このような辛気臭い教会など、本来は我が足を運ぶような場所ではない。酒蔵としてはそこそこ品揃えは良いが、それもとうの昔に飽きた。
退屈こそ我の大敵である。
この世界全ては我を、英雄王ギルガメッシュを楽しませるために存在すべきなのだ。それを怠るとはなんと不敬なことか。
「そろそろ雑種どもの小競り合いを見物するのも飽きた。セイバーを娶りに行くとしよう。」
言峰は何やら思案しているようだが、あやつの思惑などどうでもよかろう。
聖杯を確保し、六体のサーヴァントを捧げ、聖杯の泥をセイバーに与えれば良し。変質して正気を失ったのなら、それまでの女だと思うまでだ。
それに凡人は狂い方も平凡だが、傑物なら狂うにしてもさぞ面白い狂いようを見せてくれるだろう。それも一興ではないか。
「さて、まずはどのサーヴァントから刈り取ろうか?」
◇◇◇◇◇
聖杯戦争に本格的に参加すると決めたけど、やはり私は先輩の家でごはんを用意するのが日課であることは譲れない。
・・・もう一人の私が姉さんをそそのかして私を先輩の家に近づけなくしたせいで、その日課をずいぶん出来ずにいた。
もう我慢することもない。美味しい料理を腕によりをかけて作るため、買い物しようと街まで出掛けたら、作り物めいたくらい可愛い10歳くらいの女の子を見かけた。
キラキラしたプラチナブロンドの髪は遠目にも目立っていて、上品なセミフォーマルの洋服とスカートも良く似合っていた。思わず見惚れてしまうくらい・・・
あれ?こちらに気づいた?トトト・・と可愛らしく小走りして近づいてきます。
「あら?貴女はひょっとして凛と一緒にいた・・・サーヴァントの色違い?」
小首をかしげて見上げる仕草が愛らしい。思わず頬が緩んでしまう。でも、その瞬間に悲鳴のような警告が聞こえた。
「サクラ!!その少女はマスターです!!」
霊体化して着いてきてくれたライダーが知らせてくれる。こんなお人形のような少女がマスターだなんて思いもしなかった。
どうしよう!!こんな商店街の大通り、しかも昼間に戦うわけにはいけないし、逃げる?逃げ切れる?
「やめなさい。お昼から戦っちゃダメなのよ。知らないの?」
よかった、どうやらこの娘に戦う気はないみたい。
「あ、あの貴女はマスターなの?」
「そうよ。私はマスターで、名前はイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。」
「その、イリヤちゃん?」
敵なのかも知れないけど、いえ、アインツベルンということはすでに敵のはずなんだけど、こんな小さな子に威圧的な態度なんてとれない。
話してみたら良い子かもしれないし、穏やかに話しかけてみた。でもなんだかイリヤちゃんは眉間にシワをよせて不機嫌な様子になってしまいました。
「イリヤ『さん』よ。私は桜より年上なんだから。」
「えっ!?」
「聞こえなかったの?私はこう見えて桜や士郎より早く生まれてるの。もう18歳よ。」
「えええ!?」
とても年上には見えない。背伸びしていってるのかな?でも真剣な表情。
「・・・複雑な家庭の事情があるのよ。」
「・・・苦労してるんですね。」
私も相当なんだろうけど、凄い人生を歩んでるのかな?イリヤちゃ・・・イリヤさんは。
「貴女はシロウの知り合い?」
「先輩は・・・私のことを家族だって言ってくれてます。」
「シロウの家族?結婚してるの?」
ボンッ!!と顔が赤くなるのを自覚した。
「ち、違います!!」
いずれはそうなりたいと願ってますけど。
「なら恋人?恋人は家族じゃないでしょ?」
「先輩は、恋人になる前から私を家族だって、理由はわかりませんけどそう呼んでくれてるんです。」
「・・・変なの・・・」
そういってうつむくイリヤさんは、少し寂しそうだった。
「結婚したわけでも、子供を産んだわけでもないのに、家族って作れるの?そんなの教えてもらったことないよ。」
なんだか不憫に見えてきました。なんというか、家庭に恵まれてなさそうな・・・それを言ったら私も姉さんも先輩もそうですけど。
「あの、良かったらこれからお昼ごはんをご一緒しませんか?イリヤさん。」
ここでイリヤさん誘うべきだ。なぜか私は強くそう思った。