士郎の家の前で妹を待つ。
朝は苦手なんだけど、なんとか起きれた。
ああ、来たわね。
「おはよう、間桐さん。」
ひさしぶり・・・になるのかしら?私から妹に声をかけた。
「っ!?なんで、なんで遠坂先輩がここにいるんですか?」
本当にわかりやすく動揺するのね。油断させるための演技?それともこの段階ではまだ覚醒してないってことかしら。
「それは私が衛宮君と同盟を結んだからよ。」
「先輩と・・・」
「いつまでもそうしてないで、早く報告に行ったら?『監視役さん』でしょ。」
そんな青ざめた顔なんてさせたくなかったけど、心を鬼にして宣言する。
「ハッキリ宣言しとくけど、遠坂の屋敷、この家、私や衛宮君のまわりをウロチョロしてるなら敵対行為とみなすわよ。そのつもりでね。」
「!!!」
声にならない様子で、俯きながら駆け出していく妹の背中を見ながら確認する。
「これでいいのよね、桜。」
「ええ、理想的な滑り出しです。姉さん。」
もう一人の妹はそれは綺麗に微笑んでいた。
さて、家に入って・・・土蔵か。また土蔵で寝てるのか、士郎は。
早く起きろ、コラ。
ユサユサ、ダメか。
ゲジゲジ!!
「うわっ!!なにすんだ!!」
ようやく起きた。
「おはよう士郎。はい、『起源剣』よ。これで大幅な戦力強化ができたわね。」
「ああ・・・ありがとう遠坂。感謝する。」
「ああ、それと桜にはしばらくここには寄り付かないように言っておいたから。」
「えっ!?なんでさ??」
「これから戦争なのよ。巻き込みたくないでしょ。あと、場合によっては桜と戦うことになるかもしれない。間桐も魔術師の家なのよ。」
「桜が!!」
「そうよ。おおかたアンタの家に来るようになったのも、監視、そうでなければ敵になった時に一服盛るための布石でしょ。」
「おいっ!!桜はそんな娘じゃない!!」
そうね、確かに桜はそんなことができる娘じゃない。
「・・・ごめんなさい。だけど本人にそのつもりはなくても、桜が騙されて利用されるくらいは覚悟した方がいいわよ。」
ん?なんか思案顔になったわね。
「遠坂って桜と親しかったのか?名前で呼ぶのは綾子くらいだよな?」
やばっ!!つい、うっかり。
「え、ええ・・・昔ちょっと。ホラ、無駄話してないで、今から教会に行くわよ。日があるうちなら、魔術師は人目を避けるから襲撃される確率も低くなるわ。」
なんか釈然としない顔だけど、士郎は頷いた。
◇◇◇◇
姉さんの協力のおかげで、こちらの私を先輩から引き離すことができた。
霊体化しながらも、道中は周囲を警戒していたが、幸い何事もなく教会に辿り着くことができた。
しかし、想定外のことも起きてしまった。
セイバーさんが霊体化しているとは!!
私の知っているセイバーさんならありえない。だけど、まさか「なぜ霊体化できるのですか?」なんて質問したら怪しまれるだけだ。
姉さんには後で伝えるとして、今は平然としていよう。
中に入っていったのはマスターだけ、私たちサーヴァントは教会の外で姉さんたちを待つ。
セイバーさんは無口だし、静寂が続くと思っていた私の予想は早々に外れた。
「キャスター、桜というのは凛の妹ですか?」
「!! なんデそウ思ったんです?」
「凛が名前で呼ぶのは近しい者のみですのようなので。しかも、聖杯戦争関係者ならば、同門か親族ではないかと推察しました。」
姉さんのうっかり!!
この場合は、セイバーさんにどう答えるべきでしょう。
「いえ、失礼しました。勝手に主の事情を話せるわけもないですね。」
そういうと伏し目がちになりながらセイバーさんは言葉を続けた。
「もし、私の直感どおりなら難儀なものです。私の時代の諸侯もそうでしたが、家を継げるのは一人だけ。どんなに仲の良い兄弟姉妹でも、いずれは君と臣とならねばならない。」
それはそうだ。たとえ遠坂の家に残れたとしても、私はせいぜい姉さんに万が一のことがあった時の予備程度に扱われただろう。そうでなければ、後を継ぎたくば姉さんを蹴落とせと命じられたかもしれない。
どの道、魔術師の家に生まれた私たちは、『仲の良い姉妹』でいることなんて出来るわけなかったんだ。
「せめて私たちのマスター同士は、対等で、仲違いすることなく、この戦いを生き残れるようにしましょう。」
「はイ、せいバーさン。」
今度は最初から仲良くしましょうね。セイバーさん。