ライダー、かつて私が呼び出したサーヴァント。
思えば彼女には申し訳ないことをしてまった。私は戦いから逃げて、ライダーのマスターとしての責任を放棄した。
そして、私が押し付けてしまった代わりマスターはあの有り様だ。
「オイ!!なにやってんだ!!さっさと片付けろよ!!」
兄さんが理不尽にライダーをなじるのを目の当たりにすると、自責の念は一層強くなる。
本当はライダーの力はこんなものじゃない。
私からの魔力供給が断たれてるから、兄さんの魔術回路は閉じているから、思うように戦えないのに。
鎖でつながれた釘は、私の影の触手で全て叩き落とされる。
その度に兄さんは、露骨に舌打ちしてライダーをなじる。
ライダーが実力を発揮できないのは、魔力不足だけが理由じゃない。身を守る術を持たない兄さんを庇いながらの戦いを強いられているせいでもある。
ライダーが私を倒すことばかりに気をとられてしまえば、その隙に姉さんが兄さんを倒すだろう。彼女にしてみれば八方塞がりです。さぞ悔しいでしょう。
ごめんなさいライダー。貴女のことも助けたい。だけど、先輩や姉さんにはかえられない!!
「ッ!!新手ですマスター!!」
「慎二!!お前だったのか!!」
先輩もセイバーさんを連れて駆けつけた。
一対一でも勝てないだろう相手からの挟み撃ち。もう兄さんとライダーは『詰んでいる』でしょう。
本来ならマスターが撤退を指示しなければならないのですが。
「オイ!!ライダー!!どうするんだこれ!!」
やはり、そうなりますよね。
本当に、兄さんを押し付けてしまって申し訳ないです。
「おとなしく降伏しなさい。そうすれば命は助けてあげる。」
姉さんが降伏を勧めますが、兄さんがそれを受け入れることはありませんでした。
「ふざけんなぁ!!見下しやがってえぇ!!」
ライダーが覚悟を決めた表情をしています。
騎英の手綱(ベルレフォーン)を使うつもりなのね。
「私の疾走は、誰にも止められません。」
ライダーは首に釘を突き立て、噴き出した血潮が魔方陣を描く。
まばゆい輝きとともにペガサスが現れ、それに騎乗したライダーは兄さんを連れて疾駆する。
「ベルレフォーン!!」
追撃は無理だろう。
近いうちには倒さなければならない。せめて、その前に一言貴女に感謝を伝えたい。
「・・・・・」
だけど、私はただ視線を送ることしかできなかった。
ごめんね、ライダー。
◇◇◇◇
間桐の屋敷に撤退するや否や、予想通りにシンジはわめきだした。
「ああ、クソッ!!お前のせいで負けただろ!!」
今はそれどころではないのに。
「シンジ、すぐに移動しなければなりません。ここは敵のマスターにも知られているはずです。」
そう言われると、実にわかりやすく顔を青くして慌て出した。
「荷物をまとめるぞ!!手伝え!!」
やりますけど、そもそも戦争に参加するなら予め準備しておくべきでした。
自分が追い込まれるはずがないという、根拠のない自信がこの事態を招いた反省など、この代役に求める方が無理ではありますけど、歯痒いものです。
魔力不足は解決できないまま、宝具を使用してしまった分むしろ状況は悪化しています。
「こうなったら!!片っ端から魂食いして魔力を集めろ!!」
そうなるのですね。そうでしょうね。
それはそうと、どうしても気になります。あのキャスターは私の知己なのでしょうか?
やけに視線を感じました。
生前にたびたび感じた憎悪や功名心ではない。親しみでしょうか?
しかし、私にそんな感情を寄せる英霊などいるでしょうか?
あのキャスターはいったい・・・・