恐怖に包まれた。

“まさか········”最悪の展開(シナリオ)が頭に思い浮かぶ。そうではないと思いたい。いやそうあってほしくない。

 

だが確認しない事には答え合わせが出来ない。黄山は自分自身に覚悟を決めて振り返った。

 

そして視線の先に見えたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンジンから火を吐くStork2の姿だった。

 

「小林ぃぃぃ!!」

 

黄山の悲鳴とも聞こえる叫びはストーク2には届くわけもなく,エンジン(心臓)を失ったストーク2はそのまま多千穂島公民館脇の畑に落下して紅い花火を上げた。

 

紅い花火は紅い炎を巻き上げて燃え上がり,周りを昼間の様に照らし出した。

その炎はストーク1も下から明確に見えるくらい明るく照らした。

 

エンジンの轟音もあって多くのシ連兵士がストーク1を見ていた。

そして公民館脇の駐車場に配置されていたT-90戦車上部の12.7mm重機関銃がストーク1に火を吹いた。

 

ストーク1は高度を上げて退避する。操縦しながら黄山は呆然としていた。

 

T-90の存在や作戦失敗なんかどうでも良かった。今の黄山はある1つの事によって支配されていた。

 

(小林が·········小林が死んだ·······)

 

艦隊初の戦死者。最悪の結末に黄山は動揺していた。

 

さっきまで一緒に話していたStork2のパイロット 小林 (かい)

彼はベイルアウトする暇もなかったのだろうか。機体共にそのまま地上へと墜ちていった。

彼とはもう話すことも出来ない。あの声はもう2度と聞くことが出来ない。

彼の寿司屋の親父の面白い話や,自分自身の面白体験談等はストーク隊を盛り上げてくれた。

 

そんな話の続きは永遠に聞けなくなってしまった。

 

(俺の責任だ·······飛行団司令(かしら)に何て言えば良いんだ······)

 

そんな暗くネガティブな気持ちになっていた黄山に追い討ちをかける連絡が入ってきた。

 

E-2C(ラディ1) よりStork1へ! 艦隊より増援と思われる敵機確認! 数8!』

「8だと!? 生方(うぶかた)それは本当か!?」

『ああ,本当だ! あと本名で呼ぶな!!』

 

動揺のあまり,E-2C(ホークアイ)の航空管制士官の本名 生方牧雄を黄山は読んでしまった。

 

ストーク隊は現在5機。対して増援は8機。尚且つ相手は地上を制している。

 

黄山がとるべき道は決まっていた。暗くなっていた気持ちを無理矢理でも切り替えた。

 

今自分にやるべき事はただ1つ。これ以上誰も失わない事だと。

 

「Stork1より全機へ! 撤退だ!! 艦隊に戻るぞ!!

なんとしてでも逃げきれ!!」

 

ストーク隊 全5機は進路を西にとった。

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