ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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10『女好き、初の一人目』

重い瞼をゆっくり持ち上げる。

まだ頭がぼーっとするような感覚なのは、やはり寝起きだからだろう。

前世でも経験したことのないようなふかふかベッドに包まれ、あとは周りを美少女で囲めばここで一生を暮らしてもいいくらいだ。

 

「あ…、イリスさん!」

 

「え…!カヤお嬢様?」

 

声の方へ顔を向けると、カヤお嬢様がベッド横の椅子に腰をかけ私の手を握っていた。

え…すべすべしてて触り心地よすぎる…ぐへへ。

 

「よかった…ご無事で!四日も目を覚さなかったから、心配で…っ」

 

「よ、四日?そんなに?」

 

「はい…!でも、本当によかった…」

 

涙を流しながら微笑むカヤお嬢様に思わず赤面してしまう。美しい。

 

「ナミさん達にも、心配かけちゃったな…」

 

「はい、お仲間のみなさんも凄く心配しておられた様子で…、ナミさんは凄く怒ってましたね」

 

「その情報は私の精神衛生的に伏せていて欲しかったかな…」

 

凄くって…今から想像するだけで恐ろしい。

 

「そうだ、クロは?あの後どうなったの?」

 

「あ、そうですね…イリスさんが倒れてからすぐ、ルフィさんがやっつけてくれまして、クロネコ海賊団と共に船ごと海に捨てた、とナミさんが」

 

ルフィはさすがだなぁ。

それに、この言い方を聞くにもうクラハドールとの決別は心のふんぎりがついたってことで良いんだよね?

 

「カヤお嬢様に何事もなくて本当によかった」

 

最終的に守り通すことが出来なかったのは、私の気持ちとしてはかなりやり切れないが…。

だけどカヤお嬢様はそんな私の言葉に頰を赤く染めて俯く。

ん?

 

「い、イリスさんが、守って下さったからこそ…です」

 

きゅっと手を握る力も増したように思う。

んん?まるで恋する乙女のような反応だ。いやでも、違う筈だ、変な勘違いをしてはいけない。後で泣くのは自分だぞ。

 

「は、はは…カヤお嬢様にそう言ってくれるなら、私も嬉しい、かな…なんて」

 

「…カヤ」

 

「え?」

 

「カヤお嬢様なんて、敬語を使うのはやめて下さい。カヤ…と、呼んで欲しいです」

 

……oh。

いや、勘違いじゃないよね?これ、完全にきた?きたよねこれ!

だって、見て!?このカヤお嬢様…いや!カヤ…の私を見る瞳!かんっぜんに恋する乙女だよ!

 

「カヤ……、ちょっと照れるかも」

 

なんか呼び捨てって照れる。

ルフィとかゾロみたいに意識してなかったら全然気にしないんだけどなぁ。

 

「わ…あ、ありがとうございます…!それから、もしよろしければ私を…」

 

私は首を傾げる。

何か言い難いことを言おうとする前みたいな雰囲気で、カヤ自身も口をぱくぱくさせていたからだ。

 

「わ、…私を!イリスさんのハーレムメンバーに入れてください!!」

 

「ーーーーー」

 

ついに私の思考が停止した。

今、なんと?

 

「…っ…?」

 

ぎゅっと目を瞑って返事を待っていたカヤだが、一向に返事が返ってこないことで不安になったのか片目だけうっすら開け、私を見る。

 

「えー…、……え?」

 

当の私はといえばようやく現実に戻ってきた所だ。

いや、ここは現実だよね?実はクロに刺されて死んでたとか、カヤに告白紛いのことをされたのも死んだ後にせめてもの夢を神が見せてくれてるとかじゃない?

 

「私じゃ…駄目ですか?」

 

「えっ、いや、駄目というか…いやぁ、その、ね?なんでハーレムの事知ってるのかな?って…うん」

 

我ながら情けない姿である。私自身は好意を伝えるタイプの人間だと理解してはいたけれど、まさか受け手になるとこうも参ってしまうとは…。

 

「それは、イリスさんが休まれてる時にお仲間の方に伺いました。だから私は、例え都合のいい女でも良いんです!あなたの為に尽くしたい…!」

 

…現実だ、これは。

一体何がカヤの琴線に触れたかは分からないけども、間違いなくカヤは私にとって夢の第一歩になろうとしてくれてるのだ。

ハーレムを作るだなんて、最低だろうか?一人の女性に狙いを決めて、その人だけに尽くすのが…美しい愛か?

 

答えは、それも愛だ。

 

一途に思い続ける。なんて健気で紳士的な愛か。

だけれど、私は最初から一人だけなんて無理だと諦めている。

前世の時からそうだったけれど、世界は美少女で溢れているんだ。誰か一人を愛する為に、その他の美少女を諦めなくちゃいけないのは私には無理なんだ。

一般論じゃないのはわかってる。…けど、私はそういう生き方を望んで、そういう夢をバカながらに目指して…そして今、その夢の一番目の理解者に会ったんだ。

 

「…、カヤ。私でいいなら、私にとって都合のいい女になって欲しい。私にとって一番最初の女の子に」

 

だから、綺麗事は絶対に言わない。

何を取り繕おうと、結局は私の欲を満たす為にその他大勢の一人になってくれと言っているのだから。

 

「…はい」

 

それでも、こうして笑って受け入れてくれる人に出会えたのは…、限りない幸福だと私は思った。

 

 

「あー、えっと…それじゃ、カヤも敬語やめてよ。クロにはタメだったのに、ね?」

 

「そ、その言い方はずるいです…、ずるいわ…」

 

と言いながらもきちんと言葉を正してくれるあたり流石都合のいい女志望。

 

「私がここまでしないと一人目すら出来なかったんだから、二人目以降はもっと攻めなきゃ駄目ね?」

 

「わ、わかってるんだけど、やっぱり同意はいるっていうか…」

 

頰をかきながら言うと、カヤはふふ、と笑った。何かおかしなことでも言っただろうか?

 

「イリスさ…、いえ、イリスは海賊なんだから、そういうことは気にしなくていいのに…。無理やり拐うくらいが丁度いいわ、女性を囲ってる海賊なんて珍しくないのよ?」

 

「う…心得ておきます…」

 

「心なんて後からついてくればいいじゃない。まずはイリスに触れなくちゃ。あなたと一緒にいて好きにならない女の子なんていないわ」

 

それは言い過ぎでしょ。言っとくけど見た目ちんちくりんのやつを好きになる人なんてほんとに物好きだからね、ロリだからね!ん?つまりカヤはロリコン…?

 

「さて…じゃあそろそろ行きますか」

 

「…もう海へ出るの?」

 

「うん、四日も待たせちゃったから…多分ルフィあたりの我慢も限界なんじゃないかな?」

 

せっかくカヤが一人目になってくれたけれど…彼女にはこの地に残ってもらうことにした。

囲って生活するのも悪くはないかもしれないけど、ふらりと訪れる地に美人な嫁がいるというのはいいものだ。現地妻というやつである。

 

よっ、とベッドから起き上がって立ち上がる。

ちなみに腹の傷は生きているなら完治は簡単、再生力を十倍にすれば完治などあっという間なのだ。

 

「じゃあ、最後にこれだけは貰っておくね」

 

「?……あ、…ええ、どうぞ」

 

同じく立ち上がったカヤが少し屈んで目を瞑る。

私はそんなカヤの"頬”にキスを落とした。いや、絵面完全に子と親とか言わない!

 

「…ごめん、キスの初めては、決めてる人がいるから」

 

せっかくここまで言ってくれた手前言い出し難いが…、どうしても、あの人を落として…そして私の初めてを貰って欲しい。

 

「もう、そんな申し訳なさそうな顔しないで?…でも、ナミさんが羨ましいわ」

 

「えっ、ど、どうしてわかったの!?」

 

「どうしても何も、イリスの周りに女の人なんてナミさんしかいないじゃない」

 

そうでした。

 

「…でも、次に会うときは私にもここに、キスしてね?」

 

「う、…うん」

 

唇に指を当てて微笑むカヤはなんというか色っぽく…うーん、なんと言うか……あ、そうだ、表現するなら…。

 

…めっちゃむらむらします。

 

 

 

この日、私たちは村を離れて海へ出た。

その際にはカヤからお礼としてメリー号という船を貰い、新たな仲間としてウソップが加わった。

 

私にとってもこの村で得た事は大きすぎて、何ならカヤのことは今でも夢か何かだと疑ってすらいるが…現実なんだ。

私は、私の目指す夢へと一歩近付いたんだ。

ひとまずは……キスの練習でもしておこう、かな。

もちろん、すぐに落とす予定のナミさんで!!

 

 

「ふーん…それで、カヤお嬢様を一人目にできたと…」

 

「はー、それにしても、俺はてっきりクラハドールに惚れてるとばかり思ってたんだけどなァ…」

 

「もちろん!ナミさんが正妻ですからね!はやく認めて下さいよ私の嫁にくるって!」

 

「あんたも飽きないわね…」

 

呆れ顔で私を見てくるナミさん。

…でも私は、その後ナミさんがポツリと呟いた言葉に気付くことはなかったーーー。

 

 

 

「…私だって…本当は…イリスの事がーーーー」

 




ついに一人目、と言っても囲いはしないタイプですけども。
こういう話は力量がかなり明確に浮き彫りになるので恥ずかしいのですが、これから成長するためです、成長、するよね?

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