New Japan Fleet   作:YUKANE

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Episode.5 初の戦い

『敵潜魚雷4本射ちました!!』

 

SH-60J(シーホーク)からの通信が敵が我々への攻撃のトリガーを引いた事を知らせた。

 

「艦隊接触まで何kmだ?」

『凡そ10km! 10時の方向です!』

「全艦対潜戦闘! 1発も被弾するな! 敵潜の正確な位置は分かるか?」

『まだ不明です!』

SH-60K(シーホーク)は推定潜伏海域でジュリーを行え! 「みょうこう」「はつづき」も急行せよ!」

 

桐島の号令が発せられると当時に艦隊先頭の「みょうこう」と「はつづき」が魚雷が発射された海域へと向かう。

それに伴って上空のSH-60Kも2隻より早く海域へとローターを全開に回して向かう。

 

「CICより艦橋 長瀬副長へ。」

『こちら長瀬。CICどうぞ。』

「操艦をそっちに任せる。」

『ふっ・・海の中の扱いは海の人間に任せろってか。面白い! 魚雷に正対する! あまぎ・ながなみ取舵30°!』

 

長瀬が命じると共にあまぎとながなみが大きく左側へと向き,魚雷に真っ正面の位置につく。魚雷と真っ正面になるという事は,船の艦首を向ける為に被弾する可能性が極めて少なくなるのだ。

 

しかしそれは1隻だけの場合と言っておこう。今海中に潜水艦は4隻いるのだ。もし1隻だけに艦首を向けてしまったら他の船に側面を見せる事になり,魚雷を船の土手っ腹に受けて瞬く間に沈んでしまう。

しかし長瀬がその様なミスを犯す訳ない。

 

「かつらぎ・ふじなみは面舵30°! 残りは直進!」

 

艦隊はあまぎ・みょうこう・はつづき・ながなみとかつらぎ・ふじなみと残りという3つに分かれ,第17潜水艦旅団へと向かってく。

 

「「あまぎ」から「はつづき」へ。魚雷を艦隊から反らせろ!」

『了解! 自走式デコイ(MOD)発射用意!』

 

「はつづき」の右舷に設置されている細長い4本の筒が正方形の形に積まれている装置 MODが動き,右側を向く。約10秒程経ってからその発射管から4本の黄色に塗られた小型の魚雷状のデコイが発射された。

 

発射されると共に4連装の90式艦対艦誘導弾の脇に搭載されている投射型静止式ジャマー(FAJ)からも黄色いデコイに似た物を発射された。

 

FAJは敵の魚雷への音響的妨害を行う為のデコイで,海面で浮遊して妨害音を発して魚雷を妨害し,目標を見失った魚雷をデコイへと食いつかせるのである。

 

「デコイ4本魚雷へと向かって行きます!!」

 

想定通り敵魚雷はデコイに食いついたが長瀬は心であることを思っていた。

 

(これは我々のデコイと敵の魚雷のどちらが先に負けるかの勝負・・なのかな。)

 

デコイの方向に魚雷は行った為に今は心配ないがデコイの燃料が先に尽きた場合,魚雷は艦隊へと向かってくるからだ。

なお魚雷が先に力尽きた場合はそのまま沈む為に問題はない。

 

その間にも「みょうこう」と「はつづき」は「ヴォルホフ」の方へと向かい,それよりも先に到着したSH-60Kが「ヴォルホフ」がいると推測される海域にソノブイを機体側面のソノブイ・ランチャーから投下する。

 

ソノブイは投下されるとパラシュートを開き,減速しながら海面へと向かっていく。海面に接すると分解して海面に浮かぶフロート&通信アンテナと潜水艦を探知する送受波器に別れる。

 

投下されたのはCOSSソノブイで,全指向性の送受波器を有するアクティブソノブイだ。

因みにアクティブとは木霊の様に自分から音を出して跳ね返って来たのを受信するタイプで,一方のパッシブは耳の様に周りの音を聞いて受信するタイプだ。

 

桐島の言った「ジュリー」とは,敵潜の推定潜伏海域にソノブイを投下し,その円周状にもアクティブソノブイを投下し,ソノブイから発信した音の反響から敵潜の場所を特定する方法だ。

 

そのCOSSソノブイが深度170m付近にいる「ヴォルホフ」を捉えた。

 

『敵潜探知!! 深度170m! 本機より東340mの海域!!』

「「みょうこう」「はつづき」!! 対潜攻撃開始せよ!」

「・・・・・やはり攻撃するんですか。」

 

桐島の攻撃命令にCICのただでさえ高い緊張感が高まった。CICの要員はほぼ全員が画面を見つめながら顔がこわばった。

 

「奴等は自分から弾を撃ってきたんだ。相手に弾を撃つということは撃たれる覚悟があるという事だ。それに自衛隊はいつまでも受け身ではない,時には自分から攻める事も必要だ!!」

「海上警備行動はまだ発令されていません。その状態で攻撃を行えば自衛隊法に違反します!!」

「・・・・・・やはり自衛隊はどこも同じか。」

「??」

 

水上他CIC要員がじっと耳を澄まして桐島の発言を聞いた。

 

「戦後日本は大戦の悲劇を避ける為に日本国憲法第9条を作った。だが日本はそれで死について恐怖を覚えた。

“戦争になれば絶対死者が出る“そう恐れて自衛隊を厳しく抑えた。

だがそれはもし戦争になってもすぐ行動出来ずに逆に日本を悲劇に貶める事になる。そうなっては自衛隊の意味がないではないか!!」

 

水上達はこの言葉を黙って聞くしかなかった。

 

「海上警備行動が出てないからと目の前の脅威(潜水艦)を攻撃しないのは,目の前の傷ついた仲間を見捨てるのと同じだ!!

ここで奴等を追い払わなければ艦隊に被害が出て,傷つく隊員だって出てくる! それでもいいのか!?」

 

誰も口出しなんて出来ないと思っていた中,宇津木が話し出した。

 

「艦長。私はよろしいかと思いますが,せめて「みょうこう」と「はつづき」の艦長に聞くべきだと思います。」

「・・・・・それもそうか。「みょうこう」「はつづき」と繋げてくれ。」

 

それから1分も経たぬ内に通信が繋がった。

 

『こちらみょうこう艦長の館です。桐島艦長何かありましたか?』

「これから貴艦に敵潜への攻撃を命じたいのだが,貴方はどう思う?」

『私は桐島艦長の命令に従うd』

「いやそう言うのではなくて。」

『??』

「貴方自身がどう思っているのかを聞きたいんだ。」

『!!』

 

攻撃に対する自分の意見を問われた館は,一息おいて答えを言った。

 

『私は攻撃すべきだと思います。仮に攻撃せずとも敵潜は海域から離脱すると思いますが,絶対もう一回現れるでしょう。

もし攻撃を行えば敵潜は損傷もしくは撃沈(・・)出来ます。そうなったら他の船もそうは手出しできないと思います。』

「・・それが貴方の意見か。天空艦長はどう思う?」

『僕も館艦長と同意見です。』

 

二人の決意を聞いた桐島は薄く微笑みながらCICに叫んだ。

 

SH-60K(シーホーク)へ! 目標敵潜! 魚雷2本発射!」

『了解!!』

 

SH-60Kのウェポンベイから2本の短魚雷が投下され,海へと沈んで行く。

一定の深度につくと海中の「ヴォルホフ」に向けて先端を向け,一直線に向かって行った。

 

「「はつづき」も07式発射!! 「みょうこう」はRUM-139(VLA)発射用意! 但し命令があるまで撃たない様に!」

 

「はつづき」の前甲板のMk.41垂直発射システムのセルの蓋が開き,鮮やかな赤色の火を排出しながら07式垂直発射魚雷投射ロケットが発射された。

 

07式は前部弾体部に魚雷が搭載されている対潜ミサイルで,前部弾体部分を切り離した後,パラシュートで減速しながら海面へと魚雷を投下する。

 

魚雷は着水後,パラシュートを切り離して標的の潜水艦へと向かっていく。

 

そして第17潜水艦旅団にも動きがあった。

 

『敵潜魚雷発射! 我々の魚雷へと向かって行きます!』

「恐らくデコイだ! 注目してろ!」

『はっ! あっ!! 残りの艦も魚雷発射管開口!』

 

第17潜水艦旅団全艦が発射管を開いたという事は艦隊を射程に捉えた(・・・・・・・・・)という事である。

 

『「しらぬい」・「たかちほ」・「しもつき」面舵30°!!』

「各艦潜水艦に向け魚雷発射管を向けろ! いつまでも撃てる体制にしておけ!」

 

「しらぬい」・「たかちほ」・「しもつき」が面舵を切って第17潜水艦旅団にT字の状態になる。

各艦は68式3連装短魚雷発射管を左舷に向けた。

 

「・・・・どうか食いついてくれ。」

 

CICの誰かがそう祈る中,双方の魚雷が交錯する。我々自衛隊の魚雷はシ連の魚雷が向かう方へと向かって行った。

 

『敵魚雷に食いつきました!』

「「みょうこう」! VLA発射!!」

 

「みょうこう」の前甲板のMk.41VLSのセルの蓋が開き,RUM-139(VLA)が放たれる。仰角40°の角度で低高度に上昇したVLAは「ヴォルホフ」のいる海域へと向かっていった。

 

一定の地点で弾頭後部のロケット・モーターが切り離れ,海面に着水する。海中に潜ったMk.46短魚雷が「ヴォルホフ」へと高速で向かっていく。

 

「敵潜付近で自爆させろ!」

『はっ! 魚雷自爆させます!!』

 

それから10秒も経たぬ内に「あまぎ」から約8kmの海域の海面に白色の高い水柱が盛大に上がった。

 

その勢いは上空のSH-60Kが急いで離脱する位の大きさだった。

 

『て,敵潜浮上してきます!!』

「艦長。どうしますか?」

「・・・・・・見逃してやろう。」

 

艦隊から約9km付近で水が巻き上がり高い波しぶきとなり,鯨の潮を想像させる。

その波しぶきの中から漆黒に塗られた鉄の鯨 887型(キロ級)潜水艦が浮上してきた。

その船体は複数の傷があり,所々にヒビも入っていて戦闘どころか潜航も不可能な状態になっていた。

 

「艦長。敵潜から通信です。」

「読んでくれ。」

「ええっと。「本艦は第17潜水艦旅団所属 B-603 ヴォルホフ。現在潜航不能。降伏も受け入れる。」だそうです。」

 

事実上の降伏とも受け取れる通信だったが,桐島は水上と話した通りの事を行った。

 

「「ヴォルホフ」に通信。「我々は貴艦を見逃す。貴艦の母港へと帰還せよ。」とな。」

「了解しました。」

 

「ヴォルホフ」への通信が行われ,約5分後「ヴォルホフ」は母港のあるウラジオストク方面に浮上したまま向かって行った。

 

その後第17潜水艦旅団 3隻も静かに海域から離脱して行った。




学校始まったので更新が遅くなります。

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