朱雀列島南西60kmの海上に第2機動部隊は展開していた。
「DDH-185 あまぎ」所属の
艦隊中央の旗艦こと「DDH-185 あまぎ」の
既に腕時計の針は午前3時を指していた。桐島を回避することが不可能な眠気が襲うが,
彼がふと顔を上げると,目の前のディスプレイには浸水で傾く「DD-115 ながなみ」と周囲に停泊している「DDG-203 たかちほ」と「DD-131 しらぬい」が写っていた。
「ながなみ」の浸水は既に止まってはいるが,依然傾いたままで,予断を許さない状況だった。
「取り敢えず浸水が収まってなりよりだな········沈没は免れたのだから。」
沈没という最悪のシナリオを免れたことに,桐島は安堵した。
だが沈没回避=被害軽微ではない。それを裏付けるかのように隊員の1人が桐島に「ながなみ」の被害状況を伝えた。
「「ながなみ」の損害集計完了しました。推進軸2軸共に損傷して航行不能。ヘリ甲板及びヘリ格納庫上部の
死者8名。負傷者11名です。」
「酷いな······」
被害報告に桐島の隣にいた水上が顔をしかめた。彼は“だが”と付け加えると,
「沈没していたら死傷者がより多かったでしょう。この程度で収まった事を素直に喜びましょう。」
「だな。もう1発ミサイルが当たっていたら,撃沈もあり得ただろうな。
最もフォークランド紛争では不発弾で沈んだ艦もいたらしいがな。」
不発弾で沈んだ
桐島はそんな水上の様子を察し,話を変えた。
「クレイン・スパローの攻撃も成功した。島への砲撃が完了次第,上陸部隊を上陸させる。朱雀列島が落ちるのも時間の問題になるだろうな。」
“ただ”と桐島は付け加える。
「ゲリラ戦となったら被害は大きくなるかもな。」
「地の利はこっちにあります。幾ら攻めより守りがやりやすいとはいえ,勝敗は見えていると思います。」
水上はそう答えた。そんな発言を聞いて桐島は“考えすぎた”と脳内で言った。
「杞憂········だったかもな。」
桐島はそう言いきって,話を終わらせようとしたが,思い出したかのように,
「ああそうだ。「かつらぎ」の
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築館島南西30kmの漆黒に包まれた海を数本の
海上自衛隊初の巡洋艦 いぶき型イージス巡洋艦*24番艦 「DDG-204 あそ」を先頭に「DDG-175 みょうこう」・「DD-117 ふじなみ」・「DD-125 しもつき」の計4隻が,単縦陣を形成して航行していた。
制空権はクレイン隊が既に日本のものにしており,制海権も太平洋艦隊が崩壊した為に,日本のものになったと言って良いだろう。
「あそ」の
その目は現在の状況に疑問を抱いているかのようにも感じられた。
「あまりに静かすぎる········何かの罠じゃないのか?」
「恐らくですが,上陸戦に備えて“手を出すな”と命令されているのでは?」
「なるほど········確かにそれなら合致がつくな。」
自衛隊でも珍しい女性の先任伍長の意見に花月は納得した表情を浮かべた。
花月は右腕の日本製のアナログ式腕時計を確認した。時計の針は午前3時10分を指そうとしていた。
「作戦開始時刻だ。主砲を左舷に旋回!!」
前甲板に高さを変えて搭載されていたMk.45 5inch砲が左舷へと旋回する。
他の3隻も単装の主砲を左舷へと旋回させた。
「目標対艦ミサイル発射機!! 撃ぇ!!」
2門のMk.45 5inch砲が火を吹いた。続くように残る3隻も自らの5inch砲やオート・メラーラ 127mm砲の発砲を開始した。
放たれた5inchの砲弾が続々と築館島へ着弾する。沿岸に配備されていた
2回,3回と放たれた砲弾は1発も外れることなく着弾し,多千穂島の地上戦力を次々と破壊していった。
そのうちの1発が弾薬に誘爆し,盛大な爆煙を上げた。
爆煙が未だ築館島上空に漂うなか,「あそ」から発艦した
続けて弾着地点を目視で確認した搭乗員から通信が入った。
「
砲雷長が“良い腕前になったな”と部下を誉める横で花月は冷静に状況を判断した。
「
艦尾の舵を傾けて,「あそ」は多千穂島へと進路を変えた。糸に引っ張られているかのように,残りの3隻も同じく面舵を切った。
通信の内容に通信士が声を荒らげて報告した。
「
「艦隊? シ連艦隊は既に全滅したはずだ。*3となると····」
花月は答えを出す前にディスプレイと向き合っていたレーダー士が答えを言った。
「艦種識別! 055型駆逐艦 1,
「中国艦··········派遣艦隊のか!」
先任伍長が“確かにウラジオストクの艦艇数は少なかったからな。”と納得した様な声をあげる中,花月はあからさまに不機嫌そうな顔をした。
中国嫌いの彼だが,観念したかのな表情と共に頭をかきむしりながら,
「いつもはいけ好かない奴らだが,今日だけは中国に感謝だな。」
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蘭島東25kmの海上を海自と同じように4隻の艦隊が単縦陣を形成して航行していた。
艦隊を率いるのは12000tという米海軍のタイコンデロガ級よりも大きい船体*4を持つ駆逐艦 055型駆逐艦の1番艦 「101
前甲板の
埠頭に配備された自国製の
「南昌」に続くように江凱型フリゲート 「554
次々と弾着し,蘭島に黒い煙が何本も上がる。
海自の
『』
「上出来だ。腕を上げたじゃないか。」
中国海軍ウラジオストク派遣艦隊司令
砲雷士官は嬉しそうな笑顔を曹へと返した。そんな様子に曹が内心で喜んでいると,後ろに立っていた
「この後自衛隊は各島に部隊を上陸させる様ですが,たった3隻の揚陸艦で何とかなるのでしょうか?」
「主要な蘭・多千穂・築館島には本部隊を,端樹島にはヘリボンを行うと思うが,それだけだと
曹は冷酷に言いきった。そんな曹の様子に小校は焦った。
「大丈夫なのでしょうか? 朱雀列島が奪還出来なきゃ我々も危険に晒されますが·····」
「まあ大丈夫だろう。こういう時の為に政府は
さっきとはうってかわって自信満々な曹の様子に小校は
「確かにそうですね。ただ漁夫の利を得に来たと勘違いされそうなのが,不安ですけど。」
「そこはあっちで何とかしてくれる筈だ。それに期待しよう。」
そう言いきった曹は右手で被っている略帽のつばを持ち,左手で略帽の後ろを持って,略帽を整えた。
「さあ我々は課された仕事を終わらせるだけだ。」
前後書きに書いたとおりイギリス海軍のクイーン・エリザベス級航空母艦が日本に来ることが確定しましたね。
それにアメリカ海軍の「ザ・サリヴァンズ」が合流するのはまだ分かるとして········“ドイツ海軍 フリゲートを日本に派遣”ってどういうことすか!?
これ嘘か本当かまだ分かりませんけど,実現したら日独伊三国同盟でも果たせなかったドイツ海軍艦艇来航?にでもなんですかね·········