ハーレム女王を目指す女好きな女の話   作:リチプ

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2回目はあるのかって言われると分からない会議。なお建前の模様。

まあ、おさらいみたいな感じの回ですかね。


109.5『第1回嫁会議』

夜ーーー。

仲間達が皆寝静まった頃、サニー号の測量室兼図書館に集まる4人の女の影があった。

己が生涯を捧げると誓った主人、イリスにも黙ってこの場にやってきたのは…。

 

「…さ、始めるわよみんな」

 

1人は、『正妻』ナミ。

その懸賞金額はなんと1億にもなり、政府からの危険度はかなりお高い美女である。

そんな彼女は、測量室の中央に置いてある測量机を一旦隅に追いやり、代わりにホワイトボードを置いた。

 

「キャハ、何だかわくわくするわ!」

 

2人目、『嵐の運び屋』ミキータ。

言わずと知れたイリスバカであり、イリスが白だといえば真っ黒も白になるヤバい女が彼女である。

戦闘面でもかなりの強さを誇り、弱点だった機動力の無さを克服してからは強さに一段と磨きが掛かっているみたいだ。

 

「フフ、楽しそうねミキータ」

 

3人目、『悪魔の子』ニコ・ロビン。

イリスの嫁の中では珍しい完全なお姉さんキャラであり、例え相手がイリスだろうとも間違っている事は正すことが出来る。ミキータは見習え。

“オハラ”の生き残りで、幼い頃から散々政府に追いかけ回された壮絶な過去を持っているが、麦わらの一味の覚悟とイリスが青キジを降した事で無事に仲間&嫁入りを果たした。

 

「私は眠いんだぞ…何時だと思ってんだてめェら…肌に悪いだろ…」

 

4人目、『ゴーストプリンセス』ペローナ。

最近…というか3日前の時点でイリスの“メンバー”に加わったゴスロリ風美少女である。

その能力はかなり優秀ではあるが、覇気使いにはそれ程効果が無いようだ。それでも不意をつけば問題なく戦意喪失させられるのだが。

彼女は前の3人に比べれば、そこまでイリスに惚れ込んでいる訳では無い…と思わせて割と夢中になりつつあるのだが、それを自分から言う事は無いツンデレ(笑)であった。

 

「イリスの“メンバー”もかなり増えてきたわ。特にロビンやペローナは全然把握してないでしょ」

 

「ええ、そうね」

 

「知る必要ねェよ…ふわぁ…」

 

「甘い甘い!私達は未来のハーレム女王…つまり女を統べる王様の嫁なのよ!それくらいは把握しておくべきじゃない?」

 

キュッキュ、とホワイトボードの上の方に『第1回嫁会議』と書いて、その左下に『カヤ』と書く。

ナミはボードの横に立ち、他の3人は講義を受けるかのように椅子に座っていた。

 

「私達にとって、まず重要な嫁はこの人よ。イリスのハーレムに初めて加入した…初めて夢の後押しをした人物ね」

 

「はァ?正妻のお前が1番手じゃねェのか」

 

「会ったのは私が最初だけど…その時は色々あってね、私から拒否してたのよ」

 

これにはミキータも驚いた。ナミがイリスの正妻を拒否する姿など想像も出来ない。

 

東の海(イーストブルー)にあるシロップ村ってトコのお嬢様で、そこでも色々事件が起きてね。そのお嬢様を命懸けで守ったのがイリスって訳」

 

「お嬢様か、少し親近感が湧くな、ホロホロ」

 

「あんたのなんちゃってプリンセスと違って本物だけどね」

 

「ブッ飛ばすぞ」

 

なんだかんだ言いつつも話を聞くペローナに、軽口を叩いて距離を詰めるナミ。

会って間もないが、イリスの嫁とは仲良くしたいナミなりの行動なのだ。

 

「病弱で、色白で、髪は薄い金髪の長髪…これだけのお嬢様特徴を揃えててイリスが気にならない訳がないでしょ?」

 

うんうん、とみんなは頷いた。特にペローナは物凄い勢いだ。自分もビジュアルで見初められた嫁であるから、更に親近感が芽生えたのかもしれない。

 

「で、カヤの次は…順番で行けばノジコね。私の姉よ」

 

「え、ナミちゃんってお姉さん居たの?」

 

「ええ、とっても頼りになる、優しい人なの。私を正妻にした後の初めての嫁だったわね」

 

ほえー、と口を開けて感心するミキータ。

彼女も偉大なる航路(グランドライン)から嫁に加入した事もあって、それ以前は知らないのだ。

 

「でも、ノジコについてはそれ程触れる事もないか。みんなには紹介したいけどね」

 

そう言ってナミは『ノジコ』の下に『マリアンヌ』と書く。

その名前に「あ」と反応したのはミキータだった。

 

「ここからは偉大なる航路(グランドライン)になるわ」

 

「ここからはってお前… 東の海(イーストブルー)で3人しかメンバーに入れてないのか?それでよくハーレム女王とか言えたな」

 

「確かに、積極的に誘ったりはしなかったのよね。強引に嫁にしたのは、多分私を除けばペローナが初めてじゃない?」

 

ペローナ以前で嫁となった者は全員、自分から加入を申し出るか、何らかのお礼って形しか無かった筈だ。

ここへ来て強引にペローナを引き入れたのは、間違いなくイリスが過去を乗り越えた事による心境の変化だろうとナミは思った。そしてそれは正解であり、イリスがこの世界に対しての遠慮が無くなった証明でもある。

 

「…ま、それは置いておいて、マリアンヌよ。彼女はミキータやロビンと同じく元B・W(バロックワークス)のオフィサーエージェントの1人だった。なんやかんやで嫁になったけど、嫁の中だと2番目に小さい子よ」

 

「1番はアイサちゃん?」

 

「そうよ。まぁ…正確にはあの子はまだ嫁じゃないけど、将来はかなり美人になってると思うわ」

 

さっきから話についていけなくて、ペローナの頬が不満げに膨れていく。元々眠たい所を引きずって来られたのだから当然とは言えば当然だが。

 

「マリアンヌだかアイサだか知らねェが、ソレを私が知る必要あるのか?」

 

「イリスの嫁なんだから、私達からすれば家族でしょうが。家族を知らないなんておかしいでしょ?」

 

「お前らやっぱりどっかブッ飛んでんな…」

 

ため息を吐きつつも、理解はしたのか頬杖をついて話を聞く姿勢に戻ったペローナを見て満足げに頷くナミ。

 

「…で、イリスの嫁の中でも、多分特にイリスの心に強く残ってる嫁がこのコね」

 

「…『ビビ』?どっかで聞いた事はあるんだが…」

 

「あのコには悪いことしたわ、次会ったらきちんと謝りたいものね」

 

「私も…」

 

首を傾げて唸り出すペローナとは別に、どよーんと暗いオーラが漂い始めたミキータ。実際の所、B・W(バロックワークス)時代の過ちに関してはビビに許しを貰っている2人ではあるのだが、だから全く気にしないという訳でもない。というか、許せるビビの器量がおかしいだけである。

 

「…オイ、ビビってもしかして、アラバスタの…ネフェルタリの…」

 

「知ってるの?アラバスタの王女様よ」

 

「知ってるも何も、最近王政に関わり出した超重要人物じゃねェか!次の世界会議(レヴェリー)にも出てくるって話が上がってるくらい…」

 

「え、ビビもうそんなに活躍してるの!ふふ、これはイリスに教えてあげないと。きっと凄く喜ぶわ」

 

まさか自分でも知っているレベルの政治的重要人物の名が出てくるとは思わなかったペローナがわなわなと頭を抱えた。

彼女がビビを知っているのは、最近の新聞をちらりと見た時にたまたま載っていたからではあるのだが、その時の記事がえらくビビの活躍と今後に対する期待で溢れていたのを覚えている。

 

「私達もまた会いたいわね、彼女に」

 

「そのアラバスタの姫君に嫁げば、結果的には女王だろ」

 

「ただのね。それじゃあいつは納得しない…恐らく、最終的にはビビをアラバスタから引き抜くんじゃないかしら」

 

「国を1つ潰す気かよ…」

 

まぁ、そんな事にはならないようにビビ自身が「自分が居なくても国が続いていける様になるまで待っていて」と言っていたから問題はないのだが。

 

「空島にはさっき言ったアイサに、コニス、ラキと3人も居るわね」

 

「キャハ、なんだかんだ、私はラキって人とあんまり話してないのよね、きちんとお話してみたいわ」

 

「そうね、彼女は空島を出る直前に誘ったから、ラキ自身もイリスの嫁っていう感覚は薄いかも…。こればっかりはまた空島に行った時に何とかして貰いましょ」

 

空島に行くのは楽ではないが、行こうと思えば今のイリスなら行けない事もないだろう。空を飛んで行けば直ぐに辿り着くからだ。勿論、辿り着いてから半日はベッドで安静にしなければ行けなくなるのは必至だが。

 

「…とまあ、ここまで軽く名前だけ、現状のイリスの嫁を紹介した訳だけど」

 

バン!とホワイトボードを裏返して、ナミはそこに大きく『嫁を増やす為には』と書いた。

 

「私達はイリスの嫁、それも1番近くで居る…いわば責任のある立場よ。私はイリスの夢の手伝いをして、あの子をもっと幸せにしてあげたい」

 

ナミの言葉に間髪入れずにミキータとロビンの2人は頷いた。ペローナも態度で示さなかっただけで、無言は肯定である。

 

「ペローナの件で良く分かった、あの子はエニエス・ロビーでの件以来、間違いなく私達に対して…違うわね、この世界(・・・・)に、遠慮が無くなったわ」

 

「司法の塔か。お前らがとんでもねェ事やらかしたアレだろ、何かあったのか」

 

「その辺は…悪いけどイリス本人に聞いてくれる?ちょっと私が勝手に話してもいい内容とは思えないの」

 

それは勿論、イリスの過去の事だ。…否、王華の。

 

「それでナミ、何か作戦があるのかしら」

 

「作戦っていう程大層なモンじゃないわよ。あの子自身が変わりつつあるのなら、私達はそれの後押しをする。…つまり」

 

「…キャハ、成る程ね」

 

楽しそうに笑いながら立ち上がるミキータと、それに続くロビン。

全く話が分かっていないペローナは首を傾げるが、流れには従っておこうと立ち上がった。

 

 

「じゃあ、行くわよ。…夜這いに!!」

 

「「ええ!!」」

 

「……は!!?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「お前ら…なんだかんだ理由つけてあいつの寝込み襲いたかっただけだろ…」

 

「何言ってるの、そんなんじゃないわよ。きちんとイリスには“女”を知ってもらわなくちゃ」

 

「犯された私から言わせて貰うと、アレは充分に知ってる手つきだったから安心しろ」

 

今4人の前には、巨大なベッドの真ん中でちょこんという表現がぴったりなイリスがすやすやと寝息を立てていた。

4人ともそこから抜け出してきたのもあって、温もりを探すかのように腕を伸ばしている姿は見た目だけではなく、本当の子供のようだ。

 

「しかし…仮にも6億の首が何て無防備な寝顔だ…。………なんだお前、気持ち悪い顔で笑ってんじゃねェよ」

 

「別に何も?ただ、イリスを見る顔が随分と優しかったから気になっただけよ、ごめんなさいね」

 

「ばっ…な、何言ってんだてめェ!そんな訳ねェ、私はいつかお前ら全員を裏切って…ええぇぇぇ…!!」

 

大声を出したからだろうか、上半身だけ勢いよく起こしたイリスが、寝ぼけ眼のままペローナの腕を引っ張って体の位置を入れ替えて押し倒した。

 

「……んー、パレット…絵の具」

 

「は!?てめェ寝ぼけてるじゃねェか!どんな夢見てんだ!オイお前ら、コレ何とかしろ!」

 

「よっと。…さ、私達も混ぜて貰うわよ!」

 

「服脱いでんじゃねェぞ変態共!!意識ないのにやったって意味ねェだろ!?」

 

「キャハ…、私はそれでも、やりたいのよ!」

 

この時、ペローナは思った。

主人が主人なら、嫁も嫁だと。…そして、自分もいつかはああなってしまうのかと。

 

(嫁会議っていうか…ただの夜這い口実会じゃねェか…)

 

これじゃハーレム女王になる前にえっち女王になってしまうんじゃないか、と訳の分からない事を考え出した時点でペローナもかなり雰囲気に飲まれている事が分かる。

数日前もスリラーバークの自分の部屋だった所で襲われたばかりの彼女にとってはそういう思考になるのも致し方ない所もあるが。

 

「……う」

 

「?」

 

そしてこのままイリスを美味しく頂く、というのがいつもの黄金パターンだった。…のだが、何やらイリスの様子がおかしい。

顔を歪めてナミの名前を連呼しているのだ。その額には尋常じゃない程の汗が滲んでいる。

 

「…っ、な、みさん…!…ああ…絵の具……」

 

「あ」

 

自分の名前と、絵の具というキーワードに思い当たる節があったナミが声をあげた。

昨日も言っていた、夢の中での特訓…、間違いなくそれが原因で今は魘されているのだろう。

 

「…イリスちゃん、どうしたのかしら」

 

「あー…多分…」

 

 

ナミは軽くみんなに説明する。

因みに、これから夜這いしちゃおう!という雰囲気でも無くなってしまった為服は着た。

 

「もう1人のイリスちゃんにスパルタされるイリスちゃん…夢の中に入って見たいわ!!」

 

「…だけど、そうなると当分夜に『そういうコト』は出来ないわ。ナミ…これは早急に策を練らないと」

 

「そうね、夜以外は基本航海で忙しいし…夜だって天候によってはゆっくりも出来ないってのに…」

 

うーん…と唸る3人に呆れ顔を贈ったペローナは、確かにこれだと調子が狂うな、と眉を寄せた。

今だってペローナを押し倒してはいるが、そこから微動だにしない。恐らくそのまま寝ているのだろうが、押し倒しといて何もしないって言うのもどうなのかと不満が募る。

 

「…ま、いいか」

 

イリスの背中に手を回して、その小さな体を自分の横に寝かせる。

 

「お前らも今日はもういいだろ、寝るぞ」

 

「…そうね。でもペローナが居てくれて良かったわ、そういう判断は私達って中々出来ないから」

 

「どんだけやりてェんだよ…」

 

「でもちゃっかり自分の隣にイリスちゃんを寝かせる辺り、ペロちゃんも流石ね!」

 

「うるせェぞ…ってペロちゃん言うなー!…でも案外可愛いな、アリか?」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

男も女も、皆寝静まり…サニー号を静寂が包む。

その中で1人、横にはなっているがまだ夢の世界へ旅立っていない女が居た。

 

「……イリス」

 

正妻、ナミ。

ペローナとは反対側のイリスの隣で、彼女はその小さな頰を優しく撫でた。

 

「とうとう起きてる時だけじゃなくて、寝てる時も無茶する様になったのね…。全く、心配ばっかりかけて…これじゃ息抜きもさせてあげられないじゃない」

 

そう言って軽くキスを落とし、…いや軽くなかった。寝る前のモヤモヤを吹き飛ばすかの如く深いキスだった。正妻の執念とは怖いものである。

 

寝ている為されるがままのイリスの口から垂れた唾液すらも綺麗に舐め取り、ナミは妖艶に笑う。

確かにイリスは夢の中でも無茶をし、息を抜く間もないかもしれない。…だが、それとナミの中にある欲とはあまり関係の無いものだった。

 

最近はイリスと2人でそういう事をするなんて機会は随分減ってしまい、その事に関しては仕方ないと思っている…が、やはり独り占めしたい時だってある。

そして今は、ペローナのお陰で奇跡的に独り占めが出来る状況にある。

2人きりではない為、こっそりと、イリスにすら気付かれずにする必要があるが…ナミはそれでも構わなかった。

 

「……ん」

 

「…!」

 

その時、不意にイリスの目が開かれた。ペローナを押し倒した時のようなものではない…確実に『起きた』様子で。

 

「…ナミ、さん?…あれ、なんでわたし、前はだけてるの?」

 

「ごめんイリス、声…出さないでね」

 

「え?ちょ…お、王華め…珍しく休憩くれたと思ったらそういう訳か〜…!」

 

しかしもう、ナミは止まらない。

イリスの小振りな胸に手の平を添えて、舌舐めずりをし、目はギラギラと欲に満ちていた。

久し振りに2人でする、という事にナミは興奮しているのだが、その事に気付かないイリスは普段と違う彼女の様子に困惑しつつも、その腕に体を委ねるのだったーーーー。

 

 

因みに次の日、珍しくイリスに説教されていたナミを不審に思った3人がナミに問い詰め、夜中に楽しくイチャコラしてましたと白状するや否や朝っぱらからイリスを押し倒してやり始めたのは、もはや語るまでもないだろう…。

 

 

 


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