東京の摩天楼に朝日が登り,山手線等の首都圏鉄道路線は通勤ラッシュの時間を迎えていた。
サラリーマンが満員電車にいつも通り苦しんでいる中,首相官邸の会見場にはテレビ局のカメラや,新聞社の記者が集まり始めていた。
今から30分程前に突如として会見が行われる事が政府から発表された。
この発表に報道機関は慌てた。テレビ局は急いで朝のニュース番組の構成を変更し,新聞社は号外の準備をしだし,輪転機を止める準備をしだした。
そしてこの会見場も記者達やカメラスタッフが,電話をしたりして慌てているのが誰の目に入っても分かる。
そんな中でOREjournalの編集長 荻窪大介と記者の木戸進一は落ち着いていた。
木戸は未だに慌ている周囲を見渡すと,隣に座る編集長を向いて,
「幾らなんでも編集長が来ることもなかったんじゃないですか?」
「バカやろう。ここで緊急の記者会見があるという事は何か動きがあったという事だ。」
昨日の中国による会見で,周囲に隠れミリオタが完全にバレてしまった荻窪は,寧ろ重荷がなくなったかのように意気揚々としていた。
この会見の事を知るな否や,その辺にいた木戸を連れて会見場へとやって来ていたのだ。
無理矢理連れてこられた木戸は,内心不満だったが編集長に言うと何を言われるか分からないので心の中で思っていた。
「あと2分か。」
荻窪の右腕の腕時計が示す時間は7:58を回ろうとしている。
会見の予定開催時刻は8:00。
「編集長。この会見は朱雀列島関連だと思いますが,一体どんな内容なんでしょうね?」
「良い報告であると願いたいな。」
そして腕時計の長針は0を指した。同時に第100代内閣総理大臣 鈴村隆治が会見場へと姿を現した。
カメラのフラッシュが鈴村の姿を照らし,リポーターは総理が現れた事をニュース番組のスタジオへと伝えた。
鈴村が会見場のお立ち台へ上がると,フラッシュも収まる。
演台に置かれたスタンドマイクの前に立ち,1回咳き込むとその口を開いた。
「シ連軍の朱雀列島侵攻から既に2日が経過しました。国民の皆様もただならぬ不安を抱いて過ごしているのだろうと思われます。
さてこの会見を見ている皆様は感づいていると思われますが,この会見の主な内容は朱雀列島とシ連艦隊についてです。」
鈴村の言葉に皆が息を呑んだ。記者やリポーターは鈴村の発言を一言も聞き逃さぬ様に聴覚の感度を最大限に上げて,カメラマンは歴史的な瞬間をカメラに納めるべくシャッターに指をかけてその瞬間を待った。
「皆様は長い経緯を語るよりも結論を知りたいでしょう。
結論を申し上げると,シ連艦隊は全滅しました。海上自衛隊及び航空自衛隊の飽和攻撃で空母1隻と巡洋艦2隻を残して全て撃沈させられました。」
鈴村の核爆弾クラスの発言に,会見場は凍りついた。
今,目の前の総理は何と言った? シ連艦隊が全滅した? しかもたった一夜で?
会見場にいる人々は皆が脳内でそう思った。皆が自らの思考に
「そして先程第2機動部隊よりシ連艦隊が降服に応じたと連絡が入りました。
朱雀列島についても陸上自衛隊が全島の奪還に成功したとのことです。」
更なる鈴村は核爆弾クラスの発言に,会見場は再び凍りついた。
シ連艦隊が降伏というのはまださっきの話で理解出来なくもない。
だが朱雀列島が奪還に成功した? 1島だけでなく全島? しかもこっちもたった一夜で?
まるでフィクションの様な急展開に会見場の人々やこの会見をテレビやスマホ,電車の液晶ディスプレイで見ている通勤中のサラリーマンや通学中の学生らの脳内は追い付かなくなっていた。
こうなるのを見越していたのかどうかは分からないが,鈴村は彼らに対して再び口を開いた。
「一言で言わせてもらいましょう。我々はシ連に勝利したのです。」
その言葉を聞いた国民らは瞬間的に理解した。日本がこの戦に勝利した事を。
そして会見場は歓声に包まれた。記者達は立ち上がって喜びの雄叫びを上げた。
リポーターはこの情報をスタジオに声を荒げながらその情報を伝え,カメラマンはその様子を逃さずSDカードへと記録した。
木戸も立ち上がって素直に喜んだが,隣の荻窪はさっきと変わらず座っていた。
荻窪のそんな様子に木戸は素直に疑問を抱き,質問した。
その様子をお立ち台から見つめていた鈴村は,会見を再開する為に喜ぶ人々を制した。
鈴村が制した事で,記者達の声は次第に小さくなっていった。
声が小さくなった事を確認した鈴村は再び口を開いた。
「皆さんが喜ぶのは自由です。ですがこの戦いで何百,いや何千という人間が失くなりました。
これは非常に悲しいことです。ですがもし我々の選択が1つ間違っていたら,万単位の死者が出ていた可能性だってあります。
この戦いで我々も62名もの戦死者を出しました。もしかしたら死者が多かったのは我々だったかもしれません。その事を充分理解して頂けると私としては幸いです。」
そう言った鈴村の姿を見ていた荻窪はふと口を開いた。
「日本は変わるな。」
「え?」
木戸はばか正直に荻窪の言葉に疑問を抱いた。
「この戦いをきっかけに日本は変わるだろうな。戦いというのは良い意味でも悪い意味でも変える力がある。
その力をどう制御するかで政治家というのは決まってくるがこの総理なら良い意味に持っていけそうだな。」
荻窪のその言葉を木戸は自分なりに理解しようと必死に脳を動かしたが,理解できるのは遠そうだ。
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会見を終えた鈴村は右肩を左手で揉みながら首相官邸の通路を歩いていた。
会見開始から1時間以上が経過し,既に時計の針は9:21を指していた。
と鈴村の元へ総理秘書官の本庄香月がやって来た。官邸の女神とも言われている彼女だったが,その顔は優れていなかった。
「総理。お疲れさまでした。」
「いえいえ私はただ台本通りに読んだだけです。まあただアドリブを付け加えましたがね。」
「···········」
鈴村はそう言って,本庄を微笑でもさせる筈だったが,当の本庄の顔は優れなかった。
「どうしましたか?········ああ,三崎君の事を思っていたのですね。」
鈴村の発言は図星だった。彼女は目の前で撃たれて呆気なく死んだ。彼女自身はこんな事は刑事ドラマというフィクションの中でしか起きることはないと,思っていたがそれは現実で起きてしまった。
確かに三崎には何か違和感を感じており,密かに調べた結果シ連のスパイだった。だからこそ死ぬのは当たり前といえばそうだが,何かより良い結果はなかったのかとずっと自問自答していた。
「彼女に助かる道はあったのでしょうか·······」
「助かる道ですか······」
心の中だけで言っていた事が漏れていた事に,本庄の頬は赤くなったが,鈴村はそれを気にせず話し出した。
「取り敢えず言えるのはこの世界には彼女の犠牲が必要だったという事ですね。」
「は?·········」
鈴村の言葉の意味を本庄は一切理解できなかった。
「平和な世界には犠牲が必要です。良い人も悪い人も全てを助けるなんて不可能も良いところですよ。
平和を得るには何かを捨てなければならない。それが今回は三崎君とシ連艦隊だったという訳です。」
「そんな残酷な·····」
「世界は残酷な物で出来ています。感動の結末なんて100回の戦争で1つあるか無いか位なものです。」
鈴村は“しかし”と付け加えると,
「何か私達の言葉や行動が1つでも変わっていたら,もしかしたら三崎君が助かった世界もあったかもしれませんね。
まあ何が彼女の命を奪う引き金になったかは,神ぐらいしか分かりませんがね。」
鈴村が付け加えた言葉で言葉の意味を理解した本庄は,
「はは·······」
そう失笑した。自分の考えていたこととは全く違う考え。
神? そんな物が話に出てくるなんて馬鹿馬鹿しいと思わざる思えなかった。
そしてそう言われない限り理解できなかった自分に対しても失笑した。
「神ってただの偽善者なんですね。」
「神なんて偶像の塊ですよ。国民が私達に付ける勝手な印象と同じですよ。
君もまた成長しましたね。」
本庄の自分に対して笑う姿に鈴村はそう言った。そして彼は再び歩き出した。
「行きましょう。我々にやることは山のように残っています。」
そう言われた本庄は180°振り返って,自らの仕事を行うべく鈴村へと付いていった。
3900t型護衛艦がもがみ型護衛艦に決まりましたね。個人的に無難な名前になってよかったですね。
あとこれ色々考えた結果追加した設定ですが,“New Fleet計画”でたかなみ型やあきづき型が10隻ずつになっているので,更に小さいあぶくま型が増産されないのはおかしいんじゃないかと思ったので,こちらも10隻建造されたという設定を追加します。
艦名? この作品では出てこないんで考えてないです······本音はもがみ型と被ったらどうしようとなっているだけ。
あと関係の無い話ですけど,米海軍のアメリカ級やサン・アントニオ級に陸自の10式戦車等の自衛隊車両って搭載出来るのでしょうかね?
毎度すいません。作者がニワカなせいで······