Fate/Black Lotus 泥中之蓮   作:杉田雅俊

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矜持と後悔

 

 

言い訳せず、潔くあることが私の務めだと思っていた。

 

しかし、私が成そうとしたことは言い訳どころか失態を隠蔽する行為だったのではないだろうか?

 

いや、そうだったとしても成さねばならぬ。

彼らは救いを求めていた。死にたくなかったはずだ。

ならば、このままにはしてはおけない。

 

たとえそれが道理をねじ曲げるものであったとしても、どうしてもやり直したい。

 

そのために再び剣をとった。

 

そして恨みもない相手を殺した。罪もない人々を巻き込んでしまった。

 

わかっていたはずだ。戦なのだから、どれほど気を付けたところで、関係ない者にも被害はおよぶ。

 

徒に犠牲を増やしているのではないか?

 

己にそう問いかけたところで、私にできることは剣を振ることしかない。

 

人として女としての幸せなど、とうの昔に諦めた。

 

戦い続ける他に、望みを叶える術など知らない。

 

◇◇◇◇◇

 

「わかった、セイバー。お前の提案を受ける。」

 

新しい私のマスター、衛宮士郎はそう答えてくれた。

 

そして、いま私はかつてのマスターの墓の前にいる。

 

「恨んでくれても構いませんよ、切嗣。」

 

「それはない。恨まれるとしたら俺だ。」

 

振り返るとシロウが立っていた。

 

「セイバーは提案しただけだ。決めたのは俺だから。」

 

私に気を遣ってくれているのか、それとも彼が内罰的すぎるのか、判断に迷います。

 

「衛宮君・・・いえ、士郎でいい?」

 

「いいけど、なんだ?」

 

「アンタって何でも抱え込むっていうか、極端な奴ね。ブレーキ役がないと危なっかしいわ。」

 

「私も同意します。」

 

不服そうな顔をしているが、反論したところでこの件ではシロウに対する認識は満場一致です。

 

「・・・キャスターまで頷くなよ・・・」

 

なので骨壷を凛に渡すシロウは声に力がない。

 

「これから起源弾を造るわ。試作品なら明日の夜には完成する。そしたら教会に行きましょう。」

 

 

 

 

そして、墓地からの帰り道で。

 

「呼び出したんだね。今度は夜に会いましょう。お兄ちゃん。」

 

敵となるマスターと出会いました。

 

「えっ!?いや、こんな小さい女の子がマスターなのか?」

 

外見からすると12歳ほどと思われる少女。

白い髪に赤い瞳、紫のコートと帽子の可憐な装い。

およそ、戦いには相応しくない。

士郎が思わず声をあげるのも無理はないでしょう。

 

「失礼ね、立派なレディよ。」

 

「あっ、悪かった。でも女の子に戦わせるなんて親は何を考えてるのか・・・」

 

「・・・いないわ、どちらもね。」

 

「ずいぶん・・・込み入った事情があるんだな。」

 

「お兄ちゃんもその事情の中に入るんだけどね。」

 

それはどういう事か?

そういう表情をシロウが浮かべたが、それを口に出す前に凛が問いを発した。

 

「・・・貴女は、アインツベルンの人間?」

 

「ええ、そのとおりよ。はじめまして、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ。」

 

コートの裾をつまみ、イリヤはお手本のように優雅な礼をした。

 

「私は遠坂凛。士郎のことは知ってるようね。今日は宣戦布告しに来たの?」

 

「そんなところ、日が出ているうちから戦うつもりはないから、今日はこれで帰ってあげる。」

 

踵をかえして去っていく、そのあまりにも小さな背中から、私は生を突き放した印象を感じざるを得なかった。

 

「殺さないし、死なせない。絶対に。」

 

決意を新たにした様子のマスターに対して、私が誓うべきことは一つだ。

 

「貴方がそれを望むなら、私はその為に戦います。」

 

「ありがとう、頼りにしてるぞ。セイバー。」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

遠坂邸にて、私は姉さんに確認した。

 

「では本当にその礼装なら、相手を殺さずに無気力できるんですか?」

 

返答する姉さんは苦々しい表情だ。

 

「ええ、でも魔術回路を破壊するわ。士郎はわかってなかったようだけど、一生麻痺が残る代物よ。それがわかったら士郎が反対するだろうからセイバーは黙ってたようだけどね。」

 

先輩ならそうだろう。

 

「早くも自分のマスターの操縦法がわかってるんだもの。大したものよ、あのセイバーは。」

 

ひょっとしたらと少し期待してしまったが、やはり私は当初の計画通り行動せざるをえないようだ。

魔術回路が無ければ、蟲さえなんとかすれば、そう思ったが、一生麻痺が残ったりしたら、先輩か姉さんか、あるいは両方に大きすぎる負担をかけてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはりこちらの私を殺すしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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