なんで、なんで俺はなにもできないんだ!?
正義の味方になる。
そう決めて、日々を過ごしてきた。
魔術の才能なんてない。
それでも自分なりに、鍛練を怠らずに生きてきた。
それなのに、俺は今なにもできてない。
「セイバー!!頼んだわよ。」
「任せてください。ハァッ!!」
セイバーが最後尾でバーサーカーを食い止めている間に、俺たちは坂道を駆けおりる。
「撃ちマす!!」
キャスターが、セイバーとつばぜり合いしているバーサーカーに向けて魔力の塊を放つ。
セイバーにも当たったが、ダメージを受けたのはバーサーカーだけだ。
この隙にセイバーも退却する。
「アハハハ、やるじゃない。」
しかし、バーサーカーはすぐに体勢を立て直し、イリヤを肩に乗せ追いかけてくる。
突破口が見えない。このままじゃジリ貧だ。
「むー!!ムー!!」
なのに俺は簀巻きのまま、なにもできない。
「ちょっと士郎!!うるさいわよ!!今はアンタに構ってられないの!!」
凛に叱られた。
「ここまでくれば、・・・いけます!!宝具を放ちます!!」
宝具、サーヴァントの切り札のことか!?
坂の上から突進してくるバーサーカーに向かって、見えない剣を大きくふりかぶる。
セイバーの剣がまばゆく輝き、彼女の咆哮が辺りに響きわたる。
「エクス!!」
あれは・・・まさか!?
「カリバー!!!!」
バーサーカーは、咄嗟にイリヤを投げて彼女を助けた。光の奔流がバーサーカーを呑み込んでいく。
「敵ながら見事な最期だったわね。」
遠坂はそう呟いたが、セイバー、そして、キャスターは首を横にふっている。
「重力軽減っと、みくびってもらっては困るわね、凛。」
ミンチになったバーサーカーにイリヤが視線を送る。すると、目を疑う光景があった。
まるで映像を逆再生してるかのように、バーサーカーの体が元に戻っていく!!
「そんな・・・なんで!?」
呆然とした遠坂の呟きに、イリヤが答えた。
「フフン、教えてあげる。私のバーサーカーの真名はヘラクレス。そして宝具は十二の試練。命のストックが十二あるのよ。」
可愛らしく胸を張る仕草は可愛らしいが、俺たちにとっては死刑宣告に等しい。
あんな相手に十二回も致命傷を与えなければいけないのか!?こっちは一度死んだら終わりなのに!!
「安心して、いくら人払いの結界があるとはいえ、あれだけ派手に宝具を放ったのだから、そろそろ引き上げるわ。」
踵をかえしながら、イリヤは可愛らしく手をふる。まるで、また遊ぼうね、とでも言うように。
「また会おうね。お兄ちゃん。」
本当にそんなノリなのか!?
「ほンとうニ去っていキましたネ・・・」
「どんだけマイペースなのよ?それとも、情けをかけたの?」
「とりあえず、人目につく前に私たちも帰りましょう。」
「むーむーむー!!」
結局俺は足手まといのままか。
◇◇◇
「士郎ったら、家に帰るなり土蔵にこもったままね。」
「鍛練してるみたいですね。」
「せっかく私が教えてあげようとしてるのに・・・まぁ、今は気持ちを落ち着けさせるのが良いのでしょうけど。」
焦んなくても、アンタに出番は嫌でもあるのよ。可愛い妹から、レアな能力の持ち主だって知らされてるから。
「明日もありますし、姉さんはそろそろ寝てください。」
「そうするわ。お休み、桜。」
明日は学校に仕掛けられた魔術を破壊するので、忙しくなりそう。