せめて、この男の魔術回路が開いていれば、この行為に付き合わされるのにも意味があったのに、私がベッドの上で異常に気づいたのはそんなことを考えているときだった。
「ちょっと待ってください、シンジ。」
「なんだよ、もうへばったのか?」
そんなわけないでしょう。
飽き飽きしてはいますが・・・
「何者かに、学校に仕掛けた術式が破壊されています。」
「なんだって!?早く言えよ!急げ!!」
それならまず私の上からどいてください。
アタリのはずのマスターに召喚されたのに、とんでもない代役を押し付けられた聖杯戦争になってしまった。
◇◇◇◇
私は妹のおかげで苦手な朝もバッチリ。それに対し、廊下で顔をあわせた家主の方は・・・
「おはよう衛宮君。よく眠れた?」
「眠れるわけないだろ・・・色々ありすぎだった。」
まぁ、それはそうでしょうね。
「アーサー王が女の子なんて驚きね~。」
本当は桜から聞いて知ってたけど、ここは驚いたフリをしておかないとね。
セイバーは士郎のとなりで相も変わらずポーカーフェイス。
「そこにはあまり触れないで頂けると助かります。」
「わかってるわ。同盟相手に無用の詮索はしない。家名にかけて誓うわ。」
居間に移動し、日課になりつつある朝食をとりながらの作戦会議をはじめる。
「バーサーカーについては一時保留よ。もし遭遇したら、サーヴァントに時間を稼がせてる間に、私たちマスターは逃げる。十分な距離をとったら令呪でサーヴァントを呼び寄せる。これしかないわ。」
「倒す方法はないのか?」
「バーサーカーの宝具は序盤で反則的な強さよ。だけど、終盤ならどうかしら?他のサーヴァントやマスターが、命のストックを減らしてくれてると思わない?思うでしょ!!思いなさい!!思 わ な い で た ま る か !!!!」
「わ!!わかった!!・・・遠坂の言うことはもっともだ・・・」
希望的観測かもしれないけど、そうとでも思わなかったらやってられないわよ!!
登校すると、・・・やはりあった。
桜から教えられてなければ気づかなかっただろう。
「ちょっとまって。あそこの床、何か感じない?」
「・・・たしかに。これってまさか?」
「やはり、人間を溶解して魔力を吸収する魔術が施されているようね。」
「!!なら、すぐ解除しないと!!」
相変わらず頭に血が上りやすいのね、お人好しなのに。
「そしたらこれを仕掛けた奴に感づかれる。不完全な状態でも発動させるかもしれないわよ。そんなことになったら大惨事。わかる?」
「だったらどうすれば!?」
「今のうちにどこに仕掛けられてるか調べて、夜にもう一度学校に来るのよ。一晩のうちに全部解除してみせるわ。」
私の言ってることを聞いて、士郎はようやく少し落ち着いてきたみたい。
「それなら、うまくいけば相手を夜の学校に誘きだせる。まわりを巻き込むおそれもないな。」
「そういうこと、じゃあ、手分けして今のうちに探すわよ。」
◇◇◇
夜の学校につき、異変の元凶を見つけたは良いのですが、不意をつくチャンスを早々に潰されてしまいました。
「おおお、お前らーー!!」
この代役のせいで、何故そのような大声を出すのです!?
「あら間桐君、ごきげんよう。そんなに血相変えてどうしたのかしら?」
涼しい顔をしたこの少女が敵のマスターのようです。そして、その背後に寄り添うのがおそらくサーヴァント。ローブをまとうということはキャスターでしょうか?
「どうしただあー!!お前らなぁ!!なんてことしてくれたんだ!!」
「それはこっちの台詞ね。よくも遠坂の管理地でこんな真似をしてくれたわ。」
「不完全でもいい、ライダー!!宝具を発動させろ!!」
やむを得ませんね。
「ブラッドフォートアンドロメダ!!」
私の宝具である鮮血神殿(ブラッドフォートアンドロメダ)によって周囲の視界が赤く染まり・・・これは!?
パキン!!
「あら?戻った。どうやら全て破壊し終わったようね。」
まさか、他にも仲間がいるのですか!?
「ブラッドフォートアンドロメダ。アンドロメダってことは、ギリシャ神話の英雄、あるいは怪物かしら?ライダー、貴女の髪は長すぎるほどに長い、そして、綺麗ね。女神も嫉妬しそうなくらいに。」
「まさか・・・それだけで・・・」
シンジ、せめてポーカーフェイスを保ってください。誤魔化せるとは思えませんが、なぜそんなにもバカ正直に動揺してしまうのですか!?
「やはり、真名は『メドゥーサ』ね。」
スチャ!!
「魔眼殺しのメガネまで持ってるのかよ!?」
いちいちリアクションしないでください。用意が良いとはおもいますが、私が『メドゥーサ』と気づいたなら、魔眼殺しを持っていれば装備するのが当然でしょう。
・・・一見すると普通の眼鏡ですが、かなり手の込んだ礼装と見受けます。これでは石化させるのは無理でしょう。しかし、一時的に動きを鈍らせるくらいならできるかもしれません。
「シンジ、ここは撤退すべきです。」
「ハァッ!?ふざけたこと言うな!!」
しまった。このマスター代理が素直に意見具申を受け付けるはずがない。
私も動揺してしまっていたようです。
「いい機会だから教えてあげる。魔術は秘匿すべきもの。アンタみたいな、目立ちたがりで見せびらかしたがりは、そもそも魔術師に向いてないのよ!!」
「遠坂ぁぁーー!!やれ!!ライダー!!命令だぞ!!」
この状態で、戦うしかないようです。