ゆさゆさ。
「先輩、先輩起きてください。」
わざわざ土蔵まで起こしにきてくれたなら、起きないわけにはいかない。
「おはよう、桜。」
かわいい後輩は、髪をかきあげながら返事をしてくれる。
紫がかったロングヘアーにパッチリした目をした、一年後輩の間桐桜は我が家の心のオアシスだ。
「おはようございます。ちゃんとお布団で寝ないとダメですよ。」
もはや日課となったやりとりである。毎日のように通ってくるのはこの可憐な後輩と・・・
「しーろーうー!!ご飯まだーーー!!!??」
腹をへらした大虎、藤ねえこと藤村大河である。いつもの朝だ。
・・・生徒の家になかば居候しているような状況に甘んじるのは、教師として如何なものだろうか?
「口に出すと後が怖いけど。」
「えっ!?先輩は何が怖いんですか?」
「いや!?何でもないぞ。」
いかん、思わず声に出てたらしい。
「ひとりごとだから気にしないでくれ。さあ、朝食の準備に取りかかろう。」
料理をするのは俺と桜だ。藤ねえは食べるのが専門。
「うん!!うまい!!桜ちゃん腕あげたね。」
「おい、藤ねえ。食べながらしゃべるな。」
騒がしくも和やかないつもの朝食である。そろそろ登校するか。
ピーポーピーポー・・・
信号待ちで救急車を見かけた。
「またガス漏れ事故か?最近多すぎだろ。」
「そうですね。」
朝のニュースでも新都でガス漏れ事故について特集やってたな。
「衛宮、今日も早いな。」
「おはよう一成。まあな。」
「うん?これは・・・」
なんだ?靴箱に手紙なんて、まるでラブコメの一幕のようだ。誰からだろう?内容は・・・
『ホウカゴニ、スグ、タイイクカンウラマデ、キテクダサイ。サモナイト■■シテ●●ニシマス。』
・・・定規を当てたらしき、直線だけで書かれたカタカナのメッセージだ。
どう見ても脅迫文である。
「むっ!?どうしたのだ衛宮。」
「ああ、一成。いや、たいしたことじゃない。」
ただのイタズラだろう。それでも生真面目なわが親友、柳洞一成は大騒ぎするかもしれない。
「そうか、ところで一つ頼まれてくれないだろうか?」
備品のストーブの修理か、構造解析は得意だ。
「トレース・オン。」
今は亡き養父である切嗣には「なんて無駄な才能だ。」と嘆かれたけど、この能力には愛着もあるし、便利だとも思ってる。
これも正義の味方になるための一歩だ。
授業が終われば、部活をやめた俺はすぐ帰路につく。今日はバイト先のコペンハーゲンに早めに顔を出そう。
◇◇◇◇◇
そのころ、体育館裏では。
「だーーー!!どうしてすっぽかすのよ!!」
「やはり、文面が悪かったのでは?」