目指すは海の果て   作:ワンピの風

4 / 10
わああああああああ! お気に入り&評価ありがどうございます!


救出

 

 

 

 

 ルフィが連れていかれて暫くした後、俺たちは茂みから出た。

 

「おい、あいつが「中間の森(ここ)」のこと喋ったら、今回の金だけじゃねぇ。おれたちで集めた宝、丸ごと全部持ってかれちまうぞ!!」

 

 焦燥を滲ませた声でエースが続ける。

 

「いつ来るかわからねえんだ! 早く宝を別の場所に移してしまわねえと!」

 

 大急ぎで俺もサボも緊急用にと準備していた袋に宝を詰める。が、連れていかれたルフィのことが頭から離れない。ルフィは連れていかれた先で、一体どうなるのか。口を割って助かるのであればまだいい。だけど、捕まった相手はポルシェーミだ。口を割ったからと言って何もせずに逃がしたりはしないだろう。

 

 それに、万が一ルフィが口を割らなかった場合は……。

 

「……? どうしたルーク。急がねえと」

 

 自然と手が止まった。訝しげな顔をしたサボが俺を急かすが、考え事に夢中で頭に入ってこない。

 

 万が一、じゃない。原作をぼんやりとしか知らない俺でも、あいつがどんな性格かは、ルフィがダダンの家に来てからのこの三ヶ月で、嫌というほど知っている。

 

「……ルフィは、絶対口を割らない」

 

「お前それ、何を根拠に」

 

「根拠はない。ないけど、わかるんだ。ルフィは、エースと友達になりたがってたから。それに、もう同じ釜の飯を食った仲だ。ほっとけない」

 

 俺がそう言うと、二人とも作業の手を止めて黙り込んだ。難しい顔をしている。長年かけて貯めた海賊貯金だ。このままにしておくのも危険だ。宝はやはりどこか安全な所に運ばなければいけない。

 

 俺は口を軽く噛んだ。

 

 ……何も、真っ向から戦うわけじゃない。俺はまだ7歳のガキだが、いざとなれば能力もあるし、一人でも敵の目をかいくぐってルフィを助けることくらいは出来る筈だ。

 

 二人は宝を移してて、と言いかけたその時。

 

「おれとルークで行く。サボは宝を隠しといてくれ」

 

「わかった」

 

「!? え、エース?」

 

 驚いてエースの顔を凝視すると、少し気まずそうな顔をした後に、ぼそりと呟きが聞こえた。

 

「……お前一人じゃ危ねえからな。それに、今回の件はブルージャムの金に手を出したおれのせいでもある」

 

「素直になれよ、エース。お前もルフィのこと、ちょっとは気にかけてたんだろ?」

 

「だまれ」

 

 茶化すようなサボの声にぴしゃりと言い返したエースは、近くに置いてあった俺の鉄パイプを渡してくる。俺がそれをしっかり受け取ったのを確認して、エースも自分の鉄パイプを拾い上げた。

 

「こっちは任せとけ! ちゃんと隠しとくからよ」 

 

「うん。サボ、ありがとう」

 

 木の上からぐっとサムズアップしてくるサボに手を振って答えてから、俺はエースに向き直る。

 

「ありがとう、エース」

 

 正直、一人は心細かったので、エースが一緒に来てくれるのはとても心強い。鬼に金棒だ。(本人が気にするのでエースの前では「鬼」というワードは出さないようにしているが、この時ほどこの(ことわざ)がぴったりだと思ったことはない。)というか、エースもルフィを気にかけてはいたんだね。普段のルフィへの態度が容赦なさすぎて全く気づかなかった。

 

「礼はいい……さっさとあいつ取り返すぞ」

 

「おう!」

 

 俺たちは、ポルシェーミたちが消えていった不確かな物の終着駅(グレイ・ターミナル)、そこに住む人間たちの言葉で言うところの「ゴミ山」に向かった。

 

 

 

 

 

 

 道の途中でガラクタを漁っていたおっさんたちにポルシェーミの行方を聞くと、すぐに教えてくれた。

 

「ポルシェーミの野郎なら、あっちの方に行ったぜ。武器持ってたから気ィつけなぁ」

 

「ありがと!」

 

 ゴミ山に住んでいる住民たちは、こんな環境だからか助け合いながら生きているので、仲間意識が強く、よそ者には敵対心が強い傾向にある。そして、悪ガキと呼ばれている俺たちにも仲間意識が働いているのか、意外と親切な人が多かったりする。まあ、普通に危ない奴もいるけど。

 

「ルフィのやつ……殴られてるだけならいいけど」

 

「? いやダメだろ」

 

「? あ、そっか。エースは知らないんだっけ? ルフィは「ゴムゴムの実」ってやつを食べて、ゴム人間になったんだって。だから、打撃は効かないみたい」

 

 本人から許可を貰って頬っぺたを引っ張ったり、殴ってみたりしたから間違いない。というかルフィっていつから能力者だったんだろう。えーと………確か赤髪のシャンクスと一緒にいる時に食べたんだよな。

 

「ゴム人間!? そうか、だから谷に落ちても死ななかったのか…………お前とはまた違う能力なんだな」

 

「うん。俺が谷に落ちたら普通に死ぬ」

 

 落ちてる最中に壁に取っ掛かりを造れたら助かるかもしれないけど、落ちながら造るほど俺の創造スピードは速くない。こう考えると、ルフィって高所落下のダメージがないから凄いよなあ。……じゃない! 今はルフィだ。ずれた思考を軌道修正する。

 

「あいつはシミターを持ってた。だから……」

 

「……急ぐぞ」

 

 俺が口を噤んだ先を、エースも考えたんだろう。

 

 走る速度を上げて、俺たちはゴミ山を駆け抜ける。

 

 

 

 

「麦わら帽子のガキ? それならポルシェーミが向こうに連れてったぞ」

 

親切な人から話を聞きながらあちこち走り回り、ついたのは、このゴミ山にしては少し大きめな建物。周囲に人だかりが出来ていたのですぐにわかった。

 

「このガキ! いい加減口を割りやがれ!!」

 

「痛てえよおおお! 助けてくれ―――!!」

 

 苛立ったようなポルシェーミの声と、ルフィのバカでかい悲鳴が聞こえる。良かった、最悪殺されてるかもって思ってたけど、まだ大声を出す元気はあるみたいだ。でもだからといって安心出来る状況ではない。エースがギリリと歯を噛みしめた音が聞こえる。

 

「あいつ……行くぞ! おれから離れんなよ、ルーク!」

 

 そう言ってエースが建物に突っ込んでいくので、俺はエースの手を掴んだ。

 

「ちょっと待って」

 

「?」

 

「念の為、仕掛けをね……ふん!」

 

 俺は建物にそろそろと近づくと、壁に手を着く。小さな赤い光がパチパチと弾けた。

 

 中にいる人数が定かではないので、一応何時でもこの建物を崩せる様に、建物の壁面だけを少しずつ破壊していく。目安としては、壁が天井を支えきれなくなるギリギリくらいまでだ。こうしておけば脱出時にポルシェーミ達が追いかけてきても、壁に衝撃を与えるなりすれば脆くした壁は崩れるはずなので、建物の下敷きにして足止めできる。

 

 ちょこっと触るだけでこのくらいの大きさの建物を壊せるのが将来的な俺の理想だが、今の俺には無理なので、こうやってちまちま仕込みをして壊すしかない。

 

 小声でエースに説明すると「おお……お前すげぇ事考えるな」と感心していた。しかしその直後、エースが壁をちらりと見上げて眉を寄せる。

 

「それはいいんだけどよ、もうそろそろ辞めとけよ。この壁、反対側はゴミの寄せ集めだからあんまり壊し過ぎると―――」

 

 ビキッ、ミシミシミシ……!

 

「あっ」

 

 慌てて手を離すが、遅かった。俺たちが見守る中、目の前の建物の壁に、大きな亀裂が入っていく。

 

 その亀裂はみるみるうちに壁全体に広がり―――

 

 

 ドオオオーーン……!! 

 

 

 未だポルシェーミやその部下達、そしてルフィを建物中に残したまま、それなりに大きかった建物がゴミ山に轟音を響かせて倒壊した。

 

 

 

 

「あーあ☆」

 

「バカ野郎!!」

 

 

 

 

 周囲のゴミ山の住民たちがワーワーと逃げ回る中で、珍しく焦った様子のエースに頭を叩かれながら俺が現実逃避していると、倒壊し、ただのゴミと化した建物跡の一部から、見覚えのある麦わら帽子が見えた。一瞬で覚醒し、そばに駆け寄る。

 

「っ! ルフィ!」

 

「ゲホッ、うえっほ!」

 

 瓦礫を蹴散らし、エースと二人でルフィを引っ張り出す。身体を引っ張った時の感触にエースが目を剥いていた。ゴム人間だとは教えたが、本当に伸びたことにびっくりしたんだろう。

 

「大丈夫か!?」

 

 涙目で咳き込むルフィの身体をさっと確認した。あちこち血が滲んでいるが、命に関わるような怪我はない。涙で顔がぐちゃぐちゃになっていたので軽く拭ってやる。

 

「もう大丈夫だ。よく頑張ったなルフィ!」

 

「ルークゥウ……エーズ……ヴゥ……!!」

 

「へにょへにょ言うのは後にしろ! ルーク、先導頼めるか?」

 

「オーライ、任せろ!」

 

 エースがルフィを背負ったので、俺がエースの分の鉄パイプを持つ。倒壊の衝撃で舞い上がった土煙を突っ切っていると、瓦礫から起き上がろうとするシルエットが見えた。ポルシェーミだ。

 

「はいおやすみィ!」

 

「ぶるまっ!?」

 

 こちらの姿が視認される前に鉄パイプ二刀流で殴りつけておく。シルエットの動きを見るに、そのまま意識を失ったようだ。グッナイ、いい夢を。

 

「ゔぅゔぇええ……!」

 

「うるせえ、落とすぞ!」

 

 前方を警戒しながら走っていると、後ろから二人の声が聞こえてきて、微笑ましい気持ちになる。

 

 建物から聞こえてきたポルシェーミとルフィのやり取りで明らかになったが、ルフィはやはり口を割らなかった。

 

 そのことがエースの信頼を勝ち取ったのだろう。口は少々……いやかなり悪いが、エースは何だかんだ言って面倒見がいい優しいやつだ。そしてルフィはとても素直だ。二人の相性は良いと思う。きっとこれから仲良くなれるだろう。

 

「せっかく助けに来たのに、落として帰ったら意味がないよ、エース?」

 

「がああ、黙ってろルーク! おい、いつまで泣いてんだ! おれは泣き虫は嫌いなんだ! 泣くな!!」

 

「ゔんん……!」

 

「お?」

 

 ず、と鼻を啜って泣き止んだルフィ。やっぱり素直だよなあ。エースも一度だけ「フン」と鼻を鳴らすと、ルフィをしっかり背負い直した。

 

 未だ土煙がもうもうと立ち込める中、俺たちはゴミ山を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「どういうこったこりゃあ!! エース、ルーク、ルフィ! 誰だコイツは!? 何でガキがもう一匹増えてんだよ!?!?」

 

「家族が増えるのって、とっても喜ばしい事だと俺は思うけど」

 

「黙れルーク! お前だけはまだマトモな方だと思ってたのによぉ!!」

 

「あは!」

 

「何笑ってんだぶっ飛ばすぞ!?!?」

 

 

 俺たちはダダンの家に帰ってきた。サボも一緒に。

 

 ゴミ山から帰還した俺たちと合流したサボは、まだ宝を新しい場所に移し終えていなかった。なので、途中からではあるが俺とエース、そしてルフィも宝運びに参加し、日が暮れる頃にようやく運び終えた。ルフィが口を割らなかったおかげで、追手は来ず、安全に宝を運ぶことが出来た。

 

 エース、サボ、ルフィ、そして俺は、今回の件で本格的にブルージャムの一味に命を狙われる事になるだろう。先にブルージャムの金に手を出したのは俺たちだし、これはしょうがないよね。

 

 まあそれでも俺とエースとルフィはこのコルボ山に住んでいるので問題ない。しかし、サボが一人で住んでいるのはゴミ山だ。そしてゴミ山はブルージャムの縄張りの範囲内。流石にそこで暮らすのは危険なので、ここに連れてきた。

 

 ダダンは激おこだが、ここ以外に安全な所はないので、悪いけどこれは決定事項だ。それに俺たちの中ではサボが一番コミュ力が高いので、山賊一家の中でも上手くやっていけるだろう。

 

「よう! ダダンだろ? おれはサボ」

 

 ほら。挨拶だってちゃんと出来る。ルフィとの邂逅(かいこう)一番に唾を飛ばしたエースとは大違いだ。

 

「サボ!? 知ってるよその名前。おめぇもよっぽどのクソガキだと聞いてるよ!!」

 

「そうか……おれもダダンはクソババアだと聞いてるよ!」

 

「余計な情報持ってんじゃねェよ!!」

 

「何だ、もう仲良しじゃないか。心配して損した」

 

「おめぇは一体何を見聞きしてそう判断してんのかい、ルーク!?!」

 

 俺はひらひら手を振ってダダンの叫びを受け流す。そして、サボに手を差し出した。

 

「改めて、これからもよろしくな、サボ」

 

「おう! こっちこそよろしく、ルーク」

 

 そう言ってサボは満面の笑みを浮かべた。

 

 

 




原作よりもルフィを助けに行くのが早かったので、ルフィはあまり怪我をしていません。ついでに言うとルークが建物を倒壊させたので、ルークもエースも無傷です。平和。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。