玄関を開けたら、憧れの美少女が待っていた。
緩やかに波打つ緑の黒髪。強い意志を感じさせる瞳。文武両道を地でいく学園のアイドルがそこにいた。
それだけならまるで夢のようなシチュエーションだろう。
その表情は間違いなく笑顔で、声色は優しげで、なのに何故か背景が歪んで見えるほどの怒気が感じられるのでは、夢は夢でも悪夢だけど。
「おかえりなさい、衛宮君。勝手に上がらせてもらったわよ。」
「な、なんで遠坂が俺の家に・・・」
率直な疑問を口にすると、信じられない答えが返ってきた。
「アンタが私の呼び出し無視したからでしょーがぁぁぁ!!」
な、なんのことかわからない。
遠坂からの呼び出しなんて覚えがないし、あったら忘れるわけない。
「まぁ、玄関で立ち話もなんだし、居間に案内してくれない?」
「えっ!?ああ、わかった。」
居間に移動し、茶をいれる。
遠坂は自然と上座に座るのがやたら絵になるな。
上品に茶を飲むと、遠坂が口を開いた。
「ふうっ、落ち着いた。それじゃこんな時間だし、手短に言うわ。衛宮君、貴方は魔術師ね。」
息が止まる。何故それを遠坂が知ってるのか。
「来た理由は、私が魔術師で、この冬木のセカンドオーナーだからよ。いままで挨拶もなしにモグリで魔術師やってたなんて、いい度胸してるわね。」
遠坂が魔術師!?セカンドオーナーってなんだ?わからないことだらけだが、『モグリ』って無免許とか無登録ってことか?
「いや、あの・・・魔術師ってそういうのいるのか?」
あっ?呆れたように頭をふられた。
「いるのよ。悪いけど調べさせてもらったわ。貴方の師匠は養父の切嗣?魔術師についてどの程度教わった?」
「ええと、魔術回路の作り方と強化と投影は知ってる。・・・あのひょっとして加盟料とか払わないといけないのか?」
もしそうなら困る。
加盟料なんて一度も払ったことない。延滞金とかついたらどんな高額になるか考えただけでおそろしい。
「別にそんなのはいらないわよ。だけど、モグリは困るの。例えるなら街中で無資格・無届けの奴に危険物を扱われちゃ黙ってられないってこと。」
言われて気がついた。俺には大した魔術は使えないけど、遠坂にしてみればそんなのわかるわけない。
「あー・・・それは確かに悪かった。この通り。」
ここは素直を頭を下げるしかない。
「わかればよろしい。それと魔術の秘匿はちゃんとしてる?」
そんなの切嗣から教わったことない。
「そんなの聞いたこと・・・ない・・・ぞ・・・」
「どうなってんのよあんたの師匠はーーー‼️」
どっかーん!!と効果音の聞こえそうな様子だ。何かまずいこと言ったらしいけど、命の恩人であり師匠でもあった切嗣をこうまで悪く言われると頭にくる。
「おい、親爺の悪口はやめてくれ。」
なんか遠坂が深呼吸をはじめた。
「ごめんなさい、感情的になっちゃって。・・・でも、まずは使用上の注意からはじめるものでしょう。やりながら覚えるとか危険にもほどがあるわよ。」
「・・・それはそうかもしれない・・・」
切嗣は、俺には魔術師になってほしくなかったようだから、俺がどうしてもとせがんだので仕方なく教えたから、こんなことになったのかもしれない。
とはいえ、それを遠坂に伝えたところで益があるわけでもない。
「とりあえず、基礎の基礎くらいは私が教えてあげる。それと、魔術は秘匿すべきものよ。人前では使わないように、みだりに魔術を教えたりするのも禁止。」
「わかった。ありがとう遠坂。きちんと魔術を教えてもらえるなんて願ってもない機会だ。」
・・・遠坂に教わった結果、俺は毎日間違った鍛練で死にそうになっていたことがわかった。
遠坂は二人目の命の恩人かもしれない。