キャスターは言った、自分は『化け物になった間桐桜』だと、私もいずれそうなると。
信じられなかった、それは、その言葉を受け入れがたいだけではなかった。
私はあんなに堂々としてない。姉さんと向かい合えない。姉さんに頼りにされたりしない。サーヴァントになるほどの大物でもない。魔術師としても半端者で、キャスターのクラスに該当するなんて思えなかった。
「バカバカバカー!!」
でもあの姿を見ると、あれは私だとわかる。
「どうして死んじゃったんですか!!私なんて見捨てて逃げればよかったのに!!バカバカバカー!!」
ポカポカと先輩の胸板を叩く。私も何度そうしようとしたことか。
「ご、ごめん。だけど俺は死なないから、心配いらな、っで!!」
あ、キャスターの私が先輩に平手打ちした。
「先輩の心配いらないは信用ならないんです!!」
「へぶぅっ!!」
「先輩はいつもそう言って!!」
「びぶぅ!!」
「待たされる側の気持ちも知らないで!!」
「ずぁっ!!」
間違いなくわたしだ。往復ビンタ、私もやりたかった。
「あ、あのキャスターの私。私もやっていいですか?」
「どうぞ、人間の私。」
「なんでさ!?」
「えいえい!!」
二人で先輩をぺしぺし叩く。そうすると先輩は困惑しながら尋ねてきた。
「なんでさ!!桜!?俺のことが嫌いなのか!?」
「「そんなわけないでしょう!!先輩は全然わかってません!!」」
そんな騒ぎに気づいて、姉さんたちもやって来た。
「えー・・・と、これどういう状況。」
「「姉さん。」」
「説明してくれるかしら?」
「「はい、それは・・・」」
「・・・キャスターの方の桜が説明して・・・」
◇◇◇◇◇◇
桜から話を聞くかぎり、とりあえず士郎は期待どおりの働きをしたようね。
「そう、ならもう二人とも大丈夫ね。」
「「はい、おかげさまで。」」
妹たちの顔はまさに、憑き物が落ちたと表現できるほど清々しい。
「それなら答えを聞かせて、今なら嫌だったら断れるでしょ。」
「姉さんと一緒に、『みんなで幸せに』なれるよう戦います。」
こちらは良し。なら今度はもう一人の方ね。
「胸の傷は大丈夫?桜。」
「えっ!?あっ、ハイ。大丈夫です・・・その・・・」
もう家同士の約束にこだわるような事態ではないけど、遠慮するのが習慣になってしまっているようね。甘やかしすぎかもしれないけど、こちらから助け船を出しましょうか。
「好きなように呼んでいいわよ。」
「大丈夫です。姉さん。」
くぅ、可愛い。だめだ。まだ笑うな。クールビューティーな姉のイメージを守れ。だが、これは・・・
「そう・・・それで貴女はどうする?戦う力がないなら、しばらく冬木を離れた方が賢明よ。」
「わ、私も力になりたいです。戦い方なんて知りませんけど、でも傍観者でいるのは・・・いやです。それに、ライダーのこともありますし。」
サーヴァントのことも考えてるあたり、優しいのね。
「あ・・・」
ん?ライダーの話が出たら、キャスターの方の桜の顔色が悪くなったわ。
「どうしたの??」
「ラ・・・ライダーのこと、どうしましょう?」
「ライダーをどうしたの?まさか?」
「いえ、殺してはいません。いませんけど、呑み込む前に、私はライダーに『絶対言ってはいけないこと』を・・・」
あー・・・うん。大体想像できた。ライダーことメドゥーサの神話から察しはつくわ。『絶対に言ってはいけないこと』ね。
「いっしょに謝ってあげるから、はやく解放してあげなさい。」
「・・・はい・・・」
とは言ったものの、正直よくわからないのよね。ライダーってどんなサーヴァントなんだろう?