「はっはっはっはっ!!」
逃げなきゃ、死にたくない、死にたくない。ビルの乱立した夜の新都を走り続ける。ライダーは無事だろうか?マスターなら令呪で呼び戻すべきだろうか?
「どこへ、行くの?ダメじゃない、ジタバタしちゃ。」
ビルの間から声がした。
そして路地から私と同じ顔をしたあのサーヴァントが現れた。ライダーが足止めしてくれていたはずのサーヴァントが。
「そんな・・・ライダーは・・・」
「ライダーは眠っているだけ。すぐに解放するから・・・貴女を殺した後に。」
「どうして私を殺そうとするの?」
「クスクス・・・私はやっぱり『知らないふり』が得意なのね?自分が何者なのか、本当はわかってるでしょう?私は貴女、貴女は私。姉さんによって、この聖杯戦争のサーヴァントとして召喚された。『化物になった桜』それ以外に見える?」
彼女は自嘲の笑みをうかべながら、芝居がかった仕草で手を広げ、天を仰ぐ。
「そもそも私が救われるはずなんてなかった。そんな資格も価値も私にはない。先輩や姉さんとは違う。強くもなければ優しくもないのが私だもの。」
そう言いながらこちらに近づいてくる。
「先輩は私の体に気づかないだけだったけど、私は間違った鍛錬で死の危険があると知っていながら先輩のことを見捨てていた。救われる資格なんてない。」
どうしてそれを知っているの?
「姉さんが選ばれた。私は選ばれなかった。そのせいで自分だけが辛い思いをしなければならない。姉さんが憎い。」
貴女になんでわかるの?
「姉さんにも同じ思いをさせてやりたい。」
思わず手が出た。
「私はそんなこと思ってない!!貴女なんか!!私じゃない!!」
誰かに平手打ちするなんていつ以来だろう?それでも我慢できなかった。認められない。認められるわけがない。
「クスッ。」
「何がおかしいの!!」
唇のはしから一筋の血を滴らせながら、薄気味悪い笑みを浮かべる私と同じ顔。寒気がする。
「じゃあ、貴女はお爺様相手に戦えるの?」
「お爺様・・・と・・・戦う・・・お爺様に・・・逆・・・らう・・・」
「お爺様が何をしてきたか?何をしようとしているか?それを先輩や姉さんが知ったら戦うに決まってるでしょ?そうなったら貴女はどうするの?」
「わ・・たし・・・は・・・」
「ああ、やっぱり貴女は私。どんなに健気にふるまって見せても、結局は自分が一番可愛いくて仕方がない。それが『死ぬまで直らない』のが間桐桜という人間なのだから。」
ちがう・・・ちがう・・・そう言いたいはずなのに・・・
「本当はすぐに消してしまいたい。だけどダメ。姉さんと約束したから。」
「約束?それって・・・」
姉さんがこの黒い私のマスター?私を殺さないように命令してくれているの?
「助けてもらえると思ってるの?そんなはずないでしょう?姉さんはこの街のセカンドオーナーで、真っ当な魔術師だもの。危険すぎる存在を放置するわけないじゃない。貴女に引導を渡しに来るのよ。」
「そんな・・・どうして・・・姉さっ、グッ!!」
「姉さん?姉さんって言おうとした?そうじゃないでしょう?『遠坂先輩』でしょ?」
お前は遠坂凛の妹じゃない。暗い朱の目がそう言っていた。
◇◇◇◇◇
さて、言いたいことはだいたい言ったかな?
あとは姉さんが来るまで・・・殺気!?
ズガン!!
私と私の間に何者かが降り立った!?
「だれ?」
こちらの私とは初対面なのだろう、だけど私はこの騎士を知っている。頼もしい味方であるが、こういったことには理解がまるでなさそうな彼女を。
「貴女が何をしようとしているかは察しがつきます。それを止めに参りました。」
「察しがつくなら遠慮してくれませんか?」
「できません。・・・たとえ、過去の自分を消すことで大切な人々を助けられたとしても、今度は、やはり自分など最初からいなければ良かった、という後悔に苛まれることになる。それが救いですか?貴女が望む奇跡はそのような・・・」
スガガガッ!!
「貴女には・・・セイバーさんにだけは!!言われたくありません!!」
貴女にだけは負けたくない。