New Japan Fleet   作:YUKANE

28 / 57
※祝UA3000!!


Episode.27 桐島龍樹と葛城辰馬

『11時の方角に艦影2! 「AOE-427 いなわしろ」と「DE-232 せんだい」です!!』

 

「DDH-185 あまぎ」の艦橋の窓に東の空から朝日が差し込む。

 

双眼鏡のレンズの先には舞鶴港からわざわざやってきた補給艦 「AOE-427 いなわしろ」と護衛の「DE-232 せんだい」が並走して接近する様子が写っていた。

 

「本来ならここに第1輸送隊もいた筈だったんだろ?」

「そうらしいぜ。あの不審船さえなければなぁ~」

「願望を言っても何も変わりはしないさ。それよりも自分の仕事をしっかりとやれ。」

 

どうやらさっき聞いた話によると,第1輸送隊の出港直前にCL74 ゆらかぜ(巡視艇)による警告を無視して不審船が接近した為に第1輸送隊は出港を取り止め,PLH10 だいせん(巡視船)による強制捜査を行った所,中は無人であったことに加え,大量の爆発物が見つかったために舞鶴海上保安部総動員で犯人の捜索と周囲の安全確認を行っている為に出港は大幅に遅れているとの事だ。

 

全くやってくれるぜ。E-767(AWACS)撃墜に,小松基地襲撃そして今回の不審船妨害。

卑怯な策だが,我々の行動を制限するには充分すぎる。

 

日本にスパイ防止法が出来たのはたった10年程前。それまで何度も国会で話し合われたそうだが,野党やマスメディアの反発によって全て廃案になったそうだ。

 

野党やマスメディアは一体どれ程まで日本を弱らせたいのだろうか········在日め····

 

「副長。艦長がお出でです。」

 

3等海尉の言葉で現実へと引き戻された。双眼鏡から外れた目線の先に桐島の姿が現れた。

 

「敬礼!」

 

艦橋要員全員が敬礼し,桐島も敬礼し返した。

 

「気を緩めて大丈夫だ。私は何時も通りただ給油を見に来ただけだからな。」

 

そう言って桐島は艦橋脇のデッキに向かい,艦橋右舷の欄干に両手を乗せ,身を委ねた。

目線の先には並走しながら洋上給油の準備をする「いなわしろ」が写っており,「いなわしろ」の反対側には同じく洋上給油を行う「DD-117 ふじなみ」が並走していた。

 

給油ポストから給油蛇管が甲板員によって曳索され,本艦の給油レシーバーへと接続され,給油が開始される。

 

「艦長って給油の時に毎回ここに来ますよね。何でなんでしょうかね?」

 

艦橋要員の1人がそう言ったのをきっかけに,次々と仕事をしながら話し出した。

 

「あれなんじゃないか? 素直に給油が好きだから来ているとか。」

「あり得るかもだけど,艦長って元戦闘機パイロットだろ? 戦闘機ならよく給油するから見慣れてるんじゃないのか?」

「でも戦闘機と船の給油は全く違うぜ。危険度だって段違いだぜ。」

「なら本当に何でだろうな········」

 

艦長への疑問は尽きることはない。俺ですらまだ知らない1面があるくらいだ。

 

疑惑はプラナリアの様に知れば知る程増えていく。今増える原因が目の前にいるのなら,少しでも減らした方が良いに決まっている。

 

俺は桐島の元へと向かった。

 

「艦長。給油がそんなに珍しいですか?」

「戦闘機も空中給油はするが,その様子を安心して見ることは出来ないからな。

こうやって安全に出来る燃料補給ってのが,未だに慣れなくてな。」

 

俺は海の男だが,航空機の空中給油は危険が伴う事は知っている。実際に何回も事故が発生して犠牲者が出ているのだから。

 

だからといってこっちが安全な訳でもない。給油レシーバーの周りには万が一の際の消化要員が完全装備で待機している。

まだ空中給油の方が消化要員の面だけで見ると楽だろうが,それ以外は桁違いの難易度だ。

 

「確かにこっちの方がまだ安全性はあるかもしれませんが,危険性は変わりません。

どちらにしろ給油中は戦闘が制限されるので,不利なのは間違いないです。」

 

桐島は“そんなの分かりきっているさ”と笑いながら返した。

まるでその表情は仮面(・・)作られている(・・・・・・)様だった。

 

「さっき航空機格納庫に行ってきたよ。」

 

その笑っていた表情が1秒も経たぬ内に冷たく深海に沈んだ物に変わる。

 

F-35JB(ライトニングⅡ)の並びの中に1ヶ所だけ空っぽな空間が出来ていたさ。

数時間前まであそこには確かに機体が止まっていたんだ。たった数時間でいなくなってしまった。」

 

桐島は続けた。

 

「パイロットや整備員も皆表情が沈んでいた。何時か来る定めだと分かってはいたが,実際に来るとこんなにキツい物なんだな。」

 

暗く沈んだその顔には悲しみと共に苦しみが浮かんでいるように見えた。ちょっと揺さぶれば直ぐに涙が漏れてしまいそうなそんな脆い表情だった。

 

「「かつらぎ」に増援を頼むという手もあったんだぞ。もしかしたらそれで状況が変わるかもしれなかったのに。」

「それはきっと無理だっただろうね。第一にあの葛城だ。受け入れるわけないさ。」

 

何故か無性に腹がたってきた。恐らくこいつは葛城とは話していない。

なのに多分という妄想だけで話を決めていた。

 

桐島が言った葛城の言葉は桐島自身が出した一人二役の言葉だろう。

 

本人と通信でも話をせずにこうだろうと決めたこいつに腹がたった。

 

「話もしてないのに勝手に決めつけんなよ!! 無理だろうってそれはただの妄想だろ! 実際話さない限り結果は分からないんだよ!!」

 

無意識の内に言葉が出ていた。

 

「人ってのは話し合わなければ進まないんだ!! お前の様に誰とも話さずに1人で結論なんかつけんじゃねぇ!!」

 

桐島の顔は俺の反論を想定外としていたのか,信じられないといった表情になっていた。

 

「艦長。少しの間いなくなるがいいか?」

「·········何処に行くんだ?」

「俺は葛城と話してくる。お前が話したくないのなら俺が話に行ってやるよ。」

「わざわざ行く必要はあるのか?」

「お前は人付き合いを全部ネットだけで済ませられると思ってんのか。それに会ってみないと話せない事があるかもしれないだろ。」

 

そう言い捨てると俺はこの事をCICに伝えるために艦橋へと歩き·······いや言い忘れてた事があった。

 

「最後に! お前のその言い方だと作戦は失敗した様に言っているが!!

あの作戦は特殊作戦群を送り込むための陽動だ。機体は失ったが作戦は成功した。それを覚えておきな!」

 

そして今度こそ艦橋へと向かっていった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

長瀬を乗せて発艦したSH-60K(シーホーク)は「DDH-186 かつらぎ」の航空甲板へと着陸した。

 

機体側面の扉を開けて,航空甲板に長瀬は降り立った。目的の艦長 葛城辰馬は艦橋脇のデッキにいた。

長瀬は艦橋内の階段を使ってその場所まで向かった。

 

「空母の艦長ってのは皆洋上給油に興味を示すのか?」

「その言い方は桐島も同じことをしていた様だね。」

 

葛城 辰馬。長瀬が彼について知っている情報は桐島と同期でどちらも優秀なパイロットだという事と,父親が航空幕僚長の葛城武功だという事だけだった。

 

「しかし「あまぎ」の副長自らお出でになるとは。こんなこと考えてもいませんでしたよ。」

「艦長がいつまでもストーク2の事を引きずっているからな。

あんな様子じゃ俺の意見なんて到底聞き入れてくれるわけなかったから俺自身が来たわけさ。」

「なるほどねぇ~まあ桐島の反応は予想通り(・・・・)かな。

それで桐島は今何処にいると思う?」

「恐らく自室だろうな。艦内で1人になれるのはそこだけだろうし。」

「その答えはNoだね。」

「何!?」

 

自身の答えが間違いと言われた長瀬は思わず声をあげた。

 

「彼がいるのはきっとF-35(ライトニングⅡ)のコックピットだろうね。

元パイロットならば彼処まで1人になれる場所は無いからね。」

 

葛城の答えに長瀬は納得せざる終えなかった。パイロットはコックピットこそが居場所。だから落ち着く。

この理論に歯向かう言葉が見あたらない程完璧だった。

 

長瀬はこの理論を受け入れるしかなかった。

 

「あなたと艦長はどちらも優秀なパイロットだったんですよね?

なら何故海自の方に来たんですか?」

「確かにそれも良かったけど,もしその道を行ってたら僕の経歴は幕僚長の息子だけだっただろうね。

僕がこの道に来たのは父とは別の道を行きたかったからだよ。君だって知っているよね? 僕の父さんの事。」

葛城武功(航空幕僚長)の事か。」

 

長瀬の言葉に葛城はやっぱりかといった顔をした。だが葛城はそこに“でも”と付け加えた。

 

「僕が自衛隊に入りたかった理由は父親に憧れたんじゃない。

自衛隊を変えたかった(・・・・・・・・・・)からさ。」

「変えたかった·········それはどの意味でだ?」

 

自衛隊を変えるには色々な解釈が出来る。自衛隊の名前を変える・装備を変える・戦略を変える等々······大きな事から小さな事まで解釈は山のようにある。

 

だが葛城の答えはどれでもなかった。

 

「僕が変えたかったのは自衛隊が持っているイメージさ。」

「イメージ? 意味がわからん。」

「今の自衛隊には慢心という病気が隊内だけじゃなく日本中に蔓延している。世界トップレベルの装備と練度を誇るから勝てる。

かつてそう言った旧日本軍も太平洋で破れ去った。」

 

1930年代当時アジア最強を誇った日本軍は太平洋戦争初盤で連勝し,アメリカを歌唱力し,慢心するに至った。

だがミッドウェー海戦・ガダルカナル島の戦いで破れ,そのまま巻き返すこと無く破れ去った。

 

そんな事ぐらい長瀬どころか桐島ですら知っていた。

 

戦後創立した自衛隊もその事を教訓に入れて現在まで来ている筈だ。

だからこそ長瀬は彼の言っていることが分からなかった。

 

「理由は何にしろ,隊員や日本国民が自衛隊を過大評価しているのは事実だ。

そしてそれが崩れ落ちた時の影響力は信じられない物になる。下手すれば国を揺るがしかねない程のね。」

「もしかして········あの会議の時に反対したのはそれがりゆうなのか?」

「それも1個だね。未だに戦力が不透明だったからね。それともう一個は······」

 

一度話を切って息を吸った。

 

 

 

 

 

 

 

「桐島の為さ。」

「何?···········」

 

再びの想定外の答えに長瀬はただ唖然とした。

 

「君だって分かっているでしょ。彼が他の艦長から信頼されていないのが目に見えていたからね。

渡島先輩から聞かなかったかい? 彼は弱い人間だって。」

「だがあの時確かにお前は“戦争にさせない為だ”と言ったぞ。」

「会話には時に(フェイク)を混ぜるものだよ。それにあの時僕も戦争になるって分かっていたからね。」

「じゃあ増援を断ったのは?」

「万が一の備えさ。例え「あまぎ」の第47航空団(航空隊)がやられても反撃できる様にね。」

 

全部葛城の先を見据えた策略だったことに長瀬は唖然とするしかなかった。

 

「なんで艦長·······桐島をそんなに助けるんだ? 2人は仲が悪いんじゃ」

「仲は悪いかもね。でも僕ぐらいしか彼を構う人はいないから。」

 

そう言うと葛城は桐島と初めて会った時の事を語りだした。

 

「航空学生として入ってきた当時から彼は異質だった。他の隊員達とは全く違う雰囲気を漂わせていたよ。

仲間では彼の事を“防府北の一匹狼”と影で読んでいたさ。」

「“防府北の一匹狼”·········何か雰囲気似ていると思ったがやっぱりあいつだったのか。」

「知っているのかい!?」

「俺のあいつと同時期に防衛大学校に入学したさ。その頃学校中に航空学生にも変な奴がいるって噂になっていたんだ。

まさか艦長だったとは·········」

「こっちもそこまで彼の話が広がっていることにビックリだ。」

 

葛城にとって初めての事実に彼は驚いた。しかし直ぐに話を続けた。

 

「桐島はとても優秀だったさ。成績は毎回上位。追試は1個も無しとまるでフィクションの天才を具現化した様な生徒だった。

だけどそんな彼を構おうとする奴なんていなかった。寧ろ出来なかった。

彼だけはまるで別の次元で暮らしているようで,彼の周りには自然に見えない壁が作られていていたさ。もし彼と話すなら必ず僕経由だったね。」

「桐島は何故あなたとは話せたんだ?」

「単純さ。僕と桐島は同室だったからさ。」

 

長瀬は納得した。葛城と話を続けた。

 

「同室なら自然と話さなきゃいけなかったからね。まあその結果彼と堂々と話せるのは僕位しかいなかったけど。」

 

予想していた以上に重かった話に長瀬は溜息をついた。そんな様子に葛城は話を変えた。

 

「ちょっと聞くけど君は彼が1度ブルーインパルスのパイロット候補にもなったてのは聞いたことあるかい?」

「待てそんな話聞いたことないぞ!」

 

自衛隊員ならば誰もが知っている第11飛行隊ことブルーインパルス。

難易度の高い曲芸飛行を行うために高度な飛行技術が問われ,彼処に選ばれるということは非常に優秀なパイロットだということになる。

 

それのパイロット候補に桐島が選ばれたという新事実に長瀬は驚愕した。

驚愕する長瀬に葛城は笑って返した。

 

「どうやら初めて知ったみたいだね。そりゃあ彼奴がこの事を言う筈無いか。

彼は選ばれたけどその場で断った。理由は単純。言わなくてもわかるよね。」

「腕だけはあるが,団体行動が苦手········なんか大戦時のエースパイロットの様だな。」

「正にそうだったね。桐島と僕は2人揃って松島の第21飛行隊に行って,そこで出会ったんだよ。渡島音弥先輩に。」

 

葛城はその頃を思い出したかのように笑いながら話し出した。

 

「松島でも先輩や教官は彼にあまり構うことが出来なかったけれど,先輩はしょっちゅう絡んできたさ。

その結果先輩経由で話せる人も増えてきた中,あの事故が起きたんだ。」

「“F-2B墜落事故”か········」

「あの事件で僕達は死というものが間近だと痛感した。そして桐島へのダメージも大きかった。

その殉職したパイロットがやっと話せる様になった内の1人だったからね。」

 

さっきとは一変して暗い表情になった葛城は話すのを躊躇うように言葉を繋ぎだした。

 

「あれから彼とは話しづらくなって,彼と話していた人は先輩を除いてほとんどが離れていったさ。

その後彼は築城の第8飛行隊,僕は三沢の第3飛行隊と別れてかつらぎ(この船)の艦長になるまで会う事はなかったさ。」

 

その言葉の後,2人の間にはどちらも話さない静寂が出現した。

その1分程続いた静寂を破ったのは葛城だった。

 

「僕の話を聞いてくれてありがとうね。君もそろそろ時間だろう。最後に僕が君に言いたいのは」

 

葛城が言いかけたその時,「かつらぎ」乗組員の2等海士が息を荒くして,2人に駆け寄ってきた。

 

「艦長!! 哨戒中のSH-60K(ホーク4)敵潜(・・)発見した模様!!」

 

この連絡に2人は“なっ!?”と声を揃えて驚愕すると,長瀬は舌打ちした。

 

「チッ最悪のタイミングで·········俺は直ぐ様「あまぎ」へ戻る。

ありがとうな色々と話聞けたぜ。」

「それはこっちのセリフだ。最後にこれだけは言わせてくれ。彼の事を頼むよ。」

 

そう葛城は言うと,走り去っていった。長瀬も直ぐ様航空甲板のSH-60K(シーホーク)の元に向かった。

 

IHI T-700-IHI-401 C2ターボシャフトエンジンが機体上部の4枚の羽を回し,飛び立つ。

 

飛び立ったSH-60K(シーホーク)の機内でパイロットの鷲津が話しかけてきた。

 

「副長。敵潜の艦種は判明したのですが···········厄介です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵潜は971型(アクラ型)です。」

 

「な!?··········」




最初は長瀬の一人称視点なんですが,やっぱ一人称は難しいですね·····

あと航空学生についてですが,ちょっと見直した所不都合があったので書き直しました。それと作者は自衛隊学校についてあまり知らないので間違っている部分があるかもしれません。
その場合はコメントで教えてください。

話は変わりますけど,何時見ても思いますが“日本国召喚”のブログのコメント欄荒れすぎじゃない·······

そんなに不満あるのなら自分で書いてみろ!!って言いたくなるわ。

あと二次創作wikiのコメも案外荒れているという······平和に会話できんのか······
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。