New Japan Fleet   作:YUKANE

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祝UA7000!!


Episode.54 変わる世界

東京から太平洋を挟んで1万5500km離れた北アメリカ大陸に位置するアメリカ合衆国。

東部のメリーランド州とバージニア州に挟まれたポトマック川の河畔に比較的規模も小さく人口も少ない都市が存在した。

 

超大国アメリカ合衆国の首都のワシントンD.Cは意外にも規模としては小さい。

だがアメリカの政治を担うアメリカ合衆国議会の議事堂,アメリカの軍事を担う国防総省 ペンタゴン,アメリカの歴史を物語るリンカーン記念堂やスミソニアン博物館等のアメリカを象徴する物が多く存在しており,アメリカの中心と堂々と言える都市だろう。

 

そんなワシントンD.Cの中心部に位置するのが,アメリカで最も有名な住居 ホワイトハウス。

 

米英戦争によって焼き焦げた外壁を白く塗った事からそう呼ばれる様になった大統領官邸の西棟(ウエストウイング)にある大統領執務室(オーバルオフィス)に第48代大統領 マイケル・テアラーはいた。

 

彼は左手をズボンのポケットにいれ,もう片方の手で受話器を耳へと当てていた。

 

「その情報は確かなのだね?」

『はい。シ連艦隊は全滅し,朱雀列島も奪還されたとの事です。

我々の偵察衛星が撮影した写真の解析結果と日本政府の発表した内容から100%確実かと。』

「そうか········だがまさか僅か1日でこんなに戦況が逆転するとは,まるでミッドウェー海戦のようだね。」

『私が勝手に名付けるなら“21世紀のミッドウェー海戦”でしょうかね?』

 

電話の相手は国防長官のトーマス・ジェンソンだ。2日前とは打って変わって,意気揚々とマイケルへと国防総省(ペンタゴン)が掴んだ情報を話していた。

 

それを内心感じつつ,マイケルは別の話題をふった。

 

「それとロシア連邦については何か情報は入っているか? こんな絶好の機会をロシアが逃す筈がないだろ?」

『えぇ,ロシア領内の各基地からTu-160M(ブラックジャック)Tu-95MS(ベアH)と言った爆撃機部隊が離陸を開始した模様で,戦闘機や輸送機等も離陸準備を開始しているとの事です。

またムルマンスクやアルハンゲリスクの艦隊にも動きがあったようですが,まだ詳細は不明です。』

「いや動いたと分かっただけでも戦果だ。また何かあったら伝えてくれ。」

 

そう言ってマイケルは電話を切った。マイケルは間置かずに電話のボタンを押して次の連絡先の番号を打った。

 

マイケルが打った連絡先はアメリカ合衆国国際連合大使のリラ・ハール・フィルアットだ。

 

「リラ君か? 国連に緊急特別総会を開催するように促してくれ。

英国やフランスにも私が話しておこう。何ならロシアへも話しておいた方が良いか?」

『えぇ,お願いします。私の方にも先程中国から“緊急特別総会を開く為に協力をお願いします”と連絡が入りました。』

 

リラの女神の様な声がマイケルの鼓膜に響く。実際彼女はその美貌から“国連の女神”とメディアや世界中の国民から言われていた。

 

「中国も実質味方という事か,こんな馬鹿みたいな話もあるもんだな。」

『私だって信じられませんよ。ですけど味方になったのなら利用するだけ利用してやりましょうよ。』

 

女神とは裏腹にどす黒い考えを提案したリラにマイケルは笑いを返した。

 

「ははは········君の判断に任せるよ。」

 

そう言ってマイケルは電話を切り,窓越しに空を見上げた。日が登った東京とは真逆にワシントンは日が沈み,空は恒星と夜の町の光が入り交じっていた。

 

「シ連も遂に終わりだな。もっと早く終わると思っていたが30年も続くなんてな。

遂に冷戦が終わるか········私も教科書に乗ったりするのかね?」

 

彼は広い大統領執務室(オーバルオフィス)でたった1人で冗談交じりの独り言を言ったのだった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

シ連ことシベリア社会主義連邦の首都 イルクーツク。

 

世界で最も深い湖 バイカル湖の西岸内陸に位置し,ロシア極東部と中央アジアを結ぶ交通の要衝として栄え,その街並みの美しさから“シベリアのパリ”とも呼ばれるシ連有数の都市だ。

 

そんな都市の一角にシ連政治の中心地 “フタローイ・クレムリン”は存在する。

 

モスクワのクレムリン広場を模して作られたこの場所は現在これまでに無い程ざわついていた。

 

理由は明確だ。朱雀列島(バレリオーストラフ)占領作戦が完全失敗したからだ。

 

朱雀列島(バレリオーストラフ)は自衛隊によって奪還され,太平洋艦隊も壊滅した。

想定を遥かに越える大損害を受けたシ連上層部は混乱の真っ只中だった。

 

「これはどういう事だぁ!!」

 

そう物凄い剣幕で怒鳴り散らしたのはシ連書記長のレジェーブ・レフトスだ。

自らの執務室でシ連海軍司令長官 ウーラスト・シュチュワフ相手に激しく言葉をと共に右手をテーブルに叩きつけた。

 

ウーラストは高い衝撃音に動揺せずに口を開く。

 

「申し訳ありません。ここまでの損害が出るのは想定外でした。」

「想定外で済むか!! この責任は一体どうするのかね!! こんな結果を聞いたらアスーラ・チェイコフ(先生)はどんな顔をすると思うか!!」

 

“こんな時にも国民より先生か·····”とウーラストは心の中で呆れていた。

 

とその時ウーラストの背後の木製の扉が勢いよく開けられた。

扉から入ってきたのは若い政府職員だ。政府職員は息を切らしながらレジェーブを向いて,

 

「書記長!!」

「一体なんだこんな時に!?」

「ノヴォシビルスクの部隊で反乱が発生しました!!」

「何だと!? こんな時に!! 直ぐ様部隊を派遣して鎮圧せよ!!」

 

レジェーブがそう指示を出した刹那,別の政府職員が部屋へと滑り込んできた。

 

「書記長!! ハバロフスクとヤクーツクでも部隊の反乱が発生しました!!

それにチタでは民衆の暴動も発生したとのこと!!」

「ハバロフスクにヤクーツクにチタだと!?」

「次々と意味が分からんことばかり起きる!! 一体何故だ!?」

 

連鎖的に起きる反乱にレジェーブは頭を抱えたが,ウーラストは連鎖的に起きた理由を突き止めていた。

 

(こんなに早く情報が伝わるとは······政府職員の中にスパイでもいるんじゃないのか?)

 

誰かが朱雀列島上陸作戦完全失敗の情報を流し,それを好機と見たシ連に対して好感を持っていない人々が軍,市民関係なく立ち上がったのだと。

そして今やシベリアの奥地であっても携帯電話が通じる時代。立ち上がった情報はあっという間に世界中に拡散し,それに続く形で連鎖的にこの状況が起きたのだと。

 

ウーラストがそう考えているとロシア人特有の青い瞳を持つ女性政府職員が,息を切らしながら部屋へとやって来た。

 

「今度はなんだ!?」

「書記長!! ウラル山脈のレーダーサイトがロシア連邦の航空隊部隊が我が国に接近するのを確認したとの事です!!」

「ロ,ロシア連邦だと!?」

 

“ロシア連邦”という単語が出た瞬間,レジェーブ以下その場にいた者は皆青ざめた。

 

青ざめた理由は単純。“ロシアが来たらシ連はもう負ける”と察したからだ。

只でさえ部隊や民衆の反乱が起きている中で,だめ押しのロシア連邦。

 

誰もが愕然とするなか,勢いよくニスが塗られた木製のテーブルが叩かれた。

 

皆がその音源へと振り替えると,呼吸が乱れつつあるレジェーブが視界に写った。

 

レジェーブはまるで壊れたラジオの様に“ハハハ····”という乾いた笑いを繰り返した。

 

「ハハハ·······やはりロシアは卑怯だな······徹底抗戦だ!! 国内中の戦力をロシアへと向けろ!!

ウーラスト君。君も何とか手を打ってくれ!! 出し惜しみはするな!!」

 

ウーラストは耳を疑った。自分の持つ主戦力の太平洋艦隊は既に全滅し,残っているのは半壊した近海艦隊や練習機含む航空隊,そして沿岸防衛部隊だ。

 

だがその戦力の大半はオホーツク海沿いに配置されており,内陸のイルクーツクには極少数しかいない。

 

しかもその極少数も半数が戦闘とは無縁の裏方だ。実戦では戦力処か邪魔にしかならない。

 

そしてレジェーブの“出し惜しみはするな!!”。“こいつはオホーツク海沿岸まで戦線後退してもまだ戦う気なのか”とウーラストは自己解釈した。

 

周りの政府職員もウーラストと同じように,戸惑いの表情をうかべていた浮かべていた。

 

「何をしている!? 早く私の指示を全土に伝えろ!!」

 

レジェーブの怒鳴り声で政府職員はこの部屋に来た時と同じように,駆け出した。同じように部屋を出たウーラストはある確信を得た。

 

“もうシ連は駄目だと”

 

ウーラストは密かにシ連からの亡命ルートを考え始めるのだった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

混乱が起こり始めたイルクーツクから南西に約200kmの華北平原の東北端に中華人民共和国の首都 北京はある。

 

人口は約2100万人で,アジア処か世界でも有数の大都市と言っても過言ではない。街には高いビルが連立していたが,年間を通しても珍しい高濃度の黄砂で霞んでいた。

片側3車線の道路も黄砂の影響で自動車によって埋め尽くされ,クラクションが鳴り止まなかった。

 

そんな北京の中心部西城区に中国政治の中心地 中南海は存在する。

 

かつては皇帝の離宮だったこの場所は,現在中国共産党の本部が置かれ,中華人民共和国主席の官邸でもある。

 

その一室で中華人民共和国の最高指導者 李・呂寧(リー・ロネイ)が報告を受けていた。

 

「以上が朱雀列島における自衛隊の行動一覧です。朱雀列島のシ連軍は跡形も無い程に崩壊しました。

よってしてシ連は崩壊待ったなしと思われます。万が一に備えて空軍と陸軍に出撃待機命令を出された方が宜しいかと。」

 

中央軍事委員会から派遣された士官 劉・思斉(リュウ・スーチー)上尉は現地部隊から送られてきた情報も交えて(リー)へと報告していた。

 

報告を終えて書類から顔を上げた(リュウ)は,(リー)が自らの思考モードに入ったと察した。

 

「これでシ連は終わり········ウラジオストクさえ手に入れば,日本を落とせる。

そして日本の次は韓国・台湾········そしてアメリカ········」

 

(リー)自身は心の中だけで言っている筈なのだが,実際の所口から駄々漏れていた。

それを強調する様に彼女の表情も国内外の評判とは真逆な黒く歪んだ物へと変わっていた。

 

勿論は(リュウ)この事にはとっくに慣れきっていた。

 

最初の頃は毎回指摘していたのだが,直る気配が全くなかった事と,外務大臣の(ワン)から意味が無いと言われた為にもう諦めていた。

 

だがこのままでは話を聞いているとは思えないので,わざとらしく咳払いをした。

咳払いで(リー)は現実へと引き戻された。(リュウ)は心の中で溜息をつきつつ,口を開いた。

 

「それで出撃待機命令はどうしましょうか?」

「勿論出してくれ。シ連軍がこっちに来られたら元も子もないからな。」

「了解しました。北部戦区*1の部隊に国境周辺への出撃命令を下しますね·······」

 

ここまで言いかけた(リュウ)はふと(リー)を見た。

そして再び呆れた。(リー)がまた自らの世界へ入っていたからだ。

 

「これでいつでも攻め込める。待てよ·········敢えて何か言いがかりをつけて攻め混むのもありだな·······いや国連にああ言ってしまったから無理か·····」

 

(リー)の独り言を聞きながら,(リュウ)何とかならないものなのかと彼は叶えるのが絶望的に難しい願いを抱くのだった。

*1
主に内モンゴル自治区等




とある二次創作作品の影響で“とある飛行士シリーズ”読みたいなと思ってたらうちの学校の図書室にあった·······本当になんなのうちの学校の図書室。

んで先日のあの迷惑メールは何すか? 僕は1分位で削除しました。

そして突然の発表ですが,次回で最終回です。駆け足ですけど許してください。
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