身長は4人の中でも1番低いが、1番胸が大きいのも彼女。王華曰く、短めのポニーテールをぴょこぴょこ揺らしているのが可愛いらしい。
前世では結局王華に何もしてあげられなかった自分に涙を流し絶望しながら亡くなった。
ただし、何もしてあげられなかったとは本人しか思っておらず、王華やイリスからしてみれば彼女の起こした行動は『ハーレム女王』を目指すきっかけとなっている為この作品の主軸を作ったのは彼女だとも言える。
新しい船の完成を待ち、早くも3日が過ぎた。
現在私達は仮設本社内にてそれぞれ思い思いに過ごしている。
私はと言うと、部屋のすみっこでイメージトレーニングだ。勿論、覇気の。
あ、あとこの3日間で私の能力がまた成長していた事が判明した。
「
「じゃあ後は船だけだね」
「そうね、完成までは見に来るなって言われてるし…」
それにしても次の島かぁ。もう結構な冒険をしてきたつもりだけど、今度はどんな所に行けるんだろう。
ちょっとワクワクしていたら、椅子に座ってゴクゴク酒を呷っていたココロさんが「その
勿論知らないけど…ナミさんが言うには針は何だか少し下を向いてるらしい。
「んががが…そりゃそうら。次の島は海底の楽園、“魚人島”らよ!!」
「魚人島かぁ」
なんか複雑だなぁ。ナミさんの村の事もあるし…あんまり魚人に対していいイメージが…。
「イリスちゃん、アーロンは海賊だ…!だが魚人島にいる“人魚”達は違う…!!」
「え、人魚…?」
「そうさ!魚人島は
な、なな…何ですと!!?
魚人ってあの、アーロンとか、なんかタコみたいなのとかばっかじゃないの!?
「フフ、嬉しそうね、イリス」
「人魚って言われると、日本人としてはワクワクが止まらないんだよ!あー、ナミさんごめんなさい…私、魚人島に行きたい!!」
「行きたいというか、行くしか無いわよ。それにあんたが行きたいんなら私が断る訳ないでしょ」
マーメイド!マーメイド!とサンジと盛り上がる。
誰か1人くらい嫁にしたいなぁ。マーメイドプリンセスとか居たら絶対嫁にする!
「ーーーただし、“楽園”には簡単に辿り着けるもんじゃらいよ」
「海底っていうのが気になるけど…」
「そこはまー、行ってみりゃわかるよ。問題はそこじゃらいね。…一面を見な、最近の新聞ら」
ぽん、とココロさんが新聞を机に放り投げたのをナミさんが広げ、読み上げる。
「何コレ…「今月もまた14隻…船が消えた」……?どういう事?」
「“
バミューダ的なアレね。
前世では色々な憶測が飛び交っていたけど…こっちでも似たような話みたいだね。
尤も、前世と違って科学で証明できない部分もあるんだろうけど。
「やだ…!絶対遭いたくない!見たくもないっ!そんな気味悪い船っ!!その海何が起きるの!?」
「ナミさん大丈夫だよ、何か出てきても私が殴って倒してあげるから!」
「殴れたらいいわね」
ロビンさん、あなた時々怖い事言いますよね。
「んががが…まぁ、その身に何かが起きた奴らはその海から出て来ねェんらから…何が起きるかは分からねェ。霧の深い海ら…気をつけな。とにかく遭難の多い危険な海ら。出航前にしっかり準備しておく事ら」
「…ん?でもさ、海賊船とかのゴースト船って事は、宝とか結構積んでるんじゃない?」
「そうね、“そういう船”には宝船の伝説が付き物よ」
「!!…ゴースト
うおー!と盛り上がるルフィとナミさん。
さっきまで怖がってたナミさんだが、宝という言葉に反応して盛り上がっていた。
「ミキータはそういうの平気なの?ガイコツは大丈夫かもしんないけど、ホラーとか」
「キャハ、信じてはいないけど…得意って訳でもないわね」
私と同じくらいの感覚かぁ。
多分大体の人間がそんな感じの認識だよね。信じてないけど怖い、みたいな。
「海賊にーちゃん達〜!!」
「麦わら〜〜っ!!」
「ん?」
バン!と外から扉が開かれる。
チムニーと、何か凄い髪型した2人組の女の人が居た。強風が吹いたら前に進めなくなりそうなくらいのっぺりした髪型だなぁ…一瞬自分の目を疑ったよ。でも凄い美形だった。
「何か用か?」
「フランキーのアニキが…!みんなを呼んで来いって…!!」
「“夢の船”が完成したんだわいな!!」
「すっごいの出来てるよーーーっ!!」
「え、随分早いね!」
まだ3日目だよ?流石フランキー…一流だね!
「超一流の船大工5人で夜通し造ってたんだわいな!!」
5人?…それにしても3日は早いけどね!
さて、だったら早速船のあるとこまで…!
「麦〜〜〜わら〜〜〜さ〜〜〜〜ん!!!」
「ん?…フランキー1家じゃん。どったの?」
「あんた達、どうしたんだわいな?息切らして…」
かなり慌ててきたのか、彼らは全員息を切らして地面に膝をついた。
紙を複数枚持ってるけど…それと何か関係あるのかな。
「ハァ…ハァ…実は、無理聞いて貰おうと…。…手配書…!見ましたか!?」
「手配書?」
「あんた…!とんでもねェ額ついてるぜ麦わらさん。あ、あんたに至ってはもうとんでもねェなんて言葉じゃ済まされねェよ、イリスさん…!それに、他のみんなも追加手配されちまってる!!話すより…見てくれ!!」
あ、額が更新されたんだね!
フランキー1家の1人…確かザンバイだったかな。彼が地面にばら撒いた手配書をみんなで食い入るように見つめた。
『麦わらのルフィ』懸賞金3億ベリー。
『海賊狩りのゾロ』懸賞金1億2000万ベリー。
『“悪魔の子”ニコ・ロビン』懸賞金1億1000万ベリー。
『“狙撃の王様”そげキング』懸賞金3000万ベリー。
『わたあめ大好きチョッパー』50ベリー。
『黒足のサンジ』懸賞金7700万ベリー。
『“正妻”ナミ』懸賞金1億ベリー。
『嵐の運び屋ミキータ』懸賞金4000万ベリー。
『“逃げ足の女王”イリス』懸賞金…6億ベリー。
「………は?」
「うほーーっ!!イリスすげェーーー!!」
「ちょちょちょ、待ってよコレ!おかしくない!!?何で私が1億なのよ!!」
「…でも、イリスの6億はまだ少ない方じゃないかしら。きっと政府も、本来つける額にするべきかどうか悩んだのね」
何故か50ベリーのチョッパーとか、写真じゃなくて特徴は捉えてるけど似てない似顔絵のサンジとか、色々可哀想なトコもあるけど…。
「逃げ足って何!?ちょっと、私が誰から逃げたって!?うう…こんな手配書じゃ、世間一般の女の子が見たら誤解されちゃう…!」
「安心してイリス、そもそも世間一般の人達は海賊の手配書を見ても恐怖しか感じないわ」
確かにそうだけどその事実は聞きたくなった!!
「ん?イリスちゃんの手配書だけ別紙が付いてるわね、2枚セット?」
「なになに…」
ぺら、と受け取ってナミさんが読み始めた。これ以上何があるというのですか…。
「えー…『逃げ足の女王は、大将や多くの軍艦から逃走する事が可能な為、発見しても決して捕獲、戦闘はせず海軍に連絡を入れる事。その際、万が一にも近くに居る“女性”に手を出す事を禁ずる』だって」
「なるほど、それでイリスの懸賞金が高い理由を納得させて、後は実際の実力がこの懸賞金以上だから戦うなと遠回しに言っているのね」
どっちにしろ不名誉なのに変わりはないんだけど!乗り込んでやろうか海軍本部〜!!
「…ま、まァ心中お察しするというか…色々と言いてェ事はあるだろうが、その…待ってくれ!俺達の頼みってのはこっちなんだ、コレ見てくれ!!」
そう言ってザンバイは懐に入れてあったもう1枚の手配書を出した。
『
「フランキー!!」
「あ、フランキーってサイボーグだったんだ」
成程、何か色々と納得したよ。
…そして、フランキー1家の頼み事ってのもね。
私が思っていた通り、ザンバイは私達にフランキーを頼むと言ってきた。
このウォーターセブンにいては、また捕まっても自分達じゃ助け出せないから、無理矢理でもいいから海へ連れ出してくれ、と。
勿論それに二つ返事でルフィがOKを出し、今は仮設本社に戻って荷物を纏めている所だ。
「にしてもイリスちゃん凄ェな、船長越えの賞金首なんて聞いた事ねェぞ」
「あはは…青キジブーストだよ。それに逃げ足なんだよ私は…はは、はは…」
「そのブーストをかけれる実力って事だろ。…いつのまにか差が開いちまった」
気分を上げる為にちょっと凹んでるゾロの近くに行ってドヤ顔をかますと拳が飛んできた。あ、危ない…!
「それにそげップもついに賞金首かー。知ってるのかな?」
「あいつの事だからそういう情報を得るのは早ェだろうな。…ああそういや、この前ウソップを海岸で見たな。うちに戻ってくる時の予行演習をしてたよ」
そうなのか!!とルフィが反応して、今すぐ迎えに行こう!という流れになった。
そっか、これでやっと一味全員が揃うね!
「…待て、お前ら!!」
「?」
ゾロの制止に、迎えに行こうとしたルフィ、チョッパーが足を止めて振り返る。
「誰1人、こっちから迎えに行く事は俺が許さん。間違ってもお前が下手に出るんじゃねェ、ルフィ。俺ァあいつから頭下げて来るまで認めねェぞ!!」
「ゾロ?」
「ルフィとウソップの初めの口論にどんな想いがあろうが、どっちが正しかろうが…!相手にイリスを指定して決闘を決意した以上、その勝敗は戦いに委ねられた。そしてあいつは敗けて…!勝手に出てったんだ。いいかお前ら、こんなバカでも肩書きは“船長”だ。いざって時にコイツを立てられねェ様な奴は、一味にゃいねェ方がいい…!船長が“威厳”を失った一味は必ず崩壊する!!」
……。確かに、それはゾロの言う通りだ。
だから私は、懸賞金は越えたかもしれないけど、ルフィへと尊敬の念を忘れた事は1度だって無い。
でもそれはウソップだって同じ筈だ。…そして、ゾロはその事もきちんと分かっているのだろう。
「あのアホが帰って来る気になってんのは結構な事じゃねェか。ーーーだが、今回の一件に何のケジメも付けず、有耶無耶にしようってんならそれは俺が絶対に許さん!!その時は、ウソップはこの島に置いていく!」
「…待ってよゾロ、確かにあいつも悪いとこあったけど…!」
「ナミさん。…今回は、ゾロが正しいよ」
一味を抜けるっていうのは、そんな簡単な事じゃない。
仮にも海賊王になろうって男の船に乗ってるんだから、それなりの“覚悟”を持っていなければいけないんだ。
「簡単な話だ…ウソップの第一声が深い謝罪であればよし…それ以外ならもう奴に帰る場所は無い。…俺達がやってんのはガキの海賊ごっこじゃねェんだぞ!!」
「……。…そうだな、1度は完全に別れたんだ。…まだ出航まで2日ある…黙ってあいつを待とう」
そして荷物を纏め終えた私達は仮設本社を出て、フランキー1家の案内で船がある海岸沿いの廃船置き場へと向かった。
…ウソップも船が造られてるのは知ってる筈だし、ここに私達が居なかったらそっちに来るでしょ。
「その話は、まぁ納得したわ。だけどみんな、これ見てよ!」
ぴら、とナミさんが自分の手配書を見せる。
うん、私の隣に立って微笑んでる時のナミさんだね。確かにこの表情には正妻感出てる!海軍もいい仕事するなぁ。
「何か変か?」
「最初から1億とか凄ェな」
「ちっがーーう!!何で1億もあるのかって事よ!!」
「そりゃ、イリスの正妻だからだろ」
ゾロがそういうと、ナミさんはハッ…として考え込みため息をついた。
「そういう事なら、仕方ないか…。別の考え方をすれば世間にイリスの正妻だって認知された訳だし…」
「そうよナミちゃん!私は羨ましいわ!!私の手配書もイリスちゃんの嫁ミキータ!!って書いててくれれば…!!くぅ…!!」
「相変わらずあんたはイリスの事となると暴走気味よね…」
「バロックワークス時代のミキータを知る人が見れば、まず間違いなく別人を疑うレベルね」
ナミさんとロビンが面白おかしく言って、ミキータは別人じゃないわよ!とロビンに飛びついていた。
何かミキータとロビンの絡みって感慨深いなぁ。いつのまにか名前で呼んでるし。
「あ、あれかな!なんかおっきいのあるよ!」
廃船置き場へと辿り着いた私達の目に飛び込んできたのは、大きな布で隠されている船だった。
その周りでは徹夜疲れからか、地べたに寝転がって眠るガレーラカンパニーの人達の姿が見える。
「おーーい!!来たぞフランキー!!船くれーーっ!!」
「…ん、…ンマー…来たか」
アイスバーグも手伝ってくれていたのか、かなりお疲れみたいで眠っていたけど私達が来た事で目を覚ます。
あれ、でも肝心のフランキーが居ない様だけど。
「あいにくフランキーは外しててな。だが船は出来てる、俺が代わりに見せよう。この船は凄いぞ、図面を見た時目を丸くした。あらゆる海を越えて行ける…この船なら世界の果ても夢じゃねェ。フランキーからお前への伝言はこうだ、麦わら」
「早く見せてくれーーーっ!!」
「『お前はいつか“海賊王”になるんなら!この百獣の王の船に乗れ!』」
ばさっ!と大きな布を大胆に脱がし、ついにその船の全貌が明らかになる。
うわぁ、でっかい…!!
「うおーーっ!!色々飛び出しそ〜〜〜!!!」
「へえ…メリーの2倍はあるな!」
「おっきな縦帆!“スループ”!?」
百獣の王と言うだけあって、船首にはライオンの頭が立派な鬣込みで付いていた。
メリー号の様に可愛くデフォルメされた顔だけど、私達の船の船首像はこれがいいんだよね!フランキー流石、分かってる!!
「中見に行こう!!」
「寝室見に行きたいなぁ!行こうナミさん、ミキータ、ロビン!!」
みんなでその船に乗り込み、色々と好きな所を見て回る。
おおおー!何このおっきなベッド…!みんなで寝れるくらいおっきい!!!
…ん?と言うことはもしかして、私寝かせてくれない日が増えるのでは…?
……か、考えないでおこう!何はともあれすっごくいい船なんだし!!
「外は芝生の甲板かぁ!」
「ガーデニングも出来そうね」
いつの間にかナミさんのみかんの木も設置されてあるし、気遣いも完璧!
「なァアイスのおっさん、フランキーどこだ!?礼も言いてェのにっ!!」
「ーーーもうお前らに会う気はねェらしい。麦わら、あいつを船大工として誘う気なのか?」
「うん、よく分かったな!おれ、あいつに決めたんだ!」
「それを察した様だ」
「?」
どうやら、フランキーは面と向かって誘われたら断る自信が無いから身を隠したらしい。
だけど、本心は私達と海へ出たいと思っている、今まで大切に暖めてきたこの“夢の船”を託す事で充分それは分かるだろう、と言う。
フランキーは私達の事を心底気に入ってしまったけれど、フランキー自身がこの島にいなければいけないという義務を自分に課してるから、一緒に行くと自分から言い出す事はないらしい。
その辺の事情は王華なら分かるんだろうけど、私はさっぱりだ。…それに、ザンバイも言ってたけれど来ないなら無理矢理誘えば良い。ルフィという男はそういう人だ。
行きたいけど無理です、なんて言葉が通用する人じゃない事くらい、フランキーも実は分かってるんじゃないかな。
「…おれ、ちょっと行ってくる!」
「ルフィ、おれも行く!!」
ルフィとチョッパーが船から飛び降りて走り出す。続いてゾロ、サンジも後を追って行った。
「私も行った方がいいのかな?」
「あんたまで行ったって過剰なだけよ。あのバカなら、絶対にフランキーをここに連れてくるわ」
確かにそうだよね、と頷き、私はみんなを待つ事にしたのだった。
でもみんな、どうやって連れてくる気なんだろうか…。