目指すは海の果て 作:ワンピの風
作る、造る、創る
この3つはそれぞれ意味や表すものが違いますが、あえてルークが能力で創造したものは『造る』という表記で統一していきます。ご了承ください。
「うーん……」
俺は一人で唸っていた。場所はダダンの家。今日はもう風呂を済ませたので、あとは寝るだけだ。エース達は近くで枕投げをしている。後で混ざろ。
目の前には、能力を使う練習として造った握りこぶし大の木彫りの置物がある。……正確には『彫った』わけじゃないから木彫りと言ってもいいのかは微妙なところ。まあそれはどうでもいい。
狼をチョイスしてみたんだけど、まだまだ細部が荒い。細かく造り直していくと、まあ満足する出来になった。
「わ、それ狼か? 上手いな」
枕投げで戦死したサボが俺が造った狼を見て褒めてくれた。普通に嬉しいけれど……。
「なんか、茶色一色って寂しくない? まあ、材料が木だからしょうがないんだけどさ」
「お前らなんの話してんだ?」
休戦したらしいエースとルフィが合流してきた。俺の手元の狼を見て、二人とも目を輝かせる。
「これ、能力で造ったのか? すげえ!」
「ルーク、お前こんなに細かいもの造れるようになったのか。順調に上達してきてんじゃねぇか?」
「ありがと二人とも。自分でも上達してきてるとは思うけどさ。茶色だけってなんか寂しいから、目の色だけでも変えようと思って」
「絵の具……はここには無いもんなぁ」
四人で考える。「木の実を潰して汁をつける!」とルフィが元気よく叫んだ。次いでエースが「血で染める」と真顔で言った。木の実か。悪くはなさそうだけど、変色するかもしれないし……あ、ごめんけど血は論外。殺伐としすぎでしょ。
ふて寝したエースをルフィとサボが慰めてる。ちょっと見てて面白い。
「いっそ宝石とか埋め込んでみるかなぁ……」
寝っ転がって、天井を眺めながら呟いた。………待って、普通にありだな。それを売ればもしかしたら良い金になるかもしれない。俺は飛び起きて、大部屋で酒を飲んでいたダダンに突撃した。
「ダダン、宝石二つ持ってない?」
「ああ〜? お前にやるような宝石はないよ。ガキはとっとと寝な!」
「これの目にしたいんだ」
「無視してんじゃねぇよっ! って……」
俺が手に乗せた狼の置物を見せると、ダダンは静かになった。まじまじと狼の置物を見つめている。
「これもお前の能力で造ったってのか?」
「うん」
「……色は決めてんのかい?」
「決めてない」
おもむろにダダンが腰のポーチに手を突っ込んで、宝石を掴みだした。手のひらには大小様々な色とりどりの宝石が乗っている。
「二つだけだ。選びな」
「さてはお前偽物だな? 本物をどこにやった!」
「本っ当に失礼なガキだなテメエはよぉ!!」
「冗談だって」と言いつつ、ダダンの手から紫の宝石粒を二つゲット。初めての作品だし、目の色は俺とおんなじ色にしとこう。手のひら大の狼にはこれが丁度いい。
ちょちょいと作り直せば、紫に輝く両目を持った狼の完成。うんうん、なかなかいいんじゃないの? 我ながらいい出来だと思う。裏には小さく
俺は出来たばかりの狼を、ダダンに差し出した。
「なんのつもりだい?」
「宝石くれたからこれ、ダダンにあげる。俺の記念すべき第一作目だから大事にしてね」
「こんなもんどうしろってんだ……」
とかぶつくさ言いつつ受け取ってくれるダダン。何だかんだ言って根は優しいよね、ダダンって。近くにいたドグラとマグラがにこにこしてるのが印象的だった。
次の日、俺はその辺のチンピラからちょろまかした宝石を、能力で造った置物に埋め込んだりと細工を施して、中心街に売りに行ってみた。今日はサボと一緒だ。
エースとルフィは「売りにいくならついでに強奪するか」とか言ってたので置いてきた。これから取引先になるかもしれないのにそんなことしたら、二度と買い取って貰えなくなるから却下。容赦なく置いてきた。
「どれぐらいになるかな?」
「さあ? でも元の値段より下がるってことはないんじゃねえか?」
店の最低条件は、買取価格をケチったり、誤魔化したりしない店。いくつか店を覗いて、良さそうな店を物色する。
やがて見つけたのは、中心街の隅っこにひっそり立っている古い骨董屋だった。奥のカウンターには頑固そうな白髪のおじいさんが一人。
「いらっしゃい。……何だガキ共。うちの店には金目のもんなんてないぞ。帰んな」
「おれたちのこと知ってるんだな」
「有名だからな、お前らの悪ガキっぷりは」
心底どうでも良さそうな顔で、おじいさんはそう言った。木造の置物を布で丁寧に拭いているおじいさんのカウンターの前に、持ってきた置物を三つ並べる。
「これ、拾ってきたんだ。買い取るとしたら幾らになる?」
「……宝石はいいな。だが他が駄目だ。てんでなってない。こんなもん買い取れないな」
「なっ!」
何か言いかけたサボを手で制する。正直、こうなることを予想してなかったわけじゃない。寧ろこうなるだろうとは予測出来てた。
「おじいさん的には、どこが駄目だった?」
「小僧が作ったわけでもないだろうに、それを知ってどうする」
「ごめん。拾ったってのは嘘。俺が造ったんだ」
そう言うと、おじいさんはまじまじと俺を見下ろした。
「金がほしいだけならこれまでと同じように振る舞うといい。おれはガキに付き合ってられるほど暇じゃないんだ」
「稼ぐ手段が欲しい。それに、こういう作業は好きだから」
これは本音だった。俺はまだ自分の将来を決めきれてないけど、稼ぐ手段を持っておくと将来必ず役に立つ。それに能力の練習にもなるし。
沈黙が場に満ちる。暫くして、おじいさんはため息を一つついた。
「細かい箇所が雑。誤魔化せばいいと思ってるのが見え見えだ。もっと丁寧に仕上げろ。これ全部だ。それと木の痛みが酷い。何をつかってもいいってもんじゃない」
「木材はどんなのがいい? この店に置いてるなら買うけど」
黙って指さされた先に、小さめの四角に切られたブロックが積んであったので、一つ買った。値段はそんなに高くはない。
俺は机の上の置物を持ってカバンに丁寧に仕舞った。ブロックは風呂敷に包んでもらったので、それを担ぐ。
「ありがとうおじいさん。また来る。行こうサボ」
店を出てから、家に帰るまで、サボは俺の造った置物を見て不満そうにしていた。
「おれはルークの造った置物好きだけどよ! あのじいさんの言い方はないだろ」
「はっきり言ってくれた方が、後々為になるしいいよ。怒ってくれてありがとなサボ」
「ん。まあいいけどよ……この三つ、どうするんだ?」
「うーん……あ、宝石くり抜いて海賊貯金に入れといてもいいよ」
「そんなことしねえよ!?」
結局、ダダンの家の棚に飾ることにした。地味に皆から人気が出てて、製作者としては嬉しい。こっそりドグラとマグラが教えてくれたが、俺が最初に造った紫の目の狼は、ダダンの部屋の机に飾ってあるんだとか。
それを聞いてからにこにこ顔でダダンを見ていたら普通に気持ち悪がられました。悲しみ。