青髪に青いタイツ状の戦闘装束。どこからどう見ても一般人のはずがない若い男性が、威圧感を振りまきながら視線を送ってきました。
カラカラと今さら結界が警報を鳴らしています。
ランサーさんが一気に飛び込んできたのか、それとも魔術で結界を誤魔化したのかわかりませんが、ピンチです。
「貴方はランサー?」
姉さんの問いに対して、ランサーさんはくだけた調子で返答しました。
「わかるか?まぁ、俺はわかりやすいよな?」
真紅の槍をたずさえた大男なんですから、これ以上なくわかりやすいです。
会話で時間を稼げれば良かったのですが、あちらにはその気はないようで、すぐに槍を構えて攻撃姿勢をとってきました。
マズイ、ランサーさんは私にとって相性最悪な一人と言っても過言ではありません。まだ、バーサーカーさんの方がマシです。
「クらえっ!!」
先手必勝!!魔力の塊をぶつける。
宝具並みの攻撃だけど、簡単に回避されてしまう。いや、回避ではない?
しまった。矢避けの加護がありました!!
「残念だったな。」
あっさり懐に入られた。槍の穂先が心臓へと走ってくる。避けられない。
「セット!!」
ガキン!!と音を立てて槍は弾かれた。
姉さんのエメラルドで作られた、緑の結晶状の盾がわたしを守ってくれた。
ランサーさんは飛び退いて、距離をとりました。
とはいえ状況は以前こちらに不利です。
首や腹なら大穴を空けられてもなんとかなりますが、ランサーさんは心臓を狙ってきます。その上対魔力があり、矢避けの加護まであるのでは、私や姉さんのほとんどの攻撃手段が通じません。
「飛ビ道具が当たラないなラ!!」
触手で攻撃する!!
「よっ!!ほっ!!単調だなぁ・・・もうちょっと楽しませてくれや。」
当たらない、手詰まりです。
でも先輩をや姉さんを置いて逃げるわけにはいかない。
「 こ ち ら を 向 け ラ ン サ ー 。」
土蔵の出入口に立つ。
それだけなのに、彼女の姿はまるで一枚の絵画のようだった。
白銀の板金と蒼い衣。金髪に翠の瞳。そして見えざる剣。かつて私が呑み込んだ、私のサーヴァントであった彼女がそこにいた。
「本来なら二人がかりなど主義ではないが、マスターの命令だ。悪く思うな、ランサー。」
歩みよりながら得物を掲げる。
ああ、なんて頼もしい。
「見えねえ・・・剣か?」
「杖かもしれんぞ、ランサー。」
威圧に軽口で返すその姿は、英霊の名にふさわしい。これで一気に形勢逆転です。
「セイバーは味方?召喚に成功したのね。」
「ええ、そうですよメイガス。私の対魔力はA。同士討ちを気にせず援護を!!」
「無駄よ、ランサーには矢避けの加護がある。」
「なるほど、厄介な。では貴女とキャスターは防御と周囲の警戒を頼みます。」
「俺を無視すんじゃねえ!!」
吠えながらランサーさんは槍を繰り出すが、穂先はまるでセイバーさんに届かない。
「頼んだぞセイバー!!遠坂たちを守ってくれ!!」
土蔵から先輩まで出てきてしまいました。
先輩は身を守る術がないんだから、大人しく隠れててください。
アレ?なんだかセイバーさんの動きが先ほどより良くなったような・・・待ってください、姉さん・・・
「令呪ノ説明しテましタか?」
「・・・うっかりしてたわ。」
私も説明を聞いていながら今まで忘れてましたけど、三つしかない令呪を早くも一画消費してしまうとは!!
「クソッ!!引き揚げだ!!」
あっ、ランサーさんが逃げます。でもセイバーさんは追撃しません。先輩のそばを離れるのが不安なのでしょうか?
「・・・マスターの令呪により、貴女たちから離れることができません。」
美人が睨むと怖いですね。
「うっかり、とはなんのことでしょう?」
聞こえてたようです。バレてますよ姉さん。
「納得のいく説明を求めます。」
逃げられませんよ、姉さん。