バトらない自分のガラルな日々   作:アズ@ドレディアスキー

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へあっ?!評価バーに色が付いてる。
何というか、ありがとうございます。見たときの緊張で手汗がヤバイです。


4話 農家の一日(昼)

 食べる時間よりも撫でる時間が長かった昼ご飯の時間が終わり、食器などを片付け始め、この後手伝って貰うドヒドイデ以外のポケモン達は各々自由に過ごし始めた。

 

 基本的に俺の農場では食べ残しが発生しない。毎ターン回復する例のアイテムでは無く、文字通りの意味でだ。

 少ない量で余らない量にしている訳じゃない。むしろお代わり自由で皆お腹いっぱいになる程の量を作っている。一匹を除いて。

 

 うちにはテッカグヤという大食漢中の大食漢が居るのだ。

 物語に出てくる大食いキャラもかくやと言う食欲を持ち合わせている。あちらは質量保存の法則を無視しているが、こちらはそれに従った結果の大食らいだ。

 

 あれ?テッカグヤ?君ゲームじゃポケ豆数個で満足してなかったっけ?

 

 まぁ、それはゲーム上の仕様だとして、現実となるとその生態も合わせて、大量のエネルギーが必要になってくる。当然作ったご飯を全部平らげても足りない。

 もしテッカグヤを満足させる量のご飯を毎日作るとしたら、この農場のエンゲル係数が天元突破し、一瞬で破産するだろう。

 

 でもテッカグヤにはひもじい思いはさせていない。あの子の食事は先程のご飯ともう一つある。

ここが『ガラル地方』だからこそ取れる手段。

 

ダイマックスエネルギーの吸収だ。

 

 テッカグヤと暮らし始めた当初、テッカグヤの腹を満たすことが出来ずにどうしようか、と悩んだ時期が有った。悩んで悩んで思い出したのが、テッカグヤの故郷であるウルトラバレーの存在。

 あのぺんぺん草も生えなさそうな環境で生きてきた事を考えると、直接的なエネルギーの吸収で生きてきたのではと考えた。

 試しにワイルドエリアのエネルギーの発している場所に行き、エネルギーの吸収が出来ないか試してみたら、なんと成功した。何箇所か回る事でテッカグヤの腹を満たす事も出来、それ以来数日おきにワイルドエリアで、テッカグヤの足りないエネルギーを補充しに行っている。

 

 そうして食器を片付け終えて、使った機器の洗浄を始める。

 

「ドヒドイデ、機械のあの部分に"ねっとう"して」

 

 ドヒドイデに指示をした後専用のブラシを持って機械を掃除していく。これを怠るとまた使う時に味が混ざり、微妙な出来となるのでこの作業は欠かせない。

 

 ちなみによく、みず・どく複合タイプのドヒドイデの吐き出す水を使っても大丈夫なのかと思うが、その度に特に問題になって無いから大丈夫だろうと放置している。多分そもそも毒が無いか、解毒出来る程度の毒なのだろう。

 

 もし、はがね・どくの複合タイプがいたとしたら、その毒とは多分重金属なので問題無く見えても本格的にヤバそうなのだが、幸いにも今のところそのようなタイプのポケモンは見つかっていない。

 

 所々ドヒドイデにねっとうを打つ場所を指示し、洗い終えると、ドヒドイデは俺に手を振る様に触手を振り、近くの川へ向かった。多分使った水分を補いに行ったんだろう。

 

 そして今度はいよいよチュリネ達の頭の葉っぱのトリミングをする為に少し大きめのハサミとカゴを持って先程昼食を取った椅子に座る。

 

 俺が道具を持って椅子に座ると、それを見たチュリネ達が俺の前に並び始める。この農場を始めた当初は大声で呼んだり、手持ちポケモン達に手伝って貰っていたが、その期間はごく短い間で、直ぐに今みたいに何も言わなくても並んでくれるようになった。

 

 長椅子の上に居るチュリネを膝の上に乗せ、頭の葉っぱを検分する。そして3枚のうち状態の良い葉が2枚以上あれば、一番大きいものを切り、カゴに入れる。その中で状態があまり良くない葉っぱがあればそちらも切る。だが今回は全部状態が良かったのでそれ以上切らない。終わって膝から下ろすと、元気に先程遊んでいた場所に走っていった。

 

 そうして作業を続け、暫くハサミが鳴る音、チュリネ達の鳴き声、そしてからっとした風が草木を擦る音が周囲に流れ続けた。

 

 最後の一匹の葉っぱを切り終えると、カゴの半分くらいの量が集まった。

 今日は居なかったが、全部の葉が萎れ気味の元気の無さそうなチュリネがやって来る事がある。こういった子は切ってもあまり状態の良い葉が生えてこないので、3枚とも残し、原因を探る&治療の為にポケモンセンターに連れていくようにしている。

 

 集まった量を確認すると、それを天日干しする為に専用の網がある場所へ向かう。

 

 そこには二枚組の折り畳める網が有り、一枚の網の上に一枚一枚丁寧に広げて乗せる。網の空いてる場所を埋めると、もう一枚の網で挟み込み、近くの組まれた棒に立て掛ける。

 

 それを数回繰り返し、全部の葉を挟み終えると次の作業をする為に、少し声を張ってドレディアとラティアスを呼ぶ。

 

「おーい、ドレディアー!ラティアスー!」

 

 地上ではドレディアがそこそこの速さで、空からラティアスがやって来る。

 

 2匹とも俺の所に着くと、ドレディアは俺の横から足にしがみつき、ラティアスはおんぶのような形で後ろから俺の両肩に手を置いてきた。

 撫でられるのが好きな所を、それぞれ撫でたあと指示を出す。

 

「ふたりとも、いつもの"にほんばれ"よろしく」

 

 共に頷いたあと、2匹が互い目を合わせ少し鳴くと、ラティアスが技を発動し、周囲の日差しが強くなった。

 交代しながら"にほんばれ"をやってもらうのだが、今日はラティアスから始めたようだ。

 

 普通に干すのではなく、この"にほんばれ"をして干す作業、実は紆余曲折してたどり着いた方法だったりする。

 

 まず、チュリネ達の葉を取る作業だが、これは午前中に作業が出来ない。これはチュリネの体調と葉の状態が直結しているため、寝起きのチュリネの葉は、元気な子でも萎れている場合が多い。

 

 そこで午後から葉を取って干す作業に取り掛かるのだが、今度は時間が足りない。夜まで、または朝まで干すと、露などで干しきれず品質が大幅に落ちる。

 

 一度瞬間乾燥出来ないかと、今ボックスに居る子に"ねっぷう"を打たせてみたが、結果は葉が焦げて駄目になってしまった。

 乾燥機をターフ農場で使わせてもらう事も試したが、天日干し程の効能が出ず断念。

 

 "にほんばれ"で短時間に干し切る方法を思いつき、"ねっぷう"を打った子の特性"ひでり"であたり一面を強い日差しの状態にしたのだが、この時俺の農場はとある理由から大混乱に陥り、特性での"にほんばれ"は出来ないということが分かった。

 

 そこで技の"にほんばれ"で日差しが強い場所をコントロールして貰う事にしたのだが、一匹のポケモンだけでは使える回数の関係上、時間が足りない。そこで"にほんばれ"を2匹で交互に使ってもらう事で乾燥し切る事が出来るようになった。

 

 当時はドレディアもラティアスもにほんばれを覚えてなかったのでナックルシティで技マシンを買いに行った。これがもし技レコードだったら、エネルギーはテッカグヤに全てあげてるので、レコードを交換出来ずに、習得は困難を極めたかもしれない。

 

 干す作業を始めるとしばらくは何もないのだが、今日は資材が搬入される日なので、そろそろ着く頃だと考えていると、農場の入り口の方に大きなトラックとバンがやって来た。対応する為に網と葉っぱをドレディアとラティアスに任せ、入り口に向かう。

 

 

「こんにちは~、MCAカーゴでーす」

 

 入口に着くと企業ロゴの入った作業服を着た男性がクリップボードを持って待っていた。

 

「チュリネ農場のコウミさんですね、荷物はきのみ、ポケモンフーズ、お米で間違いありませんか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

 クリップボードを受け取り、記入された物と量をチェックし、指定された場所にサインを記入する。

 

「それでは、荷物は何処に置きましょうか?」

 

「そこにお願いします」

 

 内開きの門がちょうど当たらない場所を指差し、伝える。するとトラックの後ろにいたバンから4体のカイリキーが出て来て、トラックから一辺が人の身長くらいある箱を2体で一つ持ち出し、俺が指差した場所へ運んでいく。

 何回か往復すると全部運び終わり、バンに戻る前にこちらに手を振ってきたので、俺も振り返した。

 

「はい、ではご利用ありがとうございました。失礼します」

 

 そう言うと、作業員の人はトラックに乗り込み、バンを連れて走り去っていった。

 

 俺はそれを見届けた後、置かれた箱を運ぶために、日光浴をしているテッカグヤに声をかける。

 

「おーい、テッカグヤー、重い荷物を運びたいんだー。手伝ってくれー」

 

 ふぃぅーん!と返事を貰うと、俺は一旦テッカグヤをボールに戻し、そして丁度倉庫と届いた荷物の間に改めて出す。

 

 テッカグヤが箱を運ぶ前に、近くにポケモン達が居ない事を確認する。

 そしてテッカグヤが大きな両手(?)を使い箱を挟むと、ゆっくりとクレーンの様に倉庫の前に置いていった。全部終えると俺は一旦家に戻り、綺麗なタオルと霧吹きを持ち出すと俺の意図を察したのか、テッカグヤはすぐに片手を差し出し、乗ってくるように催促した。

 

 靴を脱いで、跨るように乗ると、丁度テッカグヤの頭の高さの辺りまで持ち上げられた。初めの頃はあまりの高さに動けなかったりもしたが、今では普通に動ける。体を捻って頭の上の尖った部分を霧吹きで水を掛けたあと、タオルで拭いていく。

 何かコーティングのようなものが有るのか、汚れなどは全く無いので、基本的にマッサージみたいなものだ。

 

 片側を終えると、今度はもう片方を別の腕に乗りながら頭を拭いていく。

 そしてそれが終わった後、顔と首の辺りを拭こうとするのだが、霧吹きを顔に向けると毎回口を開けて待っている。どんな生き物でも霧吹きを口で受け止めるのが好きらしい。

 

 そして、全部吹き終えると、再びテッカグヤは日光浴を始める。

 

 俺は倉庫の途中に居たウツロイド、ドヒドイデを連れて向かい、箱を開けて中に詰まっている小分けされたダンボールを、2匹と協力して倉庫の中に運んでいく。ドヒドイデは頭の上に二本の触手で支えながら、ウツロイドは浮きながらダンボールを抱える。

 

 相変わらずどくタイプに食品を扱わせているが、多分問題無い、大丈夫、そう信じてる。


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