転生者だけどDIOに目を付けられました。【没作品】 作:家葉 テイク
「何だかよく分からんが、とりあえずこれで言われた通りにしたぜ。毎度ありー」
そう言って、私達が先程まで使っていたタクシーの運転手は手を振ってもと来た道を戻って行きました。ドルルルン、とエンジン音を響かせて去って行くタクシーを見送った私は、改めて目の前の男――――ポルナレフを見据えます。
さて、話を進める前にまず、私達がどうやってこの広場に『二番乗り』したのかの説明をしておかないといけませんね。
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ACT5:裏切りの皇帝 その2
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最初に言っておくと、あの時私が見たものの中に条件は全て揃っていました。
ポルナレフとJ・ガイルの戦闘で割れる反射物に驚きズッこけている通行人。
走るアヴドゥルに怪訝な表情を向けている通行人の顔つき。
そんな光景とは関係なく休憩してコーラを飲んでいる少年の姿。
花京院から
ニヤニヤ笑いのトラックの持ち主を見てさらに
道脇に置いてあった空き瓶を盛大に蹴り飛ばした承太郎とジョセフ。
その近くで物音に首を傾げているご婦人。
それらから離れた位置に立っている私とホル・ホース。
そして、その後方にいる
「……いえ、一つだけ方法があります」
にわかに考え込んでいた私でしたが、さすがは桜子さん、すぐさま打開策をひらめきました。天才すぎるというのも時に困りものですね。あらゆるバトルに緊張感がなくなってしまいますから。
「なんだよ、その『方法』ってのは」
「……良いからついて来てください。説明するのも面倒です!」
そう言って、私は走り出しました。此処から、花京院が車を買い取った路地まではほんの数百メートル……今から急げば、十分に間に合うはずです。
そして、走りに走った先には、
「ひッ、なんだよォお前ェェ~~……」
「だからよ~、
「だッ誰かッ」
「オラッ!」
花京院にトラックを売った男は、ゴロツキに金をむしり取られている真っ最中でした。あ、助けを呼ぼうとして殴られましたね。
「桜子? こいつは……」
「花京院にトラックを売った男です。大金の受け渡しをゴロツキに見られていて、格好の標的になったってところですね」
「なるほど、つまりコイツを助けりゃあ良いって訳だ」
そう言って、ホル・ホースは『エンペラー』を構えます。一発撃つと、ゴロツキの耳を何の躊躇もなく破壊しました。
「うげッ、ぎゃあああああ~~~~~~ッ⁉」
「おっと邪魔だ退いときな……。そこのあんさん、危なかったなァ~~おれ達が助けに入ってなかったら全部掻っ攫われていたぜ」
「あ、ありがとうございます……? ??」
転がるゴロツキと代わるようにトラックの持ち主の前にやって来たホル・ホースに、トラックの持ち主は意味が分からなさそうに首を傾げました。まあ、これで全部とられることはなくなる訳ですから幸運であることに違いはないですよね。
「じゃ、お助け料ってヤツをもらいたいんだがよォ~~」
「ッ!?」
「なあ~~に全額とは言わねえ……そのカネのうち一〇%をくれりゃあそれで良いからよ……トラックの元の価値よりずっと高いカネを積まれてんだろ?」
「う、うう……」
「決断は早い方が良いぜ……せっかくのトラック代を、耳の治療費に変えたかねーだろ」
「ひ、ひィィいいいいッ⁉ は、払います! 払いますゥゥ~~ウヒヒヒィィ~~~!」
「それで良い」
さくっとお助け料を回収したホル・ホースはこっちに戻ってきます。……大体一〇〇万円弱ほどブンどってるんですが、流石にアウトローだけあってあくどいですね……。
「で、これからどーすんだ。カネがあろーがおれらには足がないぜ。このままじゃあ間に合わねーぞ」
「なあに、足のアテはありますよ。私はこれでも結構記憶力の良い方で、一度言われたことは長い間覚えているのです。そして、この桜子さんによれば、『彼ら』はあの時こんなことを言っていたじゃないですか」
『バクシーシ‼』
『
『両替スルヨー』
『
『そこのお嬢さんお守りはいかが?』
『お恵みしないと来世でひどい思いをするぞォ』
『バクシーシっつってんだろコラ!』
細かい所はぶっちゃけどうでも良いです。重要なのは、タクシー、という一点。
「私達の後方にあった物乞いの集団周辺には、タクシーがありました。お金は確保しましたから、今度はそのタクシーを使いますよ! タクシーなら地元の人間が運転しているから土地勘があるので花京院達よりも早く目的地に到着できます!」
「なるほどな……だが、また走るのかよ、うげぇ……」
贅沢を言うんじゃありません。この作戦以上に素早く移動する方法なんて思いつかないでしょう。
***
では、種明かしも終わったところでポルナレフとの接触を始めましょう。
「おい、テメーら……いったい何者だッ!? 新手のスタンド使いか!」
と、私達の方に気付いたポルナレフが詰め寄ってきます。助けてやったのに態度のデカいヤツですね。まあ良いですけど。
「おいおい……助けてやったのにひでー態度だな」
「ホル・ホース、そこは流しましょう。……新手のスタンド使いは新手のスタンド使いですが、私たちは別に敵じゃないですよ。私達もヤツ……J・ガイルを追っているのです」
「……そーいえば、さっきJ・ガイルのヤツがそっちの男を知っている風だったが……」
「彼は身内をJ・ガイルに殺されていて、復讐を誓っているのです」
「何だって⁉」
私が言った芸術的な嘘に、ポルナレフは目を丸くします。ホル・ホースも目を丸くしましたが、ポルナレフには気付かれていないようです。せっかく私が吐いた嘘が台無しになりかねないのでもうちょっと真顔を保ってほしいですね。
「(口裏を合わせてください)」
ポルナレフに聞こえない程度の声量で言うと、ホル・ホースは目だけで頷きました。
「そして私は、旅の少女です」
「てめーがそこをボカしてんじゃあねええ――――――よ‼」
ホル・ホースが口角泡を飛ばす勢いで私にツッコみます。
でも仕方ないじゃないですか。ただの女子高生がこんなところにいるなんておかしいですし。承太郎と花京院は色々と理由があるから許容されているだけなんですよ。
……と思っていたのですが、ポルナレフはこくりと頷いて、
「なるほどなぁ。それでそこの男について行っている、って訳だ」
そんな風にあっさり納得していました。
…………ああ、そういえば、今思い出しましたけどこの前のシンガポールまで、家出した少女と一時的に旅を共にしていたんでしたっけ。既に前例を見ているから、旅の少女と言っても気にしないわけですか。今の私は当然ながら制服ではなく私服ですから学生とも分かりませんしね。
「だが! 同じ目的を持っているとは親近感が湧くが、悪いが協力はできねー……ヤツはこの手で殺すと決めてる! これはおれの戦いなんだ……ヤツを殺す為に青春をささげて来たのだッ!」
拳を握るポルナレフをよそに、ホル・ホースは『どうする?』とアイコンタクトをとってきます。まあ、こんな風に登場しても自惚れ屋のポルナレフのことですし、共闘が拒まれるというのは分かっていました。漫画で花京院と共闘したのは、あくまでアヴドゥルに命を救われ、しかもなおかつアヴドゥルが命を落としたから。いくら命を助けたとはいえポッと出の私達の説得で考えが変わるとは思えません。
それでも私は、ホル・ホースに『どうにか丸め込めろ』と視線を送ります。ホル・ホースはげんなりしましたが了承したようです。……桜子さんは、あなたの口先には意外と一目置いているんですよ。大丈夫、できますって。
「あっあーッ。熱くなってるとこ悪りいがよお、あんさんJ・ガイルのスタンドをどう切り崩すかってことについては考えてるのか?」
「…………」
ポルナレフは答えません。っていうか、答えられないでしょう。怒りに身を任せて突進してるだけですから。そこでポルナレフに反駁させるのではなく、与えた圧を逃がすようにしてホル・ホースは続けます。
「……トドメの方はあんさんにくれてやるよォ。そもそもおれは『J・ガイルが罪の報いを受ける』って結末さえあれば満足だからよお~……そのためにおれが無用なリスクを受けないようにするんなら何でもいい。『No.1よりNo.2』だ。おれぁ『復讐』っていう舞台の末席に加われればそれで満足なのよ。だからこそ、この桜子を連れてるんだゼ」
「…………おめー……J・ガイルに恨みがあるんじゃあねーのか? そんな半端な結果で良いっていうのかよ?」
「ああ! 復讐ってのはそれそのものが『目的』じゃあねー」
ホル・ホースは、そこだけは妙にハッキリと断言しました。
「復讐の為に何もかも投げ打つのは馬鹿のすることだぜ……。復讐ってのは『人生の決着』! その後の人生をスガスガしく過ごせるようにする為の通過儀礼よ! 重要なのは『仇』が報いを受けて死んでいくのをこの目で見ること! そのために『死んでも良い』って気持ちでやるのは馬鹿げた発想だ! ……と、このホル・ホースは思うね!」
「………………」
……なにか、いつものホル・ホースみたいに胡散臭い感じがないですね……。不真面目ではありますが、一定の説得力が感じられる気がします。『経験者は語る』みたいな。やはりホル・ホースも殺し屋なんて仕事に身をやつしているだけあって、そのルーツにはまた難しいものがあったりするんでしょうか。まあ、過去にどんなことがあろうともホル・ホースはホル・ホースなので、桜子さんにとってはどうでもいいですけど。
「……『復讐は通過儀礼』……か」
ただ、同じく復讐を目的にしていたポルナレフにとっては感じ入るものがあったらしいです。神妙に頷くと、
「おれは……おれは今更自分の生き方を変えることはできねーし、したくもねー。やっぱり、J・ガイルはこの手で殺さなくちゃあ気が済まねえ」
「…………」
「だが! 目の前におれと同じ『仇』を追っているヤツがいるってのに
……おや、風向きが変わりましたね。
「だから『共闘』はできねーが……
「ふん、自惚れの強い男だ…………だが、おれはそれで構わねー! 桜子、おめーもそれで良いよな?」
「ええ。桜子さんはもともとホル・ホースの付き添い……かたき討ちとは無縁の人間ですし。それで構いません。しかし……、」
そう言って、桜子さんは頭上を指差します。
「あん? そう言えばこの『煙』は……」
「桜子さんのスタンドです(能力は秘密ですがね)。先程の『エンペラー』の弾丸はこの『煙』からの視界情報でサポートしていたので本体を精密に追尾していましたが……それは同時に、向こうからもこちらの居場所を教えることになります。つまり……」
「来るぜッ! J・ガイルの『ハングドマン(吊られた男)』の反撃がよォォ――――ッ!」
キラ! とその時、視界の端に光が迸るのが見えました。
「来たぞッ! J・ガイルの野郎だ!」
「だが妙だぜ……野郎、さっきのように攪乱したりしねェー! まるでおれ達のことを無視してるみてーに!」
そこで、私は気付きました。ポルナレフのことを意識していた為疎かにしていましたが、私は先程からずっと、『バーニン・ブリッジ』を上空に飛ばして周囲の様子を見ていたのです。改めて意識を戻せば……当然ながら、気付けることもあります。
「いえ、違います! 『無視しているみたいに』ではありません! 実際に無視しているんです!」
私はそう言って、指を差します。
「能力を知っていて、対策も練れる可能性のある桜子さん達よりも、よっぽど簡単に始末できるヤツを見つけたから無視して後回しにしたんです!」
「なん、だと……誰だそいつは! おれは一人で此処まで来たんだぜ! 他に現れるヤツがいるとは思えねえ!」
「では何故、あの車に向かって『ハングドマン』が向かっているんですッ⁉」
そう。
私が上空からの監視を意識して気付いたのは、彼らの姿です。花京院と、アヴドゥル……彼らがトラックに乗ってこちらに接近しているのが分かります。そして、それを指摘されたポルナレフは絶句しました。
「ば、馬鹿な……! あいつら、あんな風に別れていたのにおれのことを追って来たって言うのか……⁉」
「おい! 急げ!
「う、ううッ!」
ポルナレフは、一瞬口を噤みました(直前のことを思い出しているのでしょう。今回はどうだか知りませんが、漫画の時はあれだけ啖呵を切っていたんですし)が、すぐに決断しました。
「く、来るなーッ! アヴドゥル、花京院、こっちに来るんじゃあねーぜッ! 『ハングドマン』は既にそっちに向かってる! そのままだとモロに攻撃を食らうぜ――ッ‼‼」
そう言って、ポルナレフはダッ! と走り出します。
何だかんだ言って、ポルナレフの方にも仲間の情はあったようですね。いや、それを素直に表せる精神状態になった、というべきでしょうか……。
………………。
ここまでは計算通り。ここからが、本番です。