「おお言峰よ、死んでしまうとは情けない」
我は王なので、言ってやらねばならぬ気がした。はたしてあの背徳神父に届いただろうか?
まあ長生きした方だろう、もとよりロクな死に方をする男ではなかった、あやつも損得や善悪はおろか、自らの生き死になど頓着せずひたすら愉悦を求めることを貫いていた。そういう意味では純粋であり、潔かった。
「言峰が死んだ!!なんてこった!!これからどうするんだよ!!」
マスター気取りの道化はやはり狼狽えている。下僕なら指示をあおぎ、マスターならば我に献策するべきだが、道化にそんなものは不要。むしろせいぜい我を楽しませるべきだろう。
「さて、どうするかな? お前は何か思い付かんのか?」
「はぁ!?こんなの想定できるわけないだろ!!とりあえず、魂喰いで現界を維持できるようにするしかないだろ!!」
単独行動スキルを有する我は、マスター無しでもしばらくは問題ない。しかし、魔力の供給元はいずれ必要となる。
「だが・・・下々の者に魔力を献上させるならともかく、我がわざわざ集めて回るのはつまらんな・・・」
それよりもっと王にふさわしい糧があるではないか。
◇◇◇◇◇◇◇
「大聖杯は柳洞寺の地下にある大空洞にあらわれます。本来なら聖杯はサーヴァントが残り二騎になって姿を現し、一騎になって完成ですが、あのアーチャー、ギルガメッシュさんは一人で三騎分ありますので、ギルガメッシュさんと他に二騎倒せば聖杯が現れるでしょう」
なるほど、それなら戦略の幅が大きく広がるわね。
「アーチャーはすでに私のバーサーカーが倒してるわ。あと一騎ね」
桜にイリヤ、そして私。はじまりの御三家の人間が士郎の家のお茶の間に勢揃いして聖杯戦争を終わらせようとするなんて、事実は小説どころかたちの悪いジョークより奇なりね。
「お爺様が気になりますが、危険を冒して行動するより勝てる機会まで待つのが信条の魔術師です。まずはギルガメッシュさんの排除を優先すべきでしょう」
「それで、ギルガメッシュは次にとる行動はなんだと思う?セイバーに固執してるのは間違いなさそうだけど」
私がみんなに意見を募る。そうするとイリヤは「何をわかりきったことを・・・」と言い出した。
「そんなの新しいマスター、あるいは魔力の供給源の確保に決まってるじゃない」
「それはそうでしょうね。だけど具体的にどこでどうやって確保するかわからないと、対策の立てようがないわ」
「あくせく獲物を探してまわるタイプには見えなかった。シンジには魔術は使えない。そうなると手段は限られてくるわ」
みなまで言わずともわかってるでしょ、と言わんばかりの視線を向けてくる。
「探しまわらなくても、あちらから私たちを襲ってくるわけね」
「ええ、しかも時間制限がある。近々襲撃があるはずよ」
「持久戦に持ち込めば、あちらの自滅を狙えるわ」
士郎が顔色を曇らせる。
「そうなったら、ギルガメッシュは冬木を離れて魔術師を探すか、俺たちをおびきだすために街で暴れるんじゃないのか?」
「ありそうね」
イリヤは「それがどうしたの?」といいたげな目をしてるが、そんなのほっとけるわけがないじゃない。
「よろしいでしょうか?ギルガメッシュはプライドが高く、見え透いた挑発にも容易くのってしまう傾向があります。前回の聖杯戦争でもそうでした」
なんでも第四次聖杯戦争では、ライダーの口上に我慢ならずド派手な格好で登場したらしい。アーチャーなんだから遠距離から姿を隠して一撃離脱した方が絶対有利なのに・・・
「なるほど、たとえこちらが有利な状況でも向かってくるわけね。自信家なこと」
自分が圧倒的有利でも気分が乗らないとアッサリ撤退してたし、これは分かりやすい弱点ね。それだけ自分の力を絶対視してるんでしょうけど、それが命取りよ。
「挑発に乗りやすいのは兄さんも同じですし、決戦を仕掛けるのは難しくないですね」
そう、決戦よ。全ての因縁にけりをつける。