ようこそ実力主義者の教室へ。元脳筋は苦労する。   作:赤山大和

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1話

――――四月。

 

 

新しい出会いの季節であり。

始まりの季節。

 

 

入学式。

 

俺、月村司(つきむらつかさ)は学校へと向かうバスの中でため息をつきながら緊張から落ち着かない気持ちを静める。

 

 

身長が180cmを越え今までの鍛えてきたお陰で無駄に体格が良く、やや強面の俺が目の前に立っていてるせいか目の前に座っている女生徒が怯えているように見えるのは少しショックだ。

 

 

これで、俺が中学の時代に暴力事件を起こしている事が知られれば逃げ出されるかもしれない。

 

 

何故、暴力事件を起こした俺がこれから入学する名門校、

高度育成高等学校に入学出来たのかは未だに謎ではある。

 

普通は札付きの不良の入学を許可する名門校など無いと思うのだが。

 

それとも中学の頃に幾つかの大会で結果を残した事が評価されたのか?

 

だとすれば微妙な気分だ。

俺としては高校生活ではこう、なんと言うか普通の青春というものを送りたい。

 

 

中学の頃のように脇目も振らずに己を鍛え続けた挙げ句に暴力事件を起こして倦厭されるような日々から脱却したいと望んでいるのだしな。

 

 

この学校は地元からも遠く、しかも外部からも隔離されているという新しい生活を送る上では理想的な学校なのだから。

 

 

そんな益体の無いことを考えている間に目的地に着く。

 

バスから降りた制服に身を包んだ少年、少女達と同じ方向へと歩めば天然石を加工した門が待ち構える。

 

 

東京都高度育成高等学校。

 

門をくぐり抜け、今日から俺の新しい学校生活が始まる。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

さて、門をくぐり抜け、案内板を確認しながら自分のクラスへと向かう。

 

1学年4クラス。40名。1学年で160名というのは多いのか少ないのか? 学校の規模にしては少ないと見るべきか?

 

 

まぁ、そんな事よりも自分のクラスは1-Cか。

仲良く出来そうな相手がいると良いのだが。

 

 

ガラリと教室の扉を開くと既にクラスの半数以上の生徒がいるのだがややガラの悪い生徒が目につく。その中で目を引いたのは3人。

 

1人は巨漢の外国人。俺よりもガタイが良い。

戦えば負けるとは思わないが苦戦するだろう。

 

 

もう1人やや長めのヘアースタイルの男。

妙な雰囲気のある男だ。特に何かがあるわけでもないのに少し気になる。

 

 

そして最後の1人は長い銀髪の美少女。

周りとは雰囲気の違う大人しそうな少女だからか目を引くものがある。本を読んでいて此方には何の注意も払っていないのだがその横顔に少し見惚れた。

 

 

少し呆けてしまったが自分の名前のあるネームプレートを確認して席に座る。

 

 

廊下側の後ろの席。

 

俺としては人と話すのが得意という訳ではないのでとりあえず時間を潰す為に文庫本を取り出す。

 

読む本はライトノベルが多いが高校では推理小説や歴史小説等にも手を出して見たい。

 

コナン・ドイルとか江戸川乱歩とか興味があっても手を出してないからな。なんと言うか敷居が高いというか。

 

ん? 視線を感じてそちらを見ると先ほどの少女が此方を見ている。

あれ? 本を読んでいるので興味を持たれたとか?

 

ごめんなさい。

俺が読んでいるのはライトノベルなんです。

読書家としての俺のレベルは低いのです。

 

 

せっかく興味を持たれたっぽいのに本のタイトルとか聞かれたら不味いな。クソっ!

 

幸いにも声をかけられる事もなく数分ほど立ってから始業を告げるチャイムがなった。

 

ほぼ同時にスーツを着た30代後半のメガネの男性が教室に入ってくる。

 

「新入生諸君、入学おめでとう。私はCクラスを担当する事になった坂上数馬だ。普段は数学を担当している。この学校では学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任として君たちを指導する事になるがよろしくたのむ。今から1時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配布させてもらう」

 

前の席から見覚えのある資料が回ってきた。

合格発表の時に貰ったものだ。

この学校が外部との連絡を禁止していること等の特異な部分の説明がされている。

 

 

「次に学生証カードを配らせて貰う。これを使い敷地内にあるすべての施設を利用したり売店で商品を購入する事が出来るようになっている。クレジットカードのようなものだ。ただし、ポイントを消費する事が出来るようになっているので注意が必要だ。学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら、何でも購入する事が可能だ」

 

何でも購入可能か。

何でもの範囲が気になるな。

 

 

「施設では機械にこの学生証を通すか、提示する事で使用可能だ。使い方はシンプルだから迷う事はないだろう。それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれる事になっている。お前たち全員、平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。なお、1ポイントにつき1円の価値がある。それ以上の説明は不要だろう」

 

その説明に教室内がざわついた。

 

10万ポイントは10万円ってことで大金だ。

やっぱ入学祝いみたいなものがあるんだろうな。

 

それに入学して実際に寮生活を始めて必要になった物とかを揃える為にかかる費用を考えて多く貰えたのだろう。

それでも多いが。

祝儀って考えると来月からはもっと少ないのだろうな。

 

 

「ポイントの支給額が多い事に驚いたか。この学校は実力で生徒を測る。入学した君たちにそれだけの価値と可能性がある。その事に対する評価みたいなものだ。遠慮することなく使いたまえ。ただし、このポイントは卒業後には全て学校側が回収する事になっている。現金化する事は出来ないからポイントを貯めても得はないぞ。振り込まれた後、ポイントをどう使うかは君たちの自由だ。好きに使いたまえ。仮にポイントを使う必要が無いと思った者は誰かに譲渡しても構わない。だか、無理やりカツアゲするような真似だけはしないように? 学校はいじめ問題にだけは敏感だからね」

 

 

あれ? 来月からの支給額について触れないのか?

毎月10万も貰えるって事は無いと思うのだが。

てか、毎月10万だと1月だけで40人×10万×4クラスで1600万。これを3学年に12ヶ月。

 

それを3年間とかありえないよな。

何億になるんだよ。

 

「何か質問のある生徒はいるかな?」

 

質問した方がいいだろうし手を上げる。

 

 

「おや月村君か。何かわからない事があるのかな?」

 

 

「はい。来月に支給されるポイントは幾らなのか教えて欲しいのですが」

 

これがわからないとどれ位のポイントを残した方がいいとかわからないからな。

 

「先ほど伝えたように学校は実力で君たちを評価する。つまりはそういう事だ」

 

 

実力で此方を評価かいまいちわからない。

そう言えば、この教室とかもだけど監視カメラがついているし普段の授業態度とかか?

それとも月末にテストがあってその結果がポイントに影響するとか?

 

 

「他に質問はないようだね。では良い学生ライフを送ってくれたまえ」

 

 

 

先生が出て行った教室。

俺の質問のせいか少し戸惑った雰囲気があるか。

そんな空気の中で、

 

 

「よう、ちょっと話に付き合え」

 

 

俺が少し気になったクラスメイトの男が声をかけてきた。

 

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