バトらない自分のガラルな日々   作:アズ@ドレディアスキー

17 / 26
15話 小さなお客さん達

 今日も今日とてチュリネ農場は平和である。

 

 心地よい風が頬を撫で、土の香りが心を落ち着かせる。

 ちょうど昼食後の空いた時間で各々のポケモンがのんびりと自由に過ごす、何の変哲も無い日常の1ページ。

 

ポップンカラン

 

 そんな長閑な休みを取っていると、石垣を超えてこちらにふわふわとバケッチャが風にのって飛んで来た。

 すぐに迷子か?と思ったが、何匹かのチュリネ達がバケッチャの方に走って行ったので、飛んで来た子はチュリネの知り合いのちょっとしたお客さんらしい。

 

 この農場にはテッカグヤと言う巨大なカカシ代わりのポケモンが居るが、全てのポケモンがテッカグヤに恐れて近づかない訳じゃ無い。

 テッカグヤはどうやらポケモンが近づいてきた時に、悪さをしようとするポケモンだけを狙って威圧しているらしい。特性にいかくもプレッシャーも無いが、レベル差とも言える実力差+巨体の圧でやっているみたいだ。

 

 そんな訳で、ターフタウンのポケモン達がたまにこの農場に入り込んで、この農場のポケモン達と交流する事が起きる。

 先程のバケッチャは走ってきたチュリネ達とすぐに遊んでいるので、以前に会ったことが有るのだろう。そのチュリネ達とバケッチャは踊りの様な、儀式の様なよく分からない遊びをしている。

 ……バケッチャからはおどろおどろしいナニカは出て居ないので"のろい"で遊んでいないとは思うが、もしそうだったらヤバすぎる。

 

ろとわふ〜

 

 のんびりと、チュリネ達とバケッチャの方を眺めていると、今度は別の方向から鳴き声がして来た。

 そこにはふわふわと石垣を超えて農場にやって来たマホミルが居た。

 マホミルが農場にやって来ると、今度は別のチュリネ達がマホミルに向かって行き、遊び始める。

 

 そんなクルクル回って遊び始めたマホミルを見て、俺はその進化系であるマホイップに思いを馳せる。

 マホイップは可愛い。あざとい見た目に、あざとい動き。あざといの塊だ。でも良い、取り繕っているのでは無く自然にそうなっているのだから、いくらあざとくても何も問題は無い。

 何もしてない時にしているキョトンとした顔、歩いている時の揺れる体に聞こえてくる足音、嬉しさを全身で表す所と笑顔。良い。

 

 色々マホイップの事を考えて、マホイップをうちに迎えて一緒に過ごしたくなるが、思い留まる。

 ただでさえ、現状の手持ちの数も多いのにこれ以上増やす事は、加える子もそうだし今居る子にも世話が行き届かなくなる事になる。

 これ以上に手持ちを増やす事は俺のキャパオーバーになってしまい、俺も俺のポケモン達も不幸になってしまうだけだ。故に俺はガラルで新しいポケモンは一匹もゲットしていない。

 

 それに、マホイップと交流したい時はナックルシティのマホイップカフェに行って、そこに居るマホイップと交流すればいい話だ。

 そこそこの頻度で通うからか、店のマスターにも顔を覚えられて居る。

 

 ただ、カプチーノをすばやく飲み干して、マホイップと交流しながら感極まってつい口から零してしまった「マホイップ最高」の言葉に何とも言えない複雑な表情をしながら「うちのマホイップが褒められるのは嬉しいけど、少し複雑だね」と言わせてしまったのは、少し悪かったと思っている。

 直後にカプチーノも美味しかった事を伝えたので問題は起きずに未だに通えているが、カフェのマスターは俺の『マホイップ>カプチーノ』の式が絶対に変わらない事に気が付いている。そこは俺がカフェに行く目的がマホイップなので多目に見て欲しい。

 

 あと、カフェのマスターからはバトルを提案された事が有るが断っている。バトルをしたらまず間違いなくカフェが吹っ飛ぶので、そんな事で憩いの場を壊したくない。

 

ピィーッカァ!

イッブイ!

 

 今日はよく小さなお客さんが来る日だな。目を向けなくても、鳴き声で誰が来たか分かる。

 ピカチュウとイーブイである。残念ながらポケモンごっこの子供達では無い。

 と言うよりポケモンごっこ達を俺は見たことが無い。ゲームではあんなに4番道路を走っていたのに、一人も居ない。祭りの時には仮装でなっている子は居たが、流石に普段着にはしないらしい。

 とても……とても残念だ。

 

 そんな考えをしている内にやって来た二匹はチュリネ達と合流し、遊ぶ相談をし始めているようだ。そして、直ぐに相談が終わると二匹のチュリネ達はこちらにやって来て倉庫の方を指差し始めた。

 

「ん?何か必要なのか?」

 

チュピ!

チュピピ!

 

 俺がそう答えると、近くのチュリネが頭の葉を使って輪っかを作った。

 

「ボールが必要って事?」

 

チュピ♪

チュッチュピ♪

 

 どうやら当たっていたようで、俺の服の端を引っ張って早く倉庫に連れて行こうとしている。

 

「分かった分かった、今すぐ出すから待ってろ」

 

 引っ張るチュリネ達に気を付けながら、倉庫に向かう。

 隣を歩くチュリネ達はスキップをするように歩いている。

 

 倉庫に着き、倉庫の中からチュリネと同じ位の大きさのボールを渡すと、それを頭の上に乗せ、ピカチュウ、イーブイや他のチュリネ達が待っている所へ走り始めた。

 

 

 先程まで座っていたベンチに戻ると、来客が多いからか、何時もより農場が賑やかになった気がする。

 

 多くのチュリネ達は元気よく遊んでいるが、中には昼寝をするために離れた場所にまとまっているチュリネ達も居る。

 

イヌヌワン!

 

 ボールで遊んでいる子達の所に石垣を超えて、今度はイヌヌワンがやって来た。……いやワンパチだった。語呂が良すぎてたまにどちらが名前なのか分からなくなってしまう。進化系の名前がパルスワンなだけに違和感も無いからだ。

 

 周りのポケモンは、突然乱入してきたワンパチに驚くも、直ぐに順応して遊び始める。

 あの異常にボールに執着している所を見ると、もしかしたらあのワンパチの特性はたまひろいかも知れない。でも、もともとワンパチと言うポケモン自体がボール遊びが好きなので、そうでは無いのかもしれない。

 ただ……このワンパチ、どこかで見たような気がする。

 

「おーい、ウールー!待っておくれよー。ワンパチも戻ってきておくれよー」

 

 あっ。と聞こえてきた声で全てを察してしまった。

 このワンパチ、ヤローさんの所のワンパチだ。

 

 おそらく一緒に逃げ出したウールーを追いかけていた所、ボール遊びをしている所を見つけてしまい、我慢出来ずにこっちに来てしまったんだろう。

 

「みんな!ワンパチを捕まえるのを手伝って!」

 

 そう俺が大きな声で言うと手持ちのポケモン&チュリネ達VSワンパチの追いかけっこが始まった。

 俺が思ってた以上に多くのポケモンが追いかけ始めたからか、ワンパチは驚いて必死に逃げ始めてしまう。

 

 後から考えてみれば、小さいボールを倉庫から出して、それでワンパチを釣るなど他の方法があったにも関わらず、こんな強引な手段を取ってしまったのは、俺もびっくりして良く考えて無かったからだろう。

 

 結局、ワンパチが捕まったタイミングと、ウールーが捕まったタイミングはほぼ一緒だったようで、ウールーを連れたヤローさんに疲れてぐったりとしたワンパチを届けた時は、俺は不毛さを感じて少しため息を吐いてしまったが、ヤローさんは事情を聞いて面白かったのか、からからと笑っていたのが印象的だった。

 

 

 

 チュリネ達を遊ばせつつも、しっかりと農作業を進め終えると、空は茜色に染まっていて、先ほど一緒にいたポケモン達が帰り始めた。

 

 バケッチャは日が高い時よりも、むしろ若干元気になっており、ふわふわと空に飛んでいった。

 反対にマホミルは、少し疲れたのかゆっくりと石垣を超えていく。

 ピカブイ組も似た感じで、動きに俊敏性が無く、ゆっくりと去っていった。

 

 夕日が作り出すどこか寂しい雰囲気が、別れに手を振り続けるポケモン達の様子を見ている俺を感傷的な気持ちにさせる。

 

 ずっとそのままノスタルジーに浸っているわけにも行かず、俺は夕食のための準備を進めるため、食料庫に向かう。

 

 昼の時は、ポケモンフーズメインの料理を考えていたが、たくさんチュリネ達が遊んでいてガッツリとした物を食べたいだろうから、カレーを作る事にする。あと、疲労回復のためにも酸味が強めのイアの実とゆでたまごを加える事にしよう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。