冬木の霊脈が集う地下、そこに大聖杯が現れる地点がある。聖杯戦争を作り出すシステムの根幹が存在する。これを破壊してしまえば、もう聖杯戦争なんておこらない。
とはいえ、大聖杯が姿を現すのはもっと多くのサーヴァントが脱落したあとの話なんだけどね。
「こんな段階でここへ来て、凛は一体何をするつもりなの?」
「別にいま大聖杯があると思って来たわけじゃないのよ。大聖杯が出現したら直ぐ作動するトラップを仕掛けて置けばいいんだから。幸い宝石は山ほどあるし」
「私のお金で買ったやつね。いくらなんでも遠坂家の財政傾きすぎよ」
やれやれと溜め息をつく銀ピカロリなスポンサーがうるさいわね。
「あの全部あのクソ神父言峰のせいよ」
あー、あんなのでも兄弟子と思って顔を立てたのが一生の不覚。いつまでも引きずるのは心の贅肉とわかってるけど、腹立つわ〜。
「そして、そんなトラップを仕掛けられてるとわかったら、絶対妨害してくる奴がいるわけよ」
ヒュン!!
バチッ!!
軽い風切り音がしたと思えば、桜の触手でダガーが撃ち落とされて地面に転がった。
「アサシンか、不意打ちとは蟲らしい小賢しさね。優雅さの欠片もないわ」
「カカカカッ、格好など気にしては大願成就がかなわんからの」
耳障りな羽音とともに、蟲とアサシンを引き連れた和装の老魔術師が現れた。
仮面をつけた黒ずくめの痩せぎすな体格で、いかにも暗殺者という風貌、あれがアサシンか。包帯でぐるぐる巻きにした左腕に何か隠してそうね。
私は桜に視線をおくる。それだけで妹には通じる。
「イリヤさん、先に行っていて下さい。ここは私たちが食い止めます」
「そうね。大聖杯のシステムならアインツベルンの私が一番熟知してるわ。すぐに仕掛けを完成して見せる」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
我ながら肝が座りました。お爺様が目の前にいても、なんら動揺することはありません。軽口なんて羽音と同じです。
「カカカカ、まさか姉のサーヴァントになるとはの。器が違うと悟ったということか、やはり姉の方を貰っておけばよかったのぅ」
「あー久しぶりに聞きましたよ、お爺様のそのセリフ。そうやってことあるごとに、姉さんに対する敵愾心と劣等感を私に植え付けてきましたね。本当は私一択だったくせに。架空元素が目当てだったんですよね」
あっ、いけません。お爺様を挑発するつもりが姉さんの逆鱗に触れてます。怒りのオーラが背後からロウリュのように吹いてきます。
汗が止まりません。人間なら良いダイエットになりそうですけど、サーヴァントなのでもう体型は変わりません。ジトジト不快なだけです。
これも全部お爺様が悪いんです。そうに決まってます。諸悪の根源をプチッとつぶしましょう、そうしましょう。
「長生きのしすぎで耄碌したようね、臓硯。無勢ってわからないのかしら?諦めてさっさと逃げ出した方が賢いわよ」
「カカカカ、お気遣い痛み入る。しかし若い衆にばかり働かせるのも気が引けると言うものよ、この老骨も働かねばな。ああ、それと・・・・お主ら、帰る家の心配はしなくて良いのか?」
何ともわざとらしい揺さぶりですね。姉さんはポーカーチェイスのままです。
「ご心配なく、うちの留守番はしっかりしているのよ。」
決着をつけましょう、お爺様。