『瞳はサファイア、心は鉛』
「一度やってみたかったんです。」
桜がそうねだるので、お願いを聞いてあげようと思った。俺に膝枕をしながら読み聞かせがしたかったそうだ。
縁側に移動して、日向ぼっこしながら穏やかな時間を過ごそうと思った。思ったんだけど・・・
「あの・・・桜?怒ってるのかな?」
「いえ、なんでそう思うんです?」
よりにもよって本のタイトルは『幸せな王子』である。
ツバメに協力してもらって、文字通り体を削って貧しい人を助ける。しかし、人助けをしていたせいでツバメは冬を越せずに死んでしまう。
王子様も自己犠牲の果てに鉛の心臓が砕けてしまうのである。
「なんか含みがあるような?」
自分がお人好しな自覚はある。それに対して、桜は言いたいことがあるのだろうか?
「おかしなこと言わないでください。」
柔らかい笑みを浮かべている。そうだよな、桜は乙女だものな。
桜は物語を読み進める。絵本は読んだことはあるが、今回読み聞かせされてるのは原作小説だ。
俺が知ってるストーリーとは細部が違う。へー・・・ツバメは結構軟派というか、惚れっぽいやつだったんだな。
「『貴方の手にキスしていいですか?王子様。』『唇になさい、ツバメさん。』私はこのくだりが大好きなんです。」
「そのツバメはオスだよな!?」
もうなんでもイイのか!?ストライクゾーン広すぎるぞ!!
「愛は全てを乗り越えるのです。」
そうだよな、桜は乙女だものな。もうそういうことで納得しよう。
そして・・・
「先輩は王子様です。私はツバメ。」
「やっぱり含むところがあるじゃないか!!」
「だけど私達はいっしょに冬を越えるのです!!」
「わかった、わかったから、だから押し倒すのはやめてくれ!
おい!!桜!!あーーーー!!」
『末っ子三人娘』
「意識しなかったけど、私達全員末っ子ですね。」
「サクラとお揃いなのは良いですが、ですが・・・」
「確かに、私にも兄と姉がいます。」
私、ライダー、セイバーの以外な共通点です。
黒い私は姉さんと遠目に見てるだけで、会話には入ってくる気配はない。
というか黒い私は姉さんに甘えるのに夢中だ。姉さんは何かニヤニヤと面白そうに観察してくる。
「私の場合は、姉とは敵対していたので良い思い出はありませんね。兄は・・・口の減らない人でしたが私を妹として可愛がってくれました。」
「私は、ずいぶんと振り回されましたけど、姉と暮らしていた時は良い思い出がたくさんあります。」
セイバーさんもライダーさんも、当たり前だけど子供の頃の思い出があるんですね。
「私は・・・」
姉さんの方をチラッと見ると、ニヤニヤがソワソワになってる。可愛いですね。
「正直に言うと、昔いっしょに暮らしてたことはほとんど覚えてないですね。」
あっ、露骨にガックシきてます。黒い私が頭を撫でて慰めはじめました。フォローしますか。
「でも大切にしてたリボンを譲ってくれたことは覚えていますよ。姉さんとの絆ですから。」
あっ、わかりやすく復活しました。おやおや姉さんは可愛いですね。
「これから新しい思い出も作れますし。」
ライダーは涙目で頷いてます。我がことのように喜んでくれている。ライダーに遭えて本当に良かった。
「三姉妹仲良く、これに勝る幸福はありません。」
三姉妹?
私ともう一人の私と姉さんが・・・三姉妹?あっ、黒い私が・・・なんか腹立つ顔をしてます。
「私の方がお姉ちゃんなので、敬ってください。」