バトらない自分のガラルな日々   作:アズ@ドレディアスキー

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5話 農家の一日(夜)

 量が量な為時間が掛かったが、全部運び終えるとダンボールから、ウイのみ、バンジのみをそれぞれ一個ずつ取り出し手伝ってもらった2匹にそれぞれ渡す。ちょっとしたご褒美だ。俺もモモンのみを手に取り齧り付く。

 

 倉庫の入り口から空を見上げると日がだいぶ傾いてきており、そろそろ天日干しも終わる頃だ。

 ドレディア、ラティアス、テッカグヤ用にウイのみとイアのみをそれぞれポケットに入れた。

 

 エルフーンの分は無い。と言うよりあの子は勝手に持っていく。

 こうして食糧庫から出ると、終わったタイミングを見計らったかの様に、エルフーンが数匹のチュリネ達を連れて食糧庫の方へやって来た。

 

「おーい、夕飯もあるから程々にしろよー」

 

 そう声をかけると、分かってるんだか、分かってないんだか、ニコニコとこちらに対して手を振ってきた。まぁイタズラ好きだが、今まで農作業の邪魔は一度もしてきた事がないので多分大丈夫だと考え、近くのテッカグヤに向かう。

 

 ブラスター部にちょこんとイアのみを乗せると、器用に顔の部分にまで持っていき、もくもくと食べ始めた。大きさを考えると本当に器用に使っている。

 

 そして天日干しのところに向かうと、少し疲れ気味の2匹が待っていた。それを労る様に2匹を撫でた後、ウイのみを渡す。

 2匹がきのみにぱくついてる間に、網に挟まれた葉っぱを触る。しっかりと水分が抜けカラカラに乾いていたので、問題ない事を確認した。

 

 葉を傷をつけないように網を抱え、パッケージの作業場に移動し、網を外して2枚一組で透明なポリ袋に詰めていく。

 全部入れた後、乾燥剤をそれぞれの袋に入れ、専用の機械で袋を閉じる。

 

 最後に成分表と、チュリネ農場のデフォルメされたチュリネのシールを貼って完成だ。

 

 後は緩衝材と共にダンボールに詰め、まとまった数が集まるのを待って出荷するだけだ。

 

 一通りの作業が終わり、近くの時計を見ると、もうそろそろ夕食の準備を始めないといけない時間になっており、調理場で準備を始める。

 献立だが、今日はガラル特有のカレーだ。量が多いので業務用洗米器&炊飯器と、先程使用した釜を使う。

 

 ところでゲームの主人公はキャンプでカレーを作っていたが、ルーばかり作っていてお米はどこから調達しているのだろう?ダイマックスカレーなんか本当に何処からお米を持って来ているのか謎だ。

 

 それにルーのクオリティばかり注視していたが、アウトドアのカレーはどちらかと言えば飯盒でご飯を炊く作業の方が大変&大事で、適当に作っても何とかなるルーとは違い、お米の炊き加減で大幅に味や食感が変わってくるのだが……まぁ、ゲームとしてオミットされた部分だろう。

 

 米を洗米器に放り込み、機械を回していると何匹かのポケモン達が手伝いに来てくれたのでそれぞれ指示を出す。ラティアスは洗米器に米を放り込む作業と、洗米後の米を炊飯器に持っていく作業。ウツロイドはルーをかき混ぜる作業。ドヒドイデとチュリネ達はご飯の炊きあがるタイミングの確認。ドレディアとエルフーンは食器の準備とチュリネ達の誘導。

 

 テッカグヤはそこに居るだけで仕事をしている。言ってしまえば超大きい案山子だ。

 カレーなどを作ると強い匂いに釣られて野生のポケモンがやって来ることが有るが、テッカグヤが居るだけで野生のポケモンがよって来なくなる。

 

 それでも以前何匹かのヨクバリスに食料庫を漁られた事件が有ったが、その時は今ボックスに居るノーマルタイプ絶対ブッコロガール(性別不明)と共に、誰に手を出したかを分からせてやるため、挨拶しに行った。農家は農作業を邪魔する輩を絶対許さないのだ。

 

 刻んだ野菜にオボン・オレンを均等に、クラボ・ネコブ少々を鍋に投入し炒めてもらい、小さくなってきた所に水を投入し煮込む。

 

 ……それにしても主人公がルーを溶かした状態から火を起こして煮込むとか、調理法が致命的に間違っている気がする。野菜に火が通ってない状態になりそうな物だが、リザードン級だと全部しっかりと火が通っているのだろうか?まあ、こちらもまたオミットされただけだろう。

 

 強火でしっかり煮込んだ所にルーを投入し、しっかりと溶かす。

 次第にお米も炊きあがり始めて、テーブルに持っていく様子が見える。

 そして最後にルーの入った鍋だが、とてもじゃないが俺じゃ運べないので、やけどをしないように気を付けながらポケモン達に運んでもらう。

 

 食材がテーブルの隣に全部集まると今度は盛り付けを始める。ご飯を俺が、ルーをウツロイドが皿に盛っていく。

 

 全員に回った後、いただきますの合図と同時に食べ始める。口に含むと舌先にピリっとした辛さを感じる、実にスタンダードなカレーだ。無理やりゲーム的美味しさを当て嵌めると、マホミル級だろうか。自然と次の一口が食べたくなる味だ。

 

 周りを見渡すと、ポケモン達がまくまくと勢いよく食べたり、熱くてちょびっとずつ食べたり、近くのポケモンとコミュニケーションをとっていたりしている。

 

 こうしてポケモンと同じものを食べるのは、ただ一緒に食事を取るのとはまるで違う。

 全然、違う。

 ポケモンと言葉や意思を交わす事が出来ても、何処かそこには壁が存在する。

 ポケモンバトルでどこまで一体感を得ようと、心が通じ合おうと、その立場は、指示する側とされる側。変わる事は有り得ず、同じ目線に立つことは出来ない。

 でも、一緒に同じ物を食べるこの瞬間はその壁が限りなく薄くなる。同じ味を、同じ美味しいを共有でき、同じ目線に立つことが出来る。

 

 だから俺はこの全員でカレーを食べる習慣を大事にしている。毎日は栄養面を考えると流石に無理だが、可能な限りこの機会を作れるようにしている。業務用の精米器、炊飯器を購入したのもその一環だ。

 どこかのグルメな貿易商人の言葉をなぞってまとめるのならこうだろう。

『ポケモンと一緒に食事を取る時はね、共に味を分かち合い、共感してなんというか理解できてなきゃあ駄目なんだ。価値観を考えを心を・・・』

 

 

 夕食の後片付けも終わり、日が沈む。

 

 チュリネ達は日が落ちると活動が鈍るため、朝干した藁と一緒に厩舎へ連れて行く。殆どの子は藁の上に転がると直ぐに寝始める。そして身を寄せ合って眠るので、用意してある個別スペースが使われることはあまり無い。

 

 こうして全部の仕事を終えると、家に戻って風呂に入って着替え、歯を磨き、いつでも寝れる状態になる。洗濯は数日おきに纏めてするので、今日はそのままリビングのソファーでのんびりとした時間を過ごす。

 

 そして俺の手にはゲーム機が握られている。ゲームにも出てきた持ち運びも、据え置きも出来る、例のゲーム機だ。

 世界が変わっても、やっぱりゲームは手放せない。

 

 ドレディア、エルフーンのくさタイプ組はチュリネ達と同じで活動が鈍り、ソファーで舟を漕いでる。

 テッカグヤはたまに朝まで外で過ごす事もあるが、今日は気分じゃ無かったらしく、ボールに戻っている。

 ラティアスは相変わらず俺の膝枕を堪能しつつ舟を漕いでる。

 ドヒドイデは放熱器の隣で温まっている。

 ウツロイドは帽子を掛ける用のポールハンガーがお気に入りの場所で、もはやウツロイド専用家具と化している。

 

 しばらく過ごし、時計でいい時間になった事を確認すると出ていた残りのポケモン達もボールに戻し。ベッドに向かう。

 

 サイドテーブルにボールを置いて、寝てる子も居るので少し小声で声をかける。

 

「おやすみ、今日も沢山ありがとな」

 

 そうして部屋の電気を切り、ベッドに入って、俺の一日が終わる。




活動報告でちょっとした余談を書いてみました。
気になる方はどうぞ。

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