New Japan Fleet   作:YUKANE

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2021 4/6 第3潜水隊群を第6地対艦ミサイル連隊へと変更。


Episode.40 勝利の法則

第2機動部隊は現在隠岐島東北東120kmの海域を南西に航行していた。

 

既に嵐を抜けてから2時間が経過しており,負傷者の対処含め艦隊は既に立て直しが完了していた。

 

艦自体にダメージは見られず,艦隊は嵐を乗り越える事に成功したと皆が感じていた。

 

そんな艦隊の旗艦「DDH-185 あまぎ」の1室に艦長の桐島龍樹,副長の長瀬竜也,第47航空団司令 渡島音弥はいた。

 

彼らの前には日本海の海図と将棋の駒がバラバラと置かれていた。

 

「今頃あの嵐は朱雀列島やシ連艦隊を襲っている真っ只中か?」

「その嵐で1隻ぐらい消えてくれればこちらも楽なんですがね。」

「そんな馬鹿みたいな話あるか。もしあったらシ連海軍がとんでもない雑魚だったというオチだぞ。

まあもしそうだったら我々としては非常に楽なんだが。」

 

3人が夢のまた夢のような途方もない話をする。それは未だに直接対決のしたことがない艦隊への畏怖から彼らにしか分からない。

 

「雑談もここまでにして,本題に入りましょう。」

 

本題······シ連海軍太平洋艦隊との決戦。ここにいる3人はそれをしっかりと理解していた。

 

「まず前段階として呉の第1輸送隊が現在長門市北30km地点を航行しています。

これとの合流を行ってから作戦を実行に移します。」

 

「LST-4001 おおすみ」以下3隻で構成された第1輸送隊は現在第4護衛艦隊所属の「DDG-179 まや」・「DD-104 きりさめ」・「DD-112 まきなみ」の護衛と共に山口県長門市北30kmの沖合いを北北東に航行しており,あと2時間弱で合流できる見込みだった。

 

第1輸送隊が運んでいるのは朱雀列島奪還用の部隊で,相浦駐屯地が誇る日本版海兵隊こと水陸機動団2中隊だ。

 

それ以外にも水陸機動団が使用するAAV7等の装備を積んでおり,甲板には第6対戦車ヘリコプター連隊のAH-1Z(ヴァイパー)や輸送航空隊のV-22(オスプレイ)が搭載されており,朱雀列島奪還への日本の本気度がどれ程の物かを伺えた。

 

「水機団を安全に上陸させる為にも何としても我々は太平洋艦隊を撃破しなければならない。」

 

桐島は地図上に将棋の駒を並べ出した。隠岐島沖に王将(あまぎ)を囲むように金将(たかちほ・あそ)銀将(みょうこう)飛車(かつらぎ)香車(ひゅうが)歩兵(護衛艦)が並べられ,朱雀列島の北東側にも同じように王将を囲むように駒が並べられた。

 

「現在太平洋艦隊は朱雀列島北東70kmの海域を南南西へと航行しており,我が艦隊へと接近しようとしているのが目に見えて分かります。

我々の目的はこの艦隊を殲滅する事です。」

 

ここまで言ったところで渡島が,

 

「話を遮って悪いが,今回は夜間になるが攻撃に航空隊は出すのだろうな?」

「勿論です。今回の攻撃に際して航空隊はクロウ・ストーク隊を太平洋艦隊へ,クレイン・スパロー隊を朱雀列島に,イーグル・ファルコン両隊で艦隊防空を行う感じでいきたいと思います。」

「綺麗に3つに分けたな。」

 

6つの航空隊を2つずつに分け,それぞれに別々の役割を持たせる。

艦隊の司令官なら常識的に判断する方法だ。

 

「それでシ連艦隊はやはり空対艦誘導弾(ASM)で沈めるのか? それともJSMか長距離対艦ミサイル(LRASM)か?」

「いえどれも違います。」

 

搭載できる且つ現在艦に積んである対艦ミサイルを全て言ったのに全部違っていた事に渡島は戸惑った。

勿論桐島はこの反応は想定済みだ。

 

「正確に言えば空対艦誘導弾(ASM)()使わないです。」

「つまり空対艦誘導弾(ASM)じゃないということは使うのは艦対艦誘導弾(SSM)ということか。」

 

長瀬の言葉に桐島は頷いた。桐島は説明するように,

 

「「あまぎ型」及び「ひゅうが型」以外の護衛艦には艦対艦誘導弾(SSM)がそれぞれ8発ずつ搭載されていて,第2機動部隊にはこのタイプ護衛艦が計8隻。合計で64発の艦対艦誘導弾(SSM)が積まれています。

これを2回に分けて敵艦隊に撃ち込むという事です。」

 

対艦ミサイルによる飽和攻撃を行おうとする桐島に長瀬は納得した。

 

「半分に分けても32発。まあまあな本数だぞこれ·····」

「それに加えて三沢・百里のF-2A,厚木のP-1・P-3C,第6地対艦ミサイル連隊による一斉攻撃を行い,太平洋艦隊を攻撃します。」

 

各所の航空戦力を集計させて行われる艦隊への200発を越える対艦ミサイルの飽和攻撃に長瀬は“敵じゃなくてよかった”と心の中で思ってしまった。

 

「だが空対艦誘導弾(ASM)を積まないということは艦隊攻撃は何で行うんだ?

そもそも敵艦隊への飽和攻撃を行うのであれば飛行隊自体いらないのでは?」

 

渡島のストレートな疑問に桐島は,

 

「ストーク隊の装備は半分を空対空誘導弾(AAM)。残りを91式爆弾用誘導装置(GCS-1)とします。」

「91式?」

 

長瀬は戸惑った。長瀬は勿論この兵器の事を知っている。

 

91式爆弾用誘導装置(GCS-1)500lb爆弾(Mk.82)に取り付けて対艦誘導爆弾へと変える国産兵器で,誘導爆弾では珍しく赤外線誘導(IRH)を採用しており,空対艦誘導弾(ASM)と比べて比較的安価な対艦兵器だ。

 

これを言った後桐島は思い出した様な顔をして,

 

「先程話忘れましたが,本艦隊と浜松の早期警戒管制機(AWACS)で飽和攻撃から「ウリヤノフスク」とキーロフ級2隻を予め除外しておき,残った3隻をストーク隊で戦闘不能に追い込もうと思います。」

「なるほど········読めたぞ。つまりは原子力動力艦を無力感するわけか。」

 

桐島は長瀬の言葉に頷いた。

 

ウリヤノフスク級航空母艦とキーロフ級ミサイル巡洋艦はそれぞれ機関に原子力を使っており,撃沈した場合放射線物質が漏れだす可能性が非常に高いために迂闊に攻撃は出来なかった。

 

そこで桐島は空対空誘導弾(AAM)91式爆弾用誘導装置(GCS-1)を使用して艦橋以下艦上構造物を破壊して戦闘不能状態に追い込もうと考えたのだ。

 

空対空誘導弾(AAM)で「ウリヤノフスク」の航空甲板を,91式(GCS-1)でキーロフ級の艦橋を破壊して戦闘能力を失わせ,そのまま降伏へと追い込みます。」

「降伏·······まあ動けなくなっているのであれば妥当な判断だな。」

 

“これが作戦の内容だ”と桐島は言いきると,テーブルに置いてあったペットボトルの水で喉を潤した。

一区切りついたと長瀬は判断して,

 

「だが本当にいいのか。うちらが配備している艦対艦誘導弾(SSM)の射程はおおよそ100km。シ連が持っているのは500kmを余裕で越えている。

単純に空対艦誘導弾(ASM)を使った方が良いんじゃないか? いつ敵艦隊から攻撃を食らうか分からない状況で敵へとつっこむのか?」

 

長瀬の言葉は正論だった。艦隊司令官の使命は“敵を殲滅する”事ではなく,“艦隊を守ること”だ。

無闇に味方を敵へと突っ込ませて全滅させるような司令官はハッキリ言って無能だ。

 

桐島は長瀬の1mmもずれていない正論に,戸惑う事は一切無かった。

寧ろそれを待っていたかのような顔をしていた。

 

「恐らく敵さんもそれだと思っている筈だ。それならこっちは裏を描けばいい。

それにもしその射程500kmを越えるミサイルが飛んできたしても撃ち落とせばいいのだから。

敵が何発も撃ってくれればその分残弾は減っていくのだから。」

「簡単に言ってくれるな。まあその方が士気は上がるかも知れないがな。」

「俺も無鉄砲で言ったんじゃないさ。しっかり策は考えてある。」

「そうか。それなら聞かせて貰おうか。」

 

桐島は自分の考えを話した。その話が終わる頃には長瀬はその考えに納得していた。

 

「なるほどな。確かにそれなら艦隊は我々よりも迫って来るミサイルを優先せざる終えない。

中々良いんじゃないのか?」

「空自にもこういう考えの出来る奴はいるのさ。俺が空しか見ていないとでも思ったのか?」

 

桐島が自分自身を皮肉しながら返した。と長瀬と同じように静かに聞いていた渡島が,

 

「だがその考えではちょっと不十分だな。いくら夜間とは言え,朱雀列島のSu-35(フランカーE1)がこっちに来る可能性は充分にあり得る。

イーグルとファルコン隊のどちらかはしっかり上げておいてくれ。」

「勿論そうするつもりです。敵艦隊が直ぐに艦載機をあげる可能性だってあり得ますからね。

万が一潜水艦が現れた際に備えてSH-60J・K(シーホーク)で徹底的に哨戒を行います。」

 

「いなわしろ」の様な悲劇を二度と起こさないために桐島は重ねに重ねて策をとった。

 

彼らは絶対に勝たなければならない。

 

日本を守る為に,自らの使命の為に,顔も知らない誰かの明日を守る為に,

 

例え自らを犠牲にしても自らより大きな物を守る為に,

 

「他に意見は·········無いようですね。」

 

長瀬と渡島。2人の覚悟は話が始まった時から既に決まっていた。

反対の言葉なんて出るわけがなかった。

 

「作戦開始は19:00頃。それまで艦隊・航空隊への連絡,確認をお願いします。」

「勿論そうさせて貰うつもりだ。」

 

そう言って渡島は部下達に伝えるために部屋を去った。長瀬も“艦内の事はやっておくからな”と言い残して去ろうとしたが,

 

「副長。」

 

すれ違おうとした長瀬を桐島が引き留めた。長瀬はその場に立ち止まった。

 

「さっきの選択肢の事だが,あれ選択肢なんてなかったんだろ。」

「·········気づいていたか。」

 

桐島の言葉に長瀬はうっすらと笑った。

 

「選択肢ってのは説教するための口実だったんだろ。どっちに転んだって納得のいく理由になるように。」

「100点満点だ。」

「全く人の悪いことやら。」

 

自分の内心を読まれたにも関わらず,長瀬は笑っていた。そんな彼に桐島は呆れた様な表情をしたが,彼もどこか笑っているようだった。

 

「他の艦への連絡はお願いしますよ。それよりもやるべきことがありますか?」

「俺は葛城と一対一で話してみるさ。奴と正面からタイマンしてやる。」

「1発KOを待ってますよ。」

 

そう言って長瀬も部屋を去った。そこまで広くない部屋にたった1人になった桐島はふと笑うとさっきまでの沈んでいた声とは全く違う自信満々に言った。

 

「勝利の法則は決まった。」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

茨城県百里基地。

 

茨城県のほぼ真ん中に位置する民間と自衛隊の共用飛行場のこの基地にはF-2Aを運用する第3飛行隊とF-15J(イーグル)を運用する第304飛行隊が配備されていたが,現在この基地にどちらにも所属していない機体が駐留していた。

 

F-2やF-15J(イーグル)の2~3倍の全長と細長い後進翼(・・・)を持つ巨大な(軍用機)

 

その名はB-1B(ランサー)。アメリカが総力をもって開発した戦略爆撃機だ。

 

だが百里に留置されている機体の垂直尾翼には米空軍の五芒星ではなく日本の赤い日の丸が鮮やかに描かれていた。

 

この機体は米空軍ではなく航空自衛隊が保有する日本初の爆撃機だ。

 

アメリカ政府との交渉の末に漸く手に入れた日本が誇る切り札。

グアムのアンダーセン基地に今まで留め置かれていたが,シ連による朱雀列島占領を受け,急遽この百里基地に到着して現在離陸準備を進めている最中だった。

 

この異様な機体に戦闘機パイロットや整備員はもとより,ターミナルで手続きを待っている乗客らの興味は釘付けだった。

 

格納庫脇で見つめている整備員2人もそうだった。

 

「実物は始めて見たが·······ここまで大きいとは。」

「やっぱり爆撃機は格が違いますね。」

 

彼らは第304飛行隊(テング・ウォリアーズ)の整備員だったが,現時点でF-15J(イーグル)緊急発進(スクランブル)が無いことと,整備が一段落したのでこうして巨大な爆撃機を眺めていたのだ。

 

「これどうやら政府では“白鳥”と呼ばれているそうですけど灰色なのに何で白鳥なんでしょうかね?」

「さあな。Tu-160(ブラックジャック)と間違えたんじゃないか?」

「よりによってシ連のパクリに·······」

 

渾名の本当の由来はB-1B(ランサー)の別名“死の白鳥”から取られたのだが,それを知らない2人は勘違いをしながら話を続けた。

 

B-1B(ランサー)のゼネラル・エレクトリック F-101-GE-102 ターボファンエンジン 4基が出力を上げ始めた。4基のターボファンエンジンの聞き慣れない轟音が周囲へと響き始めた。

 

「すげえな。F-15J(イーグル)のエンジンとは数も凄さも桁違いだ!」

 

百里基地のくの字に曲がった誘導路を避けて,巨大な爆撃機は反対側を通って滑走路端へと到着した。

 

滑走路脇の基地全体を囲むフェンスの外にはこの爆撃機を撮ろうと脚立の上に座ったりしているや,“爆撃機は日本にいらない”等と描かれたプラカードを持った人々が大勢集まっていた。

 

「わざわざご苦労様だな。仕事も休んであんな馬鹿みたいな事やって一体何の意味になるんだ。」

「何も見えていない左翼(バカ共)の耳障りな叫び声には腹立つが,こんな田舎まで来てデモ活動を行う行動力には感心するな。

その行動力をもっと別の方に使って欲しいけどな。」

 

2人がそんなことを言っているとB-1B(ランサー)に変化が生じた。

 

後ろに伸びていた翼が広がって(・・・・・・)まるでテーパー翼の様な形状に変わったのだ。

 

これこそがB-1B(ランサー)の真骨頂 可変翼機能(・・・・・)

高速飛行や加速時には翼を畳んで空気抵抗を減らし,離着陸時等は広げて揚力や揚抗比を高める飛行状態によって翼形状を変える事が可能で,これ機能のお陰でこの機体(B-1)は生き残れたと言っても過言ではないだろう。

 

翼を全開に広げたB-1(ランサー)は管制塔の指示を受けると,エンジン出力を上げて轟音と共に空へと舞い上がった。

 

強い風が基地全体を覆い,思わず2人は被っている帽子を手で押さえた。

 

「離陸もやっぱ半端ねえな! 吹き飛ばされそうだぜ!!」

「全くだ!! こんなの何十機も持っている米軍を尊敬するぜ!!」

 

整備員の1人がB-1(ランサー)が飛んでいった方角を見上げると,B-1B(ランサー)は4基のエンジンから白い線を描き,陽炎を出現させながら,まるで鳥の様に飛び去っていた。

 

軍用機とは思えない美しさに整備員は思わず,

 

「いつかあいつの整備をしてみたいな。難しそうだが,やりがいはありそうだぜ。」

「確かにそうかもな。お,次はF-2のお出ましだ!!」

 

B-1B(ランサー)が飛び去った滑走路から翼のハードポイントに22式空対艦誘導弾(ASM-3) 4発と翼端に04式空対空誘導弾(AAM-5) 2発に増槽2基とフル装備した第3飛行隊のF-2Aがエンジンから紅い光を吐きながら空へと飛び上がり始めた。

 

次々とF-2Aが舞い上がっていく空は,時間と黒い雲で薄暗くなりつつあった。

 

「天気予報通りだとそろそろ降りそうだな。」

「そうだな。これじゃあ洗濯物乾かねえじゃねえか。」

「そっちの心配かよ。」

 

2人の整備員は戦場とは無縁の日常的な会話をしながら本来の作業場へと戻るのだった。




※長文注意
やっとテストが終わりました(色々ヤバいけど)。なんで書きたいこと書かせてください。

テスト期間中敢えて手をつけないようにしてたら,なんか色々と忘れて編集ペースが進まなかった········1週間ぐらい離れただけでこうなるんですから出来るだけ更新早めで行きたいです。

·············と言いつつも次回は36.37話の様な回なので早速更新遅れるかも。

まあ愚痴は程々にして3900t級護衛艦の2番艦が「くまの」に決まりましたね。

川の名前なのは予想は出来たけれど艦番号「2」って····誰が予想できるんですか?

あとこの小説で「FFM-2 くまの」をどういう感じで出しましょうかね?

それと11/29のSGT Rd.8 FUJIの結果が衝撃過ぎる。まさかあんな結末になるなんて······
作者は日産信者ですが,あのレースだけは“日産がいなくてよかった”と思わざる終えませんでした。
このレースはきっと2003.07.10のSUGO並に伝説のレースになりそうですね。

7月に燃えた「ボノム・リシャール」は退役になりましたね。
まあ既にアメリカ級がありますし,自衛隊だって「MSC-682 のとじま」が事故で退役になったんですから。
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