そもそも期待などしていなかったが、こうもありきたりな反応ばかりでは愉悦の種としてもつまらない。
「おいどうなってんだよ!!このサーヴァントは!!」
静謐であるべき教会に、場違いな罵声が響き渡る。あまりに滑稽すぎて、あのギルガメッシュが『このサーヴァント』呼ばわりされて涼しい顔とは、考えてみれば英雄王を目の前にこうも無神経に振る舞えるとは、この慎二という少年は稀有な才能の持ち主かもしれぬ。
「何か問題でも?」
「あと一息で勝てるってとこで『雨で濡れる』って帰ってったんだぞ!!マスターの僕を置いて!!」
そもそも『偽臣の書』すらなく、預かっただけのサーヴァントにマスター顔もは恐れ入る。
「ほう・・・では他のサーヴァントに変えるかね?」
「なんだよ、あるなら早く言えよ」
「いささか時間がかかるが調達できるだろう」
それまで待ってくれ、そう言ってやるとアッサリ信じてしまう。なんとも無警戒なことだ。
彼の少年が去ると、ようやく教会に静けさが戻った。その時であった。
ボトッ・・・
自分の手首から先が無くなり、地面に落ちた。そう理解して、背後に気配を感じふりかえる。
「はじめまして、おじさま」
「キャスター・・・か?」
見覚えがある。妹弟子のサーヴァントがそこにいた。驚いたことに、フードをとったその顔は以前治療した少女のものだ。
「ええ、平行世界の桜です。こちらの私がお世話になりました。できれば恩を返したいですが、『貴方は生かしておくには危険すぎる』私には言う資格がないですけど、姉さんに代わってということで言わせてもらいます」
なんと、これではこちらの手の内がバレているのも無理はない。言い訳も通用しないだろう。なるほど、さすが『聖杯』ありえざる奇跡を目の当たりにさせてくれる。
「気にすることはない、自分が度しがたいことは重々承知だ」
令呪を手ごと切り落とされては最早抵抗するだけ無駄だろう。
「せめて最期に言い残すことがあればうかがいます」
なんとも殊勝な心がけだ。巡り合わせが違えば、聖女と讃えられる存在になっただろう・・・それではつまらないがな。
「私には後悔も懺悔もない、しいて言えば新しい命であるアンリ・マユの誕生を祝福できないのが心残りだ」
「・・・すいません。その願いを聞き届けるわけにはいきません」
服から変化した触手が、まるで鎌首をもたげる蛇のようにこちらに狙いを定める。
そうだろうな、元より期待などしていない。その本心から申し訳なさそうにする顔を見ながらの最期なら悪くなってない。愉悦こそ我が人生ゆえ・・・
ドンッ‼️
「あ・・・」
私の体から、剣が突きでて・・・
「姉さん!!」
◇◇◇◇◇
「ごめんなさい。あんまり憎たらしいもんだから、つい段取りを変えてしまったわ」
兄弟子をアゾッド剣で刺し殺した姉さん。例え手負いでも言峰のおじさまは油断ならない相手。姉さんは私がトドメを刺すまで隠れている予定だったし、出来ればこんなことは私がやっておきたかった。人殺しなんてやらせたくなかった。
「姉さんは本当に私に甘いですね」
「桜こそ、汚れ仕事は自分が、なんて考えないでよ」
「・・・ありがとうございます。自分を大切にしますね」
私は本当に良い姉に恵まれた。ちょっと愛情表現が不器用だけど、優しくて面倒見の良い姉に。
「ここからは時間との勝負よ。ギルガメッシュが大人しく魔力切れで消滅なんてするわけないんだから」
「はい、アーチャーのクラスですから『単独行動』スキルもありますからね。それと、地下は・・・」
「ダメね。予想通り、一思いに楽にしてあげた方が慈悲という有り様よ」
魂喰いでサーヴァントを維持する。外道な手段も辞さないあたり、やはり魔術師であったおじさま。それに嫌悪感を示す『魔術師らしかなぬ』姉さん。
もっとも、魔術師らしくないなんてとても本人の前では口に出せないけど。
「ギルガメッシュが魂喰いを始める前に仕留めるわよ。敵は一つ一つ囲んで棒で叩いてやるわ‼️この際優雅でなくて構わない‼️」