New Japan Fleet   作:YUKANE

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Episode.45 意地

突如として「DD-115 ながなみ」の方向が昼間の様に明るく染まった。激しい光に遅れること数秒後,爆風が船体を揺らした。

 

「DDH-185 あまぎ」艦橋にいた副艦長の長瀬以下艦橋要員は光から目を隠すと共に手摺(てすり)に捕まって衝撃から身を守った。

 

光と衝撃が収まり,艦橋要員が衝撃が来た「ながなみ」の方向を見ると,彼らの視線には被弾した「DD-115 ながなみ」の艦影が目に入った。

 

「「DD-115 ながなみ」が!?」

「艦尾が燃えているぞ!!」

「艦を盾にしたのか!?」

 

副艦長の長瀬も「ながなみ」の行動に驚きながら,首に下げていた双眼鏡を手に構えた。

 

ピントを合わせてボンヤリとしていた視界がクッキリとすりと「ながなみ」の様子が鮮明に移り混んだ。

 

被弾した艦尾から黒煙が上がり,船体も破口から流入した海水によって右に傾きつつあった。

 

「艦尾に命中弾······あれはもう航行不能だ····」

 

長瀬の予測は正しく,P-800(オーニクス)が艦尾に命中した為に爆発が推進軸を破壊して航行不能へと追い込んでいた。

 

だが長瀬は躊躇無くこの判断を行った「ながなみ」艦長 金島佑月に驚きを隠せずにいた。

 

(艦を犠牲にしてまでも「あまぎ」を守った。あんな事自衛隊でも出来る奴はそうはいない。

しかも「ながなみ」の艦長はあの金島だ·······女性ならではの意地というべきかな。)

 

女だからと見くびっていた長瀬は,“その考えを改めるべきだな”と認識させられたのだった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「何とか耐えてくれた様だ·········」

 

「DD-115 ながなみ」のCICは被弾で大きく揺れ,隊員は皆何かにつかまって耐えていた。

金島も肘掛をがっしりと掴んでいたが,衝撃で思わず手を離して目の前の机へと倒れてしまった。

 

幸い彼女の適度な大きさの胸部装甲がクッションとなって,体への衝撃は若干和らいでおり,直ぐに立ち直す事が出来た。

 

椅子に体を戻しながら平行して損害を伝える様に指示した。

 

「船体右舷後方に被弾!! 第7・10居住区・発電機室・ヘリ甲板に甚大な被害!! 後方ファランクス(CIWS)使用不能!!」

「負傷者はどうなった!?」

「まだ分かりませんが相当な数になるかと·······」

「応急修理班を急いで向かわせろ!! 負傷者の数を正確に把握するように!!」

 

金島は急いで指示を出すと,椅子に座りながら目上のディスプレイを見上げた。

 

ディスプレイ上に敵機及びミサイルを意味する光点は1つも写っておらず,攻撃は終わったのだということを彼女は理解した。

 

それから数分経過して応急修理班から悲惨な通信が入ってきた。

 

『応急修理班より第7・10居住区及び水側機器室・発電機室にて死傷者21名確認!!』

「21········」

 

被弾現場から伝わってきた情報に思わず金島は歯を食い閉めた。

自分の行動で21人もの隊員が負傷または死亡したという事実は彼女自身のメンタルを傷つけた。

 

分かっていたことではあるのだが,それでも彼女を痛め付けるには充分だった。

 

「艦長。「あまぎ」艦長から通信が入りました。」

 

このタイミングで入ってきた通信に思わず“狙っていたのか?”と金島は思ってしまったが,彼女は通信機を手に取った。

 

「「ながなみ」艦長の金島です。」

『桐島だ。艦長は無事なようだな。貴艦は直ぐ様舞鶴への帰港を命じる。』

「ええ,貴方に言われずともそうするつもりでしたよ。」

 

金島の言葉に桐島は一瞬詰まったが直ぐに,

 

『貴女も同意見の様だな。』

「当たり前ですよ。本艦は見てわかる通り艦尾を損傷して戦闘不能に陥っています。

その状態で戦場に突入すれば間違いなく撃沈されます。そうなった場合乗組員175名に死者が出るのは間違いありません。

そして沈没から生き残ったとしても戦いの最中救助できるわけなく,救助を行っている最中に攻撃を食らってしまって更なる死者が出る二次災害になる可能性は容易にあり得ます。

それ以前に戦場に行けるかすら分かりませんが。」

『最早航行不能だろう。舞鶴の「AMS-4301 ひうち」に曳航(えいこう)してもらって舞鶴に帰った方が良いだろう。』

曳航(えいこう)中に襲撃される可能性も捨てられませんがね。」

 

金島の笑えない冗談に桐島はどう返せば良いか苦笑いのような声が通信機越しに聞こえた。

金島も“不味かったかな”と思わせるような表情をして,話を切り替えようとした。

 

「桐島艦長へ。本艦以外に損傷した艦はおりませんか? それとシ連艦隊はどうなっていますか?」

『貴艦以外は皆無傷だ。シ連艦隊へは既にクロウ隊とストーク隊が艦隊攻撃に向かっている。当分は安泰だと信じたいがな。』

「その結果は神が知るのみだけです。」

 

そう言って金島は通信機を切った。金島は背もたれに深く寄りかかって,目線を天井へと向けた。

 

「艦長として乗組員の命を預かっているのなら,彼らを家に帰すのも艦長の使命の1つだが,それなら私は艦長失格だな。」

 

金島は自分が言った言葉に発散させることの出来ない思いを誰にも気づかれないようにぶつけるのだった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

艦隊北東90kmの高度1000mの夜空を「DDH-185 あまぎ」を発艦したクロウ隊 16機が編隊を組んで飛んでいた。

 

クロウ1のパイロット 赤羽正敏のヘッドマウントディスプレイ(HMD)には同じく「あまぎ」から発艦したE-2C(ホークアイ)が艦隊北東40kmの上空を旋回しながら,機体に搭載されたAN/APS-145レーダーが捉えた情報が次々と入ってくる。

 

その情報によるとクロウ隊の正面100kmに「ウリヤノフスク」を発艦した敵機編隊 14機が展開しているとの事だ。

 

「恐らく敵機はMig-29K(ファルクラム)········F-35JC(こいつ)に申し分ない相手だ!!」

 

赤羽はこれから戦うことになる相手に興奮していたが,直ぐに興奮する神経を落ち着かせた。

彼は自身の機体 クロウ1に搭載させているミサイルを再確認した。

 

(クロウ1(こいつ)が搭載している空対空誘導弾(AAM)はウェポンベイにAIM-9X(サイドワインダー)4発,ハードポイントに04式空対空誘導弾(AAM-5) 4発。

今すぐ撃ちたくなるが,相手だって警戒している筈。タイミングを見計らって撃たないと直ぐ様残弾0だ!!)

 

赤羽の操縦桿を握る手に力が入る。赤羽の脳内には作戦説明時に桐島から言われた言葉が何回も繰り返して聞こえていた。

 

“シ連艦隊の周囲には20機もの敵編隊が展開している。クロウ隊の任務は敵編隊を引き付けストーク隊の突入を支援する事だ”

 

敵機編隊を引き付け,その隙にストーク隊をシ連艦隊へと突入させる。

ストーク隊が搭載しているのは軽い空対空誘導弾(AAM)91式爆弾用誘導装置(GCS-1)だがそれでも空気抵抗は増加して空戦の危険は増す。

 

彼らを安全に戦場へと送るための重要な役割をクロウ隊は担ったのだ。赤羽以下パイロットには重い重荷がかかっているだろう。

 

敵編隊への距離は既に100kmを切っており,90kmも切ろうとしていた。

空対空ミサイル(AAM)の射程圏内に着々と近づいていく。

 

赤羽はクロウ隊の全機に対して通信を行った。

 

「クロウ1より全機へ!! 敵機の総数は我々より少ないが油断するな!! 我々は全力でストーク隊の突入を支援するぞ!!」

 

返事は帰ってこないが,皆が覚悟を決めていると赤羽は判断した。

 

「FOX3!!」

 

彼らはウェポンベイを開いて,2発ずつAIM-120D(AMRAAM)を発射した。

 

空戦の火蓋が切られた。




護衛艦の内部構造がよく分からなかったので,応急修理班が伝えた部屋は調べて出てきた単語をただ合わせただけですので読者のご理解をよろしくお願いします(強制します)

というか軍艦内部って軍事機密だから分からなくて当たり前なんですがね········

適度な大きさの胸部装甲ってのは照月位のサイズを想像してください()
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