New Japan Fleet   作:YUKANE

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Episode.8 鷲 離陸

2024 2/24 12:21

新潟県 佐渡島 佐渡市 佐渡分屯基地

 

この基地は標高1042mの妙見山の山頂にJ/FPS-5固定式警戒管制レーダーが配備されている。

このレーダーサイトは朱雀列島を覆う範囲を索敵する事ができ,先程も飛鷹島に着陸するシ連機をここはしっかりと捉えていた。

 

そのレーダー画面を眺めていた歌島謙伍3等空曹は疲れていた。さっきから機体を表した光点を何十個も見ている為であった。

人間は単純な事やつまらない話を聞いていると眠くなるのは誰でも同じだった。

 

しかしその眠気は一瞬で吹き飛んだ。

 

何故ならレーダーの左上の端に現れた20以上もの光点を見たからだ。

彼は目を疑った。今までは最大でも5つ程だったのにいきなり20もの光点が現れたのだ。しかもその光点は今までの機体より小さく写っていた。

小さく写るという事はその機体が小さいか,機体がステルス形状をしている可能性がある。その2つが当てはまる飛行機が世界には存在するのかというと存在する。

 

 

 

 

 

 

 

戦闘機という機種が。

 

 

 

「大陸方面より多数の機体確認!! 光点の大きさから戦闘機と思われます!!」

 

この発言で室内はどよめいた。

 

「大陸からの増援か。歌島! 機数は何機だ!?」

「前後合わせて凡そ25機!! 前が15,後ろが10だと思われます!!」

「前後別れている? 何がしたいんだ?」

 

歌島らはレーダー画面をまじまじと見つめた。

 

前の連隊は朱雀列島上空へと差し掛かる。“このまま着陸するのか?“ その様な推測を彼らはしたが外れる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

その連隊は朱雀列島上空を通過したのだった。

 

「そのまま通過した!? 奴等何をしようとしているんだ?」

「空中警戒にしても数が多すぎます。このままだと本土方面へ向かいます。

小松基地に連絡しときますか?」

「それがいいな。小松基地に連絡!」

 

隊員達は何処へ向かうか分からない光点を見つめる。一体何処へ行き,何をするのか。

隊員達には不安が募っていた。

そんな中,隊員の1人がある事に気づいた。

 

「ちょっと待って下さい。この連隊の向かってる直線上にあるのって・・・」

 

全員が光点の直線上の先を目で辿った。そして1つの答えに辿り着いた。

 

「まさか奴等の狙いは・・・・・佐渡分屯基地(ここ)か!?」

「もしここがやられると朱雀列島方面の探知が輪島でしか不能になります!!」

「小松に連絡!

敵戦闘機隊,佐渡を空襲する恐れ多し!! 至急航空隊派遣を要する!!」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

12:40

福井県小松市 航空自衛隊小松基地

 

この基地は民間と共同で使用しており,滑走路等も共同な為にスクランブルしようとしても民間機がいるために出来ないという何とも珍しい光景を見ることが出来るらしい。

 

作者は小松なんか行ったことない。というか北陸にすら行ったことない。

 

小松基地の施設内の会議室。

ここには第306飛行隊(ゴールデンイーグルス)のパイロット達が集められていた。

 

F-15Jのパイロット 咲田龍磨もその1人だ。彼は306で最年少のパイロットで,「小松一の秀才」と言われてるだとかなんだとか。

 

会議室の扉が開き,306飛行隊の隊長と第6航空団司令 橘州和空将補が入ってくる。

 

「敬礼!!」

 

副隊長の号令の元パイロット全員が立ち上がり,敬礼を行う。

 

「下ろしてよい。さて急に集まってもらった訳だが,これから橘司令から話がある。

皆しっかりと聞くように!」

 

306飛行隊隊長の 大門駿の言葉の後,州和空将補が隊員達の前の教壇に立った。

 

「なぜここにいきなり集められたか。皆さん分からないでしょう。

今から話すことは他言無用ですので気をつけて下さい。

 

本日午前1時。シ連が朱雀列島を占領しました。」

 

唐突な発言にパイロット達は動揺した。そんな中でも咲田は冷静に質問した。

 

「橘空将補。朱雀列島には308飛行隊が配備されていたと思われますが,どうなったのですか?」

 

橘は一息おいてから答えを言った。

 

「分かってる情報によると,6機中2機が離陸したものの撃墜され,残りの4機は離陸する前に滑走路がやられ,そのまま破壊されたとの事です。」

「・・・・・パイロットはどうなりましたか?」

「詳細不明です・・・・・・」

 

パイロット達の雰囲気は一気に重くなる。仲間を失うことは今までも事故等で何回かあった。

 

しかし今回は仲間が戦死(・・)したかもしれない。もしかしたら脱出(ベイルアウト)して助かっている可能性も捨てきれない。

 

だったら彼らの空気が重くなったのは何故かだが,理由は明確単純。

 

 

 

 

 

 

 

 

自分がこれから誰かを殺すかもしれない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

人殺しという罪を犯してしまうかもしれないという事を察してしまったからだ。

 

そしてその不安は的中してしまうことになった。

 

「話が止まってしまいましたね。

先程佐渡のレーダーサイトがシ連機を15機程探知しました。恐らく戦闘機隊と思われます。

この部隊は佐渡のレーダーサイトを破壊する為に出撃したようであります。

佐渡が使えなければ朱雀列島奪還に大きな支障をきたします。

そこであなた方第306飛行隊に出撃命令が下りました。」

『!!』

「あなた方は浜松のE-767(AWACS)と合同で佐渡が攻撃される前にシ連機を迎え撃ちます。」

 

初めての実戦。パイロット達の心は全員が不安・恐怖に囚われていた。

 

「つまり我々にシ連機を撃墜せよと言うのですか?」

 

咲田が橘に聞く。彼自身もその内心は揺らいでいた。

 

「彼らがそのまま去るとは思えません。撃墜は免れられないでしょう。

あなた方はとても受け入れられないですがね。」

「との事だ。10分後に出撃する。全員出撃準備!! 解散!」

 

橘が話し終わると大門が解散を言い渡す。隊員達は直ぐに部屋を飛びだし,ロッカールームへと向かう。

咲田も一緒にロッカールームへ向かおうとしたが,

 

「咲田ちょっと待ってくれ!!」

 

橘に呼び止められ,ドアの前から2人のいる方に引き返す。

 

「咲田君。君はこの飛行隊(ゴールデンイーグルス) 1のパイロットと聞いております。

そんな君に別任務を与えます。」

 

橘は背後に置いてあったホワイトボードに赤のホワイトボードマーカーで書き始めた。

 

橘が書いたのは右下を向く3つの三角形とその奥の1つの丸だった。

 

「この3つの三角形をシ連機とします。ちょうど15機ですので1つで5機ずつですね。

咲田君。戦闘機対戦闘機の戦闘では戦闘機以外にどの様な機体が必要ですか?」

「敵機を正確に捉え,我々に指揮を行う早期警戒管制機です。」

「素晴らしい。100点です。ではその機体はどの位置に展開しますか?」

「主に空戦空域より後方の上空です。」

「こちらも正解です。もしその機体が消えてしまえば(・・・・・・・)部隊はどうなりますか?」

「・・・・・・・・・連携が取れなくなり,相手に不利になります。」

 

この時咲田は察してしまった。自分が呼ばれた理由を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の機体にAIM-120(アムラーム)を搭載して,シ連の早期警戒管制機を撃墜しなさい。」

 

 

 

AIM-120(アムラーム)とはアメリカのヒューズ(現:レイセオン)が開発した空対空ミサイルで,AIM-7(スパロー)の後継として開発された。

 

このミサイルの特徴は今まで母機誘導(SARH)だったのをミサイルのみで誘導可能な自律誘導(ARH)したファイア・アンド・フォーゲット(撃ちっ放し能力)を有している事だ。

 

これによって母機はミサイル発射後直ぐに離脱が可能になったのだ。

 

なお現実世界ではAIM-120は現時点では空自に導入されていない。

 

「・・・・・・何故ですか。墜ち落とさないで追い払う事は出来ないのですか?」

 

咲田の質問は当然だ。

 

機体を墜とせという事は,自分に人を殺せ(・・・・)と命じられた様なものだ。

 

橘は咲田に向き合って答える。

 

「撃墜しなければなりません。

彼ら(シ連)はもうF-15Jを撃墜したのです。撃墜したという事は撃墜される覚悟があるという事です。

それにもしその1機を撃墜されれば敵は混乱し,撤退する可能性だってあります。

これは守るための撃墜なのです。我々自衛隊員もシ連軍の隊員も。」

 

この言葉に咲田は何も言えなかった。

 

「・・・・了解しました。咲田三等空尉直ちに出撃します。」

 

咲田の敬礼に橘も敬礼で返し,下ろすと直ぐさま部屋を飛び出し駆け出した。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「AIM-120装着完了しました!!」

 

耐Gスーツを装着し,FHG-2ヘルメットを手に持って現れた咲田に風見美亜三等空曹が装着完了を伝える。

 

「機は出せるか?」

「燃料補給・弾薬装填完了済。いつでも飛ばせます!!」

 

咲田は頷き,飛行前の外部点検に入る。機を時計周りに見て異常がないか確認するのだ。

確認が終わるとキャノピーの脇に置かれている梯子に登って機体上部を点検する。

 

異常が無いのを確認すると,コックピットのキャノピーを開け,コックピットの座席へと乗り込み,ヘルメットを装着する。

 

F-15Jのエンジン プラット・アンド・ホイットニー/石川島播磨 F-100-IHI-100を点火する前に70項目にも及ぶチェックを行うのが正規の手順だが,緊急事態という事もあってスクランブル時の12項目で済ませた。

 

風見にエンジン始動の合図の指一本を上げ,エンジンマスタースイッチとエンジン燃料スクーター(JFS)をオンにする。

 

約15秒待つとスタータのレディランプが点灯し,火災警告灯が点灯していなかったら,メインエンジンをスタートさせる。

 

再び風見に指を2本立てて合図し,右側のエンジンスロットルフィンガーリフトを上げる。

 

右エンジンが点火し,スロットルを18%にし,ファンタービン入り口温度計が600°に安定したら同じ手順で左エンジンもスタートさせる。

 

両方のエンジンを点火したら,JFSスイッチをオフにする。代わりに空気取り入れ口ランプをオート,ECCスイッチをサイクルにする。

 

次にテストスイッチボタンを押して,各システムの警告灯が正常に点灯するかチェックし,同時に慣性航法装置(INS)調整(アライメント)を実施する。

 

それが完了するとチェックリスト通りにタキシー前チェックをし,完了したら風見が前輪の輪止めを外しタキシングを開始する。

 

ブレーキの動作確認・飛行計器の確認をチェック。滑走路に入る前に風見等のメカニックが外部点検を行い,それと共にAIM-120(アムラーム)の安全ピンを抜く。

 

小松空港のランウェイ24エンドにF-15J(イーグル)がタキシングする。

 

離陸前の最終確認としてレーダーをONにし,ハーネス・射出座席アーム・舵作動・フラップ距離ポジション・トリム距離位置・キャノピーが閉じてるかをチェックし,警告灯が点灯していなかったら管制塔からの離陸許可を待つ。

 

『Duck10 離陸許可』

「Duck10 了解。」

 

2基のプラット・アンド・ホイットニー/石川島播磨 F100-IHI-100の排気口が赤く輝き,排気で周りに陽炎が現れ始める。

 

F-15Jはランウェイ24より離陸する。上空にF-15J(イーグル)が舞い上がり,機首と胴体のランディングギアを収納する。

 

「Duck10 作戦空域へと向かいます。」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

能登半島先端部の珠洲岬から北北西に60kmの上空。ここを306飛行隊のF-15J(イーグル)9機が飛んでいた。

 

その後ろには浜松基地所属のE-767が遥か上空を飛んでいた。

 

咲田の機体は珠洲岬から東に100kmの上空をたった1機で飛んでいた。

 

そして彼らのレーダーには総勢15機もの敵機が写っていた。

 

『こちらDuck1 作戦開始時間だ。全機当初の通り敵編隊へ向かえ!! Duck10はAWACSを! 頼むぞ!!』

「Duck10 了解!!」

 

咲田の機体のレーダーにも敵編隊の姿は見えていた。総勢9機の306飛行隊は果敢にも15機の敵機へと挑もうとした瞬間。

 

異変が起きた。

 

『!? データリンクブラックアウト!? 通信不良か? 他の機はどうだ!』

 

突如としてデータリンクがブラックアウトしたのだ。

大門は電子対抗手段(ECM)と判断した。しかしそれ以外のAN/APG-63 火器管制レーダー等は正常に動いているのだ。

 

つまりこの事態はECMではないのだ。

 

『Duck2 こっちも同じです!!』

『Duck3 Duck2と同じです!』

『Duck4 同じく!!』

『全機繋がらない!? AWACSに何かあったのか!? Duck10そっちがどうだ!?』

「こちらDuck10 こっちも同じくブラックアウトしました。」

『全機ブラックアウト・・・・・・一体何が起こってるんだ!?』

「大門隊長。もしかしてですが・・・・・・・」

 

この時佐渡のレーダーサイトは捉えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーダーから消えるE-767(AWACS)の姿を。

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