ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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原作ではルフィの疲労と痛みを肩代わりして瀕死のダメージを受けたゾロですが、今回に関してはそもそものルフィに蓄積されているダメージが原作より少ない事もあってゾロへのダメージも最小限に留まってます。それでも瀕死レベルのダメージを負ったのは間違いないんですが。


108『女好き、新たな仲間と強さの課題』

私が目を覚ました時、王下七武海、暴君バーソロミュー・くまは既に島を去っていた。

何故だか嘘の様に体が軽いらしいルフィとは反対に、どういうわけか身体中傷だらけのゾロ。

ゾロに事情を聞いても話してはくれないし、というか起きてて大丈夫なのかと聞きたいくらい。

 

ペローナちゃんはというと、私を守って出来た傷をチョッパーに治療して貰ってからというものナミさん達にもみくちゃにされてるらしい。

本人はうぜェとか言ってたけど、表情は案外満更でも無かったような?

 

そんなペローナちゃんの提案で、このスリラーバークにある食糧、そしてお宝を頂いていく事にした。

財宝置き場はペローナちゃんが詳しいから、目をベリーに変えたナミさんとウキウキで取りに行った。食材の方はサンジが取りに行き、サニー号にあったのと合わせて宴会の料理に使うとの事。

あ、あと、私が気を失っている間に王華が話しかけてきた。なんか今日の夜に話があるらしくて、夢の中で会おうね、とか何とか。あなたは私の恋人か。

 

 

「…はー…、何か知らないうちに事が動いて知らないうちに事が終わったって感じだよ…」

 

「ししし、イリスは何も知らねェんだよな、ブルックの事とかよ!聞いたらお前ビックリするぞ〜!」

 

崩れた屋敷の中でも、まだ無事だった広い部屋の中に被害者の会も含めたみんなが集まっていた。

丁度体も動くようになった私は、ルフィと一緒に部屋端っこの方で座ってサンジの料理を今か今かと待っているみんなの姿をぼーっと見る。

 

「…私、強くなったって驕りがあったのかもしれない」

 

「ん?」

 

「青キジを倒して、ガープにだって引けを取らないって。…でも私がそれだけの力を使えるのは、限られた時間でしかない」

 

これから先の海は、女王(クイーン)化した私よりずっと強い敵が現れるかもしれない。…今回のように、最後はただの足手まといで終わる事だってあるかもしれない。

 

「…私は、強くなりたい」

 

「…にしし、おれもだ」

 

軽くルフィと笑い合って、船に財宝を積み込み終わったのか、被害者の会と共に帰ってきたナミさんやペローナちゃん達の所に行った。

 

「ペローナちゃん、体は大丈夫?」

 

「大丈夫な訳ねェだろ、見ろこの包帯、私の肌が傷付いちまったじゃねェか」

 

「え、それは大変…!舐めてあげるね!」

 

「ふざけんなキモいんだよ!!…ギャー!近づくなァ!」

 

そうは言っても可愛いんだから仕方ないよね!

スリラーバークはペローナちゃんが居ただけでも来た甲斐あったってもんだよ。モリアやくまとかオマケだよね、死にかけたけど。

 

「おら野郎共、飯出来たぞ!!運ぶの手伝え!!」

 

「「待ってましたー!!!」」

「運べ運べ!久しぶりの美味い飯だぞ!!」

「うはー!良い匂い!!」

 

サンジの料理も出来上がったようだ。相変わらず食欲をそそる良い匂いに自然と口角が上がる。ペローナちゃんもその匂いで小さくお腹を鳴らし、恥ずかしそうにお腹を押さえて目を逸らしていた。よし、犯す。

 

…あ、そうだ、せっかくだからブルックに軽く挨拶しとこう。みんなはこの戦いの中でブルックとそれなりに話をしたみたいだけど、私は全くしてないし…ついでにペローナちゃんも連れてくか。

 

「やーブルック、無事で何より」

 

「イリスさん…!どうもありがとうございます、お陰でまた、こんなにも美味しい料理を頂くことが出来て…!」

 

「料理に関してはサンジの腕だよ」

 

「…お前、剣侠“鼻唄”か?聞いてた特徴に合う」

 

鼻唄?なんじゃそりゃ。ブルックも首を傾げてて、どうやら身に覚えはないようだ。

 

「数年前、うちで暴れてゾンビ兵を浄化しまくってくれた骸骨だ。ホロホロ、あの時のホグバックの焦り様は面白かったな」

 

「ああ、それは確かに私です。剣侠ですか……。あの、1つお願いがあるんですけど良いですか?」

 

なんだ、と興味無さげにペローナちゃんが返事をする。

 

「パンツ、見せて貰ってもよろしィっでッ!?」

 

「おおお!!?どうしたブルック!?敵襲か!!?…なんだイリスか」

 

おっと、勢い余ってウソップ達が騒いでるトコまで殴り飛ばしてしまったみたい。めんごめんご。ナミさんの時は見逃してあげたんだから、学習して貰わないと!

 

「お前…あの程度でキレてどうすんだ。一々相手してたら保たねェぞ」

 

「私の嫁は私の嫁。冗談だろうと許せない事はある。…それに、もしブルックが私達の仲間になるのならそこんとこをよーーーく教育しとかないとね」

 

「独占欲の塊かよ、お前と同じタイプの女を嫁にしたら私達殺されそうだな」

 

「失敬な、私だってきちんと人を見て誘ってるよ!」

 

「私を可愛いからってだけで嫁にするの決めてただろ、説得力ねェんだよバーカ」

 

ペローナちゃんは何というか、絶対に嫁にしなきゃいけないっていう使命感が宿ったというかね。うん。

間違ってなかったんだから良いじゃん!あ、この肉美味しそう。

 

「あむ…。ん〜♪美味しいな、良い腕じゃねェかあのコック」

 

「そうでしょう、プリンセス。私の名前はサンジ…これから同じ船で暮らす者同士、よろしくお願いします」

 

「なんだてめェどっから現れた!?…ってこれには何も言わねェのか女王!」

 

女王って、何か距離感じるなー。

それにサンジは特別だよ、彼は紳士だからね。ブルックももう少し人となりが知れたら多少の冗談くらいは許してあげるけど。

 

「ん…?音楽?」

 

…あ、ブルックか。へぇ、この部屋ってピアノあったんだね。

聞き覚えのある歌…ビンクスの酒?今世では知らないな。

 

もう少し近くで聴きたいな、と思いピアノの近くで料理を乗せた皿を持って座る。

近くにナミさん含めた嫁がみんな集まってきて楽園みたいになっちゃった。

 

「ビンクスの酒…何処かで聴いたと思ったら懐かしい歌…」

 

「ロビン、知ってるの?」

 

「昔の海賊はみんなコレを謳ってたわ」

 

凄い有名な歌って事は分かった。

それにリズムが覚えやすいというか、口ずさみやすい良い歌だ。

 

「〜♪」

 

「サルベージの時といい、あんた、割と歌上手いわよね」

 

「え、そう?歌唱力倍加してみようかな。出来ないけど…」

 

「キャハ、私がファン1号になるわ!勿論、おひねりには期待してて!!」

 

ミキータの場合おひねりどころか全財産渡してきそうだから怖い。

 

「お前さ、おれの仲間になるんだろ?な!影帰ってきたもんな、日が当たっても航海出来るだろ」

 

いつのまにかルフィがピアノの屋根に乗ってブルックに話しかけていた。彼はルフィの話を聞きながらでもピアノの手を止めず、そのまま言葉を返す。

 

「…それなんですが、私1つ、言ってなかった事が…」

 

「何だ」

 

「“仲間”との…約束があるんです。それをまず果たさなければ私…男が立ちません…!!」

 

それを聞いたルフィが、ラブーンの事だろ?知ってるよ、と言った。…え、ラブーン?その名前、確か双子岬の…。

 

「え…ああ、そうなんです。ラブーン…そういう名前のクジラなんですけど、ある岬に…」

 

「だからよブルック、おれ達双子岬でラブーンに会ってんだ!あそこで50年ラブーンが仲間の帰りをずっと待ってるのは知ってた。だから驚いたよ!あいつの待ち続けてる海賊達の生き残りがお前だって分かった時は…!そしてお前はちゃんとまだ約束を覚えてる。これ知ったら、ラブーン喜ぶだろうなー!ししし!!」

 

うそん…ナミさんも口をぽかーんと開けてるし、何でルフィがその辺の事情を知ってるのかは分かんないけど…それが本当なら凄い事だよ…!そんなの、絶対ブルックを仲間にしないと!

 

「…ちょ、ちょっと待って下さいよ!ヨホホ…!びっくりした…唐突で…!あなた達が本当に、ラブーンに会ったって!?」

 

「うん」

 

「50年も経ってるのに…!?今もまだ…あの岬で待っていてくれてるんですか!?ラブーンは…!!」

 

「居たよ、おっきくて、仲間に会いたくて無茶してた優しいクジラでしょ」

 

ブルックと別れた時はまだ小舟程の大きさだったらしい。…うーん、考えられない。今となっては腹の中に家があるくらいの大きさだもんね。

 

「…元気、でしたか…!」

 

「ルフィと派手にじゃれ合うくらいには元気だった」

 

「……そ、うですか…!!ちょっと聞き分け悪かったけど、音楽好きで良い子でねェ…今でも瞼を閉じるとその姿が…あ、私瞼無かった。…頭にね、浮かぶんです」

 

ポタポタ…とブルックは自分で無いと言っていた目から涙を零れ落とす。それは初めて会った時、彼が言っていた“枯れた涙”とは別の…嬉しさから出る物なのだろう。

 

「そうですか…!!彼は、元気ですか……!!ウオオ…!!こんなに嬉しい日は無い…!!

 

そう言ってブルックは、頭をパカッと開いて頭蓋骨から何かを取り出した。…いや待って!どんな収納庫だよ!!

 

「…ん?音貝(トーンダイアル)じゃん。ブルックも空島行ったことあるの?」

 

「ご存知でしたか。いえ、私は行った事はなく、これはとある商人から買ったものです」

 

「なんだ空島って」

 

「また今度連れて行ってあげるよ!良いトコだよ、雲がふかふかで気持ちいいし!嫁もいるし!」

 

「お前らどんな冒険してきたんだよ…」

 

そりゃもう凄く濃い冒険を。

…濃すぎて、今考えれば良く生きてるなぁって感慨深くなるよ。

 

「何か録音してあるのか?」

 

「“唄”です。死んだ仲間達の生前の唄声…!我々は「明るく楽しく旅を終えた」という…ラブーンへのメッセージ。…今かけても構いませんか?」

 

「おー、聴きてェ!そりゃラブーン喜ぶだろうな」

 

それを聞いて、ブルックは音楽を流し始めた。陽気な前奏から始まるその唄を、私はやはり覚えている。…いや、これを覚えているのは入州(あなた)かな?

 

「〜♪ビンクス〜の酒を、届け〜にゆくよ♪」

「「海風気〜まかっせ♪波まっかせ〜〜♪」」

 

ふふふふーん♪ふーふふーふーん♪

 

 

やがてそれは、この場に居る全員での大合唱となった。

そのダイアルの向こう側では、きっとブルックの仲間が命を賭して音楽を奏でているんだ。

だけど、それを一切感じさせない陽気なテンション。楽しそうな唄声。…ラブーンの事をどれだけ大事に思っていたかが分かる様だ。

 

 

そして、再生は終わった。

かつての仲間達と共に命いっぱいに唄ったこの唄を、きっとブルックは海を彷徨っていた間何度も聴いていたんだろうな。

ラブーンだけじゃなくて、ブルックの心の支えにもなっていたんだ。きっとその仲間も喜んでくれてるだろうね。

 

「1人ぼっちの大きな船で、この唄は唯一私以外の“命”を感じさせてくれたのです。ーーーしかし、今日限り私は新たな決意を胸に、この音貝(トーンダイアル)を封印します。封印〜!!」

 

カパッと頭蓋骨を開けて貝を放り込むブルック。絶対おかしい…どうなってるんだあの頭。

 

「ラブーンが元気で待っていてくれてると分かった…影も戻った、魔の海域も抜けた…!この(ダイアル)に蓄えたみんなの唄声は…もう私が1人昔を懐かしむ為の唄じゃない!これは、ラブーンに届ける為の唄!!辛くない日など無かった…希望なんか正直見えもしなかった。でもねルフィさん…私!生きてて良かったァ!!本当に生きてて良かった!!今日という日がやって来たから!!!…!!……あ、私、仲間になっていいですか?」

 

「おう、いいぞ!」

 

「「さらっと!入ったァ〜〜!!!」」

 

「でも歓迎〜っ!音楽家♪」

 

また一段と賑やかになりそうな予感!

 

このスリラーバークで得たものは、本当に多い。

私の能力…それについての今後の課題と、ブルック、そしてペローナちゃんの一味加入。ペローナちゃんは私の嫁にも。

 

特に私は…この先の事を考えてもっともっと強くならなくちゃいけない。背負ってる命は重くて、そして多い。その中のどれか1つ足りとも失いたくないし、大切な人達なんだ。

 

王華との“約束”もある。…はぁ…覇気を自在に扱えるようになれば、格段とレベルアップするのは間違いないんだけどなぁ…。

 

 

 

 


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