「はぁ…くじ運良いのか悪いのか…」
「良いわけないでしょ…今の状況分かってるの?」
「えー」
はい、現在私とナミさん、それからルフィとサンジの4人でくじによる対等な抽選方法の下、ゴースト
げんなりとした顔で言ってきた私の下にいるナミさんと顔を合わせる。
「いやだって、ナミさんとお化け屋敷デートだよ?」
「あんたにはルフィとサンジくんが見えてないのね?そうなのね?」
ええい、他の人が2人や3人居ようがデートなの!!スリル満点!吊り橋効果期待!
「!」
「キャアアアア!!!」
「おっと」
ロープの到達点から例のアフロガイコツが私達を見下ろしていたのに驚いたナミさんが反射的に手を離した。
すぐさま腕の長さを倍加させて落ちる前に手を掴み、そのまま私の所まで持ち上げる。そんなスリルはいらない!
「もう!絶対にナミさんを落とさせやしないけど、心臓に悪いから今度からは私の背中に掴まってて!」
「い、イリス〜…だ、だって…」
幽霊の類がよっぽど怖いのか、涙目のナミさんが私にしがみついて震えてる姿は…ナミさんには申し訳ないけど可愛過ぎる。あのガイコツ、ナイス。
私達を見るだけで、特に何をしてくる訳でも無いガイコツに首を傾げながらも私達はゴースト
「ごきげんよう!ヨホホホ!!先程はどうも失礼!目が合ったのに挨拶も出来なくて!」
「え、うん」
え?フレンドリー過ぎない?
上がってきて早々にかなりのハイテンションで挨拶をされて何事かと目をパチクリと瞬かせる。
ガイコツのくせに…紳士?いやいや、そもそもこの世界の元はONE PIECE…常識に囚われてはいけない筈。
「ビックリしました!何10年振りでしょうか、人とまともにお会いするのは!ここらじゃ会う船会う船ゴースト
「見ろ!喋ってる!ガイコツがアフロで喋ってる!」
「しかも言ってる事結構まともじゃない?多分仮装とか、そんな感じだよきっと」
「オヤオヤ!そちら実に麗しきお嬢さん、んビューティフォー!あなたもきっと、お嬢さんの様に魅力的な女性になれますよ」
こらガイコツ、私を見て和やかな雰囲気を出すな。ナミさんより年上だからね!胸もちょっと成長したからね!!
「私、こう見えて美人に目が無いんです。ガイコツだから目は無いんですけども!ヨホホホホ!!…あ、パンツ見せて貰ってもよ」
「おおおおおいバカガイコツ!今すぐその口閉じろ!」
サンジがかなり焦った表情でガイコツに飛び付きその口を塞いだ。もうなり振り構ってられない!みたいな感じだったけど、大丈夫だよサンジ…バッチシ聞こえてるから!
…ま、ただのジョークにそこまで怒ったりはしないよ。ナミさんの下着が見たいなんて、そんなの全人類…いや全ての生き物が平等に本能として刻まれてる物だし。4大欲求って知らない?
「…よ、良かった…聞こえてなかったか…」
「どうかされたんですか?」
「バカ野郎てめェ!イリスちゃんの前でナミさん達に一線を超える様な事を言うな…!俺でもその辺りは気を付けて居るんだ…!」
ルフィに至っては汗だらだら流してサンジに任せてるし、私ってそこまで嫁関係にうるさい人に見えてる?
…思い当たる節があり過ぎるのは、まぁそうなんだけど。
話が拗れてもアレだから、聞こえなかったって事にしておこう。
私がスルーしていれば、ルフィとサンジはようやくホッと胸を撫で下ろした。
「いやー、それにしても動くガイコツって、お前面白いやつだなァ。うんこ出るのか?」
「それ以前の疑問が山程あんだろ!」
「あ、うんこは出ますよ」
「答えんなどうでもいいわ!!」
私も似たような事気になってたとは言えない雰囲気。
私は下の話じゃなくて、今もガイコツが飲んでる紅茶は本当に飲めてるのか、とか。口には放り込むけど、胃が無いから骨の隙間からジャバジャバ漏れてるのかなぁ、とか気になってる。仮装でしたって言ってくれたら全て解決するんだけど。
「まず、お前は骨だけなのに何故生きてて喋れるのか、お前は一体何者なのか、何故ここに居るのか、この船で何があったのか、この海ではどんな事が起きるのか、全部答えろ!!」
「そんな事よりお前、おれの仲間になれ!!」
「ええ、いいですよ」
「「うおおおおおいっ!!」」
流石にビックリしたわ!本当にうちの船長と来たらする事が突拍子も無くて心臓止まっちゃうよ!!
「…ま、まぁでも船長が決めたなら仕方ないよね!えーっと、あなた名前は?」
「これはすみません、申し遅れました!私、死んで骨だけブルックです!どうぞよろしく!」
「ちょ、ちょちょっとイリス!あんた何言って…!」
仕方ないよナミさん…こういうルフィの暴走を止められる人なんて居ないから…。
「ブルックね。私はイリス、この天使は私の嫁…正妻のナミさん。こっちがコックのサンジで、あなたを誘ったのがうちの船長、ルフィ」
「ああなるほど、お二人はそういうご関係でしたか!」
「ちなみに船には後2人嫁が居るから、変な事しないでね」
「ヨホホホホ!小さいのになかなかのプレイガール!師匠…と呼ばせて貰ってもよろしいですか?」
「あんたら何で打ち解けてんのよ…」
いやー、なかなか話せるよ、ブルック!
***
「ヨホホホホ!ハイどうも皆さん、ごきげんよう!!私、この度この船でご厄介になる事になりました、“死んで骨だけ”ブルックです!どうぞよろしく!!」
「「ふざけんな!!何だコイツは!!」」
ブルックを見たウソップ、ゾロ、フランキーは同じ反応をする。
ミキータとロビンも流石に目を見開いて驚いてるし、チョッパーに至っては白目向いてた。
「おいルフィ!こいつ何だ!!」
「面白ェだろ、仲間にした!」
「したじゃねェよ認めるか!おめェらは一体何の為についてったんだ!?こういうルフィの暴走を止める為だろうが!!」
「えーっと……い、いざという時に船長を立てられないようじゃ、船にはいられないかと思って」
「コレがいざという時か!!?後てめェバカにしてんだろオイ!!」
ちぇ、流石に騙されてくれないか…!
…でもブルックって、多分ONE PIECE世界でもかなり珍しいんだろうね。みんなここまで取り乱すくらいだから、『骨族』みたいな種がいる訳でもない、と。
王華に聞けば分かるかもしれないけど、何でもかんでも聞いてたらつまらないしなぁ。私の世界だし、先は見えないほうが面白い。
「ヨホホホ!まあそう熱くならずに、どうぞ船内へ!
「てめェが決めんな!!」
怒るゾロを何とか宥めて、みんなでダイニングへと向かった。
でも私は正直な話ブルックから嫌な感じしないし、仲間に入れてもいいんじゃないかなと思ってる。
さっきも、ナミさんと私の関係を知ってからはナミさん…それにミキータやロビンにも最初みたいな
「いやいや、何と素敵なダイニング!そしてキッチン!これは素晴らしい船ですね、ヨホホホ!」
「そうさ、スーパーな俺が造った船だ!おめェなかなか見る目あるじゃねェか!」
私の正面を座るブルックが身振り手振りで船を誉めていく。フランキーはそれに大層ご満悦な表情を浮かべ、サンジにあまり馴れ合うなと注意されていた。
「しかしお料理の方楽しみですね、私ここ何10年もろくな物食していないので…もうお腹の皮と背中の皮がくっつく様な苦しみに耐えながら毎日生きてきたのです。お腹の皮も背中の皮もガイコツだから無いんですけども!ヨホホホ!!スカルジョーク!!」
「あっはっはっは!!」
ルフィと私以外はやはりまだブルックを警戒しているようだ。その証拠に、彼の骨ジョークに反応したのはルフィだけで、他のみんなはじっとブルックを見つめ…いや、観察?をしている。
「ガイコツを追い出すのは後回しだ。ひとまず食え」
「おお、今日のも美味しそう!」
コト、とサンジがテーブルに皿を置いていく。
毎回思うけど、コックにサンジを当てる事が出来たのは幸運だよねぇ。盛付けは勿論のこと、味もとんでもなく美味しいし、しかもそれが魚介類を使った物となれば絶品を通り越してなんかもう凄い事になる。
「私、何だかお腹より胸が一杯で…!お嬢さんのお肉、少し大きいですね。替えて貰ってもよろしいですか?」
「おかわりあるから自分の食え!!」
しかし何ともまぁ、個性的なガイコツさんだ。
サンジの絶品晩ご飯を食べながら、まずはブルックの事についての疑問をみんなが尋ねていく。
1番最初に出た疑問は勿論、彼の風貌についてだった。
「実は私、生前にヨミヨミの実というものを食べてまして」
「“ヨミヨミの実”…?悪魔の実かぁ」
「そうなのです!私、実は数10年前に1度死んだのです!ヨミヨミの実とは…“ヨミがえる”。つまり「復活人間」というわけで2度の人生を約束される何とも不思議な能力でしてね。その昔海賊だったのですが、私の乗っていたさっきの船で仲間達と共にこの“魔の海”へ乗り込んで来たのですが、運悪く恐ろしく強い同業者に出くわし戦闘で一味は全滅、当然私もその時死んでしまったのです!」
自分が死んだ事を明るく語る人初めて見た。いやそもそも1回死んだ人を初めて見たよ。…ん?みんな何で私を見るの?
「生きてる間はただカナヅチになるだけの能力でしたが、ついにその日実の能力が発動しました。私の「魂」は“黄泉の国”より現世に舞い戻ったのです!すぐに自分の死体に入れば蘇れる筈が、私の死んだこの海はご覧の様に霧が深く迷ってしまい…霧の中、魂の姿で彷徨い続けること1年!自分の体を発見した時には何と既に“白骨化”していたのです!びっくりして目が点になりましたよ、目玉無いんですけども!ヨホホホ!!」
「お前イリスみてェな奴だなー」
2度目の人生くらいしか共通点無いよね?え?充分?あ、はい。
「しかし、白骨死体に普通、毛は残らねェよな。ガイコツがアフロって…」
「毛根強かったんです」
流石にその返しには吹き出してしまった。
毛根強いガイコツってのがちょっと、ツボというか…ふふ。
「じゃ、お前オバケじゃねェんだな!?」
「ええ、私もオバケ大嫌いですから!そんな者の姿見たら泣き叫びますよ私!」
「キャハっ、あなた、鏡見た事あるかしら?」
ミキータが取り出した手鏡をブルックに見せる。するとブルックは何故か恐れているかのように鏡はやめてください、と叫んだ。
「え!?おいちょっと待て!お前何で鏡に映らねェんだ!?…い!?よく見りゃお前“影”もねェじゃねェか!」
「え、凄い。吸血鬼!?」
「なんであんたはちょっとテンション上がってるの!?」
鏡に映らなくて、影もない。あとガイコツでアフロ。
…キャラ濃すぎではないだろうか。
ロビンは落ち着いてるけど、ミキータはちょっと顔が強張って、ナミさんに至っては私にしがみついて離れない。ナイスブルック。私はあなたの味方だよ!
「でも私、ブルックが悪い人にはどうしても見えないんだよね。ごめん、根拠は無いんだけど」
「ああ、ありがとうお嬢さん。…全てを一気に語るには、私がこの海で漂った時間はあまりに長い年月。私がガイコツである事と、影がない事とは全く別のお話なのです」
………。
「続く」
「話せ!!今っ!!!」
…悪い人では…ないだろうけど……うん。
「“影”は数年前、ある男に奪われました」
「…奪われた?」
「影を…?」
お、ここに来てロビンが初めて反応した。“影を奪う”なんて事をしでかす人に心当たりがあるのかな?
「お前が動いて喋ってる以上、今更何言おうと驚かねェが…そんな事があんのか?」
「あります。“影”を奪われるという事は、光ある世界で存在出来なくなるという事で、直射日光を浴びると私の体は消滅してしまうのです!同じ目に遭った誰かが、太陽の下消えていく所を目の当たりにしました…!“光”で地面に映るハズの“影”が無い様に、鏡や写真などに私の姿が写る事もありません!つまり私は光に拒まれる存在で!仲間は全滅。“死んで骨だけ”ブルックです、どうぞよろしく!!」
「何で明るいんだよ!散々だな、お前の人生」
呆れながら言うサンジの言葉にも、ブルックは更にジョークで返答する。そして更に、高らかと踊り出しそうになる程のテンションで笑い出した。
「ヨホホホホ、ヨホホホホ!!今日は、今日はなんて素敵な日でしょう!人に逢えた!!」
「!」
「今日か明日か、日の変わり目も分からないこの霧の深く暗い海でたった1人、舵のきかない大きな船にただ揺られて彷徨うこと数10年!私、本っっ当に淋しかったんですよ!淋しくて、怖くて…!死にたかった!!」
…そっか、数10年…ずっと1人…。それはきっと、信じられない程辛く、苦しい日々だっただろう。
私も無人島では1人だったけれど、あの島では私は自由だった。対してブルックは舵すらきかない船の中、刺激のある生活をしていた訳でも無く……か。
「長生きはするものですね。人は“喜び”!私にとってあなた達は“喜び”です!ヨホホホ!!涙さえ涸れていなければ泣いて喜びたい所」
ブルックはルフィを見る。瞳などどこにも見えはしないが、私にはその眼窩に果てしない感謝の色が見えた気がした。
「あなたが私を仲間に誘ってくれましたね。本当に嬉しかったのです、どうもありがとう。…だけど、本当は断らなければ!」
「おい!何でだよ!!」
「先程も話した様に、私は影を奪われ太陽の下では生きていけない体!今はこの魔の海の霧に守られているのです。あなた方と一緒にこの海を出ても、私の体が消滅するのも時間の問題。私はここに残って、影を取り返せる奇跡の日を待つ事にします!ヨホホホ!!」
「何言ってんだよ水くせェ!だったらおれが取り返してやるよ!そういや誰かに取られたっつったな、誰だ!?どこにいるんだ!」
「そうそう、あなたが女の子ならもっとやる気出るけど、ルフィが目をつけた人の為なら頑張るよ?」
それでもブルックは強情で、何が何でも私達に“敵”の名を教えてはくれない。
「あなた方は本当にいい人ですね。…しかし!それは言えません。さっき会ったばかりのあなた達に、“私の為に死んでくれ”なんて言えるハズもない。それより、歌を歌いましょう!今日のよき出逢いの為に。私は楽器が自慢なのです!海賊船では“音楽家”をやっていました」
「えーーーーっ!?本当かァ!?頼むから仲間に入れよバカヤロー!!」
「ヨホホ!では楽しい舟唄を1曲、行きましょうか!……!!?ぎ、ギャアァアアァア!!!」
「へっ?ど、どうしたの!?」
急に腰を抜かし、尻餅をついたブルックへと駆け寄ってその体を支える。…うわ、軽っ!!骨だけとはいえ軽すぎじゃない!?
「ご…ゴースト〜〜!!!」
「え…?……!!」
ブルックが指差す部屋の壁を見ると、そこからてるてる坊主のようなゴーストが壁から体を貫通させて私達を見ていた。
「!?わ、なに!?」
しかも今度は船がズズン!と何かに揺られる。
近くで何かが動いて、それによって波が揺れたっていうのが1番考えられる事だけど…一先ず外に行ってみないと!
みんなで慌てて船外に飛び出ると、前方に口のような門が見えた。
「あれは何!?まさか、今の振動ってこの門が閉まった音!?」
「…!その通りです。これは門の裏側!…という事は…船の後方を見て下さい!!」
「後ろ?」
門の裏側って事は…ここはもう、何かの中って事か。
…なら、後ろにあるのは必然的に…門の中の何か。
「……これは」
「…もしやあなた方、「流し樽」を海で拾ったなんて事は?」
「…!拾ったぞ!」
「それが罠なのです。この船はその時からずっと狙われていたのです!」
今、私達の前に広がるのは…島だった。
おどろおどろしい雰囲気で、物凄く大きい鎖が天高く伸びたり、遠くには大きな城のような建物が見えたりする不思議な島だ。
「でも、船はずっと停めてたハズなのに…何で島がここに?」
「これは、海を彷徨う“ゴースト
「…ご、ゴースト…」
私の肩に手を添えて震えているナミさんの手に、私の手の平を重ねる。
…でも、ナミさんが何も言わなかったって事は
…うーん、本当に