バトらない自分のガラルな日々   作:アズ@ドレディアスキー

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10話 挑戦者達(後)

 しばらくポケモン達と戯れた後、ホップはリーグカードを俺に渡して、ターフジムに向かって走って行った。

 どこまでも素直で真っ直ぐな気持ちの良い奴だった。

 

 そんな彼と戯れてたポケモン達はご機嫌だ。遊んでもらえて嬉しいチュリネ達。

 撫でてもらえて満足なドレディア、ドヒドイデ、ウツロイド。

 ハイタッチが出来てノリノリのラティアス。

 俺以外に構ってもらえて興奮して両腕をくるくる回しているテッカグヤ。

 イタズラは阻止されたけど満足げなニコニコ笑顔をするエルフーン。

 

 ……と言うよりお前、その笑顔。やったな?俺の見えない所でやりやがったな。

 

 まぁ、もう行ってしまったので確認する術は無いが、軽いイタズラである事を祈るしかない。寧ろこの短時間でエルフーンにイタズラされる程心を許されている証だ。多分どこかにもこもこを詰められたと思うが勲章として受け取って欲しい。

 

「うわー、大きかー」

 

 去年も体験したが、この時期は作業が出来ないな。次から次へとジムチャレンジャー達がやって来る。今度は誰か?と確認するとモルペコを連れたアノ子が入り口で立っていた。

 それとその子を応援している人達が遠くから見守っているのも見えた。

 

「こんにちは、うちのテッカグヤ大きくて可愛いでしょ」

 

「こんにちは、こんな大きいポケモンみるの初めてやけん。ほんと大きくて凄か」

 

 さっきから感嘆しか上げてないが、それだけ衝撃が大きかったんだろう。俺が近くにいるのに、未だに呆けているのが証拠だ。ただ可愛いがさり気なくスルーされたのは地味に傷ついてる。テッカグヤ……可愛いのに。

 

「それで、ジムチャレンジャーのマリィちゃんだよね?」

 

「?!びっくりした……。お姉さん前にあたしと会ったことあると?」

 

 もう一度声を掛けるとしっかりと認識してくれたようで、ついでに少し驚かせてしまったらしい。

 

「いや、初対面だよ。でも開会式見てからファンになったんだよね。はいこれ。差し入れだよ」

 

 そう言って、ステッカー、きのみに加えてくろいメガネを渡す。彼女のパーティーならどの子でも使えるはずの道具だ。

 

「ありがとう、エール団や家族以外に応援されるの初めてやけど、応援に応えられるようがんばる」

 

 俺が差し入れを渡すと丁寧にそれを受け取った。素直な子な印象を受ける。そして多くの人に応援されているにも関わらず、自然体でいられる芯の強さも持ち合わせてる。

 

うらら!

 

「モルペコもありがとうだって」

 

「そっか、君も応援してるからな」

 

 しゃがんでモルペコに目を合わせ、そう答える。

 

うらら♪

 

 そうして短い間だったが俺がリーグカードを貰った後、お互いにさよならの挨拶をし、マリィはターフジムに向けて歩いて行った。

 地元の期待を一身に背負っているのに、応援を力に変えられる凄い子だ。

 

 俺はそんな彼女を応援しよう。

 きっとそれが彼女の力になると信じて。

 

 そう考えていると、遠くで待機していたエール団の方々がこっちにやって来た。

 はい、何か用でしょうか?

 ……はい、ふむふむ。

 お気持ちはありがたいのですが、流石にメイクと服まで準備して応援する程ガチれないので、タオルだけ買わせて下さい。

 はい、一緒に彼女を応援しましょう。

 

 

 

 エール団の方から買ったタオルを家のリビングに飾って、農場のポケモン達がいる所に戻ってくる。

 それにしてもあのタオルのデザインをした人は凄い。マリィの可愛さとクールさをよく表現している。

 

「おー、大きいー」

 

 Here comes a new challenger!とばかりに次々とチャレンジャーがやって来る。チャレンジャーの入れ食い状態だな。

 

 今度は誰だろうと入り口を確認すると、ボブカットの髪型にニットベレーを被った少女が立っていた。もしかしなくてもユウリだろう。

 

 実は録画してある開会式の動画を見るまで、ユウリかマサルか分からなかったのだが、確認した時は少し喜んだ。すまないマサル。野郎じゃ俺はあまり喜べんのだ。

 

 そんなどうでもいい事を考えつつ、棒立ちしている彼女の所に歩いて行く。

 

「こんにちは、ユウリちゃん。俺の農場にようこそ」

 

「あ、こんにちは……ってえっ?わたしの名前?それに"俺"?お姉さん、あれ???」

 

 急に話しかけられた内容に少し混乱したようで、彼女の頭の上にヒヨコが飛んでいるのが幻視出来た。

 

「あはは、俺の自分の呼び方だから余り気にしないで。あと、君の名前は開会式で見たからかな。チャンピオンに推薦されてるんでしょ、応援してるよ。はい、これ差し入れ」

 

 そう言い切ると、チャレンジャー応援セットに加え、きあいのハチマキを渡す。

 彼女の手持ちは知らないので、どの子でも使えるはずのアイテムを渡す。多分いざという時に使えるアイテムのはずだ。

 

「これ貰っていいんですか?ありがとうございます!」

 

 彼女からは元気の良い返事が返ってきて、俺に彼女のエネルギーを分けてもらった様な感覚がした。

 

「あのー、あのポケモンお姉さんのポケモンですよね。なんて名前なんですか?どこでゲットしたんですか?」

 

 初めて見るポケモンに興奮しているのか、目を輝かせながら質問をしてきた。ちょっと答え辛い物もあるが、上手くぼかしながら答える。

 

「あの子の名前はテッカグヤだ。ゲットした場所はアローラ地方なんだけど、何処に生息してるのかまだ明確に分かってないらしくてね。今のアローラには居ないと思うよ」

 

 このテッカグヤの生息地について、俺は詳しく知っているが、これも国際警察の方からストップがかかっている事案だ。と言うよりも行く方法が今の所判明していなかったりする。ウルトラ調査隊が居ないのでワープライドが出来ないのだ。

 いつか里帰りをさせてあげたいので、国際警察の方々にはウルトラ調査隊を探してもらっている。

 

「はー、テッカグヤって名前なんですね。他にもわたしが見たことないポケモンが一杯居るんですけど、遊びに行っても良いですか?」

 

「ポケモン達が受け入れてくれたなら俺は構わないよ。あ、でもテッカグヤは撫でるときは強めにね。それとあの黄色いブルンゲルみたいなポケモン、ウツロイドって言うんだけど、帽子みたいだからって絶対被っちゃ駄目だからね。気を付けてね」

 

「やった!わかりました!気を付けます!」

 

 そう言うと彼女はカバンからポケじゃらしを取り出してポケモン達の方にかけていった。

 

 良く考えてみれば、ホップがポケモン達と構っていたとき、俺はモフリエストになっていて気が付かなかったが、ウツロイドともコミュニケーションとってたんだよな……。

 注意もして無かったしニアミスすぎる!あっぶねぇ!今気付いて嫌な汗が背中を伝った。

 

 いや、ホップ。エルフーンの件も含めてすまねぇ。今度また会うときが有ったら何かお詫びの品を渡すよ。

 

 俺がそんな事を考えている内にユウリは既に多くのチュリネ達に囲まれていて。その数の多さからか、若干押されつつもしっかりと構っている。

 

 こんなほっこりとしたシーンを見ていると、彼女がチャンピオンになる程のトレーナーになるとは思えないが、多分なるのだろう。

 余りゲームの話と言う色眼鏡を通して見るのは彼ら彼女らに失礼かも知れないが、開会式であの四人が同時に出てきた時からどうしても頭に浮かんでしまうのだ。

 特にユウリは元プレイヤー視点の人物と言う事も有り、それが顕著だ。

 

 だから俺は彼女の物語を見届けよう。

 見届ける中で、色眼鏡を外していけるよう努力しよう。

 

 ……エルフーン、彼女の帽子のポンポンを増やすな、大きくするな。

 

 そしてしばらくポケモン達と遊んだ彼女も、リーグカードを渡して、ターフジムに向かって行った。

 

 なお、この後何人か他のジムチャレンジャーがやって来たが、その中にビート君の姿は無かった。

 せっかく彼の今後を見据えてせいれいプレートを準備していたのに無駄になってしまった。




すみません、今までの更新は、自分の執筆ペースを超えた頻度だったようで遂に上げつつも作っていたストックが無くなりました、推敲の時間も欲しいですしこれからは更新頻度が下がると思います。
楽しみにしていただいている方には申し訳無いのですが、ゆっくりお待ちいただければと思います。

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