なんだかよくわからない状況です。
とりあえず桜が無事なのは良かった。
シロウが状況を説明してくれました。桜が慕うだけあって人が良いのですね。
セイバーは彫刻のごとく座するのみ。
黒い桜が土下座してるのはシュールです。私はどうかしてしまったのでしょうか?
私の困惑を見てとったのか、遠坂凛が場をしきりはじめました。
「桜が貴女に謝りたいんだって。絶対に言ってはいけないことを言ってしまったから。」
なるほど、それでこんなにもおびているのですか、心配せずとも、私が桜を嫌いになるなどありえません。
ですが、せっかくなのでこの機会を生かすのもよいでしょう。今なら答えづらいことも答えてくれそうですし。お願いきいてくれそうですし。
「桜、先ずは顔をあげてください。これでは話しづらいです。」
「・・・は、はい。ライダー・・・」
おずおずと顔をあげたものの、こちらを正視できない様子です。なんだか調子が狂います。
いえ、むしろこちらが彼女らしいと言えば彼女らしい。やはり、無理をして強気にふるまっていたのでしょう。すこしホッとします。
「桜と二人きりで話したいのですが、よろしいですか?」
黒い桜がキョロキョロしてますが・・・おや、遠坂凛は首を横に降ってます。黒い桜の方を見て。
「わかったわ。士郎たちもいいわね。」
黒い桜はすがるような目をしていますが、やはり遠坂凛は部屋を出ていきます。わりと厳しい姉のようですね。
「ちゃんと自分で向き合いなさい。終わったらいくらでも誉めるし、慰めてあげるから。」
「・・・わかりました。頑張ります。」
うなだれながらも納得したようですね。
「頑張れよ、桜。」
「上手くいくといいですね。私。」
「サクラなら首尾よくできると信じます。」
みな一言のこして退出してくれました。
「さて、二人きりですね。桜。」
「え、あの、はい。」
「気を楽にしてください。恨み言はありません。」
信じられない顔をしていますが、これは偽らざる本音です。
「もう桜を殺すつもりはないのですね。」
「ええ、もうそんなつもりはない。そんな必要もないから。・・・あの、本当にごめんなさい。私はライターに酷いことを言ってしまったから・・・許してもらえないかもしれないけど
、ごめんなさい。」
そういって桜はすぐ下を向いてしまう。これは骨が折れそうです。順を追って少しずついきましょう。
「たしかに貴女の言ったとおり、私が『姉様達を食べる前の私』にあったら殺そうとするでしょう。どの道、化け物になってしまえば生きていても意味がない。姉様達だけでも生き残れるならよしとするでしょう。・・・そして、私は桜に私と同じになってほしくないのです。」
「同じになってほしくないって?」
「化け物になるのはもちろん、死んでもほしくありません。幸せになるところが見たいのです。私に言わせてみれば、桜は誰より幸せになるべき人ですよ。」
「私が?」
心底不思議な様子なのが心苦しい。
「そうでなければ、あまりにも救われません。先ほど確信しました。桜が不幸なら、私も、きっと凛も、そしてシロウも、幸せにはなれません。近しい者を見捨てて自分だけ幸せになることを喜ぶような人たちには見えませんでした。うしろめたさに苛まれるでしょう。」
「あっ・・・」
ようやくわかってくれたようですね。
「貴女の思いを寄せる人は、貴女を置き去りにして、自分だけ幸せになろうとするような、そんな薄情な人ではないでしょう?もちろん私もそうです。私は桜にだけ特別の厚意を持っていますが。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
泣き崩れてしまった桜を抱き起こしながら、念押しします。
「幸せになることを誓ってくださいね。」
涙ぐんで頷く桜を見ていると、可愛らしくてたまらなくなります。これほどまでに庇護欲をそそる存在はほかにありません。
すると、おもむろに桜は私の胸に両手を添えました。・・・艶っぽい空気になってくれれば良いのですが、単に一度離れるだけですね。残念ながら。
それでも改めて言いたいことがあるのなら聞いておきましょう。
「あの・・・一つだけいい?私は、ライダーみたいになれたらな、って思ってる。ライダーのことをカッコいい、姉さんみたいだって思ってるから。」
ピシッ!!
「あ、あの、ライダー?どうして固まってるの?嫌だった?」
今こそ伝えねば!!もう我慢できません!!
「好きです。この戦争が終わったら結婚してください。」
「え?」
「好きです。この戦争が終わったら結婚してください。」
「ちょっと待って!?」
どうやら同性は恋愛対象ではないようですね。それでも気持ちを伝えられたならヨシ!!です。
「あ、あの、その、ライダーの気持ちは嬉しいんだけど・・・」
「返事を急かすつもりはありませんよ。私の気持ちを知ってほしかったのです。」
「・・・そう、・・・あの、もう一人の私とも話をする?」
「ええ、代わっていただけますか?」
◇◇◇◇◇◇
もう一人の私が部屋から出てきた。ライダーとは仲直りできたみたい。
「こっちは終わったわ。今度は貴女をライダーが呼んでる。」
「わかったわ。私・・・何か他にあるの?」
「あの・・・あとで、落ち着いたら、話をできる?」
確かに話したいことはある。聖杯戦争の最中なのだから悠長なことなど言わず、直ぐに話すべきだと思うけど、まだちょっと怖いというか、自分相手に変な話だけど胸の内を晒せない。
「わかった。落ち着いたらね。」
「ありがとう。私。」
自分同士のやり取りを済ませ。私はライダーの待つ部屋に向かった。