自衛艦隊司令部より艦隊に通信が入った。通信を受け取った隊員は驚きながらも,艦長へと報告した。
その内容はというと
『朱雀列島にシ連軍が攻撃を行い上陸した模様。今すぐ第2機動部隊は朱雀列島に急行せよ。』
という物だった。
この通信にCICはざわついた。今まで何回もシ連は領空・領海侵犯を行っていたのだが,遂に攻撃したという事態に動揺を隠せないのである。
そんな中,ため息をつく男が一人いた。
「・・・・・遂に始まったのか。」
その男は鼻の下と顎に髭を生やしたダンディーな顔をしており,頭に被ったあまぎの帽子を被り直す。
彼の名は水上玄弥。あまぎの船務長を勤めているあまぎ幹部の一人だ。
「いつか始まると思ったが,遂に来たんだな。」
「ああ,しかし朱雀列島の警備隊は一体どうなったんだ。」
「船務長。どこに攻撃を行ったか分からないが,上陸したというのなら警備隊と戦闘になる可能性は高い。」
「・・・まだどうなっているかという情報は分からないという事ですか。」
実際桐島の言ってる言葉は当たりだ。例え上陸しても迎撃を受け全滅したら元も子もない。なら占領の障害となる警備隊はその前に叩くのが当たり前だろう。
勿論その通りにシ連軍はレーダーサイトと滑走路と司令部を破壊して使えなくしている為,
「それに通信によるとシ連は太平洋艦隊を出してきたとするらしい。」
「太平洋艦隊・・というとまさか!?」
「ああ,ウリヤノフスク級が配備されているな。」
ウリヤノフスク級。
それはソ連時代に計画された超大型の原子力空母だ。しかし実はこれは2代目ウリヤノフスク級と言った方が良いだろう。先代は黒海の造船所で起工されたが,ソ連崩壊の影響で建造は中断されスクラップになっている。
しかしシ連はその空母をウラジオストクに新しく作られた“アルチャフ造船所“にて2003年から建造が始まり,約10年かかってやっと就役したシ連海軍,いや世界でも最大級の空母を手にいれたのであった。
「ウリヤノフスク級は
「・・56機」
「我々の搭載機数は48機。警戒しとくべき相手だ。」
フォレスタル級ことあまぎ型は
「しかし空母がいるとなると護衛の艦艇が多数いると思われます。」
「恐らくそうだろう。それに朱雀列島はシ連本土からも優に航空機が来れる距離にある。」
「海からでなく,陸からも航空機が来るってことですか。」
「但しそれはこっちも同じだ。やろうと思えばこっちだって艦隊の支援が可能だ。」
日本海の海は非常に狭い為に今回のように対岸の国同士で戦うという事は,本土に敵の攻撃が来るという危険にも去らされるのだ。
そんな事を聞きながら水上は机を叩いて叫んだ。
「しかもよりによって司令官がいない時に起きるとは!」
そうこの第2機動部隊を指揮する本来の人物石見惣一は
「・・まさかあの事故もシ連が仕組んだわn」
「あれは霧でのハンドルミスによる事故だ。まさかあいつらが仕込んだなんt」
「そうか!ハンドルミスをするように霧を出したのか!」
「・・・・もう俺から言うことはない。」
こんな話をしているとCIC内から微笑が聞こえてきた。
「出たよ船務長の心配性w」
「ああ,やっぱり出たよ「恐怖症の男」w」
「恐怖症の男」それが彼の別名だった。由来は簡単だ,あらゆる物全てにおいて最悪の事態を想定して行動しているからだ。
それは度を越えていて,想定外の事態が起こると正に頭がパンク状態になることもあるのだ。
「船務長!」
「は! 艦長!」
「取り敢えず我々は朱雀列島へと向かう。これから本艦に艦長全員を集めて艦長会議を行う。」
「“CICは任せる“ってことですか。」
「ああ,各艦に連絡を!あと艦橋に甲板を開けるように言ってくれ!」
通信を確認したあと,桐島はCICから立ち去ろうとした。
「艦長!何処へ行かれるのですか?」
「会議の準備さ。」
そう言って彼はCICから立ち去った。
「・・・・・・・艦長もなんか海に染まってきたな。」
誰かがそんな事を言った。
「だよな~。約半年でやっと染まったよな。」
「元々あの人空一色だったのにな。」
「そういえばちょっとこれは聞いた話だけどさ。」
「なんだ?」
「どうやら本来は艦長になる予定だったのは,副艦長だったらしいぜ。」
その発言にCICはざわついた。しかしそれは直ぐに収まった。
「君達!もっと危機感を持てないのか!」
眼鏡をかけ直しながら叫んだ彼の名は宇津木直記。あまぎに搭載されている
「我々はこれから戦いの場所に行くんだぞ!そんな呑気にしていると船を沈めるぞ!」
こんな事を言われてしまえばもう黙るしかない。1分も経たぬうちにCICは機械のだす音以外聞こえなくなった。
「流石だな,人間コンピュータ。」
水上が声をかけるが,宇津木は冷静に答えた。
「あなたのその恐怖症も直ればいいんですがね。」
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通信から30分も経たぬうちに各艦の艦長を載せた「DDH-181 ひゅうが」所属のMCH-101はあまぎの甲板へと降り立った。
機体右側に設置された扉が開き,艦長らが続々と降りてくる。それを桐島は自ら出向いて迎えた。
その様子をあまぎの甲板の中間に設置された
「航空主義者がどう考えているのか。楽しみだな。」
彼の名は長瀬竜也。そうあまぎの副艦長だ。
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午前7時丁度。あまぎ艦内の会議室にて会議が始まった。参加しているメンツは,
「DDH-185 あまぎ」艦長及び第2機動部隊司令代理 桐島龍樹
あまぎ副艦長 長瀬竜也
第47航空団司令兼飛行隊長 渡島音弥
「DDH-186 かつらぎ」艦長 葛城辰馬
「DDH-181 ひゅうが」艦長 九条霧矢
「DDG-203 あそ」艦長 鏡石博也
「DDG-204 たかちほ」艦長 花月大雅
「DDG-175 みょうこう」艦長 舘黒太
「DD-130 しらぬい」艦長 西園寺安月
「DD-124 はつづき」艦長 天空佑
「DD-125 しもつき」艦長 深見牧人
「DD-115 ながなみ」艦長 金島佑月
「DD-117 ふじなみ」艦長 倉島祥也
の計13名だ。
会議は桐島の言葉から始まった。
「全員知っていると思うが,本日0100に朱雀列島 日北島のレーダーサイトと飛鷹島の滑走路・蘭島の司令部を破壊した。」
「早速ですが質問をしても宜しいですか?」
「無論だ。」
手を上げたのは「DD-124 はつづき」艦長 天空佑だ。天空は桐島の方を向きながら質問した。
「攻撃を行ったのは
それに対する桐島の答えは・・分かってるだろう。
「ああ,勿論だ。恐らくシ連は太平洋艦隊を朱雀列島近海に展開させていると思われる。」
「・・バカな。確かオホーツク海に向かったはずでは!?」
「まんまと騙されたな。」
そう叫んだのは「DDG-203 あそ」艦長 鏡石博也だった。それに対して「DDG-204 たかちほ」艦長 花月大雅も反応した。
「・・・でもおかしいわね。」
「“おかしい“というと?」
疑問を出したのは「DD-115 ながなみ」艦長 金島佑月だ。彼女は第2機動部隊唯一の女性艦長だ。
それに対して疑問を持ったのは「DDG-175 みょうこう」艦長 舘黒太だった。
「金島艦長。説明を。」
「オホーツク海から日本海に来るとなると絶対に宗谷海峡を通らざるを得ないないはずです。なのに奴らは我々に探知されずに来ました。」
「・・・まさか!」
「ええ,恐らくですが奴らは
間宮海峡。
それはユーラシア大陸とサハリン島の間に存在する最短幅7.8kmの狭い海峡だ。
その名の由来は江戸時代に間宮林蔵が発見したことから日本ではそう呼ばれている。
「わざわざそっちを通ってくるとは・・」
「確かにあの海峡の両側はシ連の国内だから隠す事も出来る。」
「DD-125 しもつき」艦長の深見牧人と「DD-117 ふじなみ」艦長の倉島祥也が驚愕している中,桐島は発した。
「つまりはあれか。一回宗谷海峡を通ってオホーツク海にいると思わせて,間宮海峡を通過して日本海へと来たって事か。」
「そうとしか考えられません。」
金島は着席する。桐島は再び話始めた。
「我々はこれから朱雀列島へと向かう。しかしシ連が見逃すはずなかろう。」
「・・・・まずは恐らく潜水艦だな。」
「ええ,太平洋艦隊は
そんな中今まで黙っていた長瀬が話し出した。それを「DD-131 しらぬい」艦長 西園寺安月が補足する。
桐島は二人を見ながら言った。
「奴らは空・水上・海中全てから我々を狙うだろう。我々は最大級の警戒で行かなければいけない!」
「潜水艦に対しては本艦としらぬいで対応します!」
「空に関しても本艦としもつきに任せて下さい!」
「ミサイルも我々イージス艦隊が全て落とそう!」
「DDH-181 ひゅうが」艦長 九条霧矢と「DD-124 はつづき」艦長 天空佑・「DDG-175 みょうこう」艦長 舘黒太が艦隊を守るべく叫んでる中それに水を差すような発言をする者がいた。
「ちょっといいかね?」
「葛城艦長。宜しいですよ。」
「DDH-186 かつらぎ」艦長の葛城辰馬。あまぎと共に第2機動部隊の主力を担う艦の1隻だ。彼は立ち上がって話し出した。
「シ連が攻撃を行ったのは分かるが,まずはシ連と交渉してからじゃないのか?」
この発言に会議室は静寂に包まれた。