New Japan Fleet   作:YUKANE

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11/18 横田基地を百里基地に変更。


Episode.25 衝撃

Operation 朱雀失敗によって「DDH-185 あまぎ」CICは沈黙していたが,500km以上離れた東京都千代田区 総理大臣官邸地下の危機管理センターも沈黙に包まれていた。

 

作戦失敗の報告が入った途端,誰も話す者はいなくなった。ストーク隊パイロット戦死等の報告が入ると尚更だった。

 

「作戦失敗·······不味いことになりましたね······」

 

鈴村の言葉にあまり軍事に知識が無い本庄が聞いた。

 

「ですが総理。F-35JB(ライトニングⅡ)の撃墜によるパイロットの戦死・対艦ミサイルの破壊失敗等作戦の半分が失敗しましたが,ミサイルの半分は撃破出来ましたしそれに特戦群を送り込めたので実質成功では?」

「確かにそれだけを見れば成功ですが,私の言っている場所はそこでは無い!!」

 

鈴村は机を思いっきり叩いた。その見たことがない程に苛立っている様子に本庄はビクッとして思わず一歩引き下がった。

 

「本庄君の話は当たってはいますが! それよりもこの戦いに破れたという事実が一番不味いんですよ。」

 

鈴村の明らかに不機嫌な様子に危機管理センターの空気は今までにない位に重くなっていた。

 

「今の日本(我々)に必要なのは勝利という言葉です! この状況は言ってしまえば火に水ではなく油を注いだ様な物です。」

 

火に油を注ぐと激しく燃える様に,ただでさえ信用を失っていた政府に更に敗北のニュースが入ると,信頼は地に落ちるのは明らかだろう。

 

この事で国会前でデモが起きるならまだ良い方だ。もしこれでクーデター等による政権交代が起きてしまえば,国内が更に混乱するのは目に見えていた。

 

国内が乱れているなかで,国外の問題に対処するなんて不可能に近いだろう。

 

「我々は最悪の展開を招いてしまいましたね······」

 

今までにない程に重い空気の中,官房長官の大洋が鈴村に向かって言った。

 

「総理。今回の件についても早急に記者会見を行うべきでしょう。

前回の様にシ連に先手をとられてはいけません。」

「全くもってその通りです。もし前回の様に行ったら更に批判を食らうでしょう。ならば早めに公表して最低限に抑える必要があります。

防衛大臣。自衛隊の方から何か連絡とか着ていますか?」

 

防衛大臣 栃木がさっき受け取った紙を見ながら答えた。

 

統合任務部隊(JTF)からの連絡によると作戦失敗を受けて,全体的に作戦の見直しを行うとの事です。

それと先程岐阜のEP-1がシ連軍の無線を傍受した模様で,増援部隊と補給艦隊についての物でした。」

 

P-1哨戒機を改造した電子戦データ収集機 EP-1はテストフライトの段階だったが,国の有事ということで岐阜基地を離陸して岩国の第81航空隊所属のEP-3と共に任務についていたのだが,搭載されていた電子機器がシ連側の通信を傍受したのだ。

 

ここで言っときますが,EP-3等にそういう電子機器が積まれているかは分かりません。

 

「傍受した通信によると本日06:00と07:00頃にウラジオストク港を各自出港するとの事です。

統合任務部隊(JTF)はこの船団を各自撃破すると計画しているとの事です。」

 

各所から“おぉ!!”と声があがり,重苦しかった空間が徐々に消えていく。

 

「航路予想海域に一番近いのは······第3潜水艦隊です。無難に行けばこの艦隊にやらせるのが最もとの事です。」

第3潜水艦隊(ファントム)にやらせるんですか······仮に撃沈されたら放射能物質(・・・・・)が漏れだすことになって世界の敵になってしまうのに。」

 

本庄と同じく軍事に疎い経済産業大臣の音次が口を尖らせて愚痴を漏らしたが,動じる事なく栃木は続けた。

 

「確かにもし攻撃され沈んでしまったら,確実に漏れだすことになりますが,シ連軍もこれは攻撃を行うことが出来ないと分かっていると期待しておきますよ。」

 

音次は納得してないようだったが,これ以上言うと話が進まなくなる事から口から出掛けた言葉を押さえ込んだ。

 

音次が話さなくなったのを確認した外務大臣の安川は立ち上がって,発言した。

 

「総理。外務省は再度シ連に交渉を行います。同じように中国にも行います。

それと共に外務省(我々)は国連に提訴しようと考えてますが,よろしいでしょうか?」

「よろしいです。国連で認められたのなら我々は非常に有利にたつことが出来ます。

もしかしたらそれによってシ連が引くという可能性もなくもないですからね。」

 

鈴村がほぼ0に近い期待を言ったその時だった。

今まで一言も喋らなかった副総理の大森が突如として声をあげたのは。

 

「そ,総理! 大変です!! これを見てください!!」

 

いきなり狼狽した大森に困惑しながら,鈴村らは大森が指差したパソコンの画面を見て,驚愕した。

 

「これは!?」

 

画面には日本語で“シ連軍にF-35が撃墜される瞬間”という見出しと共に撃墜されるF-35JB(ストーク2)の映像が流れていた。

 

たった30分前に上がったばかりだったが,既に再生数は10万を越しており,コメントも1000に達しようとしていた。

 

上げたアカウント名はロシア語で書かれており,シ連側の策略だということが明らかだった。

 

「我々はまたも先手をとられたのか········」

「しかも撃墜される所を鮮明に撮られてますね。こりゃあネットが騒ぎだしますよ。」

「先手をとられてしまいましたが,我々も早急に手を打ちましょう。

5時から会見を行います。準備を急いでください! 各メディアにも連絡を!」

 

その鈴村の言葉を受けてセンター室内にいた全員が行動を開始した。

 

安川の隣にいた外務事務次官の三崎も安川の指示で部屋の外へと向かった。

 

「········だから駄目なんです(・・・・・・・・・)。」

 

誰にも聞こえない様にそう呟きながら部屋を出た三崎は部屋の外で待機していた外務省職員に内容を伝えると,トイレの個室へと駆け込んだ。

用を足すわけではなく,別の目的の為に個室に来る必要があったからだ。

 

三崎はポケットからスマホを取り出し,操作しだした。画面に書かれていた文字は日本語ではなくロシア語(・・・・)だった。

 

そして書いていた文章の大半の内容は先程話し合われた今後の政府や自衛隊の対応についてだった。

 

そう,彼女は政府の中核にいながら,シ連に国家機密クラスの情報を流していたのだ。

 

それは金で雇われたとかではなく,自らの意思で行っているのだった。

 

「この国の罪はこれで償われる······平和の為には必要な犠牲なのです。」

 

メール送信してそう独り言を誰にも聞かれないように呟くと,偽装の為に水を流して個室を出て,平常を装って戻った。

 

その独り言が聞かれていたとは知らずに。

 

「やっぱりなのか········」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「F-35撃墜に加えて,舞鶴港で不審船騒ぎ······全くこの国には今,一体何が起きているの?」

 

鈴村の会見から約1時間程経過した頃,OREジャーナルの仕事場でパソコンを操作しながら滝川はそう愚痴を漏らした。

 

彼女は徹夜で朱雀列島やシ連軍・第2機動部隊について調べていた。そこに舞い込んできたF-35撃墜の動画に鈴村総理の会見・それに舞鶴港で発生した不審船騒ぎによって彼女の頭はパンク寸前だった。

側に置いてある缶コーヒーを飲んで,眠気を無理矢理にでも覚ます。

 

ふと隣を見るとグッスリと机にふして気持ち良さそうと寝ている木戸の姿が視界に写った。

 

無性に怒りが芽生え,無意識の内に脇に置いてあったファイルで頭を叩いた。叩かれた衝撃で木戸は目を覚ました。

 

「ん~·······あ,俺寝てました?」

「寝てるも何もグッスリと爆睡だったよ! 私が一生懸命調べている隣で寝ていたから叩いちゃたわよ!!」

「仕方ないじゃないですか! 自然の定理には誰だって逆らえまs」

「何? 進一お前寝ていたのか?」

「あ編集長!! グッスリ寝てました!!」

「バカが!! 罰として眠気覚ましの缶コーヒー買ってこい!! 早く買って来ないと給料減らすぞ!!」

「えぇ減給!? すぐ買ってきます!!」

 

減給という単語に刺激され,完全に目を覚ました木戸は缶コーヒーを買いに駆け出した。

 

「編集長本当に減給するんですか?」

「本当にそんなことしたらここ潰れるぞ。」

 

荻窪の言葉が冗談だった事に滝川は安堵した。

 

「それで滝川。お前は寝ないで調べたんだから何か掴めたのか?」

「取り敢えず言える事としてはネットは炎上が止む気配がありませんよ。こんな朝早くからご苦労様ですよ。」

 

現在日本の各種ネットは炎上の真っ只中だった。例でTwitterを見てみると。

 

“自衛隊敗北!? 自衛隊も落ちたな。”

“自衛隊は今度こそは勝ってください!!”

“もうこれ駄目だよ。日本政府は交渉してください。”

“(上のコメントに対して)出来ないからこうなってんだよ!! じゃなかったらとっくに終わっているわ!!”

“東京にミサイル来たりするのかな······”

“(上のコメ以下略)東京にミサイルなんて簡単に来るぞ”

“もう外国逃げま~す!!”

“空港めっちゃ混んでる!! 早くしろよ!! こっちは命かかってんだぞ!!”

 

上述のは一部の切り取りが,今の投稿の大半が戦争関連の事だった。しかもこれはまだましな方で,根も葉もない噂やデマを流す悪質な物もあり,国内は文字通り混乱していた。

 

コンビニ等の店では買い占めが相次ぎ,Twitterに上がった画像では商品棚がほぼ全て空になっていた。

 

「今日本中は混乱の坩堝(るつぼ)だ·······これも一種のシ連の作戦かもな。」

「国内を混乱させ,シ連(自分達)への対応を遅らせ,その間に確実に朱雀列島を手にする·····嫌らしいですね。」

「戦争に嫌らしいも綺麗もあるか。全面戦争にでもなれば日本も同じような事ぐらいするだろうよ。

で調べた事はこれだけか?」

「いえ,他にも日本海沿岸には陸自部隊が迎撃の為に待機しているらしいです。」

「それに関してはこっちも把握している。ネットには嫌という程写真が上がっているからな。

ほら見ろ。10式がトレーラーで運ばれているぞ。」

 

荻窪のパソコンの画面には10式戦車が73式特大型セミトレーラーと23式特大型セミトレーラーで輸送されている写真が写っていた。

 

実際北海道と本州の日本海沿岸にはシ連軍の上陸に備えて陸自部隊が展開しており,上陸船艇を迎撃するために16式機動戦闘車・10式戦車・89式装甲戦闘車()・99式自走155mmりゅう弾砲・19式装輪自走りゅう弾砲・多連装ロケットシステム(MLRS)155mmりゅう弾砲(FH-70)に加え,シ連艦艇を遠距離から撃破すべく88式地対艦誘導弾(SSM-1)・96式多目的誘導弾システム・中距離多目的誘導弾等が配備されていた。

そして挙げ句の果てには退役寸前の74式戦車までもが展開されていた。

 

勿論上陸だけでなく弾道ミサイル(ICBM)やTu-95等の爆撃機に対する防衛手段として,87式自走高射機関砲(87AW)03式中距離地対空誘導弾(SAM-4)・11式短距離地対空誘導弾・93式近距離地対空誘導弾(SAM-3)81式短距離地対空誘導弾(SAM-1)が展開しており,こちらもどっから持ってきたのか分からないが,03式に置き換えられら筈のホークや35mm2連装高射機関砲(L-90)までもが配備についているという文字通りカオスな状態がなっていた。

 

同じように陸自のヘリ部隊もいつでも出撃可能状態になっており,帯広や八戸・目達原駐屯地等に配備されているAH-1S(コブラ)AH-64D(アパッチ・ロングボウ)OH-1(ニンジャ)等がハイドラ70ロケット弾やBGM-71(TOW)AGM-114(ヘルファイア)を装備して,エプロンで待機している写真がネット上には上がっていた。

 

それは海自や空自も同じで築城・三沢・八戸・岩国・鹿屋基地に待機しているF-2AやP-1には22式空対艦誘導弾(ASM-3)93式空対艦誘導弾(ASM-2)91式空対空誘導弾(ACM-1C)・JDAMそして先日正規採用された新型兵器 24式空対艦誘導弾(ACM-2C)等がハードポイントに搭載されていた。

 

勿論対空戦闘も想定しており,千歳・三沢・百里・新田原・那覇基地のF-35JA(ライトニング)F-15J(イーグル)にはAIM-120(AMRAAM)をはじめ,04式空対空誘導弾(AAM-5)99式空対空誘導弾(AAM-4)90式空対空誘導弾(AAM-3)等が搭載され,日本を守るべくほとんどの機体がスクランブル出来るようになっていた。

 

そしてこの待機部隊には小松基地所属の第303飛行隊(303SQ)第306飛行隊(306SQ)も加わっていた。

 

この2部隊は小松基地が使用不能になったあと,小牧基地配備の第404飛行隊所属のKC-767の助けを借りて,岐阜・小牧両基地に着陸出来たのだ。

 

両部隊合わせて4機の機体を失ったが,戦意は落ちるどころか仲間の仇を討たせてくれと上昇を続けており,現在岐阜・小牧両基地で99式空対空誘導弾(AAM-4)04式空対空誘導弾(AAM-5)をハードポイントに満載して出撃は未だかと待っているのであった。

 

「これじゃあまるでゴ〇ラが来たみたいですね。」

「確かに例えとしてある意味当たっているな。」

 

滝川の鋭い例えに荻窪が感心していると,缶コーヒーを買いに行った進一が残念そうな表情で帰ってきた。

 

「どうしたんだ進一? 缶コーヒー買ってきたんだろうな?」

「いえそれが·········ここ周辺の自動販売機を全部見たんですけど缶コーヒーやコーラにサイダーとか自販機の物がほとんど売り切れてました。」

「マジか·········」

 

流石の荻窪ですら想定外の答えに思考が止まった。

 

「こんな身近にも影響が出ているなんてな。で進一,コーヒーの代わりは何か買ってきたのか?」

「それが······缶コーヒー以外もほとんど無くてあったのはエナジードリンク位しか······」

「バカ! コーヒーなけりゃあそっち買えばいいんだよ!! もう一回行って今すぐ買ってこい!!」

 

荻窪に怒鳴られた進一は慌てて駆け出し,再び下への階段を下り出した。

 

「全くあのバカは········!?」

 

荻窪は進一のバカっぷりに呆れていたが,パソコンに舞い込んだ写真を見た瞬間吹っ飛んだ。

 

「おいおい··········マジかよ。」

 

荻窪のパソコンには百里基地に着陸する白鳥·······

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

B-1(ランサー)が写っていた。




鈴村総理
大森副総理
栃木防衛大臣
大洋官房長官
音次経済産業大臣
安川外務大臣

この6人には明らかなモデルがあります。分かる人には分かったかもしれません。

ヒントは北海道です。

あと先日書いた活動報告です。気になったら読んでください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=244158&uid=274301
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