Fate/Black Lotus 泥中之蓮   作:杉田雅俊

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新都騒擾

 

 

我ながら他人には親切にしてきたつもりだ。

 

だけど、それは頼まれればなんでもするってだけで、気が利くわけじゃない。

 

自分がそういう人間であることはわかってた。それが性分だと。

 

それでも何故家族の異変に気づかなかったのだろう?最初に会ったときから桜が抱えている問題は変わらないのだから、異変とは言えなかったのかもしれない。

 

むしろ、だんだん明るくなっていくようにすら思えた。

 

ひょっとしたら俺と過ごす時間は、桜にとってかけがえのない癒しだったのかもしれない。

 

だけど、それじゃ根本的な解決にはなってないんだ。

 

「正義の味方は、呼ばれずとも、讃えられずとも、勝算なんかなくても人を救う者なんだ。」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

タッタッタッタッ!!

 

「だから待て遠坂!!桜は俺が助ける!!」

 

「ああ、もう。バカだバカだって桜から聞いてたけど、本当にバカなのねあのバカは!!」

 

「おい遠坂!!お前結構いい奴だから、桜を殺したら絶対後悔するぞ!!それでもいいのか!!」

 

「誉めるのか貶すのかどっちかにしなさいよ!!ガンド!!」

 

「うおっ!!危な!!」

 

振り向きざまに撃ってきた!!

 

「桜!!聞こえる?・・・わかったわ。大丈夫、使い魔で姿を捉えた。」

 

遠坂は一気にダッシュしながら、桜・・・おそらくはキャスターの方と話をしてる。

 

引き離されるわけにはいかない。きっとその先に桜がいるはずだ。

 

「ッ!!わかった!!」

 

え?遠坂が街路樹の陰に身を隠した?

 

ドッガアァァンン!!

 

「うおっ!!」

 

なんか黒い、絡まったテープみたいなのがビルの壁を破って飛んできた!!

 

アレ?なんか見覚えがあるような。

 

「ッ!!先輩、来てしまったんですね。」

 

「桜!?どうしたその頬?血か?怪我したのか?」

 

「そこはセイバーさんから聞いてないんですね。先輩には見られたくありませんでした。」

 

そうか、この桜はキャスターの方か。

 

「安心して!!後で士郎の記憶は操作しておくから!!それより桜はどこ!?」

 

いま恐ろしいことを言わなかったか!?

 

「あのビルに逃げ込みました!!」

 

「任せて!!士郎とセイバーの足止めお願い。」

 

セイバー?

 

「そうはいきませんよ、凛。」

 

壁に空いた穴から、セイバーが現れた。そうか黒い桜はセイバーに吹っ飛ばされてきたんだ。

 

「行かせません。先輩もセイバーさんも邪魔しないで下さい。私はここで死んだ方がいいんです。私が言うのだから間違いありません。」

 

なんだって?それだけは認めるわけには行かない。

 

「馬鹿なこと言うな!!そんなことがあってたまるか!!」

 

「ッ!!」

 

「桜は必ず救う!!桜がそれを望まなくても!!これからすることが俺のエゴにすぎなくても!!そんなことは関係ない!!」

 

黒い桜の動きが止まった。わかってくれたのか?

 

「・・・ありがとうございます、先輩。その言葉だけで十分です。」

 

駄目か。

 

「ストライク・エア!!」

 

「くっ!!セイバーさん・・・」

 

ガシッ!!

 

「シロウ!!行って下さい。」

 

「え!?うわぁ!!」

 

パリィン!!

 

「なんて無茶を!!」

 

「がはっ!!」

 

ビルのガラス面に投げつけられた。おかげでショートカットできたけど、セイバーってこんなに荒っぽいのか。

 

あっ、黒い桜がものすごく怒ってる。

 

「貴女はいつもそうやって!!」

 

ガンガンガン!!

 

「先輩を危険に巻き込んで!!」

 

シュンシュンシュン!!

 

「今度はわかりあえると思ったのに!!もう赦しません!!」

 

ギンギンギン!!

 

四方八方が切りつける黒い触手を、セイバーは来る方向とタイミングを予め知ってるかのように防いでいる。

 

「シロウ!!はやく行って下さい!!」

 

「わかった。任せたぞセイバー!!」

 

遠坂に追い付かないと。いた!!

 

「ああもう、しつこい!!」

 

ガチャ!!バシュウゥゥ・・・

 

???なんかへんな音がしたぞ。

 

「あっつっ!!」

 

遠坂に続いて部屋に飛び込もうとドアノブを掴むと、恐ろしく熱い。

 

「まさか?ゲッ!!」

 

隙間から覗こうとすると、金属製の扉が溶けて変形してるのがわかる。

 

そして向こう側から声がする。

 

「階段にはその扉を通らないとたどり着けないわよ。諦めることね。」

 

「・・・トレース・オン。」

 

パリン。

 

「へっ!?」

 

「ヨシ!!失敗だけど成功だ!!」

 

強化に失敗すると対象となったものは脆くなる。狙いどおりだ。

 

「あー!!アンタはバカの癖に何でそんなとこだけは頭がキレるのよ!!ガンド!!」

 

ガンド乱れ打ちだ。だけどそれは予測済みだ。投影した槍で打ち落とす。

 

「ひどい怪我はしない程度に加減するから、勘弁してくれよ、遠坂。」

 

「あら紳士なのね?桜が惚れるのもわかるわ。きっと泣いて喜ぶでしょうね、『先輩も姉さんも、私のために争わないで!!』って。」

 

「!!遠坂ぁぁ!!」

 

「不用意。」

 

宝石魔術!?

 

「ガッ!!」

 

痛い・・・だけじゃない。なんだ?食らったところから力が抜けていく。

 

「アンタがお人好しのうえにカッとなりやすくて良かったわ。ひどい怪我はしない程度に加減したから、次からは挑発に乗らないようにね。」

 

 

カツカツカツ・・・

 

「まて、遠坂・・・桜を・・・」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

親都のビルの屋上にて、久々に妹に会った。

 

「ガンド。」

 

桜は非常用はしごを降ろして逃げようとしていたが、破壊する。

 

「せっかく会いに来たのだから、逃げないで。」

 

そろそろケリをつけましょうか。


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