バトらない自分のガラルな日々   作:アズ@ドレディアスキー

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やっと本編


3話 農家の一日(朝)

 ポケモン世界に着いてから大体2年近くになる。

 

 この世界に着いてからしばらくは、ジムのお世話になっていたが、その後に農家として独立した。

 それまでにジムでのゴタゴタや国際警察とのゴタゴタなどあったが、今じゃガラルの優しい人々とターフタウンの綺麗な空気と水、そして数多のポケモン達に支えられて、のんびりと農家をやらせてもらっている。

 

 少し多めの朝食を取ったあと、寝間着からいつものオーバーオールにゴム長靴、日よけ帽子を被り、イモイモしい少女に変身する。

 

 そして最後に自分の手持ちポケモンが入っているボールをボールベルトに括り付け、落ちないようしっかりと固定した。

 

 先ずは家を出るとポケモン達が寝ているであろう厩舎に向かう。歩いていると、ターフタウンの特徴的な段々畑が朝霧を通した朝日の柔らかい光に包まれ、どこかノスタルジックな気持ちにさせてくる。

 

 もう既に何匹か起きて厩舎を出ているようで、チュピチュピと鳴きながら日光浴を始めている子もいるようだ。

 

 そして厩舎に着き、中に入るとそこには多くのチュリネ達が各々好きなように過ごしていた。

 

 

 そう、俺は今チュリネ農家を営んでいるのだ。

 

 

 ジムで過ごしていた時、自分で何か出来ないかと考えていた時期に、これを思いついた。チュリネの頭の葉っぱには滋養強壮効果があるので、それで農家として生計を立てられないかと。

 幸いにもゲーム時代のボックスも使えるようだったので、ボックスに居た多くのチュリネ達に協力してもらえば可能だった。

 ただ一人で出来るはずもなく、ターフ農場の方々、ジムの方々、バウタウンの漢方薬屋さんなど多くの方にサポートしてもらって、何とか開業に漕ぎ着ける事が出来た。

 

 その後もポケモンフーズの独自調合、ケアの方法、トリミングの時期、天日干しの方法など多くの試行錯誤を経て今の状態に落ち着いた。

 

 今では煎じて飲めば元気になる上に、香り高いお茶としても使えるとして、ありがたい事に結構良い評判を得ている。

 

 そんなチュリネ農場だが、一日の始まりは厩舎に居るチュリネ達を外に出す所から始まる。

 

「ドレディア、チュリネ達をお願い」

 

 ベルトからプレミアボールを外し、ドレディアを出す。キラキラとした光と共に出て来たあと、ピュイと鳴き俺に対して少し頷き、厩舎で遊んでいるチュリネ達の方に向かった。

 

 ドレディアにはいつものチュリネ達の引率みたいな事をして貰っている。進化先と進化前のコンビだからか、お互いに相性が良く、仲良く一緒に行動するのだ。

 作業を全部ドレディアに任せるわけには行かず、俺もチュリネ達の方に向かう。

 

 まだ何匹か寝床の藁の上で舟を漕いでるのだが、一匹一匹抱えて外に連れ出し、各々のお気に入りの場所へ連れ出す。

 

 最初に抱えた子は良く石の上で日向ぼっこをするのが好きな子。

 次に抱えた子は川を眺めたり水遊びが好きな子。

 その次に抱えた子は、今ドレディアと一緒に居る子と走り回るのが好きな子。

 

 そうして一匹ずつ抱えては外に連れ出す。中には俺に抱えられたいからか、たぬき寝入りしている子も居るし、ずっと俺の後を着いてくる子も居る。そういった子達の微笑ましさに頬を緩めつつ全員を厩舎から出すと、今度は厩舎の掃除を始める。その際ベルトから2つ程ボールを外した。

 

「ラティアス、ウツロイド、お掃除手伝って」

 

しゅわーん!

べのめのん!

 

 プレミアボールからラティアス。そしてゴージャスボールから少し明るすぎるくらいの光と共に全体的に黄色いウツロイドが出てくる。

 

 2匹は手慣れた様子で器用に物置の箒を掴み、厩舎を掃いていく。その作業自体、すぐに終わるので俺は次の作業の為にリヤカーを持ってくる。

 掃き掃除を終えると今度は寝床の藁を干す為に、リヤカーに乗せて外に出す作業を2匹と俺でやっていく。

 

 ラティアスは俺の近くに居たいからなのか、リアカーを引くときも隣で引き、ウツロイドは機嫌が良いようで、踊るように浮かびながら藁を乗せていく。

 

 明らかに俺よりも2匹の方が力強くリヤカーを引くし、一回に乗せる藁の量も多い。そこはポケモンと人間の差と思うかもしれないが、ただ単に俺が非力なだけである。

 ジムリーダーのヤローさんなんか、2匹が運ぶ量を一辺に運んでしまえるだろう。流石はスーパーガラル人、長年の農業で鍛えられた筋肉は裏切らないらしい。

 

 ……かと言って俺が別に貧弱という訳でもない。一度建物の3階近い高さから落ちた事が有ったが、負った怪我は何と擦り傷のみ。スーパーマサラ人やスーパーガラル人など別の人種の様に考えていたが、俺もそのような人達の仲間入りをしてしまっていた。この世界の空気にはプロテイン以上のヤバイ何かが含まれているのかも知れない。

 そんな下らない事を考えている内に、藁を全て干す場所に掛け終える。

 

 次はポケモン達の為のポケモンフーズを調合するのだが、大きなミキサーに向かう前に突如として腰のラブラブボールから白いもこもこに青い角を持ったエルフーンが出て、チュリネ達の方に向かっていった。

 あのエルフーンには直接作業を手伝ってもらって無いのだが、それでも助けてもらっている面があるので自由にさせている。

 ターフの空を漂っているワタシラガを連れてきて仲良くなり、栄養豊富の種を分けてもらったり、はぐれかけたチュリネを見つけて連れ戻したり、チュリネ達と遊んだりなどだ。

 イタズラする為の機会をよく伺っているからか、観察力が優れており、周りをよく見ている。

 

 大きなミキサーの前に着くと、エルフーンと入れ替わりにドレディアがこちらにやってきた。ドレディアもラティアスと同じように俺と一緒に行動するのが好きなのだが、エルフーンはそんな彼女の気持ちを察して交代を申し出たのかもしれない。

 

 先程の2匹にドレディアを加えて作業を進めていく。どんな料理にも合う万能きのみのオボンを多め、体に良い成分が入っているラムを少々、そして今日は少し甘めの味付けのためにモモンを適量入れミキサーを始動させると辺りに甘めの匂いが漂っていく。

 その匂いに釣られてか何匹かのチュリネがこちらに寄って来てミキサーをじーっと見つめ始める。

 食べることが好きなチュリネ達だろう。いつもミキサーを回していると、まだかな〜まだかな〜とじっと完成するまでその場を離れない子達だ。

 

 ミキサーにかけつつ熱で水分を飛ばし続けると、次第に中身が粘性を持ち始める。

 そこで中身をコンプレッサーに移し押し固め、出て来た板状の物を専用の機械で切り分ける事で、ポロックもどきとも言えるものが完成した。

 

 後はこれに釜で少し燻った市販のポケモンフーズと和えればポケモン達のご飯の完成だ。

 

 量が量なので今出ている手持ちのポケモン達全員に手伝ってもらい、いつもご飯を食べる場所まで運ぶ。

 そこには多くのチュリネ達が待っており、先程ミキサーの前に居たチュリネ達なんかは目を輝かせている。

 

 盛り付ける前に出してない残りの2匹を出そうとするが、片方は下手をすると事故が起こるかもしれないので、スペースの空いてる場所に誰も居ない事を確認した。

 

「テッカグヤ、ドヒドイデ、ご飯だぞー」

 

かがよふ!

ぽにぁー!

 

 ドヒドイデの方はポテッと出て来たのに対し、テッカグヤはその白く大きな体に相応しい重量感の有る地響きと共に現れた。農業を始めた当初はその地響きに、何事かと周りの農家さん達がやって来ていたのだが、最近ではこの農場の日常と認識され、お昼の合図とも認識され始めている。

 

 手持ちのポケモンとチュリネ達のお皿と、テッカグヤ用のブラスターで持てるマグカップにそれぞれポケモンフーズを盛り付け、全員分を盛り付け終えると、いただきますの合図と共に食べ始める。

 

 俺もテーブルに荷物を置き、長椅子に座ると昼食用のサンドイッチと作ったポロックもどきを摘みながら昼休憩を過ごし始めた。

 

 サンドイッチの具はヒメリのジャムだけなのだがそれだけでも十分過ぎるほどに美味い。

 まずパンは食パンをスライスした物だが、これがすごくふわふわのもちもちなのだ。日本のスーパーなどに置いてある物と比べると、まず密度が違う。掴んで持ち上げるとそこにはしっかりとした重さがあり、食べごたえがある。香りもジャムに負けない程の小麦の香りが感じられる。

 ターフ農場の産地直送や産地地消とも言っていいこのパンは実に素晴らしい。

 メシマズの国が元ネタの地方とはとても思えない味だ。

 

 持っている水筒を開け、喉を潤しているとラティアスが体を椅子の上に乗せ、頭を膝の上に乗せてきた。

 それに続いてテッカグヤ以外のポケモンが俺の側に寄ってきた。その巨体からかあまり動く事のできないテッカグヤは少し寂しそうに鳴く。

 

「ゴメンなテッカグヤ、でも後でちゃんと構ってあげるから」

 

 そう告げると寂しそうな鳴き声は止まり、食事を再開した。

 悪いとは思うがテッカグヤに動かれるとあたり一帯が大惨事になる上に、俺も前の世界に比べて頑丈になったと言えど、この至近距離でブラスターを放たれるとやけどを負うかもしれない。……それでもやけどで済んでしまう辺りがすごい。

 

 ラティアスは頭の辺りを、ドレディアは花弁の部分、ウツロイドは帽子のような部分、エルフーンは顎の下、そしてドヒドイデは開いている触手の内側を針に注意しながら物凄く気を付けて、それぞれ撫でる。

 

 暫くそうしていると食事を終えたチュリネ達もこちらに寄ってきてチュピっと鳴きながらこちらを見つめる。これは彼女たちの撫でて欲しいサインなので、順番に優しく撫でてあげながら、昼の時間を過ごした。

 

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