冬木の大空洞で、勝者なき戦いが終わろうとしています。
そこには第五次聖杯戦争で、唯一生き残った一組のマスターとサーヴァントがいました。
しかし、彼女たちはけして勝者とは言えないのです。
自ら以外の全てのマスターとサーヴァントを倒したとしても、それは勝利ではないから。
マキリの聖杯は誰の願いも叶えなかった。
私の願いも。
先輩の願いも。
姉さんの願いも。
お爺様の願いも。
誰も願わなかった終結をもたらした。
何故こんなことになったのだろう?
崩れていく肢体を横たえながら、思いを巡らせる。
「サクラ。」
私の側には黒い騎士が、心なしか伏し目がちで、片膝をついてたたずんでいた。
私が召喚したライダーではない。だけど、結果としては私のもとで最も長く戦い、最も多くの『敵』を屠ったサーヴァント。
「セイバーさん。」
彼女の願いが叶えられることもない。
私は出来損ないの聖杯だから。
こんな虚しい終わりかたがあるだろうか?
懐かしい風景をもう一度見たい。遠坂の屋敷で姉さんと過ごした日々、先輩の家で一緒に料理した毎日。
化け物なんかじゃなく、かわいい妹や後輩でいられた頃に戻りたい。
わかってる。
これこそ叶わぬ願いだ。願う資格すら私にはないのだら。
ブシュッ‼️ドチャ‼️
「え・・・」
私は血だまりの中にいた。
さっきまでの自分のそれではない。散らばる肉片とズタズタになった紫のローブがその証。
月明かりが差している。地下ではない?目を凝らして見れば、ここは私が知っている場所だった。
柳洞寺の山門?なんで私がこんな所に?いつの間に移動したのだろう?
「誰か、誰かいませんか!?セイバーさん!!」
答える声はない。
困惑していると、頭の中に情報が流れ込んできた。私は・・・キャスター?反英霊として、第五次聖杯戦争にサーヴァントとして召喚された?
つまり、ここは平行世界のようだ。
魔方陣も見当たらないのにどうやって召喚したのだろう?ローブや肉片は触媒だろうか?
こんな特殊な召喚法ということは、御三家に属する魔術師が裏技を使ったのだろうか?
それならマスターはどこに?
誰が私を召喚したの?
それらしき人物はまわりにはいないようだけど・・・
◇◇◇◇
その頃、とある洋館の一室にて。
「うっかりしてたわ。」
父の遺した小細工と、父から受け継いだうっかりによって、父の決断によって引き裂かれた姉妹の物語が交わりる。
そして、この再会から聖杯戦争は誰も予期せぬ方向へと動き出そうとしていた。