「問おう、貴方が私のマスターか。」
思わず見惚れていた。
金糸のような髪に翠の瞳。
蒼いドレスに白銀の板金をあてた鎧。
ほっそりとした小柄な体躯の少女。
静謐で幻想的で、たとえ他の全てを忘れてしまったとしても、この瞬間だけは覚えていられそうなほど、彼女は輝いていた。
「ラインを確認しました。これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。ここに契約は完了した。」
「あ、ああ。」
従ってくれるらしい。
いや、でも、まずいぞ。
可愛い女の子を召喚してどうするんだ?俺は聖杯戦争で遠坂を助けるために、強いサーヴァントを喚ばないといけないんだ。
ってアレ?
セイバーのようすが・・・
「外で戦闘が起きているようです。」
敵か!?
ー カラカラカラ ー
結界が反応してる!!間違いなく侵入者だ!!
「黒髪で赤い服の女の子とキャスターは味方だ。助けてくれ!!」
俺が言い終わる前にセイバーは駆け出していた。
◇◇◇◇◇
セイバーは凄く強かった。
見た目で判断しちゃダメだな。
無事ランサーを退けた俺たちは、居間で改めて自己紹介した。
そして遠坂は正座している。凄く縮こまりながら。
「え~と、つまり、私の説明不足で令呪を無駄遣いさせてしまったわけだけど、けっしてわざと足をひっぱったわけではなく・・・」
そして、なんか言い訳してる。
それを聞くセイバーも正座だ。
テーブルを挟んで遠坂の正面に陣取って、生け花、あるいは茶道の家元かと思うほど見事な正座である。
そして、表情が動かない。
凛とした静かな面持ちのまま動かない。
これは怖いな。
怒っているのか、そうでないのか、顔色からは全く判断できない。
「話はわかりました。謝罪を受け入れましょう。」
良かった。セイバーは優しい娘のようだ。
「そうしてやってくれ。遠坂は悪い奴じゃないから。」
「心得ました、マスター。」
「それじゃ、早速教会に行って聖杯戦争に参加するって宣言しましょう。」
そう言って遠坂は立ち上がろうとしたが、セイバーが制止した。
「待ってください。教会に赴く前に、一つ提案があります。」
そういうとセイバーは俺の方に向き直り、手をついて頭を下げた。
「無礼を承知でお願い致します。切嗣の墓をあばかせていただきたい。礼装を造るのに必要なのです。」
!!!何を言い出すんだ!?
「え~と、切嗣って誰?」
遠坂の疑問に答えようとしたが、先にセイバーが口を開いた。
「衛宮切嗣。第4次聖杯戦争において私のマスターだった魔術師です。」
アレ?遠坂の顔色が変わったぞ?
いや、切嗣が前回ではセイバーのマスターだったってのは驚きだけど、そんなに怖い顔をすることか?
「衛宮君はわかってないようだけど、サーヴァントが前回参加した聖杯戦争について覚えてるなんてあり得ないのよ。現界してるサーヴァントは座の本体のコピーみたいなもの、そして、コピー同士は記憶を共有できないの。」
「え~と、おなじ型式の別の個体みたいなものか?」
「そうね、そういうこと。セイバー、貴女の言うことを嘘だと決めつけることはないけど、にわかには信じられないわ。」
「たしかに通常のサーヴァントはその通りです。しかし、私は特殊な例外なのです。剣と騎士の誇りに誓って、嘘偽りはありません。」
それを聞いた遠坂は、キャスターに視線をおくる。その視線にキャスターは頷いた。セイバーを信用すべきって意見か?
「なるほど、でもそれって今すぐやらないといけないことなの?」
俺抜きで話が進んでいくが、口を挟むと怒られそうなので黙って二人の会話を見守る。
「はい。教会に赴く途中に、敵のサーヴァントの待ち伏せをうける危険があるのです。なので事前に戦力の強化が必要です。」
「あー・・・たしかに、街中を探し回るより、教会で待ち伏せした方がマスターを見つけるには簡単ね。サーヴァントを召喚したばかりで、魔力不足なら狙いやすいし。」
「その通りです。すぐに教会に向かうのは悪手と言えるでしょう。」
そこまで言うと、セイバーは再び目線を俺に向けた。
「切嗣は自身の骨から、起源弾という礼装を造りました。この礼装の利点としては、魔力回路を破壊して、相手の魔術師を殺さずに無力化できる。ということが挙げられます。」
!!!
それは、大きい。俺は遠坂を死なせたくない、俺だって死にたいわけじゃない。だけど、そのために相手を殺すのにも抵抗がある。殺さずに相手を無力化できる武器があるなら、それは・・・たとえ罰当たりな息子になったとしても手に入れたい。
果たして俺はセイバーの提案を受けるべきか、受けざるべきか。